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椎名誠「ひとつ目女」

ひとつ目女ひとつ目女
椎名 誠

文藝春秋 2008-11


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『シーナがSFに帰ってきた!』なる、ある種の人間には非常に魅力的なキャッチコピーがオビに踊る。
 高所生活者だった主人公は、逃げた動物を追う仕事のため奇怪なテントに分け入るが、そこでひとつ目女に出会い、彼女と旅をする羽目になる。

 本書は年々拡がるシーナSF世界に在り、戦争のために作られた悲しき生命体『つがね』など、既刊で見かけた設定が引き継がれている。かといっていちげんさんを拒否する作風ではなく、シーナSFを全部読んだことのない私でも充分に楽しめた。
 とくに、アフターウォーの人外魔境で生き生きと暴れる奇怪な生命たちの描写は、シーナの面目躍如たるところで、これを味わえただけでも、私は本書を読んで良かったと思う。

【この先ネタバレ注意】





 ただ、本書の不満はヒロインの謎が解かれないところだろうか。そこが余韻を残すのかもしれないが、ややモヤモヤした読後感となってしまう。
 そして、主人公が不思議。彼は殺されかかっても淡々とピンチを切り抜けてゆき、誰もがむしゃぶりつくオンノの美貌にも興味を示さないのだから。主人公も、この世界でもうとっくにアタマを弄られてしまっているのかもしれない。

加藤実秋「ホワイトクロウ」

インディゴの夜 ホワイトクロウ (ミステリ・フロンティア)インディゴの夜 ホワイトクロウ
加藤 実秋

東京創元社 2008-11


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 個性的なホストたちがトラブルを解決する、日常の謎系ミステリー「インディゴの夜」第三弾。

 読み始めこそは、あれあれ前作「チョコレート・ビースト」よりもパワーダウンか? と思った。
 毎度毎度ホストクラブ内での事件ではネタに限りがあるためか、今回はホスト一人一人がクラブ外でトラブルに巻き込まれてゆくのだが、ホストたちのキャラがあまり立っていないように感じられ、またタイミングなどに出来すぎなところが見受けられ、私にはあまり楽しめなかった。
 だがラスト、ああこれは連作だったのか! という出来事が読者を待ち受けており、そこにミステリーらしさを感じた。

インディゴの夜 (創元推理文庫) インディゴの夜 チョコレートビースト (ミステリ・フロンティア)
 シリーズ一巻は、文庫化されている。夜景の表紙シリーズ、統一感があって好きだったんだがなあ。

読書日記です。

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pnuのアカウントはもう使用されていたんで、bookfedにしてみた。
まあ、読書ブログっぽくていいんではないかな。
ログインがちょっぴり面倒だけど。

デイナ・コールマン「もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない!」

もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない!-ある鑑識の回想もう二度と死体の指なんかしゃぶりたくない!
山田仁子

バジリコ 2008-10-03


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Dana Kollmann NEVER SUCK A DEADMAN'S HAND
副題「ある鑑識の回想」

 民間から鑑識に登用された女性のすさまじい体験記。巻頭には珍しい屍蝋など、さまざまなカラー写真も掲載。

 最初、いきなり鑑識を辞めるシーンで始まる本書は、その後著者の幼少時代から鑑識になる前までの半生記に突入していく。これがアメリカン・ブラックジョークたっぷりで、翻訳文に慣れない自分は投げ出しそうになる。そこを乗り越えれば鑑識のショッキングにしてキャッチーな犯罪実話が期待以上の迫力で繰り広げられるのだが、自伝部分は後にまわしても良かったんじゃないかと思う。

 初の民間登用鑑識員として捜査に関わる著者だが、そこにはセクハラと大人気ない嫌がらせが付き物だった。きついきたない危険が揃い踏みのこの仕事を、イジメを受けてまでなぜ著者がやり抜けたのか不思議だ。それだけやりがいがあったということなんだろうか(著者がユーモラスに書いているだけかもしれないが、アメリカのイジメがやけに明るくドライなことには驚いた)。

 鑑識捜査の記述は素敵なのだけれど、『動物』と『排泄』の章はいらなかったのでは。面白いことは面白いけど、鑑識捜査じゃないし。まあ、著者の自伝を兼ねているということか。

p.s.実にアメリカ的なブラックジョークが満載なので、もしこれがジョーク耐性の少ない日本のウェブログだったら、大炎上の予感。面白いし、私は好きだけれど。
「私の王子様はどこかしら?」なんて、日本人だったらなかなか言えないよなあ。
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