【消費税】安倍総理は増税派?【メディアリテラシー】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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 8日に、「【チャンネル桜】政治家を守るためなら言論人はスジを曲げていいの?【西田昌司】」という記事を公開した(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11868283677.html)。
 すると、以下のコメントがついた。



「8. 無題
時事ドットコム:安倍氏「消費税12%も」 2011.11.17
自民党の安倍晋三元首相は17日、都内で講演し、消費税を2010年代半ばまでに10%まで引き上げるとした政府・与党の方針に関し、
「10%で足りるのか、場合によっては12%ということになっていくかもしれない」との認識を示した。


元から安倍さんは増税派だったようです。
西田氏やチャンネル桜は安倍信者なのでヘタれてしまったのでしょう。
ヤマケン 2014-06-10 16:44:22」



 いかがだろうか。
 私にはいまひとつ説得力を感じられないが。
 特に最後の二行はピンとこないが、詳論しても無意味なので割愛する。

 ヤマケンさんによれば、安倍晋三内閣総理大臣は元から消費税増税推進派だったとのことである。
 つまり、2010年代半ばまでに消費税の税率を10%以上に引き上げようという安倍総理が2014年4月からの消費増税を決定するなど当然だということだ。

 こういう話は昨年9月にも見かけた。
 そして、反論記事を書いた(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11622188641.html)。
 しかし、あらためて書くことにする。



◆◆◆



 ヤマケンさんは、安倍総理が増税派だという根拠として、2011年の時事通信の記事を挙げる。
 この記事を根拠として、安倍総理は増税派であり今年4月からの消費増税も本意であるというためには、2つの条件が必要になる。

① 上記の時事通信の記事が真実を伝えていること(2011年11月17日に安倍総理が増税派だったこと)
② ①を満たすとして、安倍総理がその後も増税派の考えを維持していること


 メディアが常に真実を伝えるとは限らないということは、私のブログを見ているような方はご承知だろう。消費税増税を巡る報道を見ても、安倍総理が消費税増税を決断していないのに決断したという報道がなされ、菅義偉官房長官がこの報道を打ち消したということがあった(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11618021698.html、倉山満「増税と政局 暗闘50年史」(イースト・プレス、2014年)101~109ページ)。
 また、安倍総理が2011年11月時点で増税派だったとしても、その後、勉強し直すなどして考え方を変えるということもあり得る。

 ①は後回しにして、②から検討する。



◆◆◆ ② ◆◆◆ 



 安倍総理の自著「新しい国へ 美しい国へ完全版」(文藝春秋、2013年)を見てみる。
 本書は安倍総理の2013年1月の発言ということになる。
 本書は2006年の「美しい国へ」に追記したものであり、追記部分には安倍総理の自民党総裁選後の考え方が示されている。
 追記部分にはこう書かれている(235ページ以下)。



増補 最終章 新しい国へ

デフレ退治と日銀改革

 日本にとって、喫緊の課題が経済対策であることは誰の目にも明らかです。
 現下の経済状況における最大の問題は、一九九七年以来の長引くデフレに他なりません。デフレは労働者の雇用を奪い、社会保障を危機に陥れ、国民生活を疲弊させます。
 巷には、少子高齢化を迎える日本においては、デフレは避けられないという議論もありますが、これは誤りです。実際に多くの国は、人口が減少していても、デフレには陥っていません。なぜなら、政府と中央銀行が協調した金融政策によってデフレを脱却しているからです。

(中略)

 この二十年間を振り返って、はっきりしていることは、名目GDPが増えれば税収は増えていくし、名目GDPが減れば、税収は減少していくという当然すぎることです。
 自民党は税と社会保障の一体改革に賛成しました。現実問題として年金医療介護・社会保障費の給付額が全体で毎年三兆円、国が税で負担する分だけでも一兆円ずつ増加していくなかで、何とか財源を確保し、かつ国際社会の日本に対する信認を繋ぎとめるためには、背に腹は替えられなかったからです。
 ただ、残念ながら、税率を上げることイコール税収が増えていくことにはなりません。
 一九九七年に消費税を三パーセントから五パーセントに上げたときは、五十四兆円だった税収は、翌年度は四十九兆円に減少し、それ以降、五十四兆円に到達したことは一度もない。
 結局、債務を減らして、プライマリーバランスの黒字化を成し遂げるためには、名目GDPを増やすしかない。
 二〇〇六年、当時の小泉内閣は二〇一一年までに、プライマリーバランスを黒字化するという目標を立てましたが、現実の一一年度の収支はマイナス三十一兆円。私の内閣(二〇〇七年)では、マイナス六兆円まで改善しました。一パーセントの増税をすることなく、約二十二兆円圧縮できたのは、一ドル百二十円台まで円高を是正し、成長戦略によって投資を呼び込み、デフレを緩和させることができたからです。

