
服部義文「蝦夷忌譚 北怪導」

北海道怪談、第二弾。
ご当地らしさは第一弾(☆)の方があった気がするけど、何処でも誰にでも起こりそうな怪異の数々は、我が身に置き換えて想像しやすくなったかも。
私的お気に入りを下記に。
手稲区のコンビニ/理不尽極まる、行きあっただけの祟れが恐ろしい。
岩見沢での遭遇/会ってみたいような、遭ってみたくないような…。
膜/これは、なんとも気持ち悪い怪異。命日だったのだろうか?
部屋と看護師と私/ホラーなのに、コミカルなタッチでフフッとなった。
旭川の流星群/神々しかったのか、禍々しかったのか。体験者の印象は後者のようだが、一度見てみたくなる。
花ちゃん/しみじみ、ええ話や…。
稚内の家/現場猫みたいなお父さんか可愛い。ラストから3行目の事実が一番怖いかも?!
(☆)第一弾はこちら。
籠三蔵「方違異談 現代雨月物語」
「高崎怪談会」で、ひときわ異彩を放っていた著者、待望の単著。
通常の怪談作品においては、怪異は描写されるとそこで終わり、因縁が説明されることはあれど、作中で決着が付けられるのは稀だ。しかし、本書では心霊や妖魔のカウンターとして霊能者や神仏が登場する。
怪異を書くにあたって、頼れる先があることは、まっこと羨ましいことである。
この世ならざる者と語らい、在るものとして付き合うスタンスは郷内心瞳による拝み屋シリーズに近い雰囲気かも?
私的お気に入りを下記に。
スコップ/こんな怪異と呼ぶには神々しすぎる超常現象なら、一度体験してみたいかも(前半に限り)。
ジョギング/ツイていたモノだったのか、それとも彼女こそが…?
約束/ええ話や…。
式神/百年前の人が気になる!
ハルちゃん/究極のプラトニック愛。手塚治虫「雨ふり小僧」好きならハートにきゅんとくること請け合いだ。
黒蟠虫/怪談収集における理想的な心構えが書かれており、実話怪談を集め、書いてみたい方は必読かと。
怪異のピースがピタリ合うさまは、おぞましくも美しい。
そして最終話、何気なく読んできた話がずしりと質量を持ち始め、肩にのしかかるようなざらついた質感が素晴らしい。
微笑ましい序盤からクレッシェンドで禍々しくなりゆく、異形の一冊である。
戸神重明「群馬百物語 怪談かるた」
群馬の具体的な地名も多い、かるた式怪談集。
怪談本を読みあさっている私だけれど、かるた仕立ては見かけたことがなかった。かなり珍しい試みではないだろうか?
実際にかるたが付録につく特装版があればなぁ、などと思った。
前半はどこかほっこり系の話が続く印象だったが、中盤からはめくるめく怪異の舞い踊り!
同じ体験者の話が連作風に繋がるのも興味深いし、短編でテンポよく読めるので、忙しい現代人にこそオススメの一冊だろう。
私的お気に入りを下記に。
十二、お 大間々町の 稲荷信仰
一年も続いたとは!気づいてからは、一件落着で何より。
十九、か カメラに映る 高崎郊外の G老人
ラスト一行にゾッとする。金色というと、普通は神々しいイメージなのだが、この場合はどうなのだろう。
二十七、け 県都前橋 怪異も多し(二)
怪異のビジュアルがものすごい…!
黒木あるじ 編著「怪談四十九夜 鬼気」
怪談四十九夜シリーズ、七冊目。もしかして、四十九冊まで続くのだろうか…??
不肖わたくしも一巻から参加させて頂き、身の引き締まる思いだ。
今回は都市伝説パートがなく、フルに怪談となっていた。
各著者の作品から、お気に入りを一編ずつ選んでみる。
我妻俊樹「赤い幽霊」レアな海外怪談。パートタイムで凶悪ながら、どこかユーモラスにも感じられる。
葛西俊和「重さ」家族の絆。ええ話や…。
田辺青蛙「幽霊画の話」商売における吉凶の不思議。
丸山政也「エリカ」バンドをそう名付けたとき、この運命が定められていたのかもしれない。
冨士玉女「いいから」これまた、ええ話や…。
つくね乱蔵「コッカッ」厭な音が、読者の耳にも響いてきそう。
吉田悠軌「まだら猫」もしかしたら、山猫だったのかも…?
黒木あるじ 独立した一編一編が渾然一体となる仕掛け。意外性で勝るのは最終話だけど、最初の「おんなのこ」が言いしれぬ不気味さを纏っていて好みだった。
黒史郎「ぽい」主体を喪ったそれは模倣し続けているのか、それとも主体そのものに置き換わっているのだろうか…。
p.s.その1 著者同士は(たぶん)他の著者がどのような内容の怪談を執筆したのか知らないので、今回は〈バンド〉と〈黒髪〉がシンクロニシティしているのにビックリ。オーバーラップするようでいて異なる怪異をテイスティングして頂ければ幸いだ。
p.s.その2 本文中には上手く盛り込めなかったのだが、拙作『兆髪』『死髪』の髪にまつわる怪異の体験者は、実は同じ姓の持ち主。血縁なのかどうかはプライバシーもあって不明だ。



