大学の後輩二人とお茶する機会があった。学生時代に起業した優秀な奴らで、私より二回り年下だ。話題は「還暦を迎えたらどうなるか」になった。

ボル「急に同窓会や同期会の案内が増える」
後輩A「なんでですか?」
後輩B「暇になるからですか?」
ボル 「うん、時間はあるのにお金と用事と会える人が少ないことに気付く」(笑)
後輩達「ハハハ・・」

後輩たちは笑うが、仕事に費やしている時間は実に長いし、平日は仕事のために会っている人が殆どだろう。だから仕事を止めると時間はできるが、用事と会える人が少ないことに気付くらしい。そこで、声を掛けやすい同窓会や同期会の出番になる。しかし・・

ボル「急に親しくしようと言われてもねえ・・」
後輩A「抵抗があるんですか?」
ボル「そんなに会いたいなら前から会っとけと言いたい」(笑)
後輩B「ボルさんらしい意地っ張りっすね」
後輩A「仕事で忙しかったから仕方ないでしょう」
後輩B「それに・・皆さん、実は会いたくなかったのでは?」
ボル「な、なに?」

後輩Bが言うには、仕事をしているとその内容や肩書き、地位、報酬などついつい比較してしまうし、同い年ならなおのこと比較し易いから、場合によっては自分が劣っているように思えてきて、顔を合わせたくないと思う人もいたのでは、と言うのだ。

ボル「君、なかなか鋭いこと言うねえ」
後輩A「なるほど、仕事を止めたら皆、同じオジサンになるか」
ボル「せやけど、僕はそんな比較なんかしなかったよ」
後輩B「そら、ボルさんは早々に落ちこぼれてますから」(笑)
ボル「コラー!お前ら、今日は自分で払え」



千 玄室さんの講演に続き、今度は結成50周年を迎えたというタイムファイブが登壇された。同志社大学軽音楽部ご出身の5人組で、結成以来一度もメンバーが変わっていないとのこと。結婚なら金婚式を迎えたパートナーだから、他のメンバーのことは癖も好みも長所も短所も全て知り尽くし、互いに信頼し合っておられるのだろう。見事に調和した素晴らしいコーラスで、ただただ驚かされた。



2014年には天皇皇后両陛下の傘寿のお祝いで皇居に招かれ、御前で演奏されたとのこと。そのときの模様をユーモアたっぷりに話されたので、会場が大変和やかな雰囲気に包まれた。その日、皇后様から特にリクエストがあったというミュージカル「My Fair Lady」の主題歌「On the Street Where You Live」を演奏されたが、ニコニコ微笑みながら聴いておられる皇后様と、同じく微笑みながらも目は真剣なタイムファイブを勝手に想像し、私も一人微笑んでしまった。


意外だったのは、タイムファイブが「実は約1000本のテレビCMを歌ってきました」と披露されたことで、例えば、耳に慣れ親しんでいる「サントリー・オールド」のスキャットや「かつお風味の本だし」はタイムファイブの演奏だったのだ。会場からは驚きの声と共に拍手が湧いた。


もう一つ感心したのは、「サザエさんのテーマソングをジャズ風に四部合唱します。ただ、その前に一人ひとりが自分のパートを歌いますね」と始められた演奏で、各パートを聴くとそれぞれ酔っ払いの歌かと思えるような微妙な旋律が、四人で合わせると見事なハーモニーの演奏となり、ビックリした。さすがプロ、と感心したが、才能に恵まれただけではなく、ものすごい練習を重ねてこられたのだろう。才能に恵まれなかったことをボヤく前に練習しろということか。ハイッ!(笑)

先日、同志社東京校友会主催の「春の集い」が都内のホテルで開催され、600名を超える校友が参加した。ゲスト・スピーカーは裏千家 第15代前家元 千 玄室 大宗匠で、95才とはとても思えないお元気な姿で登壇されると、同志社に進学されることとなった経緯や、その後、学徒出陣され、海軍航空隊の特別攻撃隊(通称・特攻隊)に志願し、間もなく出陣というところで終戦を迎えられたというお話を、時にはユーモアをまじえ、時には真剣な眼差しでお話になり、私など話に引き込まれ、すっかり魅了されてしまった。


講演中の千 玄室 大宗匠

 

勉学優秀だった千 玄室さんは府立一中への進学を考えておられたが、ある日、お父上から「同志社で学べ」と命じられたとのこと。その際、お父上にこう抗議されたらしい。

 

「当家は代々禅宗です。それが、なんで、耶蘇(ヤソ)教の学校に行かなあきまへんのですか」

 

まさか千 玄室さんから「耶蘇教」という言葉が出て来るとは誰も想像しておらず、会場からどっと笑いが起きた。その後、千 玄室さんが説明されたところによると、茶道が女子教育に有用だと考えられた新島八重さんが裏千家第13代(先々代)の家元に入門されたことから、裏千家は同志社とのご縁ができたらしい。

 

一方では、特攻隊の仲間がいよいよ出陣というときにお茶を振る舞ったというお話や、今日、会場に来る前に靖国神社に立ち寄り、平和のためにこれからも尽くすと仲間に約束してきた、というお話をされ、戦争とは生きる人々の夢と人生を奪うものであること、それを知っている以上、最後まで平和のために尽くすという千 玄室さんの決意がストレートに伝わってきて、胸が熱くなった。

 

約30分ほどのお話だったが、聞き終わった後は心がポカポカして明るく優しい気持ちになっていたから、私は千 玄室さんにお茶ではなくお話を振る舞われ、おもてなしを頂いたのだと思った。ちなみに、裏千家のホームページには、「茶道とは『もてなし』と『しつらい』の美学」と書いてある。やっぱり。