できれば本に埋もれて眠りたい -40ページ目

NY書籍事情

NYに1週間行っていたので、そのあたりで更新ができませんでした。
その間見ていただいた方、すいません。
また、どんどん書いていきたいと思いますので、また見てやってください。

今回はせっかくなのでNY旅行にまつわる本の事情について書きたいと思います。

まず、今回一番驚いたのはブックオフNY店でしょうか。
http://www.bookoff.co.jp/shops/kaigai02.html
現地の人間に聞くと、置いている本はほとんど和書で、日本人がほとんど利用しているそうです。マンガも立ち読みできるみたい。
さすが、ブックオフ。

地元の本屋にもいってきました。
まず、日本との違いは閲覧専用の大きなテーブルとイスがあること。
そこで、大体の人は本を山にして読んでいるのですが、中には新聞を読んでいる人や、本も読まずにずっとノートに書き込んでいる人もいました。
完全に図書館ですね。

雑誌系もチラッと見ました。
とにかく種類が多く、さすがは雑誌王国といったところですが、目に付いて面白かったのは、仏教系の本がスピリチュアル系に分類されているのと、色々な種類のサークルの募集が書いてある雑誌。
それとペット系の雑誌も多いのですが、特に多いのは犬系。
ざっとみただけでも
DOGS★USA
DOGFANCY
DOGS ANNUAL
THE NEW YORK DOG
DOGS FOR KIDS
moderndog
と豊富です。
THE NEW YORK DOGmoderndogあたりは「おしゃれに犬を飼う」みたいなかんじでソフティケイトされています。

で、やはりありました、日本マンガ。
ジャンプは写真のとおり、人気漫画だけ抜粋されて売られていました。
単独売りでは、「INUYASHA」なんかがあって驚いたのですが、一番人気は「遊戯王」。ジャンプの表紙にもなっていますし、単独売りもありました。
でも「YU-GI-OH」とか「YU・GI・OH」とか表記がばらばらなのがアメリカ的で笑えました。

小説関係はこちらもちらっとしか見ていませんが、ダヴィンチコードが棚一面に置いたあったので、やはりこの辺が売れ筋のようです。

といった感じです。
久々の海外旅行だったので、よく行っている方から見れば当たり前のことかもしれませんが、小さなことでも結構、新鮮でした。
いい刺激になりました。

成田NY間は片道12時間ぐらいかかり、色々本を読めるのを楽しみにしていたのですが、行きはガイドを読み、帰りは絵日記を書いていたので、読めたのは舞城王太郎の「阿修羅ガール」ぐらいでした。これについての書評はまた書きたいと思います。

しかし、ガイドブックを見ていて、ニューヨークを堪能する小説として、ポールオースターの「GHOSTS」。うーん、どうでしょうか。しかし他にいいのが思い浮かびませんね。
ジェイ・マキナニーの「ブライトライツ・ビックシティ」とか・・・。古いか。
東京を堪能する小説というと今は吉田修一の「パーク・ライフ」とかになるんでしょうか。

三島に行ってみた

金閣寺三島由紀夫
三島由紀夫ほど、人生のことが分かってしまったら、生きていることはどんな感じなんでしょう。
生きていく意味を見出せていたのでしょうか。

金閣寺は、ある青年の内面を丹念におった告白体の小説です。
それは、非常にうっとうしく、共感を呼ぶものではないのですが、いくつもの深い洞察が含まれています。

なにかを信じて生きること。
そして、ある日、信じることができなくなったとき、人はどのようにしたらよいのでしょうか。
分かった上で、まだ信じるふりをするのか。
ものを信じることができなくなり、空疎で虚ろになっていくのか。

三島由紀夫はどのように思っていたのか。
知りたいと思います。

カワムツの朝、テナガエビの夜

野田知佑日本で一番面白い・歴史が長いカヌーエッセイストです。
この本は、01年4月から03年04月までBE-PALに連載されたもの。

中の写真をみればわかりますが、野田さんも年をとった。
でも、まだ毎日カワムツを見ても飽きないし、夜テナガエビをとりにいったりする。
川ガキ養成講座をひらき、川で遊べるガキを養成する。
国土交通省の悪行を暴く。村の選挙の不正を笑う。
威張って権力をかざした役人が近寄れば海に落とそうとする。

