【Vol.2】直前期は"記憶"重視で! | 合格への道のり("3つの道"編)

合格への道のり("3つの道"編)

これまで宅地建物取引士試験、行政書士試験、司法書士試験、海事代理士試験及びマンション管理士試験に一発合格しました。2022年からは受験生、実務家(士業)及び講師の3つの道を歩みますので、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m。

今年もそろそろ行政書士試験の直前期(本試験前3ヶ月間)に突入しようとしていますね。

私も2019年に初受験し、無事一発合格することができましたが、受験勉強の開始が同年3月と非常に遅く、直前期はあってないようなものでした。実際、10月に入っても受験指導校の基幹講座を受講していました。

2015年に宅地建物取引士試験を受験したので民法だけは少し勉強していましたが、約4年のブランクがあり、しかも行政法や憲法、商法・会社法を学ぶのは実質的に初めてだったので本試験開始ギリギリまで四苦八苦の状況💦💦

その時の反省から、司法書士試験では直前期として約5ヶ月(2月上旬〜7月上旬)をとり、5つのフェーズに分けてしっかり直前期学習に取り組みました。
【直前期学習の5フェーズ】
・2月13日〜28日:プレ直前期フェーズ
・3月1日〜31日:第1フェーズ
・4月1日〜30日:第2フェーズ
・5月1日〜20日:第3フェーズ
・5月21日〜6月10日:第4フェーズ
・6月11日〜25日:第5フェーズ
・6月26日〜7月2日:総仕上げフェーズ
 ※プレ直前期フェーズは主要4科目のみ

このような両極端な経験を踏まえ、前回の記事「短期合格の極意」に続き、今回は直前期で最も重要な"記憶"について私の記憶法をまとめておきたいと思います。
▼前回記事「短期合格の極意」はこちら

※前回の記事で資格試験における短期合格の秘訣は以下の3つに尽きると書きましたが、今回取り上げる"記憶術"は一定の方法論(勉強法)に関するものです。

・一定の方法論(勉強法)

・受験耐力(体力・精神力)

・モチベーション

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直前期は、言うまでもなく、これまで①理解⇨②集約した知識を③記憶するフェーズ。行政書士試験では、主要科目の民法&行政法に加えて、憲法や商法・会社法、基礎法学などのマイナー科目も曖昧だった知識を一気に盤石な知識へと仕上げていく時期です。

同じく、司法書士試験についても、主要4科目はもとより、7科目もあるマイナー科目を繰り返し学習して、記憶を定着させる時期です。


直前期と言えば、どうしても模擬試験や答練などのアウトプットを連想しますが、寧ろインプット(記憶)の方が重要。ただ、悲しいかな、記憶という単純作業には①理解フェーズのような学習の達成感や充実感を得にくく、退屈で苦手としている受験生が多いのが実情だと思います(かく言う私も記憶は最も苦手でした)。

受験指導校の講師は「◯◯を暗記して」と良く仰いますが、受験生の実情として「そんなこと言われても・・・」という心の叫びが聞こえてきそうです。

そして、通常は受験指導校のカリキュラムで最後に学習する会社法はほんの数回の講義を受講した後、過去問演習に絞り、過去問を繰り返し解いて知識を断片的に仕入れるだけで、基本知識さえも歯抜け状態で本試験に挑む受験生も多いです。

平成18年に会社法が施行されてまだ16年。行政書士試験において、4題/年では過去問で全ての論点が出題され尽くしておらず、また会社法は法改正も頻繁にあるので、歯抜けになるのは当然といえば当然です(この点、TAC・姫野寛之先生は司法書士試験においても会社法の過去問を"解く"意義はあまりないと仰っていました)。

そんなわけで、今回は(行政書士試験の)受験生が苦手とする「会社法」を題材として、受験勉強における記憶の重要性についてまとめてみます。

結論的には、会社法攻略のポイントは、
1.フレームワークの理解
2.記憶にあります。

1.フレームワークの理解
行政書士試験では、受験指導校のカリキュラムは民法⇨憲法⇨行政法と進んで最後に商法・会社法を学習するパターンが多いので、商法・会社法の学習は直前期付近になります。

そのため、本試験が迫ってきて気持ちに焦りが生じ、会社法の構造や概要、すなわちフレームワークの理解なしにいきなり細かな知識の詰め込みに走る受験生が多いのではないでしょうか。

