できれば本に埋もれて眠りたい -37ページ目

いとうせいこう、きみはなにをやっているんだ

itouseikou岩だらけの懐かしい星いとうせいこう


もしも、友人のおばさんが南米に出稼ぎにいっていたら。

それも、理由もよく分からずに。


いとうせいこうはそんなところから、明治生まれのおばさんの謎解きを始めます。

地味なノンフィクションライターなら分かりますが、あの、計算高そうな元広告代理店のいとうせいこうが、です。なんで?


金曜深夜番組の「虎の穴」では、あんなに芸能人なのになんでそんなローカルなこと。

そういえば「見仏記」でもなんだかTVでみるよりずっとまじめそうだったなぁ。

当時の手紙、当時の知り合い(まだ生きていたりする)、果てはペルーまでいったりしている。

「なんで俺がここに?」という感覚をもちながら、おばさんの謎が全身を巡っている。

恋愛・結婚・三角関係・財産・農園・雑貨商といろいろなキーワードがでてくるが、本質まではわからない。

どうも南米に行くことは大変な作業だけど、行きつけのスーパーを変える程度の気安さでいったみたいだ。


明治女のその気安さはなんなんだ。


ま、なんでこんな本読んでしまったんだろう、と思ったんですが、表紙を開けたところにあるいとうせいこうのペルーでの写真が、「遠くまできちまった」感がすごくでてて、つい、手にとりました。

しかし、いとうせいこう、余計な想像力は多々あり。

本には必要なかったが、さて現実はどんなの、と検索してみるとこんなの。


http://www.froggy.co.jp/seiko/


うーん意外に面白い。

思ったよりバカにできなく困りました。

本格小説

honnkakushousetsu本格小説水村美苗


聞いた話によると、フランスでは専業の作家というの実に少ないそうです。

それは、必要のない作品を書き作品が荒れることを防ぐため、別に職を持っていることが当たり前だからだそうです。


なるほど、と思います。

佳作でも、なにも言われない、そういう文化環境はすばらしいと思います。


さて、「本格小説」です。


と、その前に水村美苗のデビュー作について。

読んでないのに色々いうのは反則だとしりつつ、書きます。


日本での最高峰といえる夏目漱石の遺作の続編「続明暗」を書いてしまう、その不遜さ。

自分に対するその厚顔なまでの自信は、買いです。


で、その傲岸不遜な作家が書く「本格小説」。

よろしい、受けてたとうではないか、と手にとりました。


これが、当たりでした。


次作に迷う作家。そこに偶然が訪れ、ある人物の過去と自分の接点が紐解かれる。

ある男の戦後の混乱と日米をまたにかけた一代記と、大富豪の美人三姉妹の数奇な運命。

そして、その偶然をとらえ動きはじめる作家の筆。


全体を覆っているのは倦怠感です。

自分の力では乗り越えられない貧乏。親の財産を元にした退廃を身に宿す令嬢。帰国子女の祖国喪失感。

ある環境から一歩外れたときの、やりきれない人生の徒労感を抱えながら、なにかしらの希望を見つけようとする態度は、世界も自分も分かった上でもう一歩踏み出す力になります。


まだ、「続明暗」「手紙、栞を添えて」「私小説」「本格小説」と佳作の作家ですが、良しとします。

ただ、静に次作を待ちましょう。

潮騒を読む

潮騒三島由紀夫


ま、古典的正統青春小説でしょうか。

三島由紀夫もまっとうな古典を書いてみたくなったのかな、と言ったかんじです。

ただそこは三島由紀夫、最後まで読ませるだけのすらすらと読める美文と

シンプルで古典的ででもやっぱり惹かれてしまう登場人物のため、最後まで読んでいられます。

大作家ともなると、こんな作品も書いておかなきゃ、といいたところでしょうか。

解説もなんだか困っているようでした。


ただ、「潮騒」ではどこにもたどり着けなさそうです。


次の三島は「仮面の告白」で、その次が「豊饒の海」ですかね。


それぐらい読めば三島由紀夫の全貌がつかめるんでしょうか。

日本の風土病、里山、ノンフィクションライターの行く末

shinokai

小林照幸「死の貝」
小林照幸
「毒蛇」 以来の2冊目です。


内容は日本住血吸虫の克服についてです。

この病気、こわいです。

かつては山梨県や広島県に分布しており、この虫が体の中に入ると、

腹水がたまる、栄養障害が起こる、などして死に至る寄生虫病でした。

この病について、文献では江戸から確認されていましたが、「水が悪い」ことが原因と考えられていました。

しかし、その地方に住んでいる住人にはどうすることもできず、ただただ恐れていることしかできなかったようです。

明治維新後、寄生虫らしい、ということが分かり、多くの医師の尽力によってその予防や治療が官民一体となって行われ、やっと30年ほど前にほぼ絶滅、というところまでこぎつけた、ということでした。

