ブルーズに目覚めた日『Clapton Classics』 | Music and others

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さて、私が真の意味でブルーズ(Blues)との距離が一気に縮まったと感じたのは、今回紹介するPヴァイン・レコーズP-VINE Inc.)からリリースされた『Clapton Classics』を手に入れて殆ど毎日のように聴いてからです。
 
不思議なものですね、楽器を演奏することから距離を置くようになって初めてこのブルーズと云う音楽との距離が縮まったのですから・・・・。
 
記念すべき第1作目のリリースは、1987年のローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のカヴァーした元ネタ曲集である、『Rolling Stone Classics 1』でした。 このセールスが好調だったことにより、続編として、89年には『Elvis Classics』、『The Beatle Classics』(何と30曲入りです!)と順調にリリースが続きました。

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1991年になりついに、私の宝物であり、本当の意味でブルーズに開眼するきっかけとなった『Clapton Classics』が登場します。 このシリーズでは、他にはライ・クーダーに焦点を当てた『Ry Cooder Classics』(1&2と2枚、これはストーンズの同様です)があったと記憶しています。
 
価格は3,041円(税抜き)とそれなりにはしていますが、収録された曲数が26曲ですから通常のCD2枚分以上ということで割高感はしませんでした。
 
とにかく、ヤードバーズ(The Yardbirds)時代から始まり、ブルース・ブレイカーズ(John Mayall & the Bluesbreakers)、 クリーム(Cream)、デレク&ドミノス(Derek and the Dominos)、再浮上したソロ・アーティスト時代(レイドバック&レゲエ時代)まで、幅広くカヴァーされており、何枚ものブルーズ関連のアルバムを買う必要がなく重宝しました。
 
勿論、これは入り口であり、本当に気になるブルーズのアーティストについては個別に少しずつ買い始めて行きました。
 
さて、この発売元であるPヴァイン・レコーズP-VINE Inc.)ですが、現在も渋谷区桜ヶ丘にオフィスを構えて独自のユニークな視点での制作を続けています。 勿論、設立当初の高地明、日暮泰文両氏の目的からは変わって来ており、今では、Jポップなどのアーティストの楽曲も発掘してリリースしているようです。
 
75年設立時には、両氏が追求してきたブルースの魅力を世に広めることが第一義であり、その後、ソウル、ファンク、あるいは、ワールド・ミュージックに至るまでカテゴリーを拡大してきました。 それでも、常にこだわりを持った独自の視点で個性的なミュージック・ソースを提供してきたレーベルだと思います。 私にとっては、数々のブルーズのアルバムと、それから、Pファンク一派のアルバムを紹介してくれた貴重なレーベルとして強い印象が残っています。

 
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□ Track-Listing*****
1.  All Your Love     OTIS RUSH     1958 
2.  Hideaway      FREDDY KING     1960
3.  Born Under A Bad Sign     ALBERT KING     1966
4.  Spoonful     HOWLIN’ WOLF     1960
5.  Rollin’ And Tumblin’     MUDDY WATERS     1950
6.  Cat’s Squirrel     DR. ROSS     1959
7.  Ramblin’ On My Mind     ROBERT JOHNSON     1936
8.  I’m So Glad     SKIP JAMES     1931
9.  Outside Woman Blues     BLIND JOE REYNOLDS     1929
10. Sittin’ On Top Of The World     HOWLIN’ WOLF     1957
11. I Wish You Would     BILLY BOY ARNOLD     1955
12. Too Much Monkey Business     CHUCK BERRY     1956
13. I Got Love If You Want It     SLIM HARPO     1957
14. Smokestack Lightnin’     HOWLIN’ WOLF     1956
15. Five Long Years     EDDIE BOYD     1952
16. Willie And The Hand Jive      JOHNNY OTIS     1958
17. Jesus Is Coming Soon     BLIND WILLIE JOHNSON     1928
18. Swing Low Sweet Chariot     THE STAPLE SINGERS     1955
19. Everybody Oughta Make A Chage     SLEEPY JOHN ESTES     1938
20. Worried Life Blues     BIG MACEO     1941
21. Further On Up The Road     BOBBY BLAND     1957
22. Have You Ever Loved A Woman     FREDDY KING     1960
23. Steppin’ Out     MEMPHIS SLIM     1959
24. The Sky Is Crying     ELMORE JAMES     1959
25. Eyesight To The Blind     SONNY BOY WILLIAMSON     1951
26. Crossroads     ROBERT JOHNSON     1936
 
 
これを入り口として、私の”ブルーズ追及の日々”が本格的に幕を開けたのです。 極め付けは、”一家に一枚”と言われる?、96年10月にリリースされた『Robert Jhonson;The Complete Recordings』にとどめを刺しますが・・・・。自分の棺に入れてもらおうと考えている二つのミュージック・ソースの一つになります。 もう一つは、『Layla and other ssorted love songs』(40年もののアナログ盤2枚組み)になります。


