【倉山満】増税と訴訟【三橋貴明】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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そういう想いのブログです。

 今月、倉山満先生の新著「増税と政局・暗闘50年史」(イースト・プレス、2014年)が発売された(http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=2050)。
 はじめに断っておくが、私は政治塾や政治運動団体には属していない。

増税と政局・暗闘50年史 (イースト新書)/イースト・プレス
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 まだ少ししか読んでいないのだが、刺激的な話が出てくる。
 私としては、青山繁晴批判が載っているのがよいと思う(124ページ以下)。今までの言論活動でも倉山先生は暗に青山先生を批判していたのだが、いよいよ名指しすることとなった。
 保守的な人たちは、青山先生を大変信頼しており、批判がほとんど出てこない。
 しかし、私はインターネット動画で見たのだが、青山先生の「アンカー」での消費税増税の解説はひどかった。安倍総理は早期に消費税増税を決断していたということの解説だったと覚えている。
 私は激しく幻滅した。
 以来、私は青山先生の言論活動をほとんど見なくなった。
 それくらいひどかった。財務省に籠絡されたようにしか見えなかった。
 ていうか、うろ覚えだが、「名目GDPが減っていることを問題視するのは誤り」という論調のことを言っていた覚えがあるが、経済学部の教員として問題ないのだろうか。

 ところで、私は、高橋洋一教授の経済解説を信頼している。
 チャンネル桜の討論を見ると、田中秀臣教授が高橋教授を信頼していると思われる場面が何度かあり、上念司先生も高橋教授を信頼しているという発言をしていた覚えがあり、私も高橋教授は信頼できると考えていた。
 高橋教授は、消費税増税に反対している。その上、高橋教授は法律論にも強い。
 私は、高橋教授のいわゆる消費税増税法の解説は概ね当たっていると信じてブログ記事を書いた。
 しかし、倉山先生は、高橋教授を、消費税増税に関しては財務省のスパイの如く振る舞っていたと批判する(122ページ以下)。
 あらためて政治を論じることの難しさを感じた。
※ <4月17日追記>田中秀臣教授は、倉山先生の高橋教授批判には不賛成とのことである(https://twitter.com/hidetomitanaka/status/456585730798534657)。賛成できない部分があっても見るべきところがあると認め、推薦しているところがポイント。

 本書では、チャンネル桜批判も行われている。
 三橋貴明先生も批判されている。
 そこで、三橋先生は、事実無根の批判が行われているとして、法的手続きを開始した(「「増税と政局・暗闘50年史」について」三橋貴明ブログ2014年4月15日http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11822729893.html)。
 なお、ブログタイトルには、本書の書名にかこつけて漢字二文字で「訴訟」と書いたが、三橋先生は訴訟を提起するとは言っていないので悪しからず。

 私は、消費税増税政局が佳境に入った昨年9月、三橋先生が消費税増税反対の声を思ったほど上げないことに不満を感じていた覚えがある。
 しかし、三橋先生は、麻生太郎財務大臣の応援を受けて参議院議員選挙に立候補したことがあるため、麻生大臣に気を遣うことがあっても仕方あるまいと思っていた。これから先、三橋先生が政界進出することになるのであれば、麻生大臣の支援を受けるのだろう。
 別に、三橋先生が悪いと言っているわけではない。
 西田昌司参議院議員は、信頼している政治家ではあるが、西田議員は、デフレ脱却まで消費税増税反対という従来の持論を取り下げて、消費税増税賛成派(容認派)になってしまった。説明が二転三転して見苦しかった。自民党で信念を貫くことの難しさが感じられた。他方、木内実衆議院議員は、消費税増税について黙して語らなかったが、消費税増税政局に決着がついてから、反対であることを明かした(http://www.m-kiuchi.com/2013/10/01/syouhizeimonda/)。
 西田議員に比べれば、三橋先生は自民党の中では自説を曲げなかったと言える。三橋先生は、消費税増税反対のブログ記事を昨年9月にいくつか書いており、木内実議員よりも積極的に反対している(木内議員は政権内部におり、反対できる立場ではなかったが)。
 もっと消費税増税反対の声をあげてほしかったという不満はあったが、今にして思えば、三橋先生は自民党の中では積極的に反対していた部類だろうし、言論界全体として見ても積極的に反対していた部類だろう。

 しかし、見ようによっては、消費税増税反対の声が小さくなっており、賛成派を利しているようにも見える。周囲が賛成派ばかりだからこそ、反対の声を大きくしないといけないとも考えられる。
 そして、これは、反対の声を大きくしないという消極的行為によって、消費税増税に加担するものだと見ることもできる。
 おそらく、倉山先生には、三橋先生が不作為犯に見えたのではないか。
 倉山先生は、三橋先生が当初は木下次官を問題視していたのに、いつの間にか木下次官の名前が出てこなくなるところに不信感をおぼえたようだ(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1146)。
 しかし、あくまで三橋先生は、消費税増税に賛成するとは言っていない。
 だからこそ、「麻生のペット」扱いされる謂れはないとして、怒ったのだろう。
 
