2020年1月の読書まとめ
黒木あるじ「怪談売買録 嗤い猿」
怪談界隈でこの作家を知らなければニワカだと言い切れるほどの、トップシーンをひた走る作家である。そのリーダビリティは他の追随を許さず、ありふれた(というか、しばしば聞くタイプの)怪異であっても、黒木あるじの筆にかかれば思わず新味を覚えるほどだ。
これが褒め殺しでない証拠に、拙作も掲載されているアンソロジー(四十九夜など)を体験者に献本すると、必ずや《この、黒木あるじという人の作品が良かった》と言われる。そんな彼我の差には茫然とするばかりであるが、とりあえず私的お気に入りを下記に。怪談入門者も怪談ジャンキーをも同時に魅了する怪異が本書にもまた、健在なのである。
シャツ持ってきて/怪異自体はありがちなのだが、語りにすごみがあればここまで鮮烈な印象をもたらせるのかと、感心しきり。
嬉しそうな声/ワケを知っていそうな、上司もちょっと怖いかも。
五階/とても気になる終わり方…!
あげる/こんな、不条理すぎる怪談こそが真に怖いのかもしれない。
新宿駅の内臓/見てみたいような、見てみたくないような…印象的すぎるワンシーン。
2019年12月の読書まとめ
真白圭「実話怪事記 憑き髪」
軽妙洒脱な著者の怪談は軽すぎず重すぎず、サクサク読めて楽しい。
表題作は、どこかレトロというのか、クラシカルな趣があるなぁと思ったらあとがきで納得。
お気に入り作品を下記に。
引っ越し祝い/怪異自体は地味なのだが、いかにも身の回りで起きそうなそれはとても不気味だ。
幽体離脱/ボーダーラインの揺らぐさまが恐ろしい。
乗り換え/男性には乗らないのかな??
迷い家/因縁を知りたくなる!
静止/その一瞬、映像で見てみたい。怖さの理由に納得。
調光/こちらもまた、怪異の一瞬が鮮やかで興味深い。
さたなきあ「純粋怪談 惨事現場異話」
自分が怪談ジャンルでデビューする前から、私はこの著者のファンでよく著作を読んでいた。
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饒舌文体というのだろうか、読めば不可思議な空気に包み込まれてしまう、独特な読点のリズムが癖になるのだった。
竹書房に移籍された今回も、読点こそは以前より控えめに感じられたものの、現実から怪異に読者を引き摺り込む豪腕は健在。
お気に入り作品を下記に。
路地の女/それはただそこにいただけなのに、異様すぎるビジュアルが脳裏に焼き付くようだ。
外付け階段/それはアリジゴクのように、ずっと待っているのだろうか…。
優良物件を求める① 貸し間をさがす/まるで注文の多い料理店のように恐ろしい!
ゴミ捨て場彷徨/描かれないところがおぞましい想像を惹起させる、狂気のにじむ一品。
立地は申し分なし!①鈍感は美徳/高い時給のワケがとても不気味だ。



