『Waiting for Columbus: Super Deluxe Edition』 | Music and others

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 70年代にアメリカン・ロックが席巻した当時、アマチュアバンドをやっていたので、西海岸発のドゥービー・ブラザース(The Doobie Brothers)、スティーリー・ダン(Steely Dan)、リトル・フィートLittle Feat)、そして、東海岸出身のオーリアンズ(Orleans)はどれも良く聴きました。 そして、アナログ盤を買い集めていました。 バンドとして広く取り上げられていたのは、ステージ映えがするドゥービー・ブラザースでした。 最も距離感が大きかったのが、南部のR&Bやファンクを消化した豪快かつファンキーなグルーヴが持ち味のリトル・フィートLittle Feat)でした。 コピーするには、あの泥臭くもファンキーなシンコペーションするグルーヴとスライド・ギターが壁となり到底無理でした。

 

それでも、ロックファンとして、後追いながらもニューミュージック・マガジンで大々的に取り上げられていたリトル・フィートのサウンドを愛聴しました。 彼らがようやくセールス的に陽の目をみたのが、1978年リリースの2枚組ライヴ・アルバムだった、この『Waiting for Columbus』です。 私が手にした彼らの4枚目のアルバムでした、『Dixie Chicken』、『Feats Don't Fail Me Now』、『The Last Record Album』に続いて購入したのですが、当時の価格で¥3,300は決して安くはありませんでした。 当時、知名度やレコード・セールスで後塵を拝していた彼らが注目を浴びるようになったのは、レコード・レーベルのワーナー・ブラザーズ(Warner Bros. Records)が企画したショーケース・ツアーで訪れたイギリスでのことでした。 メインアクトである筈のドゥービー・ブラザースを押しのけて、アンコールに次ぐアンコールで大喝采を浴びたのです。

 

このアルバムは、彼らのアルバムの中では最も売れに売れてプラティナ・ディスクに輝きました!

 

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見た目は毛むくらじゃで栄養過多なローウェル・ジョージLowell George)がマザーズ・オヴ・インヴェンション(The Mothers of Invention)を脱退して1969年に結成したのですが、いわゆるミュージシャンズ・ミュージシャンと言う位置付けで、知名度はあってもヘッドライナーになる程ではありませんでした。 マニアックなロック・ファンや評論家の間では、強力なライヴ・バンドとしての定評を確立してはいたものの、それが一気に結実したのがこのライヴ・アルバムでした。 ロンドンとワシントンでの数回のライヴ・パフォーマンスから選りすぐられた楽曲ですから、これを聴けば彼らの本当の魅力が伝わるはずです。 

 

5枚目のアルバム、『The Last Record Album』以降は、音楽的な指向の違いが徐々に大きくなり、79年にはバンドの解散が表明され、ローウェルはソロ・アルバム、『Thanks, I'll Eat It Here』(邦題は何と「特別料理」)をリリースした後、プロモーション・ツアー中の同年6月に滞在先のホテルで亡くなりました。 過食と薬物の過剰摂取による影響なのか、心不全によるものでしたが、まだ34歳の若さでした・・・・・。 存命であれば、80年代、90年代にどのような作品を産み出していたのか気になりますが、それはもう誰にも分らないことです。

 

1978年7月には初来日公演が行われました。 ローウェル本人の体調は悪くはなかったそうですが、残念ながら行くことはできませんでした(観たかったです!!)。

 

そして、1987年には残ったメンバーに新たなメンバーを加えて再結成し、現在もバンドは続いています。 残念ながらローウェル在籍時のリトル・フィートとはまったく違うバンドであり、私は全く疎遠になってしまいました。 なお、オリジナル・メンバーであるドラムのリッチー・ヘイワード(Richard Hayward)は2010年に、ギターのポール・バレア(Paul Barrère)は2019年に亡くなってしまいました。

 

このアルバムですが、1990年に初CD化された際には、シングルCDに収録するために2曲、”Don't Bogart That Joint”、”A Apolitical Blues” がカットされました、まあ収録時間の問題で起こり得る話ではあります。

2002年にはライノ・レコーズ(the Rhino Records)からデラックス・エディションがリリースされて、カットされた2曲は復活したのですが、オリジナルの曲順が変更されていたのには驚きでした、あの丁寧な仕事をするはずのライノ・レコーズだからです!

