すかいうぉーかー -77ページ目

すかいうぉーかー

CRAZY=SPELL−BOUND

すかいうぉーかー-CA390684-0001-0001.JPG





「都民の森」駐車場に滑り込む

R1を停めて、降りた瞬間に膝に激痛が走る

膝が曲がり切らないので、サブミッションでもかけながら走ってるようなもんだ

まあ通常はそこまで曲げない程度のバンクしかしてないのだが






「タイヤ、端まで溶けてるじゃないですか(笑)」




単車くんに貰った時は、いかにもサーキットで使った感じに 端の方が焼けて虹色になっていた

それが1cm以上消えずに残っていたのだ






(いつ以来だろ。公道で端まで使ったの)


別に端まで使えばイイって物では無い
要は、何も無理せずに自然にそこまで寝かせていたのが今日の走りなのだ

今思い出しても、驚くぐらいスムーズな走りだった




びっこを引きながらトイレに歩く



缶コーヒーを買って、一服


「やっぱり、一緒に走る人の速度になるんですよ」




本当にそうだ
だが、速けりゃ良いってもんでは無い

彼だからこそ






そして

今日の俺の気持ちの盛り上がりは
決して“殺意”じゃなかった


彼の走りは、本当に美しい


コチラの角までが
削り取られて滑らかに研磨されて行くようだった





他人と走ってこんなに気持ち良かったのは、キーコ以来である








昨晩
つーか朝の五時まで走っていたという彼を気遣い
長居せずに奥多摩を後にする














(ありがとうございました)


中央道を降りて分かれた背中を見ながら




俺は心の中で、深々と頭を下げた




(了



 






「ゴウっ」






空気が鳴る


ギンギンに張った回転数
車体がたわみ、数100m先のコーナーが一瞬で眼前に迫る



「クンっ」と尻をアウトに振り
左コーナーに消えるCBR


目の端で追いながら
アウト側 中央車線の頂点にリヤを掠めてイン側のガードレールに跳び、広がった視界の遥か先に狙いを定め 一息に撃ち抜く


レーステックの強大なグリップに車重を乗せ
力を解放されたR1が喜びの声を上げる








(広い)




道幅がだ
決して、さっきまでより広がった訳じゃない


前に現れる車やバイクを次々にブチ抜き

たっぷりと時間をかけてアップされた感覚が、まだ行ける まだ行けるとマージンの存在をうったえる



さっきまでは彼が前走車を抜くと
一呼吸置いて俺が行っていた


今は同時だ

有り余る馬力で僅かな直線を猛然と加速し

車を抜いてラインに戻った時には
既に減速とバンクを同時にやっている



リズムを刻む
極上の



体が溶け バイクと混ざる
集中が更に研ぎ澄まされて、視界の全てをいっぺんに知覚し、曲がるという事を体が自然にやる






まだだ

まだ全然行ける





これだけの速度を出して、この余裕


別にまだペースそのものは上げる事は出来る

だが、こんなにも「ラインを選ぶ幅」があったなんて




そうだ

俺は事故る前は、こんぐらいは普通にやっていた
でも、彼と走るだけで こんなにもあっさりと




何かが剥がれ落ちて行く

胸の奥が開いて、歓喜がとめどなく溢れ
針のような風を背中に纏って、シフトを2つ蹴り落とし コーナーに進入する




もっとだ


アクセルを


R1は揺らがない
きちんとした俺の入力に、持てる性能の全てを持って応える







ドウ 描コウカ?