新しい国へ 美しい国へ 完全版 (文春新書 903)/文藝春秋
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 さて、安倍は増税派だ、などと言っている人は、本書を読んだ上で言っているのだろうか。
 これが増税派の発言だろうか。デフレ脱却前に消費税増税を強行すべきという人の発言だろうか。
 安倍総理は、消費税増税に懐疑を示している。
 安倍総理は、税率を上げることより、経済を成長させることによって自然に税収が増えていくこと(自然増収)を重視している。

 安倍総理は、「一九九七年以来の長引くデフレ」「一九九七年に消費税を三パーセントから五パーセントに上げたときは、五十四兆円だった税収は、翌年度は四十九兆円に減少し、それ以降、五十四兆円に到達したことは一度もない。」と書いているが、これは重要だと思われる。
 つまり、安倍総理は、橋本龍太郎政権における消費税増税がデフレの要因だと考えているのである。
 デフレ脱却を目指す安倍総理が、自らデフレ要因だと考える消費税増税を推進するというのは矛盾である。 

 安倍は増税派だという人は、安倍総理の発言をどれだけ確認したのだろうか。
 安倍批判に前のめりになって、ろくに確認していないのではないか。
 右派にも左派にもいるのだが、安倍総理の著書を確認せずに批判している人が散見される。



 しかし、「佐村河内守のように、ゴーストライターが書いたのではないか。」と言う人もいるだろう。
 そこで、動画を紹介する。
 ・・・と思ったら、YouTubeから削除されてた(https://www.youtube.com/watch?v=08c9NKcvxt0)_l ̄l○
 しかも文字起こしのページまで消えているとは・・・(http://kokkai-sokuhou.iza.ne.jp/blog/entry/2937896/)_l ̄l○
 昨年9月の自分のブログ記事に文字起こしをコピペしておいてよかった。
 2012年11月25日の「報道ステーションSUNDAY」での安倍総理の発言である。



「11月25日 報道ステーション SUNDAY 安倍晋三自民党総裁 デフレ脱却編」国会速報ブログ2012年11月27日

http://kokkai-sokuhou.iza.ne.jp/blog/entry/2937896/

安倍 (中略)デフレから脱却をして税収を増やさなければ、絶対に財政再建はできません。それを私たちは優先しています。
民主党政権、財政再建させましたか? 安倍政権の時(長野「そうですね」)国債発行額は25兆円ですよ。野田政権は一体いくらですか? 44兆円。倍ぐらい多いですね。
 
長野 はい。
 
安倍 そして、プライマリーバランス、安倍政権の時は5.7~8兆円ですよ。今、30兆円近いでしょ。ちゃんとそれは景気を良くしてやってるんですよ。で、そこで、私たちが言っているのは、絞ってやっていくと。そして無駄遣いはしない。未来への投資はちゃんとやっていく。
皆さん、東海道新幹線、阪神高速道路、黒部第四ダム、あれは世界銀行から借りたんです。この借金がいけなかったんでしょうか。あの借金によって、私たちは高度経済成長を得て、そして、その果実によって社会保障の仕組みを作っていったんですよ。
 
長野 素朴な疑問をもう一点。今そういうふうにおっしゃったとすると、安倍政権できっと取られた暁には名目GDPも上がっていくと、このグラフで行くと、そうしますと、名目GDPが上がれば、もう増税しなくても、税収が上がるといったグラフでもあるんですが、それは消費税の問題を含めて、将来的にその辺どういうふうに考えてらっしゃるんですか?
 
安倍 ここではですね、安倍政権の時に51兆円まで上がりました。税収はね。それは51兆円まで上がった。それは名目経済が513兆円にまでなったからであります。まあ、しかし、消費税については、これから伸びていく社会保障費に対応する、そして子育てに対応するという目的がかかっています。で、その目的に適うように、ちゃんと消費税が、税収が増えるようにですね、まずデフレから脱却をしていく必要があります。さらに多くの果実が出てくればですね、それはその時さらに、もし様々な分野で減税をする必要があれば減税をすればいいのだろうと思いますが、まずはベースの税源としてですね、我々は真面目に考えるんであれば、やはり2年後には基本的に消費税を上げるべきだ。
ただ、税金を上げていくだけでは財政再建ができない。名目経済を、これでも明らかですね、名目経済を上げていかなければ税収は増えない。この基本を忘れてはならないということなんです。」



