チタン好きですか。私、チタン大好きです。チタンの比重は鉄の55%、強度は鉄の2倍、耐蝕性では白金に匹敵する。そして色が渋い。

 

最近、チタン流行りである。自分の身の回りの話題も、ブロンプトンのフルチタンモデル、スノーピークのチタン製キャンプ用品、チタンベゼルのガーミンスマートウォッチ「フェニックスシリーズ」などなど。

 

 

キーワードはいずれも、「超軽量」と「耐久性」だ。素材として、鉄やアルミや合成樹脂に置き換えてしまえば、地球環境問題のソリューションとして大いに役立ちそうである。問題は「高い」だ。今後、チタンがステンレスやアルミのような手ごろな価格で使えるようになると、結構世界がかわると思う。

 

チタンは、軽くて高強度なだけでなく、抜群の耐蝕性を有する金属の代表格であるが、これはチタンそのものに耐蝕性があるわけでなく、表面に生成される酸化物が緻密で化学(ばけがく)的に不活性、即ち腐食しにくいためである。ステンレスの原理と同じ。また、融点も鉄並みに高く、そう簡単に溶解しない。


チタンはレアメタルの代表格の一つといわれることが多いが、実は地球の地殻中に存在する元素の量としては9番目に多い。広く普及しているベースメタルの銅や鉛や、ステンレスの素材である亜鉛、ニッケル、クロムと比べて、桁違いに埋蔵量が多いと知ったら驚かれる方も多いのではないか。全然レアじゃない。(地殻中の元素賦存ランキングは1.酸素、2.ケイ素、3.アルミニウム、4.鉄、5.カルシウム、6.ナトリウム、7.カリウム、8.マグネシウム、9.チタン、10.水素の順。)

賦存量が多いのになぜ「レア」なメタルなのか。理由は、チタンという金属が化学的に活性なため、精錬が難しく、純度の高い金属を製造するのが技術的に困難なためである。

 

チタンの発見は今から230年以上前と結構古い。チタンは資源的にはルチル鉱石(酸化チタン)やイルメナイト鉱石(FeTiO3)などの化学的に極めて安定的なチタン酸化物の状態で自然の中に存在する。ただ、チタンは酸化還元が難しく、圧延できる高純度のモノが得られたのはわずか110年前の1910年だ。そして工業的に生産されるようになったのは1945年。しかし、価格は非常に高く、米国の航空機需要を中心とした特殊用途が需要の大半を占める時代が長く続いた。


日本は、世界のチタン生産量で3割のシェアを持つ。高い技術力と生産ノウハウの蓄積によるものだ。製造技術の進歩とともにコストダウンが図られ、近年、チタンの需要が急増している。身近な民生品への利用が徐々に広がり、この10年で、航空機以外の用途が急速に伸びているのだ。変わった用途としては、日本の神社・仏閣など伝統美の世界で意匠性チタンが注目されて需要を伸ばしていることだ。例えば、増上寺の改修工事では大殿の屋根瓦に採用された。屋根の葺き替えに、本瓦に替えてチタン瓦を約6万枚使用したという。本瓦だと約500トンもの重量がチタン瓦に置き換えることでわずか10分の1となり、耐久性に加えて耐震性も高めることができたのだという。

 

が、相変わらず価格は高い。還元剤として金属マグネシウムを使用する「マグネシウム還元法」という方式(数十年間まったく変わっていない)では効率的な量産が難しい。

 

(出所:一般社団法人日本チタン協会)

 

 

おまけに、先のブロンプトンTライン記事でもふれたが加工も難しい。金属の中でも硬くて伸びにくいのだ(鉄やアルミは伸びやすく曲げやすい)。

 

 

また、高温で酸化・窒化しやすい。酸化・窒化してしまうと非常に脆く、耐蝕性も悪くなるので、溶接中には大気に触れないようにしなければならない。チタンの「レア度」に加えて加工コストの高さが値段を押し上げている。

 

まずはチタン地金の価格が下がらないとどうしようもない。新しい製造技術の出現が期待される。ただ、チタンの製造には膨大なエネルギーが必要となるので、日本にとってはこれも一つのハードルだ。日本が、今後もチタン生産大国としてやっていくためには新しい製造技術を世界に先んじて開発し、且つ、エネルギーコストを抑えて競争力を維持していく必要がある。

 

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最後にもう一つのキーワード、「抗菌・抗ウイルス効果」についても触れておこう。

 

酸化チタンには光触媒分解反応という作用がある。酸化チタンが触媒となって太陽または蛍光灯等から照射される短波長の光(紫外線)エネルギ ーを吸収して起こる反応だ。387 nmより短波長の光を受けると、水と反応して活性酸素を生成する性質があるのだ。活性酸素種は非常に強い酸化力をもつため、有機物(細菌・ウイルス)は二酸化炭素と水に分解される。理屈の上では、光を当てるだけで除菌・脱臭・ウイルス除去できることになる。従って、人が接触しがちのドアノブやスイッチ類、カトラリー、或いは壁面や床材などをチタンにしておけば、紫外線ライトを当てるだけでウイルス対策に有効だということになる。

 

ということは、フルチタン・ブロンプトンは、お天気の日にお外をポタリングするだけで、抗菌抗ウイルス作業が完了ということになる?いいね。

 

チタン、もしかしたら人類の救世主となるマテリアルかもしれないデス。

 

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