知識を理解⇨記憶するには、森から木、木から枝、枝から葉へとフローさせていくことが常套手段です。ところが、森や木の知識をすっ飛ばしていきなり枝や葉の知識を記憶しても脳内で(森や木に該当する)知識の骨格が整理できておらず、それら骨格の引き出しに枝・葉の知識を収納することができないので、他の短期記憶と同様にすぐに忘れます。


しかも、会社法は民法と同様、条文数も多く知識量も膨大です。学習当初から枝や葉の断片的知識の記憶、記憶、記憶・・・の連続では、長期記憶化することなど到底できません。


私は、この現象こそが受験生の会社法に対する苦手意識を醸成している要因の1つになっていると考えています。


そのため、まずは会社法の骨格を理解すべく、学習初期の段階(受験指導校のカリキュラムでは民法の学習段階が理想)で会社法の入門書を読んでおくのが効果的です。


あるいは、受験指導校の基幹講座(ex.伊藤塾の司法書士試験対策入門講座)の中には、初期の段階で体系編として会社法のフレームワークを学習できるものもありますが、その重要性を理解していないと受講する意義が半減します。


なお、入門書に関しては、例えば以下が私のお奨めです。

▼会社法の入門書


私は行政書士試験を受験する際、民法の学習と併せて上記入門書の内、私は最初に会社法の泰斗・神田秀樹先生の著書を読みました。神田秀樹先生の入門書には、本書の他に「会社法入門新版(岩波新書)」がありますが、本書の方がマンガや図解でわかりやすくイメージしやすかったです。


また、入門書を通読する時期としては、受験指導校の基幹講座を受講する場合、1番最初に開講する科目(通常は民法)の学習中は当該科目の復習のみに専念すれば良く他科目の復習もないので比較的時間がとれます。あるいは、勉強時間を長時間確保できるGW期間やお盆期間(夏休み)などの長期連休を利用しても良いと思います。


ちなみに、司法書士試験の受験時は上記に加えて、以下の入門書を通読しました。


ところで、フレームワークといっても、会社法を貫く骨格(視点)は、
・対内的には、株主保護の視点
・対外的には、債権者保護の視点に尽きます。

その手段として、会社法はコーポレートガバナンスの仕組みや資本金制度、債権者保護手続などを採用しているわけですから、過去問未出の問題が出題された場合、上記フレームワークを抑えておけば、正解を導くことも可能な問題が少なからず存在します。

(参考知識)
会社法制度の泰斗・鈴木竹雄先生はその著書の中で、株式会社の本質は「株式」「有限責任」とその反射としての「資本」であると述べていますが、鈴木竹雄先生の株式会社像は、一般大衆から少額かつ多数の資本を結集して巨額の資本に転換し、設立・運営する"公開・大会社"でした。

ところが、株式会社の多数を中小零細企業(非公開・非大会社)が占める現在、その制度設計は随所で変容してきており、会社法の成立でそれは決定的になりました。

一例として、出資者の投下資本の回収手段として株式譲渡自由の原則を挙げることができますが、鈴木竹雄先生の意に反し、非公開会社が大半を占めることから譲渡制限株式(株式譲渡自由)が主流です。


2.記憶
新しい情報が脳に保存され、その情報が再生されることを記憶と言います。新しい情報が重要ではない場合、一時的には覚えているものの、すぐ消去されます。例えば、朝の通勤時などに見た景色やすれ違った人は一時的には脳が記憶しますが、次々と新しい情報を記憶する過程で塗り替えられていき、その日の夜には消えています。

一方、重要な情報の場合は、一時的に保存された後に長期間保存され、必要に応じて思い出す(想起する)ことができます。

このように記憶には①長期記憶と②短期記憶がありますが、受験においてはその使い分けが重要です。


①長期記憶

直前期は"記憶"が重要と書きましたが、実は学習初期の段階から記憶し始めて漸次定着させていく、すなわち長期記憶化しておくべき重要知識があります。


それは会社法に限りませんが、会社法で言えば、長期記憶化しておくべき重要知識は、会社設立の流れ、株式の内容と種類、募集株式の発行手続の流れ、機関設計のルール、株主総会及び取締役会の決議要件など、手続や制度の骨格です。


ちなみに、不動産登記法であれば根抵当権の元本確定事由、商業登記法であれば会社法911条などの登記事項、民事訴訟法であれば弁論主義(第1テーゼ・第2テーゼ・第3テーゼ)などです。

