☆BTE 2022-1-27記
Shine on Harvest Moon:

 

この歌は、1908年だそうです(Wikipediaから、以下同。)。当時のアメリカのボードビルショーで歌われ、ティンパンアレイの曲で、ブロードウェイのジーグフリートフォリーズでデビュしました。

 

へ~っ、ですね。これを川畑が歌ったのは、正に、当時の歌の王道を行く歌唱だったのでしょう。日本語のその時の歌詞も、歌の雰囲気はよく伝えているようです。何を意図して歌っているのか分からないような歌ですが、たぶん、とても、懐かしい歌であるようです。我が国の、平安時代の和歌なども、大体は、何を意図して歌っているのか分からないようなものですが、今の自分達の古い記憶の中に、何かある感じがする、そんな名曲であるようです。

 

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Shine on Harvest Moon (1908)
Written by: JACK NORWORTH, NORA BAYES


「Shine on Harvest Moon」英語詩:

曲名:かがやけあきのつき

美艇香津 訳詩

 

[verse]
The night was mighty dark so you could hardly see,
 よるはまっくら、なにもみえない
For the moon refused to shine. 
 つきはかがやくのをやめて
Couple sitting underneath a willow tree,  
 ふたりがすわる、やなぎのした
For love they did pine,  
 あいをねがい

 

Little maid was kinda 'fraid of darkness 
 おんなのこは、すこしこわくて
So she said, "I guess I'll go."
 「いくわね」といった
Boy began to sigh, looked up at the sky,  
 おとこのこはためいき、みあげるそら
Told the moon his little tale of woe:  
 つきにはなしかける、かなしみ

 

[chorus]
"oh, shine on, shine on harvest moon up in the sky.
 お、あきのつきはそらにかがやく
I ain't had no lovin' since January, February, June or July
 あいはない、いちがつ、にがつ、ろくがつ、しちがつ

Snowtime ain't no time to stay outdoors and spoon,  
 ゆきならば、そとでよりそえもせず
So shine on, shine on harvest moon - for me and my gal !"  
 だから、かがやくあきのつき、じぶんとあのこに

 

"oh, shine on, shine on harvest moon up in the sky.  
 だから、あきのつきは、そらにかがやく
I ain't had no lovin' since January, February, June or July  
 あいはない、いちがつ、にがつ、ろくがつ、しちがつ

Snowtime ain't no time to stay outdoors and spoon  
 ゆきならば、そとでよりそえもせず
So shine on, shine on harvest moon - for me and my gal !" 
 だから、かがやくあきのつき、じぶんとあのこに

 

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さっそく、見て行きましょう。

 

まず、曲名ですが、

 

Shine on Harvest Moon

 

Harvest Moon  ※(収穫月)秋の初めごろの満月

 

「まんげつ」、「しゅうかくのつき」とかまで言う必要はないですね。なぜかと言われても、困りますが、特に、「まんげつ」と言ってしまうと、何か、月らしくなくなって、記号化します、なぜでしょう。曲名なので、どんな月かは、歌を聴いて、考えて、という事です。我々にも、普通に分かる月の風情が感じられます。「Harvest Moon」は、「秋の月」という訳で精一杯ですね。だから、

 

「かがやけあきのつき」としました。

 

[verse]
The night was mighty dark so you could hardly see,

 

mighty 強力な、すばらしい、非常な

 

「mighty dark」は、「まっくら」ですね。

 

you could hardly see」を、自動翻訳すると、

 

⇒あなたはほとんど見ることができなかった

 

「ほとんど」とは言っているのですが、ここは、「何も」という事にしてしまいます。どうして、「ほとんど」と言っているのに、全否定するのかと言われても、困りますね。その時の感じ方は、それで、同じ事だから、というので答えになっているでしょうか。だから、

 

 よるはまっくら、なにもみえない

 

そして、次の行に行きます。


For the moon refused to shine. 

 

refused 断られる、拒否した

 

「refused」は、強い、明確な否定の言葉ですが、訳は、単に、「やめて」と、状況を説明するだけです。なので、

 

 つきはかがやくのをやめて

 

どうして、その強い拒否に踏み込んだ訳が出来ないのかと不満が出そうですが、その程度にして置いてよいのだと思います。あまり、単語に踏み込み過ぎると、「木を見て森を見ず」の訳なります、などと言って置きましょう。

 

ここの「For」は、前の行で言う、「まっくら」な理由を言っている、という事でしょうか。

 

そして、この歌の主役が舞台に姿を現します。

 

Couple sitting underneath a willow tree,  
 

Couple (いわゆる)カップル

willow 柳

 

「カップルがすわる」と言うと、分かりますが、やはり、「カップル」って何だっけと言う所から始まるのが、我々なので、ここは、「ふたり」でよいですね。

 

 ふたりがすわる、やなぎのした

 

For love they did pine,  
 

「名詞」pine 松

「動詞」pine for 思い焦がれる

 

