極私的映画と音楽のススメ -16ページ目

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介



とても重要なメッセージを投げかけてくれる映画です。

ナウシカは、いずれ訪れるであろう近未来の情景を

蟲の支配する世界というフィールドで描いていました。


この作品は、過去そうであった国の様子が、

人々の心の揺らぎによってどれほどまでに

無残に切り刻まれてしまうか


そんな人の心の弱さがもたらすカタストロフィーを

描いているんだとおもいます。


ナウシカや、もののけ姫は

そのテーマ性とはうらはらに、

印象に残るキャラクターや、主題歌、音楽などで

一般受けしやすい内容になっています。



もののけ姫は、かつてこの国がどのような精神性をもっていたか

それをあからさまにつむぎだしていきます。



かつて、精霊などの神秘的要素は必ず

人々の生活の側にあったはず。


そこには、驚くほどの調和があったんでしょう。


人は動物の話を認識することも出来るし

感情を共有することも出来た。


そんな時代。



おもったことが実現できて、

言葉が魂をもったかのようにとても力を持っていた時代。



全ての生物の共存関係がかつてそこにありました。


同じようなことを星野道夫さんがいっていたのを思い出しました。

(写真集、アーくティックオデッセイの巻頭言)



その絆を断ち切ってしまったものは

人間の欲望であり、文明の波でした。



こういった絆がいかにもろいものなのか

そのもろさを、残酷なまでに描いたのにはわけがあると思います。


その場面を残酷なまでに描くことで

見るものがジブリに期待する夢の世界、ファンタジックな世界から

一気に現実に意識を引き戻しているんでしょう。



この映画で語られる話は、決して架空の話ではありません。

かつてそこにあった絆なのです。

そういう意味ではフィクションですらないのかもしれません。


そのことを聴衆に認識させたかったのでしょうか。




今も、その名残は屋久島などに残るという話を聞くことがあります。

魂の宿る森や島

その場所は、決して観光名所などにせず、そっとしておいてほしい。



今はもう感じることが出来なくなってしまった

かつての人々がもっていた絆。


それをちょっと感じたような瞬間でした。

となりのトトロ
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子供にしか見えない風景。


それってなんでしょうね。

この映画で、それはトトロという生き物として登場します。


でも、
それはきっと大人にだって見える風景なんだろうと思います。

大人は、常識というフィルターを通して物事を考え、まわりの風景を見ています。
それは社会性という意味では当たり前のことなんでしょうけど・・

ただ、創造という視点で見るとこれは、時には足かせになってしまいます。


この映画は、
純粋な子供の持つ力がいかにすばらしいものかを
大勢の人々に分からせてくれたような気がしています。


純粋な子供達は、周りにあるものすべてが面白おかしい創造の対象なんでしょう。
それは、夢であり、希望であり、人生を楽しむということにつながっていくんでしょうね。



ふと赤毛のアンのエピソードを思い出してしまいました。

主人公のアンは家の近くの湖や、小道、そして小川に
その溢れんばかりの想像力で、とても魅力的な名前をつけていきます。


彼女は、この創造性をいつまでももつ続けていたからこそ、
つらい目にあっても立ち直ることが出来たんじゃないかなあ。


いつもの通勤途中、いつもの見慣れた散歩道

ちょっと、視点を変えて周りを見渡してみよう。
常識的な視点にはしばらくの間おさらばして。

もしそんな創造力をもつことができたなら、
あなたの心の中に、きっとトトロが顔をだしてくれるはず。


全世界の大人たちがきっとそんな視点を一日のうち数分だけでも
持つことが出来たなら、そんな日がくることがあったなら、
きっと世の中はもっと面白く、魅力に満ち溢れたものになるに違いありません・・


そんな日が来ることを祈りつつ・・



このブログは再録です。

今度はジブリ特集です

(初投稿:2006/04/14、再投稿:2006/6/23)