まだまだ見ていて気持ちのいい年の取り方をしています。

ただ、この本を読んで初めて岡田昇氏が遭難したのを知りました。
また、漫画家の青柳裕介に死ぬ前に会い、「やりたいことはみんなやったから文句はない」といったそうです。
そして、野田知佑自身も「ぼくも死ぬ時、あんないさぎよい顔ができるだろうか」と問うています。

もともと「命がけのアウトドアを楽しんで死ぬ自由」を主張してきた野田知佑にとって、もうそろそろ「死」について気配を感じているのだろう。

それでも、きっと最後までかっこいいだろうし、見届けたいとも思います。

ちょっと待ってくれ。それはないんじゃないか。

半落ち
横山秀夫
ちょっとだけネタばれになりますが、書かせてください。

映画化して有名なやつですね。
横山秀夫は、「クライマーズ・ハイ」や「深追い」を読んで安定感もあったので楽しみにしていました。
文学賞メッタ斬り」でも大森望が「映画はメロドラマになっていたんだけど原作は・・・」みたいな発言もあり、少し期待もして、図書館で借りたんです。
映画化して話題の作品を、早いタイミングで図書館で借りれるのもうれしかったし。

読み始めると、確かに面白い。
章ごとに主人公を変えるやり方も、まぁよかったかも。
テーマもいつもどおり、組織で生きるタフでハードな男と、容疑者の純真な思い。

妻を殺した後の、謎の空白の2日間。
で、引っ張って、引っ張って最後の最後、刑務官の古賀と捜査一課の志木が会う瞬間

ページがなくなっているではありませんか!

まいりました。
ミステリー系でそれは反則だと思います。
謎はまったく解けていません。
こんなことがあるなんて、聞いたことはありますが、初めてです。

いやぁ、本自体のしかけにやられるとは。

日本人は永遠に中国人を理解できない

1、著者の「孔健」は孔子第75代直系子孫
2、今の中国では「徳」より「金」
3、政府もそれでOK
4、なら商売上手の中国人が商売で負ける分けがない

と箇条書きに書いてみましたが、96年に執筆されたこの本を読んでみて、あらためて人的能力においても、中国の現在の発展が分かります。

内容は

1、日本人の中国人に対する誤解の説明
2、中国人からみた中国人
3、中国人からみた日本人

となっていて、いささか中国人の言い分けめいたところが目立つところもありますが、むしろ日本人の中国人に対する認識の甘さのほうが目立ちます。
中国で商売をして、ぼってやろう、というのは、商売の権化相手に甘すぎるようです。
友人に金を貸すのにも、評判を確かめてから貸すような人たちです。

中国人を理解するキーワードとして

1、騎馬民族・大陸民族(多民族が入り乱れ、一瞬の油断もできない)
2、乱世・貧困(自分の知恵しか頼れない)
3、社会主義・人治主義(人のつながりが大事)

というのが挙げられていました。
こんな人たちの第一目標が「金」で、社会的にもそれでOKなら、うーん、中国の発展はまだまだ続きそう。

最近の小説を読まなくなった理由と読もう思う理由

文学賞メッタ斬り
大森望 豊崎由美

本日「文学賞を斬る」を読了しました(偶然ですね)。
しかし豊崎由美氏、とても女性とは思えません。
かっこよすぎる。

内容は、様々な文学賞受賞作の内容を、純文学の見識が高い豊崎由美と、ライトノベル・SF・エンターテイメント・ミステリ・純文学と全方位的なカバー範囲を持つ大森望が対談方式でバンバン批評していく、というものです。

