日本音楽コンクールという催しの記事が毎日新聞に出ていた。声楽部門の第一予選を通過した23人の中から5名が本選に進めることになったという内容だった。何名の方が第一予選に挑戦されたかは不明だが、狭き門であることは間違いない。



少し前には「二期会 新進声楽家コンサート」があった。朴令鈴さんがピアノ伴奏をされると分かったので聴きに行ってみたのだが、こちらは二期会オペラ研修所で優秀な成績を修められた20名が出演とのことだったから、やはり狭き門なんだろう。



狭き門への挑戦は大変だと思うが、二期会のコンサートでは、そういう若者たちのエネルギーが観客席に伝わってきた。とても快かった。

私には狭き門から入ろうとして入れて貰えなかったことが何度かあるが、結局、狭き門ばかり探していたから、結果として幸せな人生になったのかなとも思う。この際、狭き門マニアとでも名乗ろうかな(笑)

Vivid Opera Tokyo という組織があり、クラシック音楽やオペラの振興を目的に、子供たちや一般市民を対象とした演奏会を開催されている。学校、病院や介護施設のロビーコンサートも請け負う特定非営利活動法人とのことだ。全く存じ上げない組織だったが、たまたま同志社混声合唱団(東京)でピアノ伴奏をお願いしているS先生が出演されると聞き、演奏会に行ってみた。

 

 

「桃太郎」というオペラは聞いたことがないと思ったが、2013年、とある大学で誕生したオペラとのこと。一方の「ジャンニ・スキッキ」は1918年初演のオペラで、プッチーニの作曲とのこと。


これをどう結び付けるのかが分からなかったが、金銀財宝を隠し持っていた鬼を退治し、大金持ちになった桃太郎がフィレンツェに引っ越し・・・あまり書くとネタバレになるが、ストーリーそのものより次々にステージに出て来られる歌手の皆さんが歌と演技で物語を進めて行かれるので、私のようなオペラ初心者にはオペラを身近なものにしてくれる面白い企画だと思った。

 

ピアノはステージの上手にあり、S先生は両オペラとも休むことなく弾いておられたように思う。唯一の楽器で、さぞかし大変だったろうと思うが、物語の最初から最後まで、様々な場面に参加されるのだから、ものすごくやり甲斐もあったのかなと思う。今度、聞いてみよう。

「霧と話した」を歌ったことのある方が案外多いことを知った。同じ合唱団のアルト、Yさんは「私も歌ったことがあるわよ。良い歌よね。失踪の歌? 違うと思うわよ。多分、大好きな人が亡くなったんだと思う」と私の失踪説をあっさり否定された。「頬の話が出てくるでしょ? 頬に愛した人に触れられた感触が残っていて、それが霧の中で甦るんだと思う」とのことだった。はい、事件性を持たせて失礼しました。



第2部はフォーレの「夢のあとに」から始められ、その後、プッチーニやヴェルディのオペラから「嘘」をテーマに選ばれたアリア5曲を歌われた。「ジャンニ・スキッキ」の「わたしのお父さん」は結婚に賛成しない父親に「反対するなら川に身を投げて死ぬわよ」という父親の愛情に訴える娘の可愛い嘘、「椿姫」の「さようなら、私の過去よ」は愛する人の父親から別れてくれと頼まれた高級娼婦が、もう愛してはいないと相手に伝えて身を引く壮絶な嘘・・・そんな説明を麻子さんやピアニストの小島さやかさんから聞いた上での演奏だったので、どのアリアも印象深いものになった。

 

「ファウスト」の「宝石の歌」は、玄関に置かれた宝石箱を開けた女性が興奮し、その後、宝石を身に着けて鏡を見た女性がうっとりしますから・・という説明通りに麻子さんが演じて歌われ、思わず微笑んでしまった。しかし、どれか一つを上げるなら、やはり「椿姫」の熱演と熱唱に最も心を打たれた。

 

アンコールには「アメイジング・グレイス」と「いのちの歌」を歌われたが、戦争や紛争が絶えない世界のことを思い、「いつかは誰でも この星にさよならをする時が来るけれど 命は継がれてゆく ・・・ この命にありがとう」という「いのちの歌」に出てくる歌詞が心に沁みた。良いコンサートだった。