本格小説
聞いた話によると、フランスでは専業の作家というの実に少ないそうです。
それは、必要のない作品を書き作品が荒れることを防ぐため、別に職を持っていることが当たり前だからだそうです。
なるほど、と思います。
佳作でも、なにも言われない、そういう文化環境はすばらしいと思います。
さて、「本格小説」です。
と、その前に水村美苗のデビュー作について。
読んでないのに色々いうのは反則だとしりつつ、書きます。
日本での最高峰といえる夏目漱石の遺作の続編「続明暗」を書いてしまう、その不遜さ。
自分に対するその厚顔なまでの自信は、買いです。
で、その傲岸不遜な作家が書く「本格小説」。
よろしい、受けてたとうではないか、と手にとりました。
これが、当たりでした。
次作に迷う作家。そこに偶然が訪れ、ある人物の過去と自分の接点が紐解かれる。
ある男の戦後の混乱と日米をまたにかけた一代記と、大富豪の美人三姉妹の数奇な運命。
そして、その偶然をとらえ動きはじめる作家の筆。
全体を覆っているのは倦怠感です。
自分の力では乗り越えられない貧乏。親の財産を元にした退廃を身に宿す令嬢。帰国子女の祖国喪失感。
ある環境から一歩外れたときの、やりきれない人生の徒労感を抱えながら、なにかしらの希望を見つけようとする態度は、世界も自分も分かった上でもう一歩踏み出す力になります。
まだ、「続明暗」「手紙、栞を添えて」「私小説」「本格小説」と佳作の作家ですが、良しとします。
ただ、静に次作を待ちましょう。