 確かに、安倍総理は「まずはベースの税源としてですね、我々は真面目に考えるんであれば、やはり2年後には基本的に消費税を上げるべきだ。」と言っている。この発言はヤマケンさんが示す時事通信の記事にも合いそうだ。
 しかし、「消費税については、これから伸びていく社会保障費に対応する、そして子育てに対応するという目的がかかっています。で、その目的に適うように、ちゃんと消費税が、税収が増えるようにですね、まずデフレから脱却をしていく必要があります。」、「税金を上げていくだけでは財政再建ができない。名目経済を、これでも明らかですね、名目経済を上げていかなければ税収は増えない。この基本を忘れてはならないということなんです。」という留保を付ける。
 つまり、消費税増税の前提はデフレ脱却であり、この前提を欠く消費税増税には反対だということになる。
 安倍総理は、少なくとも増税派とレッテル貼りされるほど消費税増税を推進してはいない。なお、三橋貴明先生などの解説を聞くに、デフレ脱却には少なくとも2年はかかるなどと言われるところであり、安倍総理が「2年後」というのは、少し短いような気もするが、不合理な数字ではない。
 今月4日に発表された「骨太の方針」でさえ「デフレ脱却に向けて着実に前進している」となっており(http://mainichi.jp/select/news/20140605k0000m020155000c.html)、現時点ですらデフレ脱却したと断言できないのに、昨年10月時点で消費税増税をしても問題ないほどデフレ脱却が確実だと認められたはずがあるまい。
 また、安倍総理はこの番組で2年後の増税を示唆するが、この発言の2年後は2014年11月であり、現時点から見てもまだ先の話である。
 これらのことを考えると、安倍総理が増税派であり、昨年10月の増税の決定は当然だというのは合点がいかない。



 以上見てきたように、安倍総理は、時事通信の上記記事に紹介される2011年11月の講演以降、消費税増税に消極的な発言をしている。
 安倍総理は、デフレを脱却していない昨年10月時点で消費税増税を強行することに積極的な発言をしていない。
 したがって、安倍総理は元から増税派だから昨年10月に消費増税を決定したのも当然だというのは誤りである。



 ちなみに、安倍総理は、消費税増税に前向きな財務省出身議員に対し、「切腹しろ」と言ったとのことである。



「安倍晋三「増税?君!!今この場で切腹したまえ!!!」」YouTube2013年9月1日

http://www.youtube.com/watch?v=qN4ajqafX-w



「出演者1 安倍さんは、かねてから、その、いろんな数値を見て、(消費税増税をするかどうか)総合的に判断するんだ、と。
出演者2(長谷川幸洋記者) まぁ私は、はっきり言うと、安倍さんは相当消極的だと思いますね。私も、2006年の政府税制調査会をやってからずっとお付き合いをしていますけども、安倍総理から増税に熱心だったという発言を聞いたことは、1回もありませんから。
出演者1 あぁ、そうですか。
出演者2 1回もありません。この1月に、ある議員さん、今実は官邸にいる有力な政府の役人ですけども、この方が、財務省出身ですよ。その方が、「総理、この度は真におめでとうございます。政権復帰ですね。もしも、安倍政権で増税が延期ということになったら、私たちは、切腹ものですね。」と、冗談めかして言ったんですよ。それを聞いた安倍総理は何と言ったか。「そうか、わかった。君、今その場で切腹したまえ。」と、言ったんですよ。
出演者1 ほぉ~・・・。
出演者2 これは本当の話ですよ。本当の話。私はその全く同じ、自民党総裁室、胡蝶蘭の後ろで、白い花で埋め尽くされた総裁室で、総理から聞いたんだから。
出演者1 へぇ~~~!
出演者2 本当にその話を聞いたときに、切腹しろと言って、その議員さんが本当にこの場で切腹したら、周りが全部胡蝶蘭の白い花だから、総裁室まるごと棺桶になっちゃうかなぁって。
出演者1・2 ははは(笑)。
(中略)
出演者1 しかし、そのぐらいの、覚悟が。
出演者2 そう。これは1月時点の話。1月時点では、明らかに、この安倍総理は、(消費税増税を)やるつもりはなかったと思いますね。その後、5月にお会いしたときに、「総理、どうするんですか。消費税。」と。「全く白紙」の一言。「全く白紙」と言っていました。
出演者1 う~ん。
出演者2 その後それからもう2ヶ月経っていますから、まぁ、情勢を見てお考えというところでしょうけども、あのー、マニラでの「決め打ちするものではない。」と言うところを見ると、あぁこれはもう全然変わってないなと。私にはそう見えますね。
出演者1 はい。
出演者2 まぁそれと、だから、今、ご指摘のように、記者団がみんな増税増税と、こうね、書きたがる。それで、麻生大臣、その他の政府・与党の有力幹部、確かにみんな増税みたいなことをやってるけど、まぁだから、これは、相当、財務省の「あれ」が回っていると思うけども・・・。
出演者1 昨日、甘利さんもねぇ、かなりはっきり言ってましたからねぇ。
出演者2 でも官房長官と、総理自身は、全く慎重ですね。私の見るところ。
出演者1 なるほど。
出演者2 この話は、総理にしか決められません。
出演者1 ん~、そうですね、はい。」

