パナソニックは2025年3月期の純利益が3,000億円超の見込みであるにもかかわらず、国内外で1万人規模の人員削減を発表し、国内では早期退職を募集しています。これは「将来の持続的な成長」と「競争力強化」を目指すための経営構造改革の一環とされています。
日本の大企業で、黒字でも早期退職を募っているのはパナソニックだけではありません。三菱電機、オムロン、資生堂、コニカミノルタも同様に数千人規模の早期退職を募集しました。
これらのニュースを見ていて、大企業の経営者は大変だなとか、仕方ないのかなとも思いましたが、もし自分がその企業で働いていたとしたらと考えると、絶対に納得いかないだろうなと思いました。
自分が就職をした時代は俗にいう就職氷河期の直前で、これらの大企業に就職が決まると「良いところに就職出来ていいね、将来は安心安定だね」なんて言われたものでした。しかし、今の自分の年齢は完全にリストラ対象です。家のローンや子供の教育費もまだまだかかります。親の介護もあります。
自分は中小企業の経営者として、人を大切にする経営学会で学んでいます。ここでの教えの一つは「最大の経営資源は人財である」と学んでいます。そしてそれは本当にそうです。いつの時代であってもそれは同じであるはずです。
もしパナソニック創業者の松下幸之助氏が存命であったら、経営者として同じ判断をしただろうか。恐らく違うのではないかな、いや絶対に違うだろうと思います。幸之助氏の経営哲学は「人を活かす」です。そして有名な逸話が残っています。それは1929年(昭和4年)の世界大恐慌時の対応です。
当時の松下電器は業績が急降し在庫があふれました。その際に幹部が人員の半減を進言したのに対し、幸之助氏は「一人といえども解雇したらあかん」と強く拒否しました。生産は半減して工場は半日操業とするが、給料は全額支給し、代わりに全社員が休日返上で在庫品の販売に当たらせるという策を指示し、見事に危機を乗り切りました。
幸之助氏にとって、社員は「宝」であり、会社の都合で簡単に採用したり解雇したりするのは、社員の不安を招き、「大をなそうとする松下としては、それは耐えられんことや」という考えでした。幸之助氏は「余剰人員が出たからといって、安易に首を切る経営者は失格」と考えていたのです。
幸之助氏は本当に素晴らしい経営者だったと思います。そして、「最大の経営資源は人財である」と言うのは大企業も中小企業も同じだと思います。人口減少による人手不足の日本において、日本の経営者としての姿勢とあり方を改めて考えさせられました。




