18thアルバム『yokubari』を締め括るにふさわしい雰囲気のあるバラードだ。作詞は宏美さんと同世代で仲良しだったという佐藤ありすさん、作編曲はお馴染みの奥慶一さんである。

 

 宏美さんは当時から「♪ 抱き合うより より添いたい/縛るよりも 結びたい」という歌詞が大好き、と話しておられた。私は「♪ 会うたび どこか好きなとこ/見つける旅を しているの」という部分も、歳を重ねるほど沁みてきた。大人のためのラブソングである。

 

 

 キーはBメジャー、構成はABC×2+BBC。リズムレスのストリングスの上で鳴るバイオリンソロから入るイントロで、歌い出しは優しく語るように始まる。「♪ 長めの指 紅茶が好き/低い声で よく笑う」というサビのBパートは、短3度上のDメジャーに転調して色合いが変わる。最高音はB音だが、宏美さんはそれほど声を張ることもない。〈♪ シラファ♯ミーファ♯(ファ♯)〉というほぼ同じモチーフを4度繰り返している。

 

 「半音上がって盛り上がる宏美さんの歌ベスト20❣️」でも取り上げた通り、2コーラス終わってからキメのリズムが入り、E♭メジャーに転調してからは、歌い上げる感じになり俄かに盛り上がる。サビが2度繰り返され、前述の同じモチーフは、さらに強烈な印象として刻まれるのだ。

 

 この歌は宏美さんもたいそう気に入っておられ、『夜のヒットスタジオ DELUXE』で、「Call Me」を歌う予定だったのを、ご本人の希望で急きょ差し替えて歌われている(1987年8月)。YouTubeにも上がっているのでご紹介しておこう。キーはCDよりも1音低いAメジャーで、ゆったりと歌われている。

 

 

 この回の夜ヒットのビデオを焼いたDVDは、まだ視聴可能だったので、多少補足しておこう。オープニングメドレーでは、瀬川瑛子さんが「シンデレラ・ハネムーン」を歌い、宏美さんが THE ALFEE の「SWEAT & TEARS」を歌ってバトンタッチ、しんがりがTHE ALFEE で全員合唱、といういつものパターンだ。他の主な出演者は、陣内孝則さん、シブがき隊、中山美穂さんなど。

 

 そして、あの久保田利伸クンも出演して2ndシングル「TIMEシャワーに射たれて…」を披露している。歌の前に宏美さんも呼ばれて、「月光」のレコーディング風景やお二人の微笑ましい交流の様子が語られる。当時うちのテレビは映りが悪かった上に経年劣化もあり見苦しいが、静止画で気持ちだけお裾分け…。

 

 

 とここまで書いて画面撮影もしてからYouTubeを検索したら、何と久保田クンの歌唱前の宏美さんとのやり取りも含めてアップされていた。そちらの方もご紹介しよう。

 

 

 ご自身の歌の番には、『レ・ミゼラブル』の楽屋写真が公開されるなど、この時期の公私共に充実した宏美さんの様子が窺えた。プライベートに関しても、古舘さんが盛んにツッコミを入れていた。😜衣装は古舘氏曰く「ヨーロッパの貴婦人」。YouTubeでご覧いただいた通りの素敵な出立ちである。

 

 その後この「二人をすべて」には、今世紀に入って再びスポットが当たることになる。まず『バラード・ベスト・コレクション〜夢〜』(2001)に収録された。次いでポリープの手術から復帰されたオーチャードホール(2002年2月)でのコンサートでは、アンコールに歌われた。われわれファンにとっては望外の喜びであった。

 

 「二人をすべて」ーーー内容的にも、今の年齢だからこそ是非再び取り上げていただきたい名曲である。

 

(1987.4.21 アルバム『yokubari』収録)