ゲイリー・ムーア『Still got the blues』 | Music and others

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 2011年に急逝してから10年以上経ちましたが、このアルバム、ゲイリー・ムーアGary Moore)の『Still got the blues』は未だにに聴く機会が突然やって来ます。 よく、あのピーター・バラカンさんが言うように、本来の英語の発音に沿った記載であれば、”ガリー・ムーア”と書きたいところですが・・・・。

 

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 最近目にしたジョン・ボナマッサ(Joe Bonamassa)のゲイリー・ムーアに関するインターヴューでは、ジョン曰く(こちらです↓↑

 

 このアルバム、『Still got the blues』がギター界に与えた影響は絶大であり、歴史を「以前」と「以降」に分けた分岐点とも言えるアルバムであると、”Guitar World”誌のインタビューの中で語っています。

 

全ては、このアルバムの前にあったもの、または後にあったもの、に分けられると思う。 こんなアルバムはなかった。 彼のロック作品、シン・リジィ(Thin Lizzy)との作品や80年代のソロ・アルバムはそれを示唆していたけど、彼が“今度はブルース・アルバムを作りたい”と言い出して、それを見事にやり遂げ、ロックとブルースの間を最も完璧な形で貫いたことで、一つのジャンルが生まれたんだ。 僕の考えでは、スティーヴィー・レイヴォーン(Stevie Ray Vaughan)はロックというよりブルースだった。ゲイリーはブルースというよりロックだったんだ。」 

 

 1990年にリリースされた『Still Got The Blues』は、アメリカでは5年の歳月を掛けて初めてのゴールド・ディスクに認定され、過去最高のセールスをもたらしました。

同作には、アルバート・キング(Albert King )、アルバート・コリンズ(Albert Collins )といったゲイリー・ムーアの憧れたアメリカン・ブルースのヒーロー、そしてジョージ・ハリスン(George Harrison)も参加しています。

 

 ゲイリーは、イアン・テイラー(Ian Taylor)と共同でプロデュースに当たり、キャリア20年目にして初めてハード・ロックから距離を置き、メロディック、且つ、明確にブルージーなスタイルを打ち出しました。 特に、英国、そして、日本では非常に歓迎されて、ようやく陽の当たる表舞台に立つことが出来たのです。 

 

 このアルバムは、彼の代名詞とも言えるスロー・ブルーズ、”Still Got The Blues”、そして、”Moving On”、”King Of The Blues”といったオリジナル・ナンバーと、ブルーズの言わずと知れた名曲である、オーティス・ラッシュ(Otis Rush)の”All Your Love”、ジミー・ロジャーズ(Jimmy Rogers)の”Walking By Myself”と言った、ゲイリーが敬愛するアーティストのカヴァー曲で構成されています。

 

Gary Moore 12

 

□ Track listing;

  Released  March 1990

  All songs were written by Gary Moore, except where noted.

1. "Moving On" - (Gary Moore) - 2:39

2. "Oh Pretty Woman" - (A. C. Williams) - 4:25

  Albert King - guitar

3. "Walking By Myself" - (Jimmy Rogers) - 2:56

4. "Still Got the Blues (For You)" - (Moore) - 6:12

5. "Texas Strut" - (Moore) - 4:51

6. "Too Tired" (Johnny “Guitar” Watson, Maxwell Davies, Saul Bihari) – 2:50

  Albert Collins - guitar

7. "King of the Blues" - (Moore) - 4:36

8. "As the Years Go Passing By" - (Deadric Malone) - 7:46

9. "Midnight Blues" - (Moore) - 4:58

 

CD Release Bonus Tracks

1. "That Kind of Woman" - (George Harrison) - 4:32

  George Harrison - rhythm and slide guitars, backing vocals

2. "All Your Love" - (Otis Rush) - 3:32

3. "Stop Messin' Around" - (Clifford Davis, Peter Green) - 4:00

 

□ Personnel;