 倉山先生は、本書で、木下次官がチャンネル桜の水島総社長を使い、倉山先生および倉山塾の増税反対を止めてきたということを述べる。
 これに対し、三橋先生およびチャンネル桜スタッフは、木下など会ったこともないとして、笑ってしまったとのことである。
 私が思うに、倉山先生は、物事の本質をわかりやすく示すため、非常に簡略化して捨象した表現を使うことがある(紙幅の関係もあるのだろうが)。倉山先生の言い回しを借りれば、「大根切り」である。
 おそらく、倉山先生が言いたかったのは、木下次官が水島社長に直接会って指令を下したということではなく、「使者」を送って水島社長の消費税増税反対運動の意思をくじき、倉山先生(および消費税増税反対運動をする”草莽”)に対して、消費税増税は決まったことだ、増税したら安倍増税だ、と言わせたということなのだと思われる。
 つまり、チャンネル桜に出演する国会議員を見るに、西田議員は増税反対派から賛成派(容認派)に転じたし(https://www.youtube.com/watch?v=QxYrYVfbr0Q)、赤池誠章参議院議員も消費税増税阻止は日程上無理だと言っていたし(https://www.youtube.com/watch?v=qLmypGUWgjQ)、宇都隆史参議院議員に到っては当初から消費税増税ありきだった(https://www.youtube.com/watch?v=gudp-So-dEE)。
 このように、チャンネル桜に近しい政治家やジャーナリストなどに消費税増税は決まったことだと吹き込み、水島社長に消費税増税阻止を諦めさせ、「負けても戦う」と言う敗北宣言をさせ、消費税増税反対を「みみっちい希望」(http://youtu.be/s6-2fLwVU44?t=3m42s)と言って切り捨てたということを示していると、私は理解する。木下次官が彼らに直接吹き込んだとは限らず、木下次官の部下(財務官僚)が彼らの派閥や部会の領袖に吹き込むなど、いろいろな過程を辿ることも想定される(倉山満「嘘だらけの日韓近現代史」(扶桑社、2013年)242ページ、「正論 2013年11月号」(産経新聞出版)282ページ参照)。
 工作活動の神髄は、操られている者に操られていることを自覚させないところにある。倉山先生は、「保守を商売にしていた人たちは、踊らされていることに気づかないだろう。」と言う(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1145)。
 私は真相など知らないが、倉山先生の立論はあり得るものだと考える。

 倉山先生は、戦後日本人の考え方をしない。
 維新の志士たちの感覚を持っている。
 だから、国家存亡がかかった局面においては、命を捨てる覚悟を持つのである。
 つまり、長期デフレ不況脱却前の消費税増税という国家の浮沈に関わる局面においては、言論人は言論人生命をかけて言論活動をするべきだという考え方である。倉山先生は、「今回、自分が今まで築き上げてきたすべてを失っても良い覚悟で本当のことを言い、傷を負った。」と言う(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1145)。
 また、倉山先生は、「累積戦略しかできない人たちと付き合うほど暇ではない。」とも言い、累積戦略の意味がよくわかっていない私には真意はわからないが、おそらく、チャンネル桜は無料インターネット放送によって保守シンパを拡大して戦後レジーム体制に対するゲリラ活動を展開してきたが(累積戦略を粘り強く継続してきたところは評価できる)、戦後レジーム打破の核心に迫る言論を鍛えておらず、消費税増税政局でも戦機を逸してしまって呆れたということだろう(累積戦略・順次戦略についてはhttp://www.nicovideo.jp/watch/1379415641)。
 ちなみに、水島社長は、秋の例大祭に参拝しなかった安倍総理を「「日本」が足りない」と批判するが(「正論 2013年12月号」(産経新聞出版)68ページ)、水島社長は消費税増税が政局だということを理解できなかったことがうかがえる。三橋先生は、消費税増税で下がった支持率を秋の例大祭に靖国参拝して回復しようとするかもしれない、などと言っていた(http://youtu.be/UzSF9UUt4bU?t=5m44s)。小泉元総理を念頭に置いているのだろうが、小泉元総理は支持率回復のために靖国参拝をしたのかが疑問だし、政権基盤の構造や強さも今の安倍政権と大きく異なると思われ、釈然としない。倉山先生は、消費税増税は政局であり、これをしてしまったら安倍総理は秋の例大祭に行けなくなると警告していたが、その通りになった(http://youtu.be/pRh1yRjpfOQ?t=20m59s、倉山満「反日プロパガンダの近現代史」(アスペクト、2014年)7ページ)。
 そういう倉山先生にしてみれば、消費税増税阻止のためにできることを全てしない言論人など、「偽物」なのである。
 消費税増税に賛成しなかった、一応反対はしたけど言論人生命をかけるに到っていなかった、という程度では、偽物なのである。
 倉山先生は、自分よりも影響力の強い三橋先生が財務省批判を弱めてしまい、もどかしさを感じていたのではないか。
 そういう気持ちが、「三橋のような人物が幅をきかせているかぎり、ネット言論の信頼が高まるのは遠い日のことでしょう。」という表現につながってくるのではないかと思う。

