後任が決まったので、その紹介と引継ぎを兼ね、お取引先への挨拶回りを始めた。最初に伺ったお取引先で「今年70才になりますので、ついに追い出されることになりました」とご挨拶すると、「いよいよご卒業ですか」と返された。「はい、よくぞ、この歳まで働かせて貰えたものと感謝しています」と答えたが、「卒業」という言葉に違和感が残った。


ハッピー・リタイアメントという言葉がある。AIによると「定年前に老後の資金を確保して退職し、悠々自適の生活を送ること」ということらしい。そう言われると、あくせく働き続けるのはアンハッピーなのかと尋ねたくなるが、私は生来の貧乏性のせいか、もう少し働きたいという気持ちが強い。


AIによると、「卒業」とは所定の学業課程を修了することらしい。なるほど、私が小学校から大学まで無事に卒業できたのは、各々の課程を学び終えたからだろう。しかし、社会に出て働き始め、何か有益なものを提供し、その対価を貰うことで生活を維持してきた「社会人」に卒業があって良いのだろうか。


(ラグビーからも多くを教わった)


私は仕事を通して多くのことを学んできたし、今も学び終えたという実感など全くない。もっと学びたいし、社会がどのように変化していくのかを感じられる場に身を置いておきたいと切に思う。

今年もバレンタインデーがやって来た。昨今は義理チョコ自粛ムードが漂うが、心優しい職場の同僚たちがチョコレートを準備し、私に持たせてくれた。



昨年までは、手ぶらでは帰れないと訴える私を気遣う「メンツ・チョコ」だったが、今年の7月を以て、ついに私も職場を去ることとなったので、今回のチョコは「送別チョコ」となった。

いちばん付き合いの長い同僚は35年、いちばん短い人でも15年だから、思えば皆さん文句も言わず、良く私を支えてくださったものだ。付き合いも長くなると普通なら緊張感も中弛みするところだが、年に一度やって来るバレンタインデーが、「あっ、いけない、うちのチームに何もできない男子が一人いた、皆で支えないと!」というリマインド効果をもたらしてくれたように思う。

ホワイトデーのお返しも最後になるだろうから、きちんとお返ししておこうと思う。

齋藤ジンというワシントンのコンサルティング会社の共同経営者が「世界秩序が変わるとき」(文春新書)という本を出している。副題は「新自由主義からのゲームチェンジ」、帯には「ソロスを大儲けさせた伝説のコンサル」、更には「中国の衰退、日本の復活」とまで書かれていたから、買わずにはいられない気分にさせられた。



読み始めたら止まらなくなってしまったが、私が生きてきた時代のことが論理的に分析され、それが平易な言葉で語られているから、なるほど、そういうことか、と納得できることが出てきた。特に、米国を覇権国家と定義し、その地位を脅かす存在が出てきた場合には迷わず叩くという説明には説得力があった。


日本は第2次世界大戦で米国に完膚なきまでに叩かれるが、戦後は米国と対峙するソ連を叩くには強い日本が必要との判断から、米国は日本の復興を後押しし、奇跡と言われた経済成長を実現させる。しかし、ソ連が崩壊して日本を特別扱いする必要がなくなり、1990年代中頃に日本のGDPが米国の7割まで達すると、今度はさまざまな規制や日米構造協議の名の下に日本叩きを始める。

日本はその後の失政もあり「失われた30年」を経験するが、その間に急成長を遂げた中国が米国にとって新たな脅威となる。そこで、米国は中国を叩くために強い日本を必要とし、再び日本の経済復活に手を貸すだろうという筋書きだった。そこまで読んだ直後に、石破さんが訪米され、トランプ大統領とのにこやかな会談が報道されたから、「さもありなん」という感想を得た。何が正しいのかは分からないが、先ずは何が起こるかをちゃんと見ようと思う。