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エリック御大は、74年以降レイドバック、レゲエ、カントリー、更には、ソウル、R&B志向と云う風に変遷を辿ります。80年代には時流だったとは言え、打ち込みサウンド&シンセを取り入れたりしています、はっきり言って不評でしたけど・・・・。 その後、92年リリースの『Unplugged』の大成功に自信を得て、本流回帰となる初のブルーズ・カヴァー・アルバム『From the Cradle』を94年にリリースします。このアルバム、英米のヒットチャートの1位を飾り、アメリカだけでトリプル・プラティナ(300万枚)の売上を記録しました。 ブルーズのカヴァー・アルバムとしては異例のセールスだといえます。 
 
その後も、2000年に今は亡きブルーズの大御所、B.B.キング()とのコラボレーション・アルバムとして『Riding with the King』をリリースします。 2004年には大恩人とも言えるロバート・ジョンスンのカヴァー・アルバム、『Me and Mr. Johnson』、『Sessions for Robert J』を2枚立て続けにリリースしています。コアなブルーズ・ファンからは揶揄されるのでしょうが、私にはある種の決意表明のように映りました。
 
これらの中で一番好きなアルバムは『From the Cradle』ですけど。
 
さて、このコンピュレーション作品に戻ると、26曲で63分と云うテンコ盛りですが、飽きると云うことはありませんでした。次から次へと出て来る、耳馴染みの曲のオリジナル、大半の曲はエリッ御大のカヴァー・ヴァージョンと大きな差は感じられませんでした。
 
もちろん、SP盤特有のヒスが入っている曲、8、9曲目がそうですが、それも返って味となって聴けるのですね、不思議でした。今迄なら、聴く以前の問題としてスルーしていたと思いました。
 
26曲の内訳は、
 
鮮烈なデヴューとなったヤードバーズ(The Yardbirds)時代のカヴァーが11,12,14,15曲目
 
ギタリストとして革新的であり、また最も衝撃的であったジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ(John Mayall & The Blues Breakers)時代に取り上げた曲が計6曲で、1,2,7,13,14,23曲目がそうである。
 
一躍時代の先頭に立ち最も光り輝いていたであろう 、クリーム(Cream)時代が計9曲で、3,4,5,6,8,9,10,23,26曲目と目白押しである
 
私の一番愛して止まない、デレク&ザ・ドミノス(Derek & The Dominos)時代では、22,26の計2曲が取り上げられています。短命に終わったバンドなので、曲目が少ないのは仕方ないですね。
 
現在に至る、最も長いレイド・バック&レゲエ(アルコール中毒)時代を含めたソロ・キャリアでは、5,7,9,16,17,18,19,20,21,22,24,25,26の計13曲が演奏されています。 
 
同じ曲であっても、その時代によって演奏スタイルはかなり異なっています。
 
 
勿論、選曲の対象が1974年のヤードバーズでのデヴューの時から1983年の『Money and Cigarettes』までと広範囲に亘るため、基準がそのオリジナルの入手のし易さ、あるいは、知名度とされたのか、「神のみぞ知る??」と言う面はあると思います。
 
何故に入っていないのかと思う曲は、今考えると数多くあるように感じます。
 
エリック・クラプトンのどの時期のスタイルに重心を置くかによって選曲は変わってしまいます。おそらく、66年4月のブルース・ブレイカーズ時代から68年11月のクリーム解散までの時期に重点を置いているのではないかと想像できますね、リリース当時の状況を考えると。
 
   Nobody Knows You When You're Down and Out (Jimmy Cox)- 『Layla and other assorted love songs』
     Key to the Highway (Charles Segar, Willie Broonzy)
     Mean Old World (Little Walter)
     Motherless Children<Mother's Children Have a Hard Time> (Blind Willie Johnson)- 『461 Ocean Boulvard』
     I Can't Hold Out (Elmore James)
     Steady Rollin' Man (Robert Johnson)
     Double Trouble (Otis Rush)- 『No Reason To Cry』
     Blow Wind Blow (Muddy Waters)- 『Another Ticket』
     Floating Bridge (Sleepy John Estes)
     Cross Cut Saw Blues (Tommy McClennan) (covered by Albert King)- 『Money and Cigarettes
     Crazy Country Hop (Johnny Otis)
 
 
ジャック・ダニエルズのロックでも傍らにあれば、もう最高のシチュエーションですね、まぁこれはキース・リチャーズ(Keith Richards)の専売特許だと思いますが、ホテル・オークラの一室でロバート・ジョンスンをかけながら…(笑)
 
26曲全てについて詳細に説明するよりも、聴けば分るのではないでしょうか? 私は、iTunesで、オリジナル・ヴァージョンとエリック・クラプトンのカヴァーし・ヴァージョンとを並べたプレイリストを作成しています。
 

 

 

 

 

 
私自身のお気に入りと言えば、冒頭を飾るオーティス・ラッシュOtis Rush)の”All Your Love”ですね。 この演奏は1956年から58年に掛けてコブラ・レーベル(Cobra Label)にてレコーディングされた楽曲の一つであり、彼の最も充実した時期に当たります。 通称はコブラ・セッションズ(Cobra Sessions)と呼ばれておりましたね。後に手に入れたコンピュレーション、『Essential Collection: The Classic Cobra Recordings 1956-1958』にはキラ星の如く名曲、名演が並んでいます。 ウィリー・ディクスン(Willie Dixon)作の”I Can't Quit You Baby”がデヴュー作品であり、同じく”Groaning the Blues”に、本人作のオリジナルである”Double Trouble ”などが収録されています。
 
