さて、久々に紹介するのは、この人、ステファン・マーリー(Stephen Marley)の4枚目のアルバム、『Old Soul』です。 この“マーリー“と言うファミリー・ネームを聞いて、ピンと来る方がいると思いますが、ステファンはレゲエ界のレジェンドである、今は亡きボブ・マーリー(Bob Marley)の次男になります。 血は濃いと言うのか、彼のヴォーカルを聞けば、一目瞭然ではないでしょうか?!
幾度となくグラミー賞の栄冠に輝いているアーティストであり、単なる親の七光りではないミュージシャンだと言えます。 このアルバムでは、オリジナルの楽曲に過去の知られた名曲をジャンルに関係なく取り上げています。 そして、エリック・クラプトン(Eric Clapton)を始めとする多くのゲストが参加していますが、中心にあるのは彼の類い稀なきヴォーカルです!
ステファンは、ミュージシャンとしてのキャリアを1979年からファミリー・バンドであるジギー・マーリー&ザ・メロディ・メイカーズ(Ziggy Marley and the Melody Makers)で何と7歳からシンガーとしてスタートさせます。
以降は、裏方としてプロデューサー、コンポーザーとして兄であるジギー・マーリーをサポートし、一方では、エリカ・バドゥ(Erykah Badu)-『Mama's Gun』の中の”In Love with You from ”からインナー・サークル(Inner Circle)、ダンスホールの多くのアーティストに至るまで様々なジャンルで楽曲のプロデュースを手掛けて来ました。
2022年には、あのニーナ・シモン(Nina Simone)をトリビュートするミニ・アルバム、『Celebrating Nina: A Reggae Tribute to Nina Simone』を制作しています。
ソロ・キャリアをスタートさせたのは2007年のアルバム、『Mind Control』からです。 彼の最初の3枚のソロ・アルバムは、グラミー賞の最優秀レゲエ・アルバム賞を続けて受賞しています。
ジギーやダミアン・マーリー(Damian Marley)と言った兄弟たちのアルバムでのグラミー受賞歴と合わせると、計8回も受賞していると言う才能あふれるアーティストと言えます。
□ Track listing;
Released March 1990
All songs were written by Stephen Marleyaylor Goldsmith, except where noted.
1."Don't You Believe" 2:39
2."Cool as the Breeze" 4:38
3."Cast the First Stone" 3:55
-featuring Damian Marley
4."Thanks We Get (Do Fi Dem)" 3:57
- featuring Buju Banton
5."Don't Let Me Down" (Paul McCartney; Ringo Starr; John Lennon; George Harrison) 3:41
6.Georgia on My Mind" (Ray Charles) 4:29
7."Let the Children Play" (Carlos Santana) 4:03
8."Old Soul" 3:31
9."There's a Reward" 3:45
-featuring Ziggy Marley
10."This Time"4:45
11."These Foolish Things (Remind Me of You)" (Frank Sinatra ) 3:19
12."I Shot the Sheriff" (Bob Marley) 5:01
-featuring Eric Clapton
13."Standing in Love" 3:48
-featuring Slightly Stoopid
14."Winding Roads" 4:27
-featuring Jack Johnson and Bob Weir
15."Old Soul" (Single version) 3:21
□ Personnel;
Produced by Gary Moore, Ian Taylor
Musicians;
Stephen Marley - Drum, Drums, Guitar, Percussion, Vocals
Ziggy Marley - Vocals
Damian Marley- Vocals
Chris Meredith - Bass
Llamar Brown - Guitar, Piano
Ranoy Gordon - Bass, Guitar, Vocals (Background)
Javaughn - Bass
Jeff Chimenti - Keyboards
Magela Herrera - Flute
Randy Singer - Harmonica
Juan Torres - Saxophone
Chad Bernstein - Trombone
Karene Brown - Vocals (Background)
Keiko Smith - Vocals (Background)
Kyle McDonald - Vocals (Background)
Slightly Stoopid
Bob Weir & Wolf Bros;
Bob Weir - Guitar
Jay Lane - Drum
Don Was - Bass
Buju Banton- Vocals
Eric Clapton - Guitar
Jack Johnson - Vocals
まずは、最初に本編ではありませんが、エリカ・バドゥ(Erykah Badu)の衝撃的なアルバム、『Mama's Gun』に収録されていたこの曲を、何と2000年ですから23年も前になるんですね!