しかしそのためには、大量の殺貝剤、小川のコンクリートによる整備など、今の感じからいえば「環境破壊」と言われかねませんが、さすがに寄生虫とは共存はできません。

「里山は、自然ではなく、人間が手をいれてこそ、里山」とも言われているとおり、あるがままの自然を受け入れることは、人間には幻想なのでしょう。

それこそ、本当の意味で人間にとって都合のいい(自然がなくなれば当然人間にも害があるので)共存方法を見つけなければ、という思いを改めて持ちました。


いや、しかし、久しぶりに本を読んだ気分です。

ノンフィクションとして、しっかりしていて、「小林照幸面白いな」と思い、ちょっと検索するとこんなHPもありました。


田中一村と遊印


「田中一村と奄美」で、『神を描いた男・田中一村』について「フィクションとノンフィクションが混ざっている」などと色々言われています。

そうか、開高健奨励賞もとってデビューからちょっと気にかけていたんですが、少し残念。

でも、分かる気もします。丹念に文献を追いながら話を作っていくことは得意そうですが、芸術とかは不得意そう。

まあ、誰にでも勇み足、というのはあるものです。少なくても「死の貝」は面白かった。

薬学出身ということで、それ系のをまた読んでみたいと思います。

フィラリア

ふーん。マラリアじゃなくて、みたいな。

Oak Villageにいってみた

前に書きました「森の博物館 の著者、稲本正さんの主催する飛騨高山のOak Villageにいってみました。

ここは、飛騨高山の匠集団の工房で、木にこだわりストラップから建築まで国産部材にこだわり、製作・販売をてがけています。

そこで材料ツアーに参加して、材料部の住さんから、創始者が30年前に誰も目をつけていなかった楢(なら)の大木の仕入れをはじめ、いまではその大木をつかい楢材では世界一の家具を製作している、というはなしを聞きました。


樹齢400年の板材に表れた節を、「味があって、この板がかわいくてしょうがない、売れなければいいのに」といっているあたり、木への愛情が感じられました。

本と現実が接している部分に、その格差と面白さに改めて思いを深めました。


今は飛騨高山から移り、金沢のホテルのビジネスルームから更新しています。

ブラウザ更新って便利ですね。

釣り人の「マジで死ぬかと思った」体験談 つり人社出版部

tsuribito

「サル!」「山ビル!」「クマ!」「マムシ!」「スズメバチ!」「ハブ!」「アカエイ!」

 

この本を読んでいると、ああ、釣り人とはなんて自己矛盾を抱えた人たちなんだろう、と思ってしまいます。

 

釣り人にとっては、できるだけ人のいない場所が、いい釣り場なのです。

そのせいで、道なき山を藪を掻き分け登り、草木も生えていない海の小さな岩礁に1日佇み、落石のある断崖を降り、いつ崩れるかもわからない雪渓を越えて、雨の中、雪の中、嵐の中、行くのです。

 

で、そこに待ち構えているのは、かわいい魚だけではありません。

凶暴な群れたサル。

湿度の高い森のなかで葉先に立ち上がる山ビル。

胸まである長靴を履き、浜から海に入っていくときに、海底で地雷のように待ち受けるアカエイ。

 

「アカエイ?」と思われるかもしれませんが、尾びれに毒針があり、間違って踏むと何度も針を突き刺してきて、場合によっては死にいたることもあるそうです。

 

そしてもちろん、生き物との出会いだけではありません。

テトラポットから転落とか、漂流とか、沖磯放置とか、低体温症とか、もう本当に話題には事欠きません。

電車の架線に感電、というしゃれにならないのもあります。

 

つり人社出版部発行という、きっと図書館や普通の本屋では目に留まらない性質の本ですが、とある事情で釣具屋に行ったときに、これを逃すときっと二度と買えない、と思い買ってしまいました。

色々な意味で油断している本ですが、「異文化」という意味でも興味深い本でした。

山本周五郎に訪れた奇妙な出会い

aobeka青べか物語山本周五郎

山本周五郎に、霧が晴れるような切れ味のようなものがないのはなぜでしょうか。

義理や人情や熱情や世間のようなものは、溢れるように描かれているのに。

元来ないとか、その方向を求めていないとか、回答は人それぞれ色々あると思いますが、私は、それまでに重ねてきた苦労の荷が少し重すぎたせいで、ちょっとだけゆがんでしまったのではないかなと思います。