おもひでぽろぽろ
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だれにでもふるさとってありますよね。


でも大人になるにつれ、ふるさとを離れていった方も多いのではないでしょうか。

大学入学、就職、引越し・・・


そこにはいろいろな事情があり、それは致し方ないものかもしれません。


でも幼いころの一時期を過ごしたふるさとには、
きっと特別な思い出があるはず。


学校からの帰り道、遠くに見える大きな山の姿
近所に咲いていたきれいな花
いつも毎朝犬の散歩をしているおばあちゃん・・・・・



ネイティブアメリカンは、旅をするたびに
その地域に眠る魂を感じながら歩んでいくんだそうです。

かつて誰かが住んでいた場所。
そこに眠る魂。


もしかするとふるさとにも
こういった魂のかけらが残っているのかもしれません。


そしてあるとき急に、それに魅かれるかのように
急にふるさとにかえりたくなるときが来るのかもしれません。


この映画は、田舎に子供時代の自分を置き忘れてきた女性が
田舎で数日過ごすうちに、自分らしさをとりもどし、
新たな人生の幕開けをも感じていくという内容です。



なんとなく、今の自分にはどこか欠けているものがある・・
そんな風に感じるときは・・
きっとふるさとに眠る魂のかけらがあなたを呼んでいるのかもしれません。



そんなときはその声に逆らわずに。

きっと欠けていた何かを取り戻すことが出来るはず。



ジブリが、世に送り出した名作です。

マイナーなイメージがありますが、ぜひご覧になってくださいね。



このブログは再録です。

今度はジブリ特集です

(初投稿:2006/02/25、再投稿:2006/6/19)

耳をすませば
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スタジオ・ジブリが1995年に公開した作品。

ちょうど、この時期、地元を離れ
関東の大学に入学することになりました。

人生の節目の時期でした。


地元は、電車も廃線になり、バスしかない田舎町だったんで、
都会にでてくるというのは、そりゃあ不安だったものです。


一人暮らしもこのときが初めてでした。


何から何まで、自分を取り巻く環境は、変わっていた。
そんな時期でした。



まあ、大学には同じように、田舎から出てきた人たちも多かったんで
寂しさとか、不安とかはすぐに消えてなくなったわけですが・・

ただ、故郷への思いというか、郷愁は消えることがありませんでした・・



北海道というのは、空気がきれいなところですし、紅葉もきれいです。
ですがなんといっても雪がふるというところが、僕にとって
すごく重要なことだったんですね。

そんなことに、関東についてからしばらくたってから気づきました。



そういえば、ちょうど、この年に「北の国から」の新作が
テレビで放送されていたんですよ。
そんなこともあってか、実に深く郷土というものを、再認識していくことになりました。



と、そんな時期に。
スタジオ・ジブリが新作を上映するとのこと。
それが表題作でした。


内容は、ちょうど自分と重なるような、
これから新たな旅立ちを迎える少年と、少女の物語であったわけで、
とても良い映画でした。

余談ですが、ジブリは架空の世界を描くよりも、現実の世界を描くほうが旨いかもしれないですね。
現代でもいいし、何年か前でも良いし。
トトロとか、火垂の墓とか、思ひ出ぽろぽろとか、平成狸合戦ぽんぽこを見てもそう思います。



閑話休題



でも、この映画で一番心にうったえた場面。
それは冒頭。


冒頭では、東京のありふれた夜の風景を綴りつつ、バックに音楽が流れてきます。
それがオリビア・ニュートン・ジョンの『カントリー・ロード』

当時、郷愁というか郷土愛に強烈に支配されていた僕にとってはたまらない曲でした。
「Take me home, country road♪」なんて、歌われちゃあ・・

というわけで、思いっきり地元のことを思い出しながら見た映画でした。

DVDも買いましたが、見るたびに、当時の感覚とか、思いとか、
そして、不思議にも、初めて感じる都会の匂いなんかが強烈に思い出されます。


僕の、感情と、そのとき、嗅いでいたであろう匂いが
いっぱいつまった、スタジオ・ジブリの名作です。


ナウシカや、ラピュタもいいですが、
たまには、この映画も見てみてはいかがでしょうか?