※民法は多数あるので割愛しますが、Aランクの論点が該当します。


元裁判官・和田吉弘先生や伊藤塾・山村拓也先生は、これらをお酒を飲んで酔っ払っても言えるレベルまで仕上げておく必要があると仰っていました。極端な例えかもしれませんが、私はブログに記憶すべき事項をまとめて隙間時間などに記憶し、直前期に突入するまでに完璧に記憶しました。


長期記憶化すべき知識が定着しておらず、これらを混在させて直前期にまとめて詰め込むと脳がオーバーフローします。そして、会社法に嫌気がさして勉強から遠ざかってしまい、最終的には捨て問にする受験生が多いのが実情です。


なお、長期記憶化する技術については、受験生によって好みがありますので、学習初期の段階から色々試した方が良いです。私は講義の該当部分を繰り返し聴いたり、テキストを音読しました。



②短期記憶

私は司法書士試験の直前期はインプット9:アウトプット1の割合で学習しました。そして、インプットの大半は記憶の作業に費やしました。

具体には、既述の通り直前期を5つのフェーズに分けて、1フェーズ=全科目1周、すなわち全科目5周して知識を定着させました。

また、アウトプットも過去問や答練、模擬試験の問題を何度も解くのではなく、一度解いた(過去問の場合には一度読んだ)後、記憶用ツール※にマーカー、あるいは重要知識を追加した上で、何度も繰り返し記憶しました。
※記憶用ツールとして、私は行政書士試験の受験時はリーダーズ総合研究所の「総整理ノート」を、司法書士試験の受験時は伊藤塾の「択一クイックマスター総整理講座」テキストを活用しています。
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当然ですが、試験中は受験指導校のテキストや参考書などは閲覧できず、また講師も助言してくれません。頼れるのは自分自身の能力(記憶した知識、解法スキル、模擬試験や答練で培った時間配分など)だけです。

したがって、本試験当日には強固な知識で脳内が満たされた自分を試験会場まで連れて行く必要があります。

厳しいようですが、「忘れたらテキストを読めばいいや」という緩い学習態度では何年経っても合格することはできません。直前期は"脱・テキスト"の強い意識が必要です。

ところで、会社法は枝・葉の知識を一気に詰め込むことは可能ですが、その反面、折角記憶した知識を忘れやすいです(その点で行政法に似ています)。

過去問を解いても条文知識を問う問題が多く、民法と異なって事例問題が皆無ですので、エピソード記憶も使いづらいし、何より条文知識は無機的で楽しくない。

でも、忘れることを決して怖がってはいけません。それはどの受験生も同じコンディションなので、しっかり対策すれば良いだけです。

具体には、繰り返し記憶するのが最善だし、最も近道だと思います(既述の通り、メモ帳に書いたり講義を再聴したりと繰り返し方は受験生によって区々なので、各自で試して下さい)。

また、記憶が苦手な受験生の傾向として、過去問や答練、模擬試験の問題の肢レベルでの知識を片っ端から短期暗記していきます。

だから、記憶の曖昧な知識が多くなって本試験では使いものになりません。各肢の知識の重要性(出題ランク)も考慮せず、どんどん知識を詰め込んでいき、脳がオーバーフローした結果です。

逆に、合格者の多くは長期記憶と短期記憶を使い分け、かつ、短期記憶すべき知識もテキストの(まとめ図表の)知識のみに絞って完璧に記憶します。脳の記憶容量は有限なので、効率的な記憶が必要だし、直前期は余分な枝・葉の知識を拾う(記憶する)よりも、思い切って捨てる勇気が必要となります。




会社法は図表に整理しやすい科目ですので、テーマ毎に記憶の引き出しを作り、その引き出しの中に重要知識を整理していく。この手法は山田斉明先生が提案されているものですが、例えば、株主総会決議における特別決議、3項特殊決議の要件は?



・・・と問われた場合、瞬時に頭の中にある株主総会の引き出しを開け、その引き出しの中から決議要件に関する知識を想起して回答できない受験生は今からでも会社法の学習に力を入れるべきです(まだ全然間に合います)。

Ans.