絵筆でなぞるように

好きなラインで

大好きな立ち上がり角度で



次々に後ろへ吹き飛んで行く木々が

目の下を流れる、アスファルトの奔流が







俺は 何のリスクも背負っていなかった



















「ありゃ・・・」






小僧区間に入り、狭く小さなカーブの連続
駐車場から出て来た2台の車が間に入り、CBRとの間がみるみる開いてしまった







まあ











「今日はこんなもんでいっか」




ゴールまであと僅かなのもあり

俺は上体を起こすと、スクリーンを上げ



上着の前を少し開いて、息をついた



(続



 
すかいうぉーかー-CA390688-0001-0001.JPG




「今日、いきなり休みになっちゃったんで、暇だったら連絡下さい」




1時間ほどして、返信が無いので R1に火を入れる
トリッカーの自賠責が来月までなのだ


気温はそこそこ
Tシャツの上に、紺のタイトパーカーを羽織る


ヨコさんの店に着いて支払いを済ませ、接客中のヨコさんを待とうかと 外に出て煙草に火を点けたところでメールが来た





「軽く走りに行きますか」








談合坂のS.Aはそこそこの混み具合だった
「奥多摩へ」との話だったが、大月を過ぎて都留で降りると言う

段々、装備の防寒能力に不安がよぎりはじめるが
来てしまった物は仕方ない





“彼”とマトモに峠を走るのは初めてだ

実力は看板と共に折り紙付き
知名度も“裏”の世界じゃトップクラスだ

首都高で走ってから4年、再会して連絡を取るようになってからは1年が経つ

幾度か予定が合わずに、走る話が駄目になっていたのだが
出来れば年内に1回は走りたかった






乗り手のヤバいオーラをたっぷりと纏った白い貴婦人が、ゆっくりとサービスエリアを出る

大怪我から復帰して“すっかり遅くなりました”と言う俺を気遣ってか、200も出さずに
風のように車線を縫い取りながら 全く無駄の無い姿勢で中央道を滑空する


大月JCTを左へ
都留で降り、モスバーガーで昼食を取ると、ガスを補給して山道へ

全く走った事が無い道
“彼”は、全く力む事の無い背中で 絶妙に俺を誘導する




「おいおい汗

長尾峠を更に狭くしたような道に入る
落ち葉に埋もれた路面 車の轍をなぞりながらヒイコラと通過する


コーナー3~4つ先に出たり消えたりするテール

だが、自分のペースで



細くなったり、広くなったり
幾度か曲がり、小さな村をいくつも抜け

時に状況に応じて加速する背中を追いながら
段々道が良くなって行く






(この人の走りは、本当に綺麗だ)



マージンの幅の多さを物語るように、吸い付くようなリーンウィズ
ふとした直線でワープするCBRは、どんな曲率のコーナーが迫っても事前に分かっているかのような減速と進入角度で尻をふり
極限までシェイプされた加速・減速が、アベレージの高い滑らかな走りを生み出す

どちらかと言うと、キーコに近い




別について行けないペースじゃない

気を使わせているのは明らかだが、朝から少しずつペースを上げるタイプの俺としては、逆に速度を“プロデュース”してくれているのが心地良い

今年の集大成のように、1年かけて再構築して来た「走り」で
初秋の色付き始めた山間部を、最高のコンディションで走り抜け

体も感覚も暖気を終え
いつまでも続く、1つとして同じ物のない 数百のカーブ達をクリアして行く




不思議だった

まるで、R1が喜んでいるかのような




松姫峠から奥多摩へ

右折して見慣れた橋を渡り、駐車場に向かってウインカーが光る











(違う)











停止したCBR
バイザーを上げた“彼”が、何かに気付いたように空を仰ぎ コチラを向いた

















「・・・このまま都民の森まで行って、休憩します?」
















2台が
さっきまでとは明らかに違う排気音を上げて、駐車場を飛び出した


2速のまま引っ張り 山間に轟くR1の咆哮に身を浸して、10000rpmで光るシフトインジケーターの白い光を見ながら










俺は満面の笑みで、少しだけ“封印”を解いた



(続



 
お 電話だ

トモさんか




「あ、モシモシ? パツ、今家に居る?」






どうやら、俺が売って欲しいと頼んでいたタイヤ交換セット一式を
何かのついでに持って来てくれるらしい


ビードブレイカー・タイヤレバー・リムプロテクター・ホイールバランサー
全部をネットショッピングの相場の半額以下
いくら使っていないからとは言え、持つべき物はバイク仲間である



早速、ウチの住所をメール
ボロっちいハイエースが到着するのを待つ












30分後














ドゥロロロロロッ!!!