このブログは再録です。

今度はジブリ特集です

(初投稿:2005/10/13、再投稿:2006/6/17)


高度成長期の開発事業というのがいかに

巨大なものだったか。


東京に来る前はまったく分からなかったのですが、

多摩丘陵付近を散策するにつけ、そのイメージが鮮明になってきました。


無機質にならぶ団地群、ひっそりとのこる林・・


かつてそこにあった風景を想像することは困難です。

そこに、森や畑があって、動物たちの憩いの場所であったなんて想像するなんて・・・


とまあ、こう書いてくるととても堅苦しくなってしまうのですが、

このジブリ作品は、その開発の状況を、狸を主人公にすえることで

とてもわかりやすく、ユーモラスに描いています。


人間と動物が共存していた時代は

もうはるか遠い昔ですが、

この映画は、もしかすると近くに動物達がいるかもしれない・・

なんてことを思わせてくれます。



時間があったら、小高い丘に登って、下に広がる風景を眺めてみてはいかがでしょうか?

かつて畑だったり山だったりした景色を思い浮かべながら・・・

きっと、どこからか、狸の笑い声が聞こえてくる・・


そんなことをふと考えてしまいました。


声優陣も多彩ですよね。

古今亭志ん朝や柳家小さん、石田ゆり子、泉谷しげる、野々村真などなど

錚錚たる顔ぶれですよね。


楽しい映画ですので、ぜひご覧になってみてください。



ちなみに、写真家の星野道夫さんが大好きです。

とても素敵な文章を書かれるのですがその中に、

かつて、人間と動物が共存していた時代があった。

森の中を歩いていると、熊の存在を明確に感じる瞬間がある。

でもそこには秩序があって、何かをしないかぎり、熊が人を襲うことはない。

人の開発によって、その秩序が狂い、熊が人里におりてくるようになり、

事故が起きるようになった。

僕はこの共存関係をいつまで感じていたいとおもう・・・


というような文章でした(詳細は違うかもしれません・・)


でも今も確かに広大な森の中では人間と動物の間に秩序が保たれてる場所が

存在しているんだ・・

自分でその場所を尋ねることはできませんが、そんな事実があることに

とても安心したのを覚えています。




このブログは再録です。

今度はジブリ特集です

(初投稿:2005/11/03、再投稿:2006/6/16)

魔女の宅急便



「落ち込んだりもしたけれど、私、元気です」


一日一日は単調に見えても、
実は、すごく楽しいこと、すごく嫌なことなんかが、
波のように一定のリズムで押し寄せてくるものですよね。


でもそんな毎日にもまれながらも、着実に
一歩ずつ前にすすんでいく・・


そんな気丈さをこの映画からは感じました。


それがラストの言葉に結びついていくんでしょうね。

落ち込んだっていいんです
悩んだっていいんです
へこたれたっていいんです


元気に前に、たとえものすごくゆっくりでも、進んでいくことができれば・・


とてもポジティブな気分になれる映画です。
最近いいことないなあと感じている方。
分けもなく落ち込んでいる方。
なんとなく毎日がつまらないと感じている方。


要は自身の気の持ち方しだい。


主題歌は荒井由実の「やさしさにつつまれたなら」

オープニングには「ルージュの伝言」が使われています。

この楽曲の使用はすばらしいですよね。

まさにこの映画にぴったりですよね




余談ですが高橋歩という人の本にこんな言葉がありました。
「ゆっくりでもいいから前へ進んでいこう、足踏みしたって靴は減るのだから・・」

この文章を読んでこの映画を思い出しました。



さあ、今日も、ゆっくりと歩んでいこう・・・

やさしさにつつまれながら・・



このブログは再録です。

今度はジブリ特集です

(初投稿:2005/11/09、再投稿:2006/6/15)