※ 記事を一通り書き終えてから知ったが、これは「ザ・ボイス そこまで言うか!」の2013年7月31日放送分である。




 長谷川幸洋記者によれば、2006年以来、安倍総理が消費税増税に積極的な発言をしたところを一度も聞いたことがないとのことである。
 安倍総理が増税派ならば、そんなことはあり得ない。
 消費税増税に積極的な態度を示さない安倍総理に対して増税派のレッテルを貼るのはお門違いである。
 なお、マスメディア各社に回っている財務省の「あれ」とは、財務省が正しいと刷り込む「ご説明」だと考えて大過ない(田村秀男「アベノミクスを殺す消費増税」(飛鳥新社、2013年)136~141ページ)。



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◆◆◆ ① ◆◆◆



 ヤマケンさんが示した時事通信の記事によれば、2011年11月に安倍総理は講演会で消費税増税に積極的な発言をしたとのことである。
 ではその直前の、2011年9月28日に開催された「言いだしっぺ さかい学を育てる会2011」で、安倍総理はどのような発言をしているのだろうか。



「元・内閣総理大臣 安倍晋三氏 講演 vol.1」YouTube2011年11月9日

http://www.youtube.com/watch?v=2prqmI_r6rQ



「経済成長というのも、大切なんですよね。そして、さらに900兆円という借金があります。
この借金、ただ、ギリシャと日本は全く違いますよ。同じように考える人がいるんですけど、これは大きな間違いであって。ギリシャは、70%、75%近くを海外の人たちから借りているんですから。日本は95%、日本人から借りているんですね。言ってみれば、私がギリシャだとしますと、私が汗水垂らして働いてお金を返す相手は、隣のお子さんなんですよね。返せば、私の、安倍家のお金は出て行きます。でも私が日本だとしますと、私が借りている相手は、私の子や孫ですから、私が頑張って働いて返す相手、債権を持っているのは、同じ日本、同じ安倍家の人ですからね、安倍家からは、お金は出ていかないということになります。
だからこそ、900兆円近い借金があっても、日本の金利は1.2%くらいじゃないですか。麻生政権の時、15兆円、さらに補正予算を組みましたね。あの時、国債は暴落しましたか?0.9%ですよ、皆さん。かつて日本の借金が450兆円だったときに、半分だったときは、2%だったんですからね、金利はね。ですから、どんどん増えたからと言って、どんどん金利が上がっていくっていうことにはならない。
ただ、もちろんですね、分不相応な借金をしているのは事実でありますから、これを減らしていく方向にする。つまり、1年間で稼いだお金で、1年間の支出をまかなえるという真っ当な国にしていく。そのために、いわば、プライマリーバランスを黒字化する、つまり税収が1年間の政策経費を上回るようにするということが、大切だろうと思います。
今年度を目標にしてですね、小泉政権時代、平成14年にその計画を立てました。残念ながら今30兆円のマイナスがある、これは、リーマンショックと、民主党の大ばらまきの結果であります。でもそこまで到達不可能ではなかったんです。小泉政権でそれをスタートしたときには、マイナス28兆円でありましたが、平成14年、5年後の、私が総理の時の予算編成では、6兆円まで、その差は短くなりました。つまり、22兆円改善することができたんですね。1%も消費税を上げずに。何であったかと言えば、経済成長なんですよ。経済成長って言うのは大きいんですね。成長して、税収を増やして、これはみんながハッピーになるんですね。
株価だって、皆さん、実は結構その間上がったんですよ。私はよくこういう会がありますとね、森政権・小泉政権・安倍政権、そして福田政権・麻生政権、鳩山さん、そして、菅さん、そういう10年間、どの政権で一番株価が高かったと思いますか、こういう質問をするとね、「はい」とか言って手を挙げて「それは、小泉政権ですか?」と言う人が多いんですね。皆さん、私が言っているんですから、安倍政権です。よく覚えておいていただきたいと思います。14000円が18400円まで、今より1万円高いんですからね、上がったんです。
「私は株を持っていないから関係ない」という人がおられるかもしれませんが、これは大いに関係がありまして、皆さん、大切な年金も、実は株式市場で一部は運用しています。安倍政権の1年間だけで3兆円ですね、これは年金の運用がプラスになったんです。少子化による減収をはるかにはるかにはるかに上回る額であります。
では民主党政権のこの2年間、4兆円近い運用損が出ています。菅さんは、「強い社会保障」って言いましたね。民主党はよくそう言います。強い社会保障って言うのは、できもしない給付額を約束することではないんです。年金や医療や介護の財源をしっかりと支えることができる経済力を手に入れること、それが強い社会保障制度になっていくわけであります。
日本の人口は減少していきますけども、高齢化によって65歳以上の人口は増えていくんですから、日本を成長させてですね、増収をしていかなければ、今の給付を維持していくことはできないんです。そのためにやっぱり新しい技術や、新しいビジネスアイディアにしっかりと投資をしていくということが、求められているんだろうなぁ、このように思うわけであります。」



