ラグビーで負傷した時、大変お世話になった整形外科の先生が泉岳寺で開業されている。その先生から「うちのクリニックで講談会をやります。来ませんか?」と誘われた。講談とか講談師という言葉は聞いたことがあっても、実際に講談を聞いたことや見たことはない。これは面白そうだ。即座に「行きます」とお返事した。

 

 

最初に感想から言うと、実に面白かった。講談師の神田鯉風さんが小さな机の前に正座され(釈台というらしい)、手に持った扇(張り扇というらしい)で釈台を叩いてリズムを作りながら話を始められた。登場人物の紹介があり、紹介された人物が話し、それを神田さんが解説したり、引き継いだりして話がどんどん進んで行く。そのテンポが小気味良い。

 

最初の演目は「井上半次郎、出世の富くじ」で、人の良い下級武士、井上半次郎が登場する。半次郎は僅かな給金の中から、店の金をすられてしまって困っている丁稚に金を与えてしまうのだが、帰路に立ち寄った湯島天神で富くじ(宝くじ)を売る掛け声につられてしまい、ついつい一枚買ってしまう。ところが、この富くじが一番の当りくじとなる。喜び勇んで出かけようとする半次郎、そして、富くじを買っただけでも情けないのに、それが当たって喜ぶとはそれでも武士かと半次郎を諌める妻・・・。結局、妻の諌言を聞き入れた半次郎は富くじを燃やしてしまうのだが、この潔い行動が上司の知るところとなり、半次郎が出世を重ねていくという物語だった。起承転結で言うと、妻の諌言が「転」に当たるのだろうが、その意外な展開が印象的で、又、妻の毅然とした態度が目に浮かぶようで面白かった。

 

(続く)