マイケル・サンデル教授と言えば、「正義」とは何かをテーマとした、
ハーバード白熱教室が有名である。
その他、「マイケル・サンデルの白熱教室」と題した、
「〇〇の話をしよう」というシリーズが幾つか作成されている。
学校ものとしてはこれもあるが、
NHK for School-NHK - 番組紹介 - BS1スペシャル マイケル・サンデルの白熱教室「15歳の君たちと学校のことを考える」
今回紹介するのはこちら。
NHK for School-NHK - 番組紹介 - マイケル・サンデルの白熱教室「これからの学校の話をしよう」
前編・後編の2回構成で、中学生38人と議論する。
ゲストは下記。
道端カレン(ファッション モデル)
安藤桃子(映画監督)
井筒和幸(映画監督)
藤原和博(元中学校校長)
金森俊朗(元小学校教師)
前編は「なぜ学校に行くのは嫌いか?」という問いからはじまる。
今日的な問題としては、
知識の習得はタブレット端末を用いた自宅学習で行うという
「反転授業」と呼ばれる試みや、
ビデオ講義を用いた大学の是非が取り上げられる、
教育の在り方について議論が進められる。
後編では、生徒による教師評価の導入しボーナス査定に影響するという事例から、
市場主義の導入について議論が進められる。
また、アメリカで「ホームスクール」と呼ばれている家庭学習が取り上げられ、
学校の目的について議論が進められる。
「ホームスクール」とは一定の条件を満たせば、
公共の学校に通わなくても良いという制度である。
義務教育の義務とは、親が子どもに教育をする義務であり、
子どもが学校に通うという義務ではない。
従って日本でも、可能かどうかという点だけで言えば可能である。
今日的な問題は、アメリカではこうした選択をする人が増えているという変化にある。
(番組中では4%程度と紹介されていた。)
社会全体での教育というものは、それ単独で行われるものではなく、
文化や政治経済と深く関係しているために、
漠然と議論するのは難しいものである。
サンデル教授は思ったよりもファシリテーターに徹していて、
論点を上手く整理しながら問題を明確にしていたように見えた。
ただし、講師がサンデル教授でなくてはならない必然性はあまり感じられなかった。
全体的には、教育とは何かという問題について今日的な事例を挙げながら、
具体的な問題点を上手く提示する内容になっていたのではないかと思う。
子どもの発達に必要なのは、
自分を見てくれる大人と、学びを支えてくれる大人である。
広く教育そのものということは、
こうした大人の役割をいかに果たすかと問題であると考えられる。
具体的な在り方はその時々の教育観、政治経済、社会制度などによって決まるものである。
つまり、一度決まった在り方がずっと正解であり続ける問題ではないのだから、
教育とは何であるかということはもっと語られるなくてはならない。
以下に、具体的な観点を挙げてみる。
・教育とは何であるか
(大人が子ども大人にするとはどういうことか、学びとは何か、教えとは何か)
・大人の役割とは何か
(子どもとって大人とはどういう存在か、大人は子どもに何をどこまでする人か)
・教師の役割は何か
(教師とは何をする人か、何を学び何を教えるか)
・社会化とはどうあるべきか
(社会に適応するということ、仲間と生きるということ)
・社会的評価はどうあるべきか
(学歴の価値と社会的評価の意味は何か)
・社会にどのように貢献するか
(社会に役立つ人材をどう育成するか)
・個人の幸福にどのように寄与するか
(教育の有無は個人の幸福にどう影響するか)
具体的な在り方がその時々の教育観、政治経済、社会制度などによって決まるということは、
教育の問題はこうしたテーマに対して、
我々が我々自身のために答えを出していく問題だということである。
そのためには、もう少し自分自身の問題としてテーマを引き付ける必要があるように感じられる。
講師はサンデル教授ではなくてもいいから(笑)、
こうした番組で、教育について考える機会が増えると良いと思う。