 倉山先生は、本書で、各方面にケンカを売りまくっている。
 一人でも多くの人が自分の挑発に乗ってくれることを望むかのように。

 三橋先生は、「一つ、追記しておきますと、イーストプレス社は、わざわざ水島社長について「事実無根」な嘘が書かれた部分に付箋を貼り、チャンネル桜に本書を献本してきました。桜側が騒ぐことで本の売れ行きを伸ばす「炎上商法」が目的としか考えられません。」という。
 私はこれは考えすぎだと思う。付箋を貼ったのがイーストプレスの編集者であれば、編集者に事実無根かどうかの判断ができるとは考え難く、単にチャンネル桜について書かれている部分に付箋を貼って献本したに過ぎないと考えた方がよいだろう。

 倉山先生の現在の行動原理は、消費税増税阻止である。消費税税率10%を阻止することである(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1185参照)。
 倉山先生は、消費税増税反対の言論を拡大すべく目立つ行動しており、「週刊現代 4月26日号」に木下康司批判が出たことを戦果だとして喜ぶ(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1217)。

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 倉山先生が狙っているのは炎上商法ではない。
 狙っているのは、いわば炎上増税阻止である。
 消費税増税の問題点に関心が集まり、消費税増税を阻止できればそれでよいのである。消費税増税による自殺者増加を食い止められればよいのである(「くららの本心」http://youtu.be/16JWnNypPRM?t=10m32s、本書157ページ)。
 日本経済を復活させて、中国の力を相対的に低下させ、北朝鮮による拉致被害者を取り戻すことができればよいのである。

 あえて炎上商法を言うのであれば、チャンネル桜出演者であり、かつ、本書で批判の対象になっていない人の著書(および彼らの推薦図書)を読め、ということになるだろう。
 本書をパラパラとめくってみたところ、田村秀男記者は「気骨のジャーナリスト」だと評価されている(107,108ページ)。上念司先生も、最後まで消費税増税反対の主張を曲げなかった言論人として紹介されている(151ページ)。
 田村記者も上念先生も、財務官僚の「ご説明」を問題視している(田村秀男「アベノミクスを殺す消費増税」(飛鳥新社、2013年)137ページ、上念司「日本経済再生を妨げる売国経済論の正体」(徳間書店、2011年)151ページ)。

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 私は、倉山先生が本書で述べていることが全て真実であるとは思わない。
 現在進行形の政治を、完全に正確に把握して論じられると期待する方がおかしい。
 本書は、現在進行形の政治を大胆に整理したものであり、これから先、検証がなされていくのだろう(参考までに、宮崎正弘先生の書評(http://melma.com/backnumber_45206_6012985/)。「消費税をめぐる議論のでたらめな審議過程と裏権力である財務省との相克を、著者の主観が濃厚とはいえ、なかば強引に活写した評論となった。」と結ぶ。)。
 しかし、私は、倉山先生は現代政治をしっかりと研究し、公開されている情報をしっかりと追っており、本書に書かれていることは知っておいてよいと考える。チャンネル桜批判の部分が気に入らなければ、その部分を飛ばして読めばよい。



 本書は、倉山先生の側から、「【消費増税】疾風にして勁草を知る、日本草莽はどちらか?」を問い直すものだと思われる(https://www.youtube.com/watch?v=UzSF9UUt4bUhttp://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1142参照)。
 しかし、倉山先生の中では、既に結論は出ているだろう。
 本書を読んで笑い、法廷闘争も辞さないという返答がなされたのだから。



 それにしても、倉山先生をデマゴギスト呼ばわりした水島社長が無駄に争いを過熱させたと思うが・・・(http://youtu.be/a2IfXCVR6F0?t=1m44s)。
 水島社長が、倉山はデマ・三橋は真実、などと言ってしまったから、倉山先生の三橋批判がここまで厳しくなった気はする(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1172)。
 倉山先生が三橋批判を厳しく展開する1つの意味は、水島社長に対して、三橋と縁を切れ、というメッセージを送るところにあるのではないかと思う(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1173)。田中秀臣教授は三橋先生を批判しており(http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120802)、倉山先生も三橋経済学が広まることを好ましくないと考えていると思われる(http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=1172参照)。私は経済学はわからないが、倉山先生たちから見れば、三橋経済学はアカデミズムに堪えるものではないという認識だ。
 ていうか、水島社長は、安倍総理は消費税増税をいいことだと思っている、などと言うが(http://youtu.be/UzSF9UUt4bU?t=3m28s)、これの方がデマなのではないか(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11622188641.html)。

 関係ないけど、水島社長の発言を確認していて気づいたのだが、昨年10月の時点で田母神新党を臭わすことを言っていたのね(http://youtu.be/fv4Apm0Ykq4?t=21m23s)。
 明日は水島社長がキャスターを務める日だけど、本書に対する反論をするのかな。