合唱団「うたおうかい」は毎週火曜日に集まって練習をしているが、来週は皆で讃美歌を歌ってクリスマスを祝い、その後は少しお酒も頂き、今年の打ち上げをすることになっている。そこで余興の一つとしてバイオリンを弾きますかと尋ねられ、即座に「はいっ!」と答えた。子供の頃から試験がないと勉強しないし、試合がないと練習にも身が入らない。同じように、こういう出番がないとバイオリンも練習しないから、上手に弾けるかどうかは別として、断れば絶対に練習しない自信がある(笑)

 

ところが、イザ練習を始めてみると後悔するのが常で、大体、思った通りに最初から弾ける訳がないのだが、何度繰り返しても上手く弾けないときは安請合いした自分を恨む。そして、当日は風邪でも引いて寝込んでしまおうかなどという不埒な考えまで浮かんでくる。そういうときにために、私の手帳には「努力」に関する名言が二つ書いてある。これらには、「ハ、ハーッ!」と平伏したくなる説得力があるはずだ。

 

「私は若かりし頃、10のことを試しても9つが上手くいかないことを知った。そこで、10倍努力した。」

(バーナード・ショー)

 

そして、もっと強烈な一言、

 

「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるならば、それはまだ努力と呼べない。」

(王 貞治)

 

m(_ _ )m ハ、ハーッ!!

そして、もう一つの演目、「義士銘々伝~両国橋の出会い」が始まった。こちらは赤穂浪士四十七士の一人である大高源五の話だ。

 

討ち入りを翌日に控えた12月13日、松尾芭蕉の弟子の一人である宝井其角が両国橋で大高源五と会う。2人は俳句を通じて以前から交流があったのだが、源五がみすぼらしい成りで煤竹(すすたけ)を売り歩いていることに其角は驚き、心を痛める。しかし、その思いは隠し、其角は互いに俳人らしく、上の句と下の句を詠み合うことで旧交を温めようとする。

 

先ず、其角が上の句を詠む。

「年の瀬や水の流れと人の身は」

これに源五が下の句を詠む。

「明日待たるるその宝船」

 

其角には下の句の意味が分からないが、多分、明日からは煤竹に代え、お正月用の宝船の飾りでも売るのだろうと解釈し、源五には自分が来ていた羽織を与えて別れる。その後、羽織が俳句を教えているご隠居からもらったものであることを思い出し、其角はその足でご隠居を訪ね、謝罪すると共に両国橋での出来事を話す。それを聞いたご隠居は、源五が俳句に託した決意に気付き、それを其角に伝える。

 

そして、翌14日には源五たち四十七士が吉良邸への討ち入りを果たすのだが、神田鯉風さんの声のトーンや話し方が「井上半次郎」のときとは異なり、「嵐の前の静けさ」を感じさせる上手い演出をされていたように思う。こちらも両国橋でのやり取りや源五の表情が目に浮かぶようで、又、会場のクリニックの目と鼻の先に泉岳寺があることから、皆さん、神妙な顔付きで講談を聞いておられたが、最後に神田鯉風さんがおっしゃった言葉で会場に笑いが起こり、皆さん、ホッとした顔になられた。

 

「講釈師、見てきたような嘘をつき」

 

神田鯉風さん、お見事でした!

奇しくも今日は12月14日。

 

ラグビーで負傷した時、大変お世話になった整形外科の先生が泉岳寺で開業されている。その先生から「うちのクリニックで講談会をやります。来ませんか?」と誘われた。講談とか講談師という言葉は聞いたことがあっても、実際に講談を聞いたことや見たことはない。これは面白そうだ。即座に「行きます」とお返事した。

 

 

最初に感想から言うと、実に面白かった。講談師の神田鯉風さんが小さな机の前に正座され(釈台というらしい)、手に持った扇(張り扇というらしい)で釈台を叩いてリズムを作りながら話を始められた。登場人物の紹介があり、紹介された人物が話し、それを神田さんが解説したり、引き継いだりして話がどんどん進んで行く。そのテンポが小気味良い。

 

最初の演目は「井上半次郎、出世の富くじ」で、人の良い下級武士、井上半次郎が登場する。半次郎は僅かな給金の中から、店の金をすられてしまって困っている丁稚に金を与えてしまうのだが、帰路に立ち寄った湯島天神で富くじ(宝くじ)を売る掛け声につられてしまい、ついつい一枚買ってしまう。ところが、この富くじが一番の当りくじとなる。喜び勇んで出かけようとする半次郎、そして、富くじを買っただけでも情けないのに、それが当たって喜ぶとはそれでも武士かと半次郎を諌める妻・・・。結局、妻の諌言を聞き入れた半次郎は富くじを燃やしてしまうのだが、この潔い行動が上司の知るところとなり、半次郎が出世を重ねていくという物語だった。起承転結で言うと、妻の諌言が「転」に当たるのだろうが、その意外な展開が印象的で、又、妻の毅然とした態度が目に浮かぶようで面白かった。

 

(続く)