☆BTE 2022-4-6記
On A Slow Boat To China:

 

この歌は、「米国から中国までの航海の船の長旅」のイメージをベースにしているようです。どんなに急いでも、長い時間が掛かるので、それは、ゆっくり(slow)したものに思えるのは自然ですね。もしかしたら、手漕ぎの、公園の池を巡るボートで、とてつもなくゆっくり中国まで行く、などと思ってみてもよいですね。

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On A Slow Boat To China (1948)
music&lyrics:Frank Loesser, 
Artist: Jimmy Buffett

 

「On A Slow Boat To China」英語詩:

曲名:ボートでゆっくり、チャイナ

美艇香津 訳詩

 

I'd love to get you
 あなたといく、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All to myself alone
 だれにもわたさず、

 

Get you and keep you
 ずっとむねに、
In my arms ever more
 だきしめ、
Leave all your lovers
 ライバルたちは、
Weepin' on a far away shore
 とおくのはまでないている

 

Out on the briny
 うみの向こうで、
With the moon big and shiny
 つきはおおきくかがやき、
Melting your heart of stone
 あなたのこころもとける、

 

Honey i'd love to get you
 あなたといく、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All by myself alone
 だれにもわたさず、


(instrumental)

 

I'd love to get you
 あなたといく、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All to myself alone
 だれにもわたさず、

 

A twist in the rudder
 かじはゆがみ、
And a rip in the sails
 セイルもすこしさけて、
Driftin' and dreamin'
 ただよい、ゆめをみる
Honey throw the compass over the rail
 コンパスもうみになげる

 

Out on the ocean
 うみのかなた、
Far from all the commotion
 どんなさわぎもとおく、
Melting your heart of stone
 あなたのこころもとける、


Honey i'd love to get you
 だいすきなあなたと、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All to myself alone
 だれにもわたさず、


Honey i'd love to get you
 だいすきなあなたと、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All to myself alone
 だれにもわたさず、

 

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では、さっそく、見て行きましょう。

 

I'd love to get you

 

I'd love to ~したい(※「I'd like to」よりも強い願いが表されています。)

 

自動翻訳で見ると、

 

⇒私はあなたをつかまえたい

 

いきなり、こう来ましたね。この歌のテーマを思い出してみましょう。それは、この後の行で、その状況だけは、説明はされています。この歌を、初めて聴く人は、「え~っ、何の事」と思わざるを得ません。この歌が進むと、いずれ分かる事なのですが。

 

訳にあたっては、この歌のテーマは分かった上で、言葉を選びます。その点では、初めて、この歌を聴く人よりは、いろいろ、この歌について分かった上での事なので、テストの英文和訳をするつもりの人には、「ずるい」と言われてもし様がありません。

 

ということで、普通に言葉を見ると、それは、「つかまえたい」であり、「手に入れたい」ですが、その為には、まず、一緒に行くのでなければならないのです。そして、歌を聴く人には、まだ、何も分からない時に、そういう望みを言われても、戸惑うばかりです。歌は、まだ、始まる前なのです。入りやすく、そっと、歌への道を案内するだけで十分です。それで、こうなりました。

 

 あなたといく、

 

On a slow boat to china

 

boat 船

 

ボートというと、公園の池に浮かぶ手漕ぎの二人乗りの舟を思う浮かべますが、ここは、アメリカから太平洋を越えて中国に行く、客船、大きな船を考えてもらってよいですね。ただし、歌う時は、「船」でなく「ボート」で歌います。それは、その言葉で、「slow」(ゆっくり)が省略できるからです。それについては、後で、同じ行の出て来る所でふれます。

 

そして、「china」は「中国」ですが、「ちゅうごく」と、ひらがなで言って見ると、何かぴんと来ません。それは、我国の瀬戸内海に面する中国地方もあり、中国には台湾もあり、また、大陸の中国は広すぎて、行く先がどこになるのか、返って、はっきりしないので、「どこに?」、という疑問の影がかすめます。それに、この歌は、軽く、楽しい調べで走って行く曲調が感じられるので、訳も軽めに、冗談みたいに言ってみてもよいでしょう。だから、

 

 ボートでチャイナ、

 

「ちゅうごく」では分からなかった行き先が、「ちゃいな」では、すぐに分かりますね。人により、多少の違いはあっても、だいたいは、北京か上海ですね。

 

All to myself alone

 

これを自動翻訳すると、

 

⇒すべて自分だけに

 

この意味を考えましょう。あなたとボートに乗っていて、チャイナに向っているのです。そして、「すべてが自分だけに(かかっている)」のでしょう。この「自分だけに」ってどういう事でしょう。

 