とくに面白いのが、「選考委員と選評を斬る」。
たとえば、山本文緒プラナリア」142回直木賞受賞作の津本陽の選評
「・・・内容はたいしたことではない。市井のゴミのような話である。」
を紹介しています。

選評としてこんなのはありなんでしょうか。
しかし、率直なところは信頼ができていいと思います。
ただし津本さん、この本を読んでいくと、どうやら率直という話でもなさそうなのです。

最近の文学には基本的にはあまり興味がなかったのですが、これだけ文学界を愛している二人の対談を読むと、ちょっと興味が持てるようになりました。
裏表や細かいデータが律儀で、よかったです。

最後のページには2003年8月までの最新の各賞の受賞作を福田和也の「作家の値打ち」方式で書かれているところも好感が持てます。
まぁ、ただこれでは、読む参考というよりは、読まない参考という感じですが。

ただ、「作家の値打ち」ほど、内容の厚みはないので、逆に気軽に手にとって読んでみてください。

とにかく今は、舞城王太郎らしいです。

夜、村上春樹の収まる場所

Portrait in Jazz
絵 和田誠
文 村上春樹

「しかし生身のスタン・ゲッツが、たとえどのように厳しい極北に生を送っていたにせよ彼の音楽が、その天使の羽ばたきのごとき魔術的な優しさを失ったことは、一度としてなかった」
「しかしそれ以上に遥かに、ゲッツの演奏は見事だ。それは天馬のごとく自在に空を行き、雲を払い、目を痛くするほど鮮やかな満点の星を、一瞬のうちに僕らの前に開示する。その鮮烈なうねりは、年月を越えて、僕らの心を激しく打つ。なぜならそこにある歌は、人がその魂に密かに抱える飢餓の狼の群を、容赦なく呼び起こすからだ。彼らは雪の中に、獣の白い無言の息を吐く。手にとってナイフで切れそうなほどの白く硬く美しい息を・・・・・・。そして僕らは、深い魂の森に生きることの宿命的な残酷さを、そこに静に見て取るのだ。」

と、村上春樹がここまで得意の比喩を駆使して対象に真剣に迫ったことがあったでしょうか。

この本は、村上春樹の手加減なしの比喩とJAZZへの熱が楽しめる本です。
たとえJAZZ、音楽に興味がなくても、村上春樹の心に染みる比喩が読みたい人は必見です。

そしてもちろん、和田誠の絵もいい。
ちょっととぼけた感じの絵ですが、気合がはいっているのは、背筋がピンとします。
その、まっすぐにJAZZを見つめる目や、酸いも甘いも塗りこめた表情、あらゆる深みを均一にしてしまう楽しさなどが、絵に表れています。

経緯としては、和田誠が趣味でJAZZのアーティストを描いていて、その展示会を見た村上春樹が、「この絵になら、文章がかけそうだ」と思ったことが始まりだそうです。

しかし何にせよ、静かな夜更けに、一人、この本を読む心の収まり具合は、そう他にはないものです。

ノンフィクションと世代論

野村進
コリアン世界の旅
事件記者になってみた
脳を知りたい
まだこの3冊しか野村進の本は読んだことがありませんが、「自分の分かったことだけを書く」という基本姿勢があり、読みやすく興味がもてました。

コリアン世界の旅」は、韓国・朝鮮系の人のルポで、今までよくあった、「虐げられた歴史」ではなく、自分の目耳で知った今のルポとなっていて比較的政治臭がなく読めました。
タイトルと表紙がなんとなくよかったのもあります。
1997年、第28回大宅壮一ノンフィクション賞と第19回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞。

事件記者になってみた」は、月刊「現代」で1993年に連載されたものを集めたもの。
野村進らしく、政治(金丸逮捕)災害(奥尻島)から皇室・家族・医療まで幅広く取材しています。ここで特徴的なのは、「現場にいって見る」ということで、そこでテレビや煽情的な週刊誌の記事とは違うものが、あたりまえのように見えてくるのが面白い。いまではネットでテレビとは違う情報があたりまえに入ってくるが、当時は今より「現場」が貴重だったのだと思います。

