取材日時 2007年4月30日
コメント・ガセネタというのは巨大掲示板では良くある話だ。
実際、暇だった時それに踊らされて何度か存在しない物件を探しに、相方K氏と夜の夜中に車を走らせたものだった。
だが、幾つも寄せられる廃墟情報の中には実在する物件を紹介している物もあるので、全てをガセと判断してしまうのは早合点とも言える。
今回のこの廃墟は巨大掲示板「2ちゃんねる」のとあるスレに一回だけ書き込みがなされた情報を元に見つけ出したものである。
恐らくどこの廃墟サイトにも公開されていない未既出物件と思われるので、情報という物が非常に乏しい。
一体現役当時は何に使われていたのか、何故に倒産して廃業し廃墟化してしまったのか、全く知る由もない。
実際に現場で、残された遺物を元に色々とプロファイリングを試みたが、調べれば調べるほどに混乱してしまったので、あまり深く詮索しない方が得策と判断し、取り合えず見て廻るだけでも充分だろうと、探索に踏み切った。
大きな鉄筋コンクリート二階建ての建造物は、見た感じ何かのホテルかなんかの宿泊施設だろう、としか言いようが無かった。凸口は何処にも無く完全に目張りされていたので中に入ることは出来なかった。中に入れないと、この建物の素性を知ることは極めて困難となる。
続いて、直ぐ隣にある新しめの一軒屋があったのだが、こちらは易々と中に凸する事が出来た。
一階を見て周り、二階に上がって最初の部屋を見た後、スライドショーの29枚目の写真にある引き戸を開けた時、戦慄が全身を駆け抜けた。
薄暗い7~8畳ほどの部屋の中央部分に、腰の高さほどにうず高く積み上げられた大量の何か・・・衣類や布団や布の類のものが大量に集められているのである。雨戸はしまっていないので、部屋の中の様子は何となく見えた。部屋の中の空気が何となくジメっとしている、流れが無くあまり呼吸したくない感覚に襲われた。そして、ふとカメラを構えて部屋の中に入ろうとしたその瞬間だ、オレの目に何かが見えた。
人の手である。
指の配列から察するに右手だ。
そして無意識に左手も見えた。
そして、その両手の真中に人の顔があった。
真っ黒で頬がミイラのように痩せこけたオッサンの顔だったのだ。
思わず声を上げそうになった。30半ば過ぎの大人が久し振りに悲鳴をあげそうになった瞬間だった。
メヂューサに睨まれたかのように固まる事数分。
この決定的瞬間を写真に収めようか、止めるべきか猛烈なスピードで頭の中で考えていた。
オッサンは良く見ると息をしていないようにも見える。呼吸をすれば動くはずの胸の部分が全く動いていないように見えたからだ。
「し・・・・死んでるのか?」「いや、死んだ振りをしているのかもしれない」「シャッターを押した瞬間に飛び掛ってくるかもしれない」
このままこのオッサンは寝ているという事で、起こさない事にしよう・・・・・(汗。
ということで、何も見なかった知らなかった事にして、この廃墟を緊急退出した。
敷地を飛び出し、車道を渡り、車のエンジンを掛ける、オッサンが追いかけてきていない事を確認して、ようやくタバコを吸う気になれた。
それにしても、あのオッサン、この山奥でどうやって食糧を調達しているのだろうか。
野良人が住むのは大抵市街地である、コンビニやファーストフードの残飯を漁って、空腹を凌ぐのが普通。
しかし、この廃墟がある場所は思いっきり山奥である、ランボーのようにイノシシでも捕まえなければ、満足な蛋白資源は無いはず。
ただ、少し山を降りれば民家は数軒ある、殆どの民家の庭先には自家農園がある、それを夜中に来て盗んでいるのだろうか?
何にしても、これだけ驚いたのは久し振りだ。
何度も野良人の居住エリアに凸してしまった事はあったが、本人と遭遇したのはこれが始めて、あまり気分のいいものではない事は確かだ。
この物件にはオレは二度と行かない。オッサンのその後が気になる人はご自分で行く事をお勧めする。



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