これは、英語のテストに出てもよいですね。しかも、構文が、少し捻ってあって、本来は「they did pine For love 」と見てよいですね。だから、主語は、容赦なく省いて、

 

 あいをねがい

 

歌は、その次の段に入ります。物語が、少し、進むのです。

 

Little maid was kinda 'fraid of darkness 

 

maid 少女

kinda 《口語》kindof ある程度は、少し

'fraid →afraid

 

メイドではなくて、普通の女の子です。真っ暗で、怖い気持ちがするのです。だから、


 おんなのこは、すこしこわくて

 

So she said, "I guess I'll go."
 

guess 推測[推量・推定]する

 

「I guess I'll go」を自動翻訳で見ると、

 

⇒私は行くと思います

 

どれはそうですが、実際は、どう言うかですね。「おんなのこ」ですから、いろいろ考えて、こんな所かなというのはありますね。日本語ネイティブの感覚が必要になります。「guess」の所を、無理に訳出しなくてもいいでしょう。その言葉に、その意味合いも含まれていますから。

 

 「いくわね」といった

 

そして、女の子は去り、男の子は、後に、一人、残されました。

 

Boy began to sigh, looked up at the sky,  

 

sigh ため息

 

この通りですね。主語(Boy)、述語(began、looked up)を、その通りに、文法的に訳すのではなく、体言止めに訳しました。歌なので。歌だと、どうして、そういう訳でよいのかというのは、訳の基本的な問題ですね。丁度よい問題例なので、各自、考えてみましょう。学問的な課題で、答えは、長い論文になりそうです。ということで、

 

 おとこのこはためいき、みあげるそら

 

そして、月に話しかけるのです。


Told the moon his little tale of woe:  

 

woe 災い、苦難

 

自分の気持ち、それは、「苦しみ」と言うよりは、「悲しみ」でしょうか。だから、


 つきにはなしかける、かなしみ

 

これで、歌の説明を、し終わりました。

 

この後は、それで、今の自分を歌います。

 

[chorus]
"oh, shine on, shine on harvest moon up in the sky.

 

動詞で始まる文ですが、命令文というよりは、今の、自分を取り巻く状況を、教えて呉れているのです。もう月は、満月で、空に輝いています。だから、

 

 お、あきのつきはそらにかがやく

 

I ain't had no lovin' since January, February, June or July

 

ain't 【省略形】= am not、aren't、isn't、hasn't、haven't

since 以来

 

あれから、去年の秋から、時は過ぎて、今は、年も改まり、1月から7月までが、もう過ぎた様です。その間、あの女の子と会う機会はなかったようです。

 

 あいはない、いちがつ、にがつ、ろくがつ、しちがつ

 

その間の事を、また、思い返します。どうして、会えなかったんだろうと、その理由を、勝手に、自分で作ります。

 

Snowtime ain't no time to stay outdoors and spoon,  

 

spoon 《口語》人を愛していることを態度に表す、いちゃつく 

 

自動翻訳では、まだ、あの「スプーン」としか出て来ません。

 

戸外で仲よくする様子ですが、それは、雪の降る寒い時には無理だよねと、自分で自分を納得させる理由を考えます。でもそれは、雪の季節が終わっても、ずっとそのままでした。ちょっと、自分が可哀想ですね。

 

「雪の季節には、外でいちゃついている時間はない」という事ですが、やはり、この状況を説明し、言い切る表現を、音符に合わせて、短く、見つけなければなりません。なので、こうなりました。

 

 ゆきならば、そとでよりそえもせず

 

そうだよね。それが、当たり前で、だから、今、雪の季節は終わり、去年の秋の季節が巡って来て、叫びたい気持ちでしょうか。

 

So shine on, shine on harvest moon - for me and my gal !"  

 

秋の月が輝いていて、それは、自分とあの子のために輝いているんだよね、と思いたいですね。まだ、会えていない様ですが、お月様に、お願いしたくなります。

 

 だから、かがやくあきのつき、じぶんとあのこに

 

"oh, shine on, shine on harvest moon up in the sky.  

 

この行は、前にあった行と同じです。同じ言葉を繰り返しますが、それは、強調したいという事でもあるので、訳では、「だから」などと、その気持ちの思い入れを表しました。

 

 だから、あきのつきは、そらにかがやく

 

そして、この後の行も、同じ、繰り返しになります。

 

I ain't had no lovin' since January, February, June or July  
 あいはない、いちがつ、にがつ、ろくがつ、しちがつ

Snowtime ain't no time to stay outdoors and spoon  
 ゆきならば、そとでよりそえもせず
So shine on, shine on harvest moon - for me and my gal !" 
 だから、かがやくあきのつき、じぶんとあのこに

 

-完-

 

(余白残興)

 2022.1.27記:

 

今は、もう、聞き慣れない曲です。これを、何気なく、うまく歌えたらすごいですね。川畑文子は、この歌の歴史を知ってか知らずか、のびのびと歌っていますね。その日本語詩の曲名が「三日月娘」というのは、ご愛嬌ですね。

 

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