戸神重明 編著「高崎怪談会 東国百鬼譚」
全100回を目指す怪談イベント「高崎怪談会」にて人気沸騰の話をギュッと収録した一冊(書き下ろしも、もちろんあり)。
味わい深い一冊だった。怪談は語りの文芸と言われるのも納得、話者の息遣いが生かされた内容で面白かった。
お気に入りを下記に。
・春南灯
金木犀/ほっこりしたのち、ゾッとする…その落差がイイ。
遺影/鮮やかな対比に目を奪われる。
・夜馬裕
ほうたいさん/じわじわと沈み込んでいくような怪異にゾクゾク。
死猫三景/怪異自体はシンプルかと思えば、人の心が複雑に絡み合って味わい深い。
・マリブル
雛人形の首/これぞ人形の本懐…ええ話や…。
・篭三蔵
どの話も興味深いが、敢えて選ぶとこの二篇がスキ!
改竄/書き手ならではの、取材に伴う怪異が恐ろしい。人の心の危うさと、大いなるものへの畏怖とが印象的。
どうもすみません/可愛すぎて、見てみたくなる!
・北城椿貴
酒乱の地縛霊/体験者がご本人だけに、日常と地続きに在る怪異が非常にリアル。
・しのはら史絵
着信音/まさに王道、ストレートな怖さ!
太刀魚と刃/全国に、このように忘れられかけている戒めがあったら…?
・戸神重明
蚕よ、飛べ/群馬の養蚕業の栄枯盛衰、そして怪異。著者ならではの、情緒あふれる昆虫怪談が味わい深い。
守られた男/あちらの好意は、こちらの理屈では推し量れないものなのかもしれない…。
2020年2月の読了本リスト
川奈まり子「実話奇譚 怨色」
著者ならではの丹念な取材が光る、実話怪談本。
今までは土地の歴史を詳細に掘り起こす下りに差し掛かると、私のような快楽主義の自堕落な読者は途端に集中力を失ってしまったものだけれど、本書は生々しいストーリーてんこ盛りで、ページを繰る手が止まらずスルリと読み終えてしまった。
薀蓄もたっぷりな作風を好む向きもあるだろうし、そうでなければならない話もあるとは思うが、エンタメに振った(?)本作の読み心地は私にはとても良かったのだった。
お気に入りを下記に。
女坂/一見、地味に思える怪異だが、テンドン効果でどんどん怖くなっていく。
何の音/かわいい!
夫婦/ええ話や…。
欠けた青春/その、取り返しのつかなさが恐ろしい。
正木信太郎 しのはら史絵「異職怪談」
彩図社 (2020-01-28)
26種の職業にまつわる怪談を収録。ネットのサクラから神職まで、実にさまざまな職業の人々の体験が興味深かった。
本書の特徴として、取材インタビューの空気を詳細に描写していることが挙げられる。時には前置きが長くなることで焦らしのようにも感じられるが、体験談の語りに立ち会っているかのようで臨場感がいや増していく効果もあるように思う。
お気に入りを下記に。
はじめに/貴重なネパール怪談。
私は浅学にして、マーシャラーもクマリも知らなかったので、とても新鮮に感じられる逸話だった。
面呪縛/因果は仄めかされるのみだが、その不気味な余韻があとをひく。
真夜中の警報/この職場ならでは、な環境が恐ろしい。
巻き爪/通り魔のような怪異がえけつない!
画面の向こう側/人怖…。
春南灯「北霊怪談 ウェンルパロ」
竹書房怪談コンテストから、初単著。
北海道各地の怪異をその歴史から掘り起こし、丹念な現地取材が光る。アイヌ文化や熊害など、北海道ならではのご当地怪談の数々が味わえる一冊。
特筆すべきは著者の霊感体質。加門七海作品のような著者自身に肉迫する怪異が実にリアルだ。また、あとがきの丁寧な謝辞には著者の真面目なお人柄が忍ばれる。
私的お気に入りを下記に。
天狗の棲む島/いい話と思いきや…おそらく、人間の善悪や思惑とは、全く違った基準で動いているのだろうなぁ。
コロポックル/邪なるモノと、聖なるモノの対比が鮮やかで、幻想的なご当地譚だ。
ねこじい/猫には迷惑だけど、憎めない…。
うかーさん/しんみり、切ない人の心。それは、生きていたときと寸分も違わないものだ。
熱い場所/因縁が気になる…。
ガーコ/不気味極まる話!
幽霊飴/怪談執筆怪談で興味深い。




