久しぶりのNY、初めてのカーネギーホールやブロードウェイに興奮し、たくさんの写真を撮った。今、それらを見返すと、楽しい思い出や美味しい記憶が甦る。



今回のNY訪問で、以前、仕事でお世話になったNY在住のAIさんと20年ぶりに再会した。当時は日本商社のNY駐在員として働いておられたが、その後、独立され、新たな取引先の開拓に成功されている。大したもんだ。Aさんにはスペイン料理やイタリア料理のお店に案内いただいたり、庶民的なスーパーマーケットに連れていってもらったり、ブルックリン橋を歩いて渡るという経験をさせてもらったりと、ずいぶんお世話になった。私たちがずっとリラックスして過ごせたのは、Aさんが一緒だったからだろう。感謝。


(左から)H谷さん、A部さん、AIさん、私

 同志社混声合唱団から一緒に参加したA部さんはアルトの歌い手だが、合唱がお好きということ以外は存じ上げない方だった。ところが、今回ご一緒することになって何度か打合せをする内に、実にお酒を美味しそうに飲まれること、NYのガイドブックを丁寧に読み込んでおられること、それから、話の端々から裏表の全くない方であることが分かった。以来、同志社チームはいつも笑顔で語らい、誰かの冗談に笑い、来て良かったね、と言い合う素敵なチームになった。カーネギーホール当日は、ホテルを出る前にA部さんが持参されたご飯(お湯でご飯になる非常食)とお味噌汁を同志社チームで頂いた。美味しかった。感謝。


(MOMAのカフェで)


H谷さんは私の前に10年間、幹事長を務められた方だ。同窓生には「幹事長を務めた期間、H谷さんは10年、私は2年です。これは人格の差です。H谷さんは私の5倍は人柄が良い」と説明してきたが、今回、経費節減のため同じツインの部屋で5泊し、H谷さんの優しいお人柄、準備の用意周到さ、回りの方々への細やかな配慮を目の当たりにした。これは敵わないと思った。特に、私の鼾で最初の夜からH谷さんを眠れなくしてしまったようだが、H谷さんは「お互いさまや」と私を気遣いながら、いつも私が先に眠りに落ちるまでTVの野球観戦で時間を潰しておられたように思う。後輩に優しい先輩だ。感謝。



そのH谷さんと自由の女神を見に行ったときのこと、フェリーの船尾で写真を撮っていたら、隣の女性から何やら話し掛けられた。ただ、何と言っているのか分からないから、困った顔をしていたら「あなた、スペイン人ではないのね?」と英語で言われた。彼女はスペイン語で話し掛けてきたのだ。「いやいや、僕は東京から来た。あなたは?」と会話が始まり、薬剤師の彼女は10日間の休暇を取り、友人たちとポルトガルからやって来たことが分かった。「私はテレサ、あなたは?」、「僕はケンや」という自己紹介も終わった。


以後、会話を再現する。「私たちは観光で来たの。あなたは?」、「観光やけど、昨夜、カーネギーホールで歌ったんや」、「えっ!?あなた、プロの歌手なの?」、「ちゃうちゃう、素人の合唱団に入っていて、昨夜はェスティバルがあったんや」・・・という説明を彼女はちゃんと理解していたが、私を見てニヤッと笑うと、仲間に向かって「ねぇねぇ、みんな、ここに昨夜カーネギーホールで歌ったスターが二人も(H谷さんと私)いるわよ!」と呼び掛けたから「おお~っ!」という歓声と共にポルトガルの若者たちが集まってきてくれた。楽しい思い出が増えた。テレサにも感謝。




ニューヨークではマクドナルドやスターバックス、MOMAのコーヒーショップやホテル近くのカフェ、又、ニューヨーク在住の友人が連れて行ってくれたレストランでも食事したが、味もサービスも予想より良くて満足した。



値段が高いことは、事前に聞かされていたことから大きな驚きにはならなかったが、カフェやレストランで食事すると、カード決済の端末機のデジタル画面に「18%」「20%」「22%」という表示があることに驚いた。「いくらのチップにするか選択できる」と説明されたが、この中から選ぶということは「チップは払わない」という選択肢はないことになるから、チップが義務化されたのだと思った。


2019年のGDPとバブル前の1980年のGDPを比較すると、日本の2.2倍に対しアメリカは7.5倍だとする記事があった。さすがアメリカは底力があると感心していたが、今やチップが商品やサービス代金の一部になってしまったことを考えると、アメリカ経済は拡大していても、それに見合う賃金の向上が追い付いていないようにも見えてしまう。



経済が成長し、生活が豊かになるということは、商品やサービス価格は上がっていないが、給料は上がっているという状態だろう。そういう意味で、日本もアメリカもまだまだ課題の多い状況なんだと思った。



最後に、過ごす場所が変わるだけで、これだけブログ・ネタが出てくるとは想像もしなかった。同じ毎日の繰り返しではなく、更に貪欲に、もっと意識して新しい環境に身を置こうと思う。

雨も降っていたし、少し荷物もあったから、地下鉄なら6駅くらいのホテルまでタクシーで帰ることにした。タクシーは直ぐに来たが、乗り始めて10分程すると、ドライバーが車を止め、料金メーターを手で叩き始めた。



何事かと思ったら、「メーターがおかしい。動いていなかった。今、やっと動いたが、ここまで10ドルは掛かっている。それを現金で払ってくれるか?」と聞いてきた。ホンマかいな、と思ったが、英語の議論では負けそうだし、ここで降ろされるのは避けたいし、「分かった」と答え、降りるときにはメーター料金をカードで、10ドルは現金で支払った。現金の10ドルは多分、会社には内緒にできるドライバーのお小遣いになったのだろう。


ホテルに帰ってから、なぜドライバーに「メーターの故障は我々の責任ではないよね?」とか「では、ここで降ろしてくれ。別のタクシーに乗る」とか「10ドルは高い。5ドルなら払う」と言い返せなかったのかと悔しく思ったが、ドライバーは私が無防備な旅行者でトラブル回避のためなら10ドル払う甘ちゃんだと見定め、自信を持って行動に移したのだろう。悔しいが失敗から学び、今後は警戒心を忘れるまいと決めた。


ところが、帰りの空港でお茶していたら、店員さんがやって来て「あなた方の隣のテーブルでお茶していた女性たちはあなた方の友人か?」と尋ねて来るではないか。隣のテーブルにいたのは同じ合唱団のメンバーだったので「そうだ」と答えると、「先程の会計で10ドル多くもらい過ぎた。これを返してくれ」と10ドル札を手渡されてしまった。この誠実な対応に私の表情は早くも弛み、失敗から学んだはずの警戒心など瞬く間に消えてなくなってしまった。それに気付いて思わず苦笑してしまったが、ま、それでも良いかと最後は思った。その方が如何にも私らしいし(笑)