そのせいで、すっと素直さがでない。

出ても頭を叩いてならして、そんなに物事はうまくいかないことにしてしまう。

しかし、「青べか物語」は、千葉の寒村に暮らす人々のあまりに貧乏で世知辛い暮らしの話なので、山本周五郎のゆがみが、周りのゆがみとくらべるとより湾曲が少ないように思われます。

山本周五郎は、ここで少し余裕を持てたのでしょうか。

ゆがみながらも、すっ、と楽しんでこの村のことを書いているように思われます。

そういった部分は本人は気づかなく、多分こういった場所に住まなければけして現れなかった、気持ちのいい山本周五郎のなかでは稀有な作品ではないでしょうか。

小説好きというよりは、ドキュメンタリ・ノンフィクション好き向きの作品です。

どこにいくかというと

teshigoto

ここしばらく更新が思うようにいきません。

まぁ、処々の理由があるのですが、うれしい方の理由はGWの準備のためです。

「島に行きたい」とはかいたもののNY遠征もあったため、お値段の関係で高山-金沢の焼き物めぐりの旅になりそうです。

柳宗悦の「手仕事の日本」を読んで以来、繰り返すことにより人間の手によってデザインがシンプル化していくもの、たとえば焼き物とかが面白いと感じています。

で、簡単に手に入り分かりやすく、少々数があってもいいものが、焼き物なんですね。

人気があるわけです。

その対極は家ですかね。庭とか。

ちなみに眼福の旅になる予定です。

山にも少し入る予定ですが。

 

とはいえ、本はぼちぼち読んでいます。

何度か書いているのですが、アップされず敗退することも多く、イチローの打率よりちょっといいぐらいで成功します。

その結果が週一更新のようになってしまいました。

最近のヒットは水上美苗の「本格小説

イマイチは吉田修一ランドマーク

どこにいくか心配なのは金城一紀

そろそろ現存じている作家は少しお休みにしようかとも考えています。

また書きます。

 

しかしまだ宿予約しきれていないのですが、さて。

始まりの一冊

目的のない読書から目的のある読書に変わったときのことをよく覚えています。

漠然と世界に違和感を感じ始めたころ、偶然見ていたTVドラマの番宣で富田靖子が

「この本を読んで自殺した人もいるんだよ」

と言っていた本が、太宰治の「人間失格」でした。

すぐ立ち上がり、本屋に行って買って読んでみても、人生のことなんかなんにも分かりませんでした。

それからでしょうか。

目的を持って本を読み始めたのは。

好きな本は色々ありますが、「本」自体とであったのは、あのときが最初のような気がします。

 

しかし今思えばあまりにも芸がない始まりですね。

まぁ、何事もそんなものなのかもしれませんが。

島に行きたい

そろそろGWが近くなってきたので、旅先を物色し始めています。

遅いんですね。

そんななかで借りたのがこの一冊

島 日本編」長嶋俊介、斎藤潤、仲田成徳、河田真智子

私は結構島旅が好きで、それも小さくて都会から遠いところを狙っています。

それは、小さい方が社会も小さく、より人に触れる機会も多いからです。

旅で妙味には日常生活では会わないようなアクシデントで、それは社会が小さい方がおもしろい。

1000人のうちの一人より、10人のうちの一人のほうが、人と接する距離も当然近いわけですから。

この本では、いわゆる名勝旧跡紹介のガイドブックではなく、かといって統計データ本としてでもなく、

そういった、島独自のよさを中心に書かれた本です。

執筆者は、島旅好きのライターで、色々な視点で島の楽しみ方を書いています。

なかなか面白いのは、島紹介とは別のコラム

「島の温泉」「島の味」とかあるのですが、「島のローカルルール」というのがあります。

小笠原の父島・母島では「初産だけはできるだけ本土の病院ですましてもらう」

これはきっとなにかあった時のためでしょうけど、隔絶していますね。

田代島「イヌを飼わないこと」言うかね、そういうことを。

鼠から船荷を守るため、猫を大切にし、猫の嫌うイヌを飼わなくなったそうです。

今でも島にはイヌはいないそうです。

どうしても執筆者の主観や自分の体験が入っているので、一般的なガイドブックとしては読みにくいのですが、副教本としては、なかなか凝っていて面白い本でした。