 

今回は発売45周年記念と言うことで、曲順は元に戻り、且つ、オリジナル・アルバムの最新リマスター音源となり、このライヴ・アルバムが生まれたツアーの中から、77年7月20日のマンチェスター・シティ・ホール公演、同年8月2日のレインボー・シアター公演、そして、同年8月10日のワシントンで行われたリスナー・オーディトリアム公演という3か所での未発表ライヴ音源が計6枚のディスクに収録されています。 さすがに8枚組ではコレクターではないのでサブスクで我慢しておりますが・・・・・。

 

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オリジナル・アルバムに収録されていた”Rocket In My Pocket”や”Spanish Moon”の未発表ライヴ・ヴァージョンや、オリジナルには収録されなかった”Cold, Cold, Cold”や”Rock And Roll Doctor”、”Skin It Back”、そしてアラン・トゥーサン(Allen Toussaint)のカヴァーである”On Your Way Down”といった楽曲が収録されたことは素直に歓びたいと思います。

 

ジャム・バンドの原型とも言える、ブルーズ、ニューオリンズ・ファンク、カントリー、ソウル、ポップと様々なジャンルをすべて飲み込んだ特異なスタイルを有するリトル・フィートの魅力を最大限にアピールするために行った編集、オーヴァーダブにより少しばかり異なる見せ方をしてしまったようです。

ローウェル・ジョージが3週間にわたりスタジオに籠り、ギターとヴォーカルのオーヴァーダブを行ったと後日談で明らかにされています。

リトル・フィートの最良の部分だけを巧く取り込んで見せたという訳です。

 

オリジナル・アルバムは当時の実際のセット・リストとはかなり違うシーケンスで収録されており、誰の意図でこのような姿に収まったのか、謎は深まるばかりです。 アカペラ・コーラスで始まる”Join the Band”は、ステージに上がる前のバック・ステージで肩慣らしで演っていたものが密かに録音されており、それを流用してあたかもプレリュードのように仕上げていたのです。 ちょっとした”お遊び”的な感覚なんでしょうけれど・・・・・。

また、”Mercenary Territory”は実際には歌なしのサウンド・チェックの音源に、別録りでヴォーカルを加えて加工されたものです。

 

実像とは少しばかり違う理想形のリトル・フィートを提示したかったのでしょうか・・・・・?

 

□ Track listing;

Disc 1;

1."Join the Band"     (Traditional)    1:50

2."Fat Man in the Bathtub"     (George)     4:50

3."All That You Dream"     (Barrère, Payne)     4:25

4."Oh Atlanta"     (Payne)     4:09

5."Old Folks' Boogie"    (Barrère, Gabriel Barrère)     4:22

6."Time Loves a Hero"     (Barrère, Gradney, Payne)     4:20

7."Day or Night"     (Payne, Fran Tate)     5:23

8."Mercenary Territory"     (George, Hayward)     4:27

9."Spanish Moon"     (George)     4:49

Disc 2;

1."Dixie Chicken"     (George, Martin Kibbee)    9:00

2."Tripe Face Boogie"     (Hayward, Payne)     7:02

3."Rocket in My Pocket"     (George)     3:42

4. "Willin'"     (George)     4:42

5. "Don't Bogart That Joint"     (E. Ingber, L. Wagner)     0:57

6. "A Apolitical Blues"     (George)     3:41

7.  "Sailin' Shoes"     (George)     6:18

8. "Feats Don't Fail Me Now"     (Barrère, George, Kibbee)     5:17

 

Disc 3&4;Full live performance at Manchester City Hall in July 29, 1977

Disc 5&6;Full live performance at Rainbow Theater, London  in Aug. 2, 1977

Disc 7&8;Full live performance at Lisner Auditorium, Washington in Aug. 10, 1977

 

●CD Threer : Live at Manchester City Hall (7/29/77)