・特別決議:行使可能議決権の過半数出席、出席株主の議決権の3分の2以上

・3項特殊決議:議決権行使可能株主の半数以上、かつ、行使可能議決権の3分の2以上(定足数要件はなし)

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なお、行政書士試験では、会社法は①設立、②株式、③機関から概ね3問出題されていますので、会社法の勉強が遅れている、あるいは全く勉強していない受験生は今からこれらの3分野だけでも学習しておくべきだと思います。

あとは令和元年度改正関連として、受験生には手薄な④社債を挙げることができます。社債管理補助者制度が新設されたのが重要で、社債管理者制度との比較問題が出題されるかもしれません。

近年は憲法が難化(奇問化)傾向にありますので、比較的問題が平易な会社法を捨て問にするのは決して得策ではありませんので、これからでも会社法の勉強に取り組みましょう。

私はリーダーズ総合研究所で基幹講座を受講し、2019年に行政書士試験を受験した際、これら3分野+商法を中心に学習し、4問正解(/全5問)でした(しかも、会社法の学習を始めたのは8月中旬くらいでした)。

また、今年受験した司法書士試験では8問正解(/全9問)でしたので、山田斉明先生から学んだ既述の記憶術は正しい方法論だったと確信しています。

実務では、寧ろ知らない法律に接することの方が圧倒的多数なわけですが、会社法の学習を通じて身につけたスキルは他の法律を学ぶ際にも応用できると考えています。

(リーダーズ総合研究所の取組み)
学習法の師匠・山田斉明先生は認知心理学や脳科学、NLPの観点から、受験に求められる記憶術について科学的に研究されています。そして、その成果を講義に活かされています。

他の受験指導校では教えてくれないスキルなので、早期に記憶術を身につけたい、あるいは記憶する方法がわからない受験生は山田斉明先生の講義を受講することをお奨めします。

私は行政書士試験合格後の2021年にリーダーズゼミを受講し、本格的に司法書士試験の受験勉強を始める時に記憶術を含む勉強法を学び直しました(合格者のゼミ参加は初だったようです)。


以前、山田斉明先生がツイートされた認知心理学に関する書籍が積読状態ですので、私もこの機会に学習したいと思います。
▼山田斉明先生が紹介された書籍


また、リーダーズ総合研究所では、制度と制度の比較フレームワーク講座を臨時開講しており、学習の総仕上げとして知識を横断整理し、記憶のくさびを打ち込んで強固なものにすることができますので、行政書士試験の受験生以外にもお奨めの講座です。


今夏は会社法について臨時開講されるようですが、私は行政書士試験に合格後、民法について同様の講座を受講しました。


(司法書士試験での特記するべき成果)
司法書士試験では、既述の通り直前期を5つのフェーズに分けて学習に取り組みましたが、上記の記憶を重視した学習により、商法・会社法以外ではマイナー7科目で威力を発揮しました。

すなわち、司法書士試験では、マイナー7科目は午前の部で6問、午後の部で11問出題されますが、15問正解できました(不正解だったのは、正答率の低かった午前の部:第25問【刑法】、午後の部:第2問【民事訴訟法】の2問のみ)。

(答練や模擬試験で重視すべきもの)
答練や模擬試験を受験して、重要視して欲しいのは"テーマ"です。各受験指導校が過去の出題実績やトレンド、政策などを考慮して出題しているので信頼性は高いです(答練や模擬試験は出題予想を兼ねています)。

したがって、本試験の1〜2週間前は、答練や模擬試験で出題された各テーマの"記憶の引き出し"を開けて再点検した方が良いです(私も司法書士試験の超直前【総仕上げフェーズ】では、同様の作業をしました)


一方、各肢の知識(キーワード)にも重要な知識は含まれていますので復習は必要ですが、中には点数調整のために出題したと思われる超マイナー知識(テキストにも記載のない規則レベルの枝・葉の知識)もあります。

直前期はこうした知識を上手く排除することが重要です。特に、受験回数の多い受験生はこうした奇問に飛びつきがちですので注意して下さい。重要なのは、基本知識を完璧に記憶することです。

なお、山田斉明先生は、「過去問は、記憶用ツールではないので、過去問の肢を記憶していくのは、記憶の視点からみると非効率」「特に、❌肢は、脳が混乱するので、なるべく見ない方が」賢明だとツイートされています(私も全く同意見です)。

(語呂合わせの活用)
記憶の最終手段として、私は語呂合わせも活用しました。その一部を別の記事としてUPしていますので、もしよろしければ参考にしてみて下さい。現在、勉強の進捗に合わせて増量中です。

なお、受験指導校の講師は語呂合わせを教えてくれません。某講師曰く、講義中に語呂を発言するのは恥ずかしいそうです。