1行目からの歌を振り返ってみましょう。「あなたと行く、ボートでチャイナ」、それが、「すべてが自分だけに」の事です。どんな意味かっていうと、「すべてが自分にかかっている」という事ですね。そして、ボートと言っている船も、ほんとに、小さな小舟で、それを漕いで中国までゆっくり行く位の積りでいて、目的地に着くまでの責任は、全部、自分に懸かっているというような状況が想像されます。船に乗っているのは、自分とあなたと二人だけ、という気分なのでしょう。

 

ちょっと考えさせる、この「All to myself alone」の意味を、どういう事かって、英語で尋ねても、その答えは、今、ここで、日本語で説明した事を英語でいうだけでしょう。そういう言葉なのです。その意味では、「すべて自分だけに」という訳でよいのですが、それをさらに、どういう意味なのか、日本語でも、重ねて尋ねてしまいたくなる様な表現、言葉です。今、この英語のこの行の意味を英語ネイティブの人に尋ねたとしても、それ以上はなくて、もしかしたら、「どういう意味かな~っ?」と、逆に考え込ませるだけなのかも知れません。詩を書いた本人に聞くしかありませんが、今となっては、その術もなく、また、聞けたとしても、それ以上の事はないかも知れません。

 

そこで、また、改めて考えてみると、その気持ち、状態は、もっと分かり易く言えば、渡すとか渡さないとかの動詞はこの行にありませんが、こういう気持ちなのです。


 だれにもわたさず、

 

こうして、この歌の初めの3行で、この歌のテーマが分かりました。それで、それでと、話しを聞きましょう。次の行に進みます。

 

Get you and keep you

 

あなたを「Get」して、「keep」する、そして、次の行、

 

In my arms ever more

 

私の腕の中に、いつまでも、ですね。

この2行は、一つの文で、日本語は英語と語順が前後するので、訳詩では、

行の内容が入れ替わりますが、この2行を訳したのです。

 

「ever more」は「ずっと」、「In my arms 」は「むねに」、

「Get you and keep you」は「だきしめ」、です。自動翻訳では、

 

⇒あなたをつかまえて、あなたを引き留めなさい

 

自動翻訳された、その意味は、と考えるべき所ですね。そうすると、

 

 ずっとむねに、

 だきしめ、

 

次の行に進みます。

 

Leave all your lovers

 

「your lovers」、これは、「あなたの恋人たち」、この歌の本人からすると、ライバルたちです。「ライバル」という単語は原英語詩の中にないと言うのは、これまでも、この翻訳ノートで、度々目にする、あるあるですね。これでよいのです。

 

 ライバルたちは、

 

Weepin' on a far away shore

 

Weepin' (Weeping)泣いている

 

 とおくのはまでないている

 

好きな子を独り占めの出来ている余裕ですね。

 

ここまで、この曲の最初のコーラス区切りになります。

 

そして、場面は進み、

 

Out on the briny

 

briny 海

 

「Out」も、必ずしも、「外に」と訳さなければいけないと言う事はありません。「向こうで」だったら、「out」でなくて、「beyond」とかでしょうとか、いう人が居そうですが。

 

 うみの向こうで、

 

With the moon big and shiny

 

 つきはおおきくかがやき、

 

そして、次の行、

 

Melting your heart of stone

 

Melting 溶かす

 

あなたの、石のように固く、冷たい心を溶かす、のです。月の輝きがそうさせるのですね。以下、訳では、「石の」は省きました。溶けるぐらいなので、その前は、想像が付きます。溶けるのは、金属か、固い物、石ですね、「溶ける」と言った時に、それは、分かってるんです。

 

 あなたのこころもとける、

 

そして、

 

Honey i'd love to get you

 

Honey (※呼びかけの語です)蜂蜜、愛する人、かわいい人

i'd ※i would (仮定法での言い方)..するだろう ..なるだろう

 

「Honey」という呼び掛け語は、日本語では、訳し様はないですね。訳語は省きます。そして、「i'd...」は、あなたを自分のものにしたくなるはず、という気持ちです。その気持ちは、もう、ここまでに十分表現されていますから、それは、頭の中の余韻として残したままで、単に、ここでの事実的状況を言うだけにします。聴いてる人には分かってるはずです。なので、こうです。

 

 あなたといく、

 

On a slow boat to china

 

ゆっくり進む船、ゆっくりなのか、長い航海なので、ゆっくりに思うのか、とにかく、中国に向います、アメリカから。それは、近代的な客船かも知れませんが、ゆっくり進む気分は、手漕ぎの、公園の池のボートと変わらないのです。自動翻訳をチェックすると、

 

⇒中国への遅いボートで

 