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とても、深く、そして重い映画でした。


死刑。


死刑を認めるか否か。


倫理的な問題。

人間の尊厳。


語りつくせない問題が、この言葉の裏側にはあります。


でも・・


個人的には、殺害や、事件が加害者の一方的な欲求とか、一方的な悪意によって

もたらされたものだとしたら・・


死刑という選択はアリなんじゃなかろうか。

そんな風に思います。



とても難しい問題に焦点を当てたこの映画。


死刑反対の意見もよくわかるのですが、

たとえば、この映画で見られる犯罪のシーンを見てしまうと・・・

やはり死刑も仕方ない・・と思ってしまう自分がいます。



犯人と接しているうちに、死刑という制度について

疑問を持ち始め、その葛藤でくるしむ弁護士(?)役のスーザン・サランドンが、

最高の演技を見せてくれます。


犯人役のショーン・ペンが最後に見せる死への恐怖なども

真に迫っていて、すばらしい。



ラストシーンで、

犯行現場の空撮映像が挿入されてこの映画は幕を閉じます。

この犯行現場を最後に見せ付けることで、この映画の意図するところの何たるかを

見た気がしました。


非常に重いテーマを題材にした傑作です。


できれば、大切な人と見てほしいなあと思う映画です。



このブログは再録です。

スーザン・サランドンの出演作を紹介したく再掲載しました。

(初投稿:2005/10/28、再投稿:2006/6/14)

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この映画。


演劇でカルト的な人気を博した後に映画化と相成ったそう。

バイセクシャルやら、網タイツやら、下品な化粧とか、まあ

いかがわしいことこの上ない。


でも最高の映画なんですよこれが。


スーザン・サランドン(若い!)も出演。

なぜこういった作風の映画にでているのだ、なぜだ、なぜだ?


と、「デッドマン・ウォーキング」の演技がやけに頭に残っている人は

感じるかもしれないが、インタービューとか見ると楽しげですよ。


こういったジャンルも好きなんですかね。


しかしこの映画、半分ミュージカルなんだが、歌がとてつもなくすばらしい。


「タイムワープ」なんて永遠のアンセムとなるのではなかろうか。


時代の影に、ひょっこり産まれたカルト演劇が、見事に成熟して

花開いたかのような映画です。


あ、演劇は日本でもやってまして、

主演のぎすぎすしい男は、ローリーが演じてたんですって。

これがまあ、はまり役というしかないんですよね。

しかも、教授役では、あの細川さんが出演。

網タイツでダンスを披露してくれたんだそう。


いろんな意味で話題性満点の作品ですね。




このブログは再録です。

スーザン・サランドンの出演作を紹介したく再掲載しました。

(初投稿:2005/7/13、再投稿:2006/7/13)






スーザン・サランドンとナタリー・ポートマンの競演作です。

これだけでも見る価値ありですよね。



子供は知らないうちに自立していくもの。

スーザン演じる母親は、そのことに急に気づいてショックをうけてしまいます。



それまで自分の好き勝手に気ままに生きてきた彼女に

意志が生まれる瞬間でした。



彼女は愛車を売り、娘の学費にあてることを決意。



ナタリー演じる娘が大学へと旅立つ日。

このラストシーンは、この二人が見せる一世一代の名演といえるかもしれません。


ここでの別れはあらたなスタートの始まりなのです。



ここで見ることのできる彼女二人の笑顔。

この表情をみるためだけに、この映画をみてもいいかもしれない・・



気ままな午後にごらんになってください。


その内容よりも映像の素晴らしさに感心してしまう映画ってありますよね。

これのそんな映画の一つ。

ジャン・ジャック・ベネックスの映像は、本当にいつまでも頭にやきついて離れない。


ジグソーパズル、主人公の淡い恋、バイク・・
それらを映し出す洗練されたカメラワーク。


こんなモダンな装いとは相反するように、
タイトル『ディーバ』からも分かるように物語の中心にはオペラがある。


モダンとクラシカルの対比が見ていてとても面白い。



とっても80年代のフランス映画チックで、
混沌としているし、雑多でカラフルな印象なんだけれども
不思議と整合感を感じてしまう。


それは監督の手腕なんでしょうか。



しかしこの監督も“”の表現がうまいですね。
ベティ・ブルー 』のも、この映画のも、
同じという括りではあるけれど、イメージは全く異なりますもんね。


この映画を見ているとあたらしい発想が浮かんでくるような気がします。
休日の夜とか、じっくり見てみるのもいいかもしれませんね。




このブログは再録です。

ジャン=ジャック・べネックスの出演作を紹介したく再掲載しました。

(初投稿:2006/1/26、再投稿:2006/6/7)