『Long Distance Love: Tribute to Lowell George』 | Music and others

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Long Distance Love 00

 

  なかなか、お目にかかれないユニークなトリビュート・アルバムがリリースされました。 時代を駆け抜けて、あっという間に旅立ってしまったリトル・フィート(Little Feat)のリーダーであり、その唯一無二なスライド・ギターとごった煮感覚あふれるユニークなサウンドの立役者であったローウェル・ジョージLowell George)のトリビュート企画です。

 

企画したのは、苦境に立つ音楽家、または、音楽業界で働く労働者たちを経済的に支えるために94年に設立された基金、“スウィート・リリーフ”(Sweet Relief Musicians Fund)とのコラボレーションで企画されました。

 

 ※)スウィート・リリーフは、シンガー・ソングライターのヴィクトリア・ウィリアムズ(Victoria Williams)によって1994年に設立された。 ヴィクトリアはニール・ヤング(Neil Young)とキャリアを築くツアー中、原因不明の衰弱症状に見舞われ、スケジュールの途中で降板を余儀なくされた。 その後、彼女は多発性硬化症であることが判明しました。

この難病のヴィクトリアを支援するために、友人のミュージシャン達がヴィクトリアの曲を集めたオールスター・アルバム『スウィート リリーフ』を作成し、彼女の医療負債の多くが軽減されました。

 

全25曲が収録されていますが、リトル・フィートに留まらず、ローウェル・ジョージの唯一のソロ・アルバム、『Thanks, I'll Eat It Here』から3曲と、ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)との共作曲である”Love Needs A Heart”が含まれています。

 

著名なミュージシャンとしては、エルヴィス・コステロ(Elvis Costello)、ベン・ハーパー(Ben Harper)が参加しています。 後は、バンドのドーズ(Dawes)のリーダーであるテイラー・ゴールドスミス(Taylor Goldsmith)に、ローウェル・ジョージの娘であるイナラ・ジョージ(Inara George)が参加しています。

 

そして、レジェンドと呼ばれるであろう著名なミュージシャン、スティーヴン・スティルス(Stephan Stills)、現リトル・フィートのメンバーであるフレッド・タケット(Fred Tackett)、あのライ・クーダー(Ry Cooder)、の子供たち、第2世代のミュージシャンが参加しているところを見れば、個人的には「さもありなん!!」と、頷いてしまいます。 全員、いい味わいを出して、彼らのオリジナリティーを醸し出しています。

 

こうやってカヴァー作品として聴いてみると、つくづくローウェル・ジョージの創り出す作品の独特の”世界観”がいかに並外れていて、多様性を含んでいたのかがよく分かります。 パワー・ポップ、シンガー・ソングライター、ルーツ・ロック、ブルース、ラテン、エスニック、オルタナ・カントリー、ネオ・ソウルと幅広いジャンルで活動していて、年齢的にも幅のある世代のミュージシャンがそれぞれにカヴァーすることで万華鏡のように世界観が拡がっています。

 

 

DISC 1:

1.Trouble (Lowell George) - Mike Viola

2.Cold, Cold, Cold (Lowell George)- Joachim Cooder

3.Long Distance Love (Lowell George) - Elvis Costello

4.Heartache from 『Thanks, I'll Eat It Here』 (Lowell George,Ivan Ulz) - Bedouine

5.I've Been The One (Lowell George)- Bhi Bhiman

6.Rock 'n' Roll Doctor (Lowell George, Martin Kibbee)- Miles Tackett

7.Be One Now (Lowell George, Fred Tackett)- Lady Blackbird

8.Love Needs A Heart from 『Running on Empty』 (Jackson Browne, Valerie Carter, Lowell George) - Madison Cunningham

9.Easy To Slip (Lowell George, Fred Martin)- Jonah Tolchin

10.Dixie Chicken (Lowell George, Fred Martin)- Eleni Mandell and Milo Jones

11.Roll 'Um Easy (Lowell George)- Ben Harper

12.Lafayette Railroad (Lowell George, Bill Payne)- Larry Goldings

13.6 Feet Of Snow (Lowell George, Keith Godchaux) - Jack Shit

 

DISC 2:

1.Cheek To Cheek  from 『Thanks, I'll Eat It Here』(Lowell George, Van Dyke Parks, Martin Kibbee) - Gaby Moreno

2.Two Trains Running (Lowell George)- Chris Seefried

3.China White (Lowell George) - Chris Stills

4.A Apolitical Blues (Lowell George)- Dave Alvin

5.Feats Don't Fail Me Now (Paul Barrère, Lowell George, Martin Kibbee) - Sugaray Rayford

6.Sailin' Shoes (Lowell George)- Taylor Goldsmith

7.Spanish Moon(Lowell George) - Inara George

8.Rocket In My Pocket (Lowell George)- Sam Morrow

9.Willin' (Lowell George) - Jonathan Wilson

10.Teenage Nervous Breakdown (Lowell George)- The Bird and the Bee

11.Crazy Captain Gunboat Willie (Lowell George, Bill Payne) - Andras Jones

12.20 Million Things To Do  from 『Thanks, I'll Eat It Here』(George, Jed Levy) - Gus Seyffert

 

 

冒頭は、72年リリースの2ndアルバム、『Sailin' Shoes』に収録された”Trouble”からスタートします。 ビートルズ直系の遺伝子を受け継ぐ、パワーポップの職人、マイク・ヴァイオラ(Mike Viola)がカヴァーしています。

□ “Trouble”   by Mike Viola;

 

 

この歌の中には、バンド名であるリトル・フィート(元々は、Little Feetでしたが、ビートルズ風にスペルを1文字変えて、Feet → Feat と捻りを効かせたのです!)の”足”(Feat)が登場しています。

