ドラマ「定年オヤジ改造計画」 | 日々是本日

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bookudakoji の本ブログ

 「ももさんと7人のパパゲーノ」に続き、NHK総合の【特集ドラマ】シリーズの記事である。

 

 今回のドラマ「定年オヤジ改造計画」は、10月18日で67歳になった郷ひろみさんが定年を迎えたダメオヤジを演じるゴメディー作品である。

 

※NHK(BS)初回放送日2022年7月25日、NHK(総合)初回放送日2022年11月6日

郷ひろみさんが定年を迎えたダメオヤジに扮し(ふんし)、家事に育児に大奮闘!「子供は3歳までは母親が育てるべきだ」主人公・常雄(郷ひろみ)はそんな考え方の持ち主。だが定年してふと気づくと、妻(伊藤蘭)は「夫源病(ふげんびょう)」で車の助手席に座ることもできず、娘(成海璃子)からは「古くさい!キモ!」と言われ…。定年オヤジと、長年虐げられてきた女性陣とのバトルを、笑いたっぷり&ハートフルに描きます!

番組公式サイトより引用

 

 郷ひろみさんが定年を迎えたダメオヤジを演じるというのは随分と冒険をしたなぁと思いながら観たのだが、観終わってから下記の記事の郷さんのコメントを読んだら「郷ひろみのイメージを、良い意味で裏切る主人公」と話していたので、郷さん自身も十分に作品の内容を評価して出演したということだろう。

 

 

 ダメオヤジであることも仕事に一生懸命であったからであるし、変わることもカッコ悪いことではないということが伝わってくる郷さんの熱演が光っていた。

 

 この定年を迎えた男性が家庭でどのような存在であるかは、例えば下記の2012年の記事があるように、既に「粗大ゴミ」あるいは「ぬれ落ち葉」と言われていたのである。

 

 

 この「粗大ゴミ」あるいは「ぬれ落ち葉」というのが男性のあり様を言っていたのに対して、中高年の夫によって妻の側に生じるメンタルの問題を今では「夫源病(ふげんびょう)」と言う時代になっている。

 

 「夫源病」の提唱者である石蔵文信先生が監修となっている下記の記事によれば、「夫源病」は「夫が源(原因)となって、妻の体や心が不調になる病気」である。

 

 

 

 

 

 「夫源病」をテーマにしながらも、コメディーとして明るく描いていたのが好感のもてた作品であった。

 

▼NHKオンデマンド 単品:220円(税込み)・購入期限:2023年6月27日

※NHKプラスでの無料配信あり(配信期限:2022/11/13 PM 5:59)

 

 

---以下、ネタばれあり注意---

 

 

 そろそろ本題の感想に入りたいと思う。

 

 このドラマのタイトルは「定年オヤジ改造計画」となっているが、主旨はダメな定年オヤジがこうしたら変われるよということではないと思われた。

 

 なぜなら、大抵の人は郷ひろみ演じるドラマの主人公のようには変われないからである。

 

 だからこの番組の制作意図は、郷ひろみ演じるドラマの主人公のように変わりましょうということではなくて、理想的に変わっていく主人公を通して、まず「夫源病」とその背景を知りましょうということであると思われたのである。

 

 特に、「母性愛神話」と「三歳児神話」は時代遅れの考え方としてあからさまにやり玉に挙がっていた。

 

▼参考サイト

 

 実際に番組を観てみて、この「知りましょう」という主旨は伝わってくるクオリティーの印象であった。

 

 こうした問題を取り扱った番組を観て共通して思うことは、男性が悪いということよりも、時代の変化が早すぎれば起こってもおかしくない問題だということである。

 

 「夫源病」の原因が夫であったとしても、男性の側もしんどいのであって、まず「知りましょう」というアプローチは妥当であるように思う。

 

 さて、ドラマの中では郷ひろみ演じるドラマの主人公は息子夫婦のところの孫の世話をすることによって変わっていく。

 

 この中で、自分と同じく「夫源病」の原因となってしまいそうな自分の息子のあり様を見て、主人公の父親は息子に喝を入れる。

 

 もちろんこれも、真意はこういう風に変わりましょうということではなくて、変わっていく息子を描くことによって、妻の苦労を知りましょうと言っているのであろう。

 

 例えば下記の2018年の記事があるように、「夫源病」は中高年だけの問題ではなくなってきているということが指摘されている。

 

▼東洋経済オンライン(2018年11月8日)

 

 「夫源病」の若年化が指摘され女性が罪悪感を抱え込まないで具体的な解決があり得るということを知ることにまず意味がるのは確かだが、夫婦間の人間関係の問題であるから実際に行動していかなければ問題は解決しない。

 

 この点については、参考までに以前に書いた、ドラマ「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」の記事で紹介した本を再掲しておきたい。

 

▼「そのひとことが言えたら… 働く女性のための統合的交渉術」北大路書房2005

そのひとことが言えたら… 働く女性のための統合的交渉術

 

 最後に、それでは男性はどのように変わっていけばよいのかということに触れて終わりたいと思う。

 

 この番組の制作意図が女性の現実を知りましょうということであるならば、男性はどう変わっていったら良いのかということが描かれていないのはもっともである。

 

 しかし、女性の現実を知っても男性自身が変わることができなければ問題は改善しない。

 

 男性が男らしさをどのように追及していくかという問題は、フェミニズム運動の後の時期に問題提起されて男性学として追求されてはいる。

 

 とは言え、現在の状況はどうかというとあまり発展しているような気がしない。

 

 今の現役世代男性の意識はどうなのだろう……

 

 上手いこと変わっていけそうですか?