『もののけ姫』(ジブリ) | 極私的映画と音楽のススメ

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介



とても重要なメッセージを投げかけてくれる映画です。

ナウシカは、いずれ訪れるであろう近未来の情景を

蟲の支配する世界というフィールドで描いていました。


この作品は、過去そうであった国の様子が、

人々の心の揺らぎによってどれほどまでに

無残に切り刻まれてしまうか


そんな人の心の弱さがもたらすカタストロフィーを

描いているんだとおもいます。


ナウシカや、もののけ姫は

そのテーマ性とはうらはらに、

印象に残るキャラクターや、主題歌、音楽などで

一般受けしやすい内容になっています。



もののけ姫は、かつてこの国がどのような精神性をもっていたか

それをあからさまにつむぎだしていきます。



かつて、精霊などの神秘的要素は必ず

人々の生活の側にあったはず。


そこには、驚くほどの調和があったんでしょう。


人は動物の話を認識することも出来るし

感情を共有することも出来た。


そんな時代。



おもったことが実現できて、

言葉が魂をもったかのようにとても力を持っていた時代。



全ての生物の共存関係がかつてそこにありました。


同じようなことを星野道夫さんがいっていたのを思い出しました。

(写真集、アーくティックオデッセイの巻頭言)



その絆を断ち切ってしまったものは

人間の欲望であり、文明の波でした。



こういった絆がいかにもろいものなのか

そのもろさを、残酷なまでに描いたのにはわけがあると思います。


その場面を残酷なまでに描くことで

見るものがジブリに期待する夢の世界、ファンタジックな世界から

一気に現実に意識を引き戻しているんでしょう。



この映画で語られる話は、決して架空の話ではありません。

かつてそこにあった絆なのです。

そういう意味ではフィクションですらないのかもしれません。


そのことを聴衆に認識させたかったのでしょうか。




今も、その名残は屋久島などに残るという話を聞くことがあります。

魂の宿る森や島

その場所は、決して観光名所などにせず、そっとしておいてほしい。



今はもう感じることが出来なくなってしまった

かつての人々がもっていた絆。


それをちょっと感じたような瞬間でした。