1.“Walkin’ All Night” *

2.“Skin It Back” *

3.“Fat Man In The Bathtub” *

4.“Red Streamliner” *

5.“Oh Atlanta” *

6.“Day At The Dog Races” *

7.“All That You Dream” *

8.“On Your Way Down” *

9.“Time Loves A Hero” *

10.“Day Or Night” *

●CD Four : Live at Manchester City Hall (7/29/77)

1. Rock And Roll Doctor*

2. Old Folks Boogie*

3. Dixie Chicken*

4. Tripe Face Boogie*

5. Willin’/Don’t Bogart That Joint*

6. Feats Don’t Fail Me Now*

7. Rocket In My Pocket*

8. Sailin’ Shoes*

9. Teenage Nervous Breakdown*

 

●CD Five : Live at The Rainbow, London, (8/2/77)

1. Walkin’ All Night*

2. Fat Man In The Bathtub*

3. Red Streamliner*

4. Oh Atlanta*

5. Day At The Dog Races*

6. All That You Dream*

7. Mercenary Territory

8. On Your Way Down*

9. Skin It Back

10. . Old Folks Boogie*

●CD Six : Live at The Rainbow, London, (8/2/77)

1. Rock And Roll Doctor*

2. Cold Cold Cold*

3. Dixie Chicken*

4. Tripe Face Boogie*

 1st Encore;)

5. Willin’/Don’t Bogart That Joint*

6. Feats Don’t Fail Me Now*

7. Rocket In My Pocket

8. Spanish Moon*

 2nd Encore;)

9. A Apolitical Blues*

10. Teenage Nervous Breakdown*

 

●CD Seven : Live at Lisner Auditorium, Washington, D.C. (8/10/77)

1. Walkin’ All Night*

2. Red Streamliner*

3. Fat Man In The Bathtub*

4. Day At The Dog Races*

5. All That You Dream*

6. On Your Way Down

7. Time Loves A Hero*

8. Day Or Night*

9. Skin It Back*

●CD Eight : Live at Lisner Auditorium, Washington, D.C. (8/10/77)

1. Oh Atlanta*

2. Old Folks Boogie*

3. Dixie Chicken*

 1st Encore;)

4. Tripe Face Boogie*

5. Feats Don’t Fail Me Now*

6. Rocket In My Pocket*

 2nd Encore;)

7. Sailin’ Shoes*

8. Teenage Nervous Breakdown*

    

□ Personnel;

 Produced by Lowell George

 Little Feat;

  Lowell George – lead vocals, guitar

  Paul Barrère – guitar, vocals

  Sam Clayton – congas, vocals

  Kenny Gradney – bass guitar

  Richard Hayward – drums, vocals

  Bill Payne – keyboards, synthesizer, vocals

 Guest Appearance;

  Mick Taylor – lead and slide guitar ("A Apolitical Blues" at Rainbow Theater, London  in Aug. 2, 1977 )

  Michael McDonald and Patrick Simmons – backing vocals ("Red Streamliner" at Lisner Auditorium, Washington in Aug. 10, 1977)

 Tower of Power horn section:

     Emilio Castillo – tenor saxophone

     Greg Adams – trumpet

     Lenny Pickett – alto saxophone, tenor saxophone, and clarinet ("Dixie Chicken")

     Stephen "Doc" Kupka – baritone saxophone

     Mic Gillette – trombone, trumpet

 

オリジナル・アルバムは、ロンドンのレインボー・シアター(The Rainbow, London)とワシントンのリスナー・オーディトリアム(Lisner Auditorium, Washington, D.C.)の2ヵ所でのライヴ・パフォーマンスのハイライトを集めて編集された全17曲から成っていました。 当時も現在も、全くオーヴァーダブ無しでのライヴ・アルバムはリリースされることはないと思いますが、今回収録された3公演と比べるとその差は歴然としています。

 

さて、今回大半の楽曲が初出しとなった3ヵ所でのライヴ・パフォーマンスですが大きな違いはありません。 97年7月29日のマンチェスター・シティ・ホール、8月2日のロンドンのレインボー・シアター、8月10日のワシントンDCのリズナー・オーディトリアム、と6枚組のCDになっています。

 