私が最も多くアルバムを所有しているブルーズ・アーティストになります。現在、オーティス・ラッシュは存命ですが、2004年に脳梗塞を発症した後は車椅子生活となり奏者としては引退しています。
 
86年に2度目の来日公演がありました、「ザ・ブルース・ショウ」と云うタイトルで全国を回ったはずです。 バックを務めたのは、近藤房之助&ブレイク・ダウンでしたが素晴らしい演奏でした、この目に焼き付いています。 この時のライヴ音源は、奇しくも高地明氏の肝いりで、Pヴァイン・レコーズからリリースされています。『BLUES INTERACTION - Live in Japan 1986 with Break Down』てなタイトルでした。
 

 

 

 

 

 

そして、初めてソロヴォーカルを採った曲、"Ramblin’ On My Mind"が思い出深いですね。ロバート・ジョンスンのオリジナルを聴いた時には本当に驚きました、完璧な出来上がりでありアレンジのしようがないと思ったのです。エリック御大は長い間エレクトリック・ヴァージョンで演奏していましたが、アコギ・ヴァージョンの方が好きです。 上の動画は珍しくドブロをライヴで演奏している、99年の横浜アリーナでのものです。
 
次は、シャッフル・ビートが心地良い、70年代の定番だった”Further On Up The Road

” です。 ブルース・シンガーの王様とも呼べるボビー・ブランド(Bobby Blue Blan)が、57年にリリースしたシングルで、全米R&Bチャートで2週連続1位を記録した代表作品のひとつになります。

 

 

エリック御大以外にも多くのギタリストがカヴァーしており、ロイ・ブキャナン(Roy Buchanan)、ガリー・ムーア(Gary Moore)、スティヴィー・レイ・ヴォーン(Stevie Ray Vaughan)などがあります。キーはGが一般的です。

 

 

エリック御大はオリジナルの方ではなく、Tボーン・ウォーカー(T-Bone Walker)のヴァージョンを参考にしていると巷では言われています。聴き比べると、ヴォーカルとギター・フレーズにおいては、両方を参考にしている様に思います。
 
そして、アマチュア・バンド時代に最も多く演奏して馴染みがあるのが、”Have You Ever Loved A Woman ”(何故か邦題が付いていて、”愛の経験”と云う迷訳でした!?)です。70年代にはドミノスでもソロでも、ライヴでは定番中の定番のように必ず演奏していましたね、キーはCです。

 

 

3大キング(The Three Kings of Blues – Albert, B.B. and Freddie King)の中では最も若かったのですが、とてもアグレッシヴなギターとソウルフルなヴォーカルが特徴的でしたが、42歳で急死してしまいました。
世代的には、オーティス・ラッシュ(Otis Rush)やバディ・ガイ(Buddy Guy)といった、シカゴ・ウエストサイド・ブルースに属するアーティストです。
 
私はシェルター時代のこのアルバムが大好きですが(ブログはこの辺↓↑

 

 

エリック御大は、自身が所属するRSOレーベルに彼を招き入れて、『461 Ocean Boulevard 』をレコーディング中のクライテリア・スタジオにて、自らのバックバンドと共にレコーディング・セッションを行っています。 プロデューサーにはトム・ダウト(Tom Doud )を指名しますが、結果的には成果を残すまでには至りませんでした。『Burglar』と『Freddie King Larger Than Life』の2枚のアルバムを残しています。 また、その時のジャム・セッションについては、後にセッション音源集CD『The Freddie King Criteria Studios Sessions』として、ボックスセットの『Give Me Strength: The 1974/1975 Recordings』に収録されました。(ブログはこの辺です↑↓
 
 
そして、クリーム時代の作品の中でも最高傑作だと勝手に思っている2曲が、”Steppin’ Out” 、”Crossroads ” です。
 

 

 


 

 

インスト曲の”Steppin’ Out ”はクリーム解散後にリリースされた『Live Cream Vol. Ⅱ』での長尺版が印象深いですね、まだギブソン使ってた頃のソロです。 アナログ盤では何故か” Hideaway ”と誤記されていましたね。
 
そして、私がギターを手にするキッカケとなった想い出の1曲、”Crossroads ”です。NHKのヤング・ミュージック・ショーで放映された、クリーム解散コンサートのライヴをテレビの前にかじりついて観ました、感動しました。まさに、血湧き肉躍る映像でしたね。 残念ながら、ギタリスト志望の夢は見事に打ち砕かれましたが・・・・。

 

 

 

 

 

 
最後になりましたが、先日の3月30日はエリック御大の72回目のバースデイでした。 このCDを取り上げたのはたまたまですが、まだまだ現役でステージに立ち続けて欲しいと思います。
 
次は、カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)の『Caipi』について書こうと思いますが、苦心しております。