□ “In Love with You" by Erykah Badu featuring Stephen Marley)
続いて、2007年リリースのファースト・アルバム、『Mind Control』からこの曲を。
□ “Hey Baby" by Stephen Marley featuring Mos Def;
さて、本アルバムですが前作の『Revelation Pt. 2 – The Fruit of Life』から7年ものブランクがあるのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが影響しています。 フロリダにある家族経営の農場のガレージを改装したスタジオでのアコースティック・ジャムがベースになっています。 全体的にかなり軽やかでメロウであり、愛、家族、人生についての柔らかな感情が全体に漂っています。
1曲目の”Don't You Believe”、シンプルなタイトルに歌詞、柔らかなメッセージが流れています。
そして、続く”Cool as the Breeze”は何となく父親であるボブ・マーリー(Bob Marley)に対するオマージュのように聴こえます。 パーカッション、手打ちドラムの一種である(nyabinghi drums)やアコースティック・ギターにより、レゲエというよりもカリビアン・ミュージックの面持ちですね。
3曲目の”Cast the First Stone”は、弟であるジュニア・ゴング (Junior Gong)ことダミアン・マーリー(Damian Marley)が客演しています。 ダミアンの持ち味であるヒップホップ、ラップ色が控えめながらちゃんと出ています・・・。
そして、”Thanks We Get (Do Fi Dem)”(レゲエ界のスーパー・レジェンドにしてダブの巨匠、リー・”スクラッチ”・ペリー(Lee "Scratch" Perry)が書いたジュニア・バイルズ(Junior Byles)の名曲)は、ダンスホール・レゲエのブジュ・バントン(Buju Banton)をフィーチャーしています。 何か、トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ(Toots and the Maytals)とジミー・バフェット(Jimmy Buffett)とを足したような軽やかな感じが印象的です。
□ “Thanks We Get (Do Fi Dem)" by Stephen Marley ;
中盤から3曲ほど、立て続けにカヴァー曲が続きます。 ビートルズ(The Beatles)、レイ・チャールズ(Ray Charles)、そして、サンタナ(Santana)と連なりますが、驚かされるような新解釈がある訳ではなく、取り上げた意図が良く分からない面があります。 強いて言えば、”Let the Children Play”はある意味社会的なメッセージの詰まった楽曲ではありますが・・・・オリジナルとは全く違う曲に聴こえてしまいます。
そして、アルバムのタイトル・トラックである”Old Soul”が続きます。 この曲は、元々はレゲエ・シンガーであるオミ(Omar Samuel Pasley)の楽曲ですが、ステファンは歌詞を変えてレコーディングしています。 彼の家族の伝記的な内容が綴られており、父親であるボブ・マーリーが亡くなった1981年、母親であるリタ・マーリー( Rita Marley)、ピーター・トッシュ(Peter Tosh)、シャバ・ランクス(Shabba Ranks)、UB40、そして、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の名前が織り込まれています。
□ “Old Soul" by Stephen Marley ;
次の”These Foolish Things (Reminds Me Of You)”も4曲目となるカヴァーですが、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)やエタ・ジェームス(Etta James)、ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)、ナット・キング・コール(Nat King Cole )、ビング・クロスビー(Bing Crosby)などの数多くのアーティストがレコーディングしたスタンダードに挑戦しています。
すでに古典とも言える、ボブ・マーレーの73年リリースのプロテス・トソング、“I Shot the Sheriff”をカヴァーしています。 ボブ・マーリーがこの名曲をリリースしたのは28歳の時であり、ステファンはすでに51歳になっていますから、時の流れは速いものです。 現代のブラック・ライブズ・マター運動や人種的正義を求める社会的な流れを受けてのカヴァーなんだと思います・・・・・。 エリック・クラプトン(Eric Clapton)がギターで客演していますが、手癖たっぷりのソロを聴かせてくれます。
マイアミのクライテリア・スタジオでこの楽曲に出会わなければ、今のようなキャリアには至らなかったはずですから・・・・、そして、レゲエもボブ・マーリーも決して全世界的な知名度を得るようにはならなかった・・・・、不思議な縁ですね。 そして、本当にいい曲であることを再認識させられました。
□ “I Shot the Sheriff" by Stephen Marley featuring Eric Clapton;
”Standing in Love”ではピュアな女性との出会いと愛を歌っています。
そして、続く”Winding Roads”は、ゲストとしてジャック・ジョンソン(Jack Johnson)とボブ・ウィアー(Bob Weir)が参加していますが、非常にゆったりとした晩年のジェリー・ガルシア(Jerry Garcia)が歌った”Black muddy river”のような不思議な浮遊感とうねりが漂います。 この楽曲のバックは、何とボブ・ウィアー&ウルフ・ブラザーズ(Bob Weir & Wolf Bros)が務めているようです! この曲が一番今の自分には刺さりました。
□ “Winding Roads" by Stephen Marley featuring Jack Johnson & Bob Weir & Wolf Bros;
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それにしても、年が明けての大きな地震、北陸エリアの方々のご無事を心よりお祈りいたします。