      Now you're so fat your shoes don't fit on your feat

 

 

そして、私のお気に入りの ホアキム・クーダー(Joachim Cooder)による解釈による”Cold, Cold, Cold ”です。  ブラスによるサウンドがループの様な効果を出しており、面白い解釈ですね。

□ “Cold, Cold, Cold”   by Joachim Cooder;

 

 

 

 

3曲目はもう貫禄十分のエルヴィス・コステロ(Elvis Costello)による奇妙なラヴ・ソングです。

□ “Long Distance Love ”   by Elvis Costello;

 

 

 

 次の”Heartache”は、ベドウィン(Bedouine)という芸名で知られるアズニフ・コルケジアン(Azniv Korkejian)は、シリア系アメリカ人のミュージシャンです。 ビー・ビーマン(Bhi Bhiman)による1stアルバムの楽曲、””と続きます。

 

6曲目の”Rock 'n' Roll Doctor ”は、4枚目の『Feats Don't Fail Me Now』に収録されていました。 初めて、購入したリトルフィートのアルバムでしたね。 カヴァーしているのは、現在のギタリストである職人とも言えるフレッド・タケット(Fred Tackett)の息子である、マイルズ・タケット(Miles Tackett)です! ロカビリー調にアレンジして演奏しています。

□ “Rock 'n' Roll Doctor ”   by Miles Tackett;

 

 

 

 

ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)の枚目のアルバム、『Running on Empty』に収録されていた、ジャクソン、ローウェル、そして、ヴァレリー・カーター(Valerie Carter)による共作の”Love Needs A Heart”。 2023年にグラミー賞の最優秀フォーク・アルバムを受賞したマディソン・カニンガム(Madison Cunningham)がシンプルに歌っています。

 

そして、名曲と言える”Dixie Chicken”は、イナラ・ジョージ(Inara George)とガールズ・グループであるザ・リヴィング・シスターズ(The Living Sisters)を組んでいるベテランのエレニ・マンデル(Eleni Mandell)がカヴァーしています。

□ “Dixie Chicken ”   by Eleni Mandell and Milo Jones;

 

 

 

スローな名曲、”Roll 'Um Easy”がベン・ハーパー(Ben Harper)がじっくりと聴かせてくれます。

 

そして、Disc1のラストを飾るのは、エルヴィス・コステロ人脈とも言えるカントリー・バンドであるジャックシット(Jackshit)です。お遊びっぽい、リラックスしたカヴァー、”6 Feet Of Snow”です。

 

 

Disc2に移り、ローウェルの死後にリリースされた未発表曲(デモ)である”China White”をスティーヴン・スティルス(Stephan Stills)の息子でありクリス・スティルス(Chris Stills)が取り上げています。 楽曲自体はあまり捻りのないブルーズですが、よりヘヴィーな仕上がりになっています。

□ “China White”   by Chris Stills;

 

 

 

少し飛びますが、バンドのドーズ(Dawes)のリーダーであるテイラー・ゴールドスミス(Taylor Goldsmith)がカヴァーした”Sailin' Shoes”は出色の出来だと個人的には思います。 この歌詞、本当にぶっ飛んでいますね、あらためて見ましたけどチンプンカンです(笑)! 中性的なヴォーカルで、この不思議な曲のイメージを巧く表現しています!

□ “Sailin' Shoes”   by Taylor Goldsmith;

 

 

 

だって、頭の歌詞がこれですからね・・・・・・。

  「There's a lady in a turban, in a cocaine tree

    She does a dance so rhythmically

    She's cryin', and a-singin' and having a time

    And don't that cocaine tree look fine」

 

 

そして、続く”Spanish Moon”は娘であるイナラ・ジョージ(Inara George)が一捻り効かせた演奏を聴かせてくれます。 オリジナルは、タワー・オヴ・パワー(Tower of Power)のホーン・セクションが効いているセカンドライン・ビートの曲でした。 シンセ・ベースを効かせたジャングル・ビートのシンプルなビートに変えて、ストリングスを被せた斬新なアレンジです。

□ “Spanish Moon”   by Inara George;

 

 

 

そんなに目立つような楽曲ではなかったのですが、ライヴ・アルバム『Waiting for Columbus』に収録したヴァージョンでより曲の良さが引き立ち、いい曲であることが再認識された”Willin'”です。 ロスアンゼルス周辺で活躍しているプロデューサー、ソングライターのジョナサン・ウィルソン(Jonathan Wilson)による真面目なカヴァーです。

□ “Willin'”   by Jonathan Wilson;

 

 

 

次の曲、”Teenage Nervous Breakdown”もイナラが名うての音楽プロデューサーであるグレッグ・カースティン(Greg Kurstin)と組んでいるユニークなユニット、ザ・バード・アンド・ザ・ビー(The Bird and the Bee)が割と真正面から取り組んでいます。

□ “Teenage Nervous Breakdown”   by The Bird and the Bee;

 

 

 

 

25曲も並ぶと多少は食傷気味になりそうですが、千変万化なオリジナルと聴き比べるプレイリストを作ってSportifyで聴いていると飽きることはありません。 唯一無二のローウェル・ジョージLowell George)の曲作りをあらためて再確認できました。 アマチュアバンド時代に取り上げようとして、一生懸命にコピーしようとしましたが断念した理由が判ります。

 

 

最後になりますが、今までにリトル・フィートについてアップしたブログについてまとめましたので、参考にしていただければと思います。 大してありませんけど・・・・・。

 

2012年3月  Long Distance Love - 遠距離恋愛(こちらです↓↑

 

2019年10月  Missin' You -Paul Barrere(こちらです↓↑

 

2022年12月  『Waiting for Columbus: Super Deluxe Edition』(こちらです↓↑