もっと軽い訳でよいのです。「ボート」、それに、「チャイナ」とします。「チャ」の音で、いわゆる、チャラい感じが出て、それで、この歌に合うのでしょう。そして、「ボート」で、ゆっくり進む感じが伝わりました。「slow」(ゆっくり、遅い)が省略できます。

 

 ボートでチャイナ、

 

All by myself alone

 

by myself  自分で、独力で

 

「All」は、何でも、とにかく、という強調の語らしいですね。「alone」も、わざわざ付けて、自分の一人の頑張りを言いたいようです。それは、もちろん、他の人に取られたくない、渡したくないのです。だから、

 

 だれにもわたさず、

 

ここでも、「わたさず」に当たる英語の動詞はないのに、とか指摘されそうですが、それは枝葉末節、訳に於いては、歌われている事柄が大事だ、と言う事です。

 

ところで、余談ですが、この行「by myself」は、「to myself」となっている場合もあります。「by myself」と「to myself」は、同じ訳文「だれにもわたさず」になりました。ちょっと、気にはなりますが。

 

これで、この歌のフルコーラスが完了しました。この後、器楽演奏を挟んで、別の歌詞で、もう一度歌います。実際の演奏では、この最初のフルコーラス、言わば、この歌の1番だけで演奏を終わる事が多いようです。2番の歌詞も、歌い甲斐のある航海の途中が、面白く聴くことができます。

 

(instrumental)

 

最初の3行は、前にありますね。同じです。

 

I'd love to get you
 あなたといく、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All to myself alone
 だれにもわたさず、

 

この航海は、穏やかな楽しいだけのものではありません。厳しく、危うく難破しそうな程なのです。でも、それを乗り越えて行く、ハッピーエンドは期待されるのですが。

 

A twist in the rudder

 

twist ねじれ,ひねり、もつれ

rudder 船の梶
 

 かじはゆがみ、

 

そして、

 

And a rip in the sails

 

rip 引き裂き.、裂け目、ほころび

sails 船の帆
 

 セイルもすこしさけて、

 

「a rip」と、1つのと言う事なので、「少し」にしました。

 

そして、


Driftin' and dreamin'

 

Driftin'  (Drifting)漂う、漂流する

dreamin' (dreaming)夢を見る

 

 ただよい、ゆめをみる

 

Honey throw the compass over the rail

 

また、「Honey」と呼び掛けています。訳には表せません。

 

compass 羅針盤、磁石、コンパス

rail 横木、横げた、レール、手すり

 

船の甲板でその向こうは海となる、横木、手すりを越えて、コンパスを投げてしまうのです。船が激しい揺れに耐えられず、羅針盤の道具も、もう役に立たず、無用になったのか、前の行で、「漂流」などと言っていますから、船から放りだされたのかも知れません。コンパスも、投げたと言うよりは、船から、飛び出て行ったようです。

 

 コンパスもうみになげる

 

この2番目の歌詞の半コーラスの区切りです。どうやら状況は、漂流して、どこかの無人島にでも着いたのでしょうか。本人たちは、それでも、この航海の目的を忘れず、何も損なわれることもなくて、至って平気なのです。

 

というわけで、歌詞2番の後半になります。

 

Out on the ocean
 うみのかなた、

 

「彼方」でいいでしょう。


Far from all the commotion

 

commotion 興奮、騒動
 

 どんなさわぎもとおく、

 

「all」だから「すべての」ですが、「どんな」にしました。「どんな」なら「any」でしょうという人が居ると思いますが、これでいいんです。

 

次の行は、同じ表現が、前にもありました。

 

Melting your heart of stone

 あなたのこころもとける、

 

以下、前にあった行の繰り返しですが、この3行の最初の行の訳は変えて、「あなたといく」ではなくて、「だいすきなあなたと」にしました。これは、「Honey」の呼びかけの気持ちを、「だいすきな」にして表したのと、その言葉が入った分、文字数が余ってしまうので、「あなたといく」の「いく」を削りました。「行く」のは、もう何回も繰り返されていて、聴く人は分かっています。


Honey i'd love to get you
 だいすきなあなたと、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All to myself alone
 だれにもわたさず、


Honey i'd love to get you
 だいすきなあなたと、
On a slow boat to china
 ボートでチャイナ、
All to myself alone
 だれにもわたさず、

 

-完-

 

(余白残興)

 2022.4.15記:

 

1948年、戦争も終わって、ゆっくりと、楽しい気持ちがいっぱいの歌ですね。この歌は、男女のデュエットで歌われ、その中で、適当な掛け合いの、言葉のやり取りを楽しむような曲でもあるようです。ベットミドラー(Bette Midler)とバリマニロー(Barry Manilow)のストリート演奏バージョンは、間違いなく、楽しいですね。

 

YouTubeを拾っておきます。

 

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