 Produced by Gary Moore, Ian Taylor

Musicians;

 Gary Moore - guitar, vocals

 Graham Walker - drums

 Brian Downey - drums

    Andy Pyle - bass

 Bob Daisley - bass

 Don Airey - keyboards

 Mick Weaver - piano, Hammond organ, electric piano

 Nicky Hopkins - piano

 Raoul D'Olivera - trumpet

 Frank Mead - alto and tenor saxophones

 Nick Pentelow - tenor saxophone

 Nick Payn - baritone saxophone

 Gavyn Wright - leader of the string section

 

Gibson Lespole

 

 レコーディングでは、主に88年に購入した1959年製のレスポール・スタンダード(Gibson Les Paul Standard 1959)が使用されており、他には、あのピーター・グリーン(Peter Green)から譲り受けた同じ59年製のレスポール・スタンダードも使用しています。

 

 冒頭の曲、”Moving On”はオリジナルの楽曲でスライドギターが主導する8ビートのロックンロールです。 印象的なのは、歌詞の方であり

     Oh, well I'm tired of the same old faces

     And I'm sick of the same old names

     I'm getting bored with the same old places

     Everybody starts to look the same

同じ昔の顔、名前、場所に飽きてしまった(うんざりしている)から、前に進むんだと言う、ハードロックからブルーズへの方向転換の決意表明と受け取ることが出来ます! キーはAのシンプルな構成です。

 

 そして、続く”Oh Pretty Woman”はアルバート・キング(Albert King)がスタックスに移籍して発表した渾身のアルバム、『Born Under a Bad Sign』に収録されたサザーン・ソウル風味の漂う名曲ですが、実際にアルバート・キングが客演しています。

□ “Oh Pretty Woman"  by Gary Moore with Albert King;

 

 

 

次の”Walking By Myself”はジミー・ロジャース(Jimmy Rogers)の知られたスロー・ブルーズですが、この曲はフレディ・キング(Freddie King)が71年にリリースした『Getting Ready...』で取り上げており、マイ・フェイヴァリットな楽曲です。

□ “Walking By Myself"  by Gary Moore ;

 

 

 

そして、ど演歌な”Still Got the Blues (For You)”はDm7で始まるマイナー・キーの泣きのブルーズです、コ-ラス部分は Am Em Am D9 / F9  E7#  Am  で、ギターソロは Dm7からF G Cmaj7  Fmaj7 と言うコード・プログレッションです。

□ “Still Got the Blues (For You)"  by Gary Moore;

 

 

 

1曲おいての”Too Tired”はジョニー・ギター・ワトソン(Johnny “Guitar” Watson)の55年リリースがオリジナルですが、ここではアルバート・コリンズ(Albert Collins)がカヴァーした78年リリースの『Ice Pickin'』の収録曲を参考にしているようです。 アルバート・コリンズ自身が客演しており、フェンダー・テレキャスター(Fender Telecaster)を使った特徴的なトレブリーで硬質な音色が際立って聴こえてきます。

□ “Too Tired"  by Gary Moore;

 

 

 

 

私が大好きで止まない”As the Years Go Passing By”もアルバート・キングのアルバム、『Born Under a Bad Sign』に収録されたスロー・ブルーズです。

 

また、ボートラとして追加された、ジョージ・ハリスン(George Harrison)が提供しヴォーカルとギターも担当した”That Kind Of Woman”がいい出来です。 元々は、エリック・クラプトン(Eric Clapton)が1989年リリースのアルバム、『Journeyman』に収録するためにレコーディングされたのですが、アウトテイクとなってしまいました。 翌90年のチャリティ・アルバム、『Nobody’s Child: Romanian Angel Appeal』で陽の目を見ていますが、あまり印象に残らない仕上がりでした

□ “That Kind Of Woman"  by Gary Moore;

 

 

 

