昨日から東芝の ウェスチングハウス社 買収を巡る事実上の粉飾決算(“「東芝、米原発サービス会社買収で数千億円減損の可能性」”、“「CB&Iの 米国子会社買収に伴うのれん及び損失計上の可能性について」”)が報道されているが、当ブログでは東芝について、昨年11月に“「やはり原発は国家事業・・・東芝巨額の損失」”.で取り上げていた。
- その時点で分かっていたことは、2006年、東芝は米ウェスチングハウスを買収したが、(買収額は4900億円、日経ビジネスによると5400億円、のちに6600億円に増加)だが、 東芝は、ウェスチングハウスの「のれん」を4000億円前後、資産として計上している。
- ※「買収された企業の時価評価純資産」と「買収価額」との差額のこと 。
ところが昨年11月12日付け日経ビジネス“「スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽」”と11月14日付BLOGOS“東芝が4000億円もの「のれん代」を償却しない理由”によるとウェスティングハウス社が、1600億円もの減損処理を行い、その上2012年度と2013年度は赤字になっていたにも拘わらず、東芝の連結決算においてはのれん代の減損処理が行われていない 。
- ※日本の会計ルールでは20年程度で全額を償却すべしとなっており、米国の会計ルールでは 買収した企業の業績が好調である間は、のれん代を償却する必要はないが、その代わり儲からなくなったら、つまり企業の価値が落ちてきたら、償却をすべしとなっている。
そして昨日のロイター“「東芝、米原発サービス会社買収で数千億円減損の可能性」”には、ウエスチングハウスが昨年末買収した原発サービス会社、CB&Iストーン・アンド・ウエブスター(S&W)について、買収に伴い1000億円単位(数千億円)の減損損失を計上する可能性があると報道された。
以下引用
東芝は27日、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)が昨年末買収した原発サービス会社、CB&Iストーン・アンド・ウエブスター(S&W)について、買収に伴い1000億円単位の減損損失を計上する可能性があると発表した。東芝広報によると、減損は数千億円規模に上る可能性があるという。
同日朝開示した報道資料には、「S&W社の買収に伴う1000億円単位の減損損失を計上する可能性がある」と記載している。「1000億円単位」について東芝の広報担当者は「数千億円という意味」と説明した。
東芝の2016年9月末の株主資本額は3632億円にとどまるため、減損の金額によっては債務超過に陥る可能性も否定できない説明内容だ。
大変なのは東芝だけではない。
◆三菱重工は“「(開示事項の経過)当社に対する仲裁申立に関するお知らせ」”にあるように米国サザンカリフォルニアエジソン社はじめ4社から 75.7億米ドル(1ドル=123円換算で、約9,300億円) の損害賠償請求を受けている。
(関連記事:“米電力会社 三菱重工に9300億円損害賠償請求”)
さらに三菱重工業はフランス政府の求めに応じ、破綻に瀕している仏原子力大手「アレバ」への出資要請に応じることになった。
“「瀕死の仏原子力大手「アレバ」に巨額出資する「三菱重工」への疑問」”
以下引用
三菱重工業がフランス政府の求めに応じ、破綻に瀕している仏原子力大手「アレバ」への出資要請に応じることになった。国内のみならず、海外でも原子力発電所の建設計画が次々に暗礁に乗り上げる中で、三菱重工社長の宮永俊一(68)は社内の一部の反対を押し切り、敢えて「火中の栗を拾う」選択をしたのだが、「従来のアレバとの緊密な関係を維持するため」(関係者)という以外に、500億円近いこの巨額投資の成算を説明できないでいる。
同社の決断の背後には、苦境に喘ぐアレバが「中国核工業集団」(CNNC)に支援を求め、その代償として最先端の原子力関連技術が中国に流出することを恐れる日本政府からの強いプレッシャーがあったとも囁かれている。軍需メーカーの宿命とはいえ、政治に翻弄される体質はこの会社の宿痾であり、「日の丸ジェット」の名で国威発揚を背負わされたMRJ(三菱リージョナルジェット)プロジェクトの迷走も合わせ、同社の先行きに暗い影を投げかけている。以下省略
アレバ社は日経新聞“「安全な原発が夢か 仏アレバの新型炉建設が難航」”にあるように3.5世代(第3世代+)のEPRの建設が難航するとともに建設費が嵩み経営破たんの危機に陥っている。(飛躍的に向上した安全性の引き換えに、建設費高騰から発電コストは風力や太陽光発電に敵わない)
◆日立は米GE社と組んでいるが,GEイメルト会長は日経新聞“「米GEイメルトCEO原発“見切り”発言の衝撃度」”のように商業的には見切りをつけている。
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米ゼネラル・エレクトリック(GE)最高経営責任者(CEO)、ジェフ・イメルト氏の原子力発電に対する発言が話題になっている。東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに原発のコスト上昇が見込まれる一方、多くの国が地中深くの岩盤から採取する新型天然ガス「シェールガス」や風力に発電用エネルギー源をシフトすると予見。原発は「(経済的に)正当化するのが非常に難しい」と英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビュー(7月30日付記事)で語った。2011年9月に独シーメンス社長、ペーター・レッシャー氏が独誌シュピーゲルのインタビューで表明した「原発事業撤退」に続く米欧電機大手トップの衝撃発言。「選択と集中」の本家ともいえるGEの“変わり身の早さ”は、原発事業のパートナーである日立製作所をはじめ日本勢の経営戦略にも影響を与えずにはいられない。
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また“「原発はエネルギー源として正当化できない」”とも述べている。
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「時代は真にガス(シェールガス)と風力発電によって供給される方向にシフトしてきた」。米グローバル企業GEのCEOのイメルト氏は.多くの国がこの二つの発電が長期的に安価なエネルギー源として活用し始めた、と指摘した。
イメルト氏は石油産業の友人たちとの話として、「彼らがガスを長期的にこれまで以上に開発できることを認めている。このことは原子力発電の活用を今後、正当化することは難しいことを意味している」と述べ、低価なガス価格が続くことは経済ルールとしても妥当だとの見方を示した。
そして今後のエネルギー開発の方向として、「多くの国々が目指しているのは、ガスと再生可能エネルギー(風力あるいは太陽光など)の組み合わせだろうと思う」
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アレバのEPRを見てもGEのイメルトCEOの発言を見ても、新世代原発は建設費が1兆円規模まで高騰し、商業的には競争力を失っている。
日本はそういう情報が広まらず周回遅れの印象を受けるが、すでに商業的には破たんしているのではなかろうか?