すかいうぉーかー-グラフィック1101007.jpg


(※写真撮り忘れ)











( ̄∀ ̄ノ)ノ















なんすかコレ








「シボレーのエクスプレス~(笑)」





素晴らしいの一言である

「国産車でトランポ」より、全然かっけー



実は俺も昔から、トランポ買える身分だったら「ダッジラム」が欲しいのだ

うわっ 長ぇー でけー

後ろフルフラットになるしー
ドア観音開きだしー(←ここ重要)






目をキラキラさせて感激する俺に、トモさんはニコニコしながら パーツクリーナーを2本オマケしてくれた
















うん
今度一杯奢らねばなるまい(オチなし)



 
すかいうぉーかー-グラフィック1024012.JPG

すかいうぉーかー-グラフィック1029.jpg






シモンチェリ選手の葬儀で、ロッシが書いた記帳内容を見て 胸が熱くなった


















「チクショー 寂しくなるよ」








マスコミ向けでも何でもない感情の吐露


自分が乗った船を充分に理解した、大きな大きな誇りとほんの少しの空虚







何をしてるのかって

ただ 走っているだけである



それでどうやら順位が付いて
明暗が分かれ
莫大な富だの栄光だのが 煌びやかに周りを彩る



そこに何かは“ある”のかも知れないけど




でも
俺の感覚だと、そんな事はどうでもよくて

危なくて素敵な事を前提に
時には全く理解されないような探求を続ける事への、愚直なまでの純粋さ




そんな

“やった奴にしか分からない世界”を共有する連帯感










「ああ、いいな」と、思ってしまう





俺は、結局バイクだった

それまでの何よりも
今知っている限りの、他のどれよりも



あの

血液までもが移動してしまいそうなG


力を引き出し
速度を編み上げ

慣性を捻り
遠心力をなぶって


失敗しない為、死なない為に
否が応でも 針のように研ぎ澄まされた集中力で


ただ1点を撃ち抜く




理屈じゃない

あの場所には、朧気ながらも1つの真実が確かに“在る”

世の中に溢れかえった嘘もごまかしも、入り込む余地は無い






それ以上、説明のしようが無い


そして常に死の影がつきまとう











笑ってしゃべり
共に走った奴等の、何人が

俺と同じ物を感じたのかは分からないけれど
















「彼」もまた



きっと、ソレを見ていたんだと



 






すかいうぉーかー-CA390668-0001001.JPG





たまに

バイクの世界と自分の間に、何かしらの強い運命を錯覚する事がある





俺は、バイク乗り系の出会いだけは
凡人の数百倍は強いんじゃないかと




バイト先の社長から、バイク屋の店長とその知り合い、そして客

また、その先でツーリングクラブのメンバーの内の何人かと

更にその先も





凄いと思う




“ただ、バイクに乗っただけで”

こうも大量に粒が揃うもんでも無いだろう と



確かに
俺には確固たる信念があった

「速くなりたい」



ちょっとやそっとじゃない
何処の誰よりも だ






速くはなった

だが、いろんな事を知った




10年乗り続けて、乗る回数そのものは減る
暇も時間も少なくはなるし

周りのみんなも、まあ 色々だ




そして
走っている時だけは、俺は真実を体感できる事も知った


あの時間と領域には
何の嘘もごまかしも、入り込む余地は無く

いつまでも色褪せる事が無い







確実に重油よりも脂っこい
自分が求めていた、本当の本物達が


俺如きと走り

笑い

バイクの話を通じて

「こういうのが良いよね」ってのを共有する



それは、付き合い方や形を変えても残り

未だに走り続けている自分の前には、まだまだいろんな出逢いが訪れる




呆れるぐらいに

そうそう見れるもんじゃない物も





こちらから探した事なんか無い



ただ
毎日を過ごし
















すかいうぉーかー-CA390670-0001-0001.JPG






走り続けているだけなのに



 





マジか・・・



GPライダーで、初めて好きになったヤツだったのに



何か走り方や抜き方に親近感を感じていた

微妙に張ったアウト側の肘と、離れた外足も
自分を見てるようで



見せ場も作るタイプで
初の3位表彰台の時も、手に汗握って観戦した







早すぎるだろ

絶対に、ここから伸びるライダーだったのに


















すかいうぉーかー-グラフィック1024003.jpg



また

GPがつまんなくなっちまうなぁ



 





時速200を越える流体に身を浸し

夢の中のような光景に五感を解き放つ



思考は枷を外され 生命のスープのように溶け崩れる
もはや言語など意味を持たない





何のために生まれて来たのか


何処に向かい 何を手に入れ 何を残すのか







高オクタンの“逸脱”が酸素と共に圧縮され
閃きのような火花で弾け飛んで、時間と空間を曲げる




生きるって何だ






















すかいうぉーかー-CA390548-0001.JPG




コレの事じゃ ないのか