1959年リリースのオーティス・ラッシュ(Otis Rush)の演奏で知られている”All Your Love”ですが、ゲイリー自身はジ66年リリースのジョン・メイオール&ブルーズ・ブレイカーズJohn Mayall & the Bluesbreakers)の『Blues Breakers with Eric Clapton』に収録されているエリック・クラプトンの演奏に衝撃を受けたそうです。 本人曰く、「一瞬にして人生が変わるほどの衝撃を受けた・・・・」と、当時ゲイリーはまだ14歳でした。

□ “All Your Love"  by Gary Moore;

 

 

 

フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)の”Stop Messin’ Around”のカヴァーが収録されています。 なお、ゲイリー・ムーアは95年に敬愛してやまなかったピーター・グリーン(Peter Green)に向けたトリビュート・アルバム、『Blues For Greeny』をリリースしますが、”Stop Messin’ Around”のカヴァーはその予兆であったことがよく分かります。

□ “Stop Messin' Around"  by Gary Moore;

 

 

ゲイリーの独特のべンド・テクニック、音程の可変幅の大きさ、そして、滑らかなロング・サステインは特徴的ですが、ライヴではその部分だけに焦点が当てられてしまい、クリシェのようになってしまった結果として、やがてそのスタイルからは距離を置くようになってしまいました。 お約束の度を越した”お家芸”になってしまい、本分ではなくなったのでしょうね・・・・・。 そう、”Parisienne Walkways”(パリの散歩道)でのギターソロがその典型的なものですね!

    

へヴィー・エレクトリック・ブルーズをこのアルバムで確率したわけですが、先ほど触れた通りで、やはり本人的には”弾きすぎ”感があったようですね。 それから10年ほど経過してリリースされたアルバム、『Back to the Blues』で自身でようやく納得の行く落ち着つある境地にたどり着いたようです。 但し、表舞台からは徐々に遠ざかって行き、ギタリストとしてかつての様には脚光を浴びるまでには至りませんでした。 何といっても、オーヴァーなまでのギターソロが印象的なスロー・ブルーズ(バラッド)である、”Parisienne Walkways”、”Still Got the Blues”のイメージが強すぎてしまい、似たイメージが付いて回りがちです。

 

Back to the blues

 

 2011年2月に、休暇で訪れていた宿泊先のホテルで就寝中に心臓発作に襲われて帰らぬ人となりました。 どうも過度の飲酒が起因していたと言われています、まだ58歳と言う若さでした。 日本では絶大な人気を誇るギタリストであったので、話題になっていました(合掌)

  

 今まで、ゲイリー・ムーアについて直接触れたブログはありませんでした。 彼がブルーズに回帰した際にも、日本での一大ブームには背を向けており、馴染めませんでした。 でも、彼の演奏も引用するブログはいくつかありましたので、再掲したいと思います。

 

2012年7月 一徹なギタリスト、アイルランドの魂"ロリー・ギャラガー" (こちらです↓↑

2013年3月 Eric Clapton 『Old Sock』 その全容は・・・・  (こちらです↓↑

2013年4月 スティーヴィー・レイ・ヴォーン 『Texas Flood』 その壱  (こちらです↓↑

2017年7月 FREE ”Wishing Well ”  (こちらです↓↑

2017年4月 ブルーズに目覚めた日『Clapton Classics』  (こちらです↓↑

2018年10月 哀悼 オーティス・ラッシュ  (こちらです↓↑

 

 

今年は個人的にも色々なことがありました・・・・・・

  一度現役から引退して静かな生活に身を置きました

  でも、また現役復帰しましたが、驚きの連続です

  田舎にある実家の処分が決まり、もう戻る場所がなくなりました

寂しさを憶えると共に、年齢を重ねることはこう言うことなんだろうか・・・・と噛みしめる日々を送っています。

今の心境は、正にブルーズです・・・・

 

     Though the days come and go, there's one thing I know

     I've still got the blues for you

 

来年は良いことがあることを祈りたいと思います、皆さんもどうぞ良い年を・・・・。