簡単に言ってしまえば、マンチェスターでのライヴは全体に少しルーズな感じがするのと、タワー・オヴ・パワーの強力なホーン・セクションがいません。 ロンドンのレインボー・シアターでのライヴが最もタイトで緊張感があり、本番ステージと言った感があります。

 

そして、地元とも言えるワシントンでのライヴが、最も熱狂的でよりファンキーなグルーヴが感じられます。 72年リリースの3枚目のアルバム、『Dixie Chicken』に収録されていたこの曲”Fat Man in the Bathtub”では、珍しいダブル・スライドギターによるライヴ演奏が聴けます。

□ “Fat Man in the Bathtub” by Little Feat;

 

 

 

 

また、バンドが解体に向かって行った一因とも言える、音楽的嗜好の相違が端的に表れているのが、10分間を超える演奏になっている2曲、”Dixie Chicken”と”Day at the Dog Races”になります。 ワシントンでの”Dixie Chicken”は今回収録の3ヵ所の中では最長の14分を超える演奏になっています。 イントロから、ビル・ペイン(Bill Payne)によるセカンドラインの匂いを感じさせる自由自在なピアノから入り、中盤のポールとローウェルとによるギター・バトルがとても熱いです。 独特のスライド・ギターとピッキング・ハーモニックスを駆使したギターとの絡みが絶妙で、ちゃんと組み立てられていたのだと気づかされます!(ライヴ中のフィーリングやノリだけで押し切っていないですね。)

□ “Dixie Chicken” by Little Feat;

 

 

 

 

ローウェルが「What is this, fuckin’ Weather Report?」と、毒づいたと言われるジャズ・フュージョンに大きく寄ったインスト曲の”Day at the Dog Races”は、正直言ってリトル・フィートと言うバンド・メンバーの特性にはフィットしていないように思います。 スタジオ版よりも、かなりウェザーリポートの特徴に似せたコピー・バンドの様な内容になっており、ローウェルが毒づいた心境が痛いほどに分かります。

ポリフォニック・シンセサイザー、そして、細かい譜割りの16分音符の連続、ベースのスラップ奏法、、でも微妙にビートがずれているところが今聴き直すと”気持ち悪い”です。 当時は、このジャストではないグルーヴでも、いわゆる微妙な”ノリ“として捉えられていた様に思います。

 

楽器をプレイする者として、ジャズ・フュージョンの複雑な変拍子やインプロヴァイゼーションに惹きつけられる気持ちは良く分かりますけれど、それは一過性のものではないでしょうか。 あの時代大いに盛り上がったジャズ・フュージョンではありますが、今聴けば、ウェザー・リポートもどきな感じしかしません。

 

一方、”Dixie Chicken”はそれに対抗するかのように最も尺が長くて最大だと14分を超えています。 何か微妙な緊張感が漂っている様な空気感があります。

 

 

□ “All That You Dream” by Little Feat;

 

 

 

ローウェル、ポール,ビルの3名による共同体制に移行してゆく過程で、平等である事が逆にバンドとしての唯一無二の個性を薄めて散漫なサウンドになって行ったように感じました。 自作の曲では、めいめいがリード・ヴォーカルを取るように変わりました。 バンド内で起きるケミストリー(chemistry)は今も昔も決して長くは続かないこと、このリトル・フィートも証明したように思います。

 

ここ最近盛んにリリースされているリリース?十周年記念盤、目玉的な未発表曲を蔵出しすることが当たり前になって来ました。 主要なメンバーが他界してしまっていると、その意図が商業的な方向になってしまい、深く掘り下げる事にならずがっかりすることも起こります。 また、その当時の詳細な記録がないためか、かなり曖昧な部分があり、データ的にも随分と混乱しているように感じました。

 

 

それでも、アンコールで演奏される機会の多かったメドレー形式のこの組み合わせには痺れるものがあります。 リアルタイムでライヴを体験したかった、その一言です。

□ “Willin’/Don’t Bogart That Joint” by Little Feat;

 

 

 

過去にアップしたブログをまとめてみました。

  2012年3月  Long Distance Love - 遠距離恋愛     (ブログはこちら↓↑

  2019年10月 Missin' You -Paul Barrere     (ブログはこちら↓↑