脳を知りたい」。これも表紙がよかった。内容は、睡眠障害や幼児教育の功罪、脳の故障(鬱)などこれも平易に書かれていて、今日的なトピックの迷信を解いてくれたり、分かりやすく科学的に理解できます。

3冊読んでの感想は「良心」でしょうか。
どれを読んでも、いったん自分で咀嚼して、読者に読みやすく書き出しています。そこには、できるだけ内容に余計なバイアスがかからないような配慮がなされています。だからこそ手垢にまみれた「韓国・朝鮮系」のルポも新鮮に読めるのでしょう。

しかし、どうしても団塊の世代の「政治」や「労働」の部分で「学生運動臭」がわずかにします。
1956年ということで、多少ずれてはいますがこのころの洗礼は受けざるをえなかったのではないでしょうか。

たとえば週刊「文春」「新潮」などの週刊誌に対して「おじさん雑誌なんか読みたくない」といって出てきた「SPA」のように、団塊の世代とは違う思考を持った世代は存在します。
そういった人たちのノンフィクションを読んでみたい。
きっともっとサイズ違いではない、ぴったりとフィットしたものが読めるように思えます。

世代論は不毛、という意見もありますが、私自身は絶対ではないにしろ、1つのものさしとして意味があるものだと思っています。

と、良心的な本を読んでしまったので、つい、欲が出てしまいました。
野村進 の簡単な紹介ページがありました。

杉浦向日子はどこに行ったか

杉浦日向子といえば怪作「百物語」について書きたいところですが、ここはちょっとおめでたそうな「大江戸美味草紙」について。

江戸の食事情についてかかれたものですが最初の一行

三日喰雑煮で知れる飯の恩

から始まり、まずは江戸っ子の米好きについて書かれています。

たいがいにしろと数の子引ったくり

と、これは飯の友だけど当時ありふれていた数の子で、大事な銀シャリを食われちゃなんねい、というものです。

とこのように江戸を愛した杉浦日向子の多くの知識の中から、粋で面白いものを取り出したものです。

図版も多く簡単な読み物としては、しゃれていてなかなか楽しめます。

しかし今は杉浦氏、文筆活動を停止しているという話。
才能が埋もれていくことは残念でなりません。
復活を期待したいと思います。

さて、遅くなりましたが、ごらんいただいている方、昨年はどうもありがとうございました。
思い他定期的に読んでいただいているようで、気が付けばもうすぐ50本です。
自分でただ書いているだけではここまで書けません。
周りのブログを拝見させていただき、コメントやトラックバックがあったからこそ、さして苦労も感じずやってこれました。
今年もぼちぼち書いていくつもりですので、よろしくお願いいたします。

突然、木について知りたくなったとき、「森の博物館」

森の博物館稲本正
昨年ぐらいから、柳宗悦にはまり、急に「民芸」だの「手仕事」だのいう世界に興味を持つようになってきました。
そうすると「材は欅の一枚板を・・・」などという話がでてくるようになります。
そこで、杉と檜の違いとは、みたいなことを知りたくなって珍しく購入した本です。

内容は、30種の木の説明。杉、檜といったポピュラーなものから、かつては使われていた、栗や一位、初耳のネズコや栓などの山での植生から材木としての利用のされ方、歴史などについて書かれています。

たとえば、今は花粉で目の敵にされる杉は、材木としては強度もそこそこあり、水にも強く、見た目もすっきりとしていて日本人向きで、材料としては人気があったからこそ、あれだけ植林されたということです。

また、私の好きな欅は強度の強い木で、木目もしっかりと力強く出ることから家具などに使われることが多い。

檜は、水・虫に強く、寺や神社など長く残すものに使われることが多いそうです。世界最古の木造建築物である法隆寺も材は檜です。あの独特の香りにより人には好まれ(檜風呂!)、虫が寄りつかなくなるそうです。

などという話が色々のっていて、つい手元において、植物園にでかけたくなる本です。