 消費税増税との関係で、上記の「新しい国へ」や「報道ステーションSUNDAY」と同旨の内容だと言ってよいだろう。
 安倍総理は、経済成長による自然増収を重視し、第一次安倍政権では消費税増税をせずにプライマリーバランスを改善したことを功績として語る。
 これは増税派の発言ではない。

 上記の時事通信の記事が真実を伝えているとするならば、安倍総理は、反増税派の発言をし、増税派の発言をし、再び反増税派の発言をしていることになる。
 つまり、安倍政権の重要な功績について、一貫しない発言をしていることになる。
 いかにも不自然ではないか。

 また、安倍総理は、第一次安倍政権退陣後、山本幸三議員の誘いを受け、リフレ派の勉強会に参加した。
 山本議員は消費税増税反対派だった(最終的には増税容認に転んでしまうが。倉山「増税と政局」88~90ページ)。
 こういう経緯を見ても、安倍総理が増税派であり、消費税増税を推進しているなどというのは、不自然である。

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 メディアがある人の発言を報道するとき、発言の一部分だけを報道することが多い。
 その際、発言の一部だけを切り取って、発言の趣旨が誤って伝わってしまうことがある。
 たとえば、「確かに甲だ。しかし乙だ。」「乙という条件を満たした場合に甲である。」と言った場合、甲・乙の片方だけを伝えても、一応、事実を伝えたことにはなる。しかし、乙を伝えない場合、発言の趣旨は大きく変わってしまう。
 つまり、メディアが発言の存在という事実を報道したとしても、それが発言者の意図に沿う真実を伝えているかどうかは別なのである。

 私には、時事通信が「乙」を伝えなかった気がしてならない。
 安倍総理は、この講演会でも、経済成長による自然増収の重要性や、デフレ脱却が消費税増税の条件であるなどという「乙」を述べていたのではないか。
 にもかかわらず、時事通信の記者は、安倍総理の消費税増税に前向きな「甲」部分だけを記事にしてしまったのではないか。

 なお、時事通信は、昨年7月14日の記事で、浜田宏一内閣官房参与が、華々しい景気回復を続けて増税してもよい状態になるという条件を付けた上で消費税増税に理解を示したのに、この条件を削って報道し、浜田参与の発言をその意図とは真逆にして報じた(倉山同上97~99ページ)。
 訂正記事にも歪曲が見られ、故意に浜田発言を改竄しているものと思われる。

 時事通信は、消費税増税推進のためなら要人の発言を曲げて伝えることも辞さない。
 そういう時事通信が「安倍は増税派だ」ということを報じたとしても、その信憑性は疑わしく思われる。



◆◆◆



 「安倍総理は元から増税派だ」というのはデマだと言ってよい。
 時事通信のこの記事を示して、鬼の首を取ったように安倍総理を増税派扱いするのは誤りである。
 安倍政権の支持率を下げる意図があって、こういう風評を流しているのではないかと勘繰る。



 来年には消費税率10%が控えている。
 おそらく実行されるのだろう。
 しかし、増税派で反安倍の石破茂自民党幹事長ですら、リーマンショックのような激変が起きればいわゆる附則18条(景気条項)によって消費増税は実行されないという旨を言っている(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11582835411.htmlhttp://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20130801)。
 願わくば、中国経済が盛大に崩壊し、「激変」が起き、消費税増税が阻止されてほしいものである。






 記事を書き終え、倉山満先生のブログを見てみたら、消費税増税が大変なことになってるな・・・(「やはり史上最強の財務次官だった」倉山満ブログ2014年6月12日http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1245)。