ひらめき電球コラムニストの尾藤克之です。

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8月10日、貨物輸送運輸業者大手・サカイ引越センターの労働組合が従業員の処遇改善を訴えました。労組委員長などによれば給与体系は基本給のほか、4つの手当が出来高払い制になっていて、月給が30万円を超えていても基本給が5万~6万円、基本給を除く手当が約77%という労働者もいるという実例が明らかになりました。

 

基本給を低く設定すると、会社は総人件費を抑えられます。残業代と呼ばれる時間外労働手当や賞与、退職金も基本給を基準にした掛け算となるためです。サカイ引越センター労組は基本給が低く上がらないことから、ボーナスが増えず、有給休暇を取ると月給が大きく減るなどとして、会社側との団体交渉で固定給部分の割合を増やすように求めています。

■報酬に関する表現にはいろいろある

サカイ引越センターは東証プライムに上場する大手貨物輸送運輸業者(引越業業者)で、JPX日経中小型株指数の構成銘柄の1つにも指定されています。

 

報道を受けて、大手企業が基本給を抑えることに違和感を覚えた人も多かったようです。いまの時代にこのような給与体系に問題はないのでしょうか。基本給とは、働くうえで基本となるベースとなるお金のことです。必ずもらえる額ですが、基本給を抑えられているというのは、どのような意味を持つのでしょうか。

 

そして、会社から支給される金銭には、「賃金」「給与」「給料」などさまざまな呼び名があることを覚えておきましょう。

 

「賃金」とは、労働に対して従業員が受け取るすべてのお金のことです。賃金には、給料、各種手当、賞与、通勤交通費といったものが含まれます。給与より、賃金のほうが幅広い意味を持っています。「給与」とは、雇用主から労働者から使用人に与えられる「給料」や諸手当の総称を意味します。

 

「給料」は言い換えるなら「基本給」です。基本給は、働くうえで基本となるベースとなるお金のことです。残業手当や役職手当などの各種手当、通勤交通費、インセンティブなどを一切含まない、必ずもらえる額だと考えればわかりやすいでしょう。

 

「給与」は現物支給もあります。現物支給とは、金銭以外で経済的利益のあるものを指しますが、「給料」に現物支給は含みません。「給与」は給与所得など企業側の法表記に使用されます。「賃金」は労働基準法など労働者側の法表記に使用されます。

 

「固定給」とは、一定時間の勤務に対して一定額の賃金が支払われる給与体系のことです。「固定給制」と表記されます。「時給制」「日給制」「週給制」「月給制」などの体系が存在しますが額が固定されていることに特徴があります。

 

「報酬」の場合は意味合いが異なります。労働に対する対価として支払われる場合もあれば、テレビ出演、取材協力、講師や研修などを委託した際にも使用します。

 

最低賃金法には次のような記載があります。

(最低賃金の効力)
第四条 第一項 
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
 

第四条 第二項
最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

■最低賃金のクリアをどうやってチェックする?

なお、最低賃金法の「労働者」とは、正社員・アルバイトなどの雇用形態や職種などに関係なく、会社に雇用されていて給料をもらっているすべての人を指しています。では最低賃金を下回っているかどうかを判断するために具体的にシミュレーションしてみましょう。

【広島で働くMさんの場合】

広島で働くMさんは、月給で、基本給が月12万円、職務手当が月3万円、通勤手当が月1万円支給されています。また、この他残業や休日出勤があれば時間外手当、休日手当が支給されます。時間外手当が3万円支給され、合計は19万円です。1日の所定労働時間は8時間、広島県の最低賃金時間額は899円です。
 

基本給12万円
職務手当3万円
通勤手当1万円
時間外手当3万円
合計19万円
 

1日の労働時間8時間
年間労働時間250日
最低賃金時間額899円

Mさんの賃金が最低賃金額以上となっているかどうかは次のように調べます。

 

(1)支給された賃金から、最低賃金の対象とならない賃金を除きます。除外される賃金は通勤手当、時間外手当であり、職務手当は除外されませんので、

19万円-(1万円+3万円)=15万円

 

(2)この金額を時間額に換算し、最低賃金額と比較すると、

(15万円×12カ月)÷(250日×8時間)=900円>899円

となり、最低賃金額以上で適正となります。

 

最低賃金か否かは地域によって異なります。

ほかのケースで考えます。

沖縄で働くIさんの場合】

沖縄で働くIさんは、月給で、基本給が月5万円、職務手当が月9万円、通勤手当は支給ナシです。また、この他残業や休日出勤があれば時間外手当、休日手当が支給されますが、時間外手当などはありません。合計は14万円です。1日の所定労働時間は8時間、沖縄県の最低賃金時間額は820円です。
 

基本給5万円
職務手当9万円
通勤手当0万円
時間外手当0万円
合計14万円
 

1日の労働時間8時間
年間労働時間250日
最低賃金時間額820円

Iさんの賃金が最低賃金額以上となっているかどうかは次のように調べます。

(1)支給された賃金から、最低賃金の対象とならない賃金を除きます。除外される賃金は通勤手当、時間外手当ですが、支給がありませんので、

14万円-(0万円+0万円)=14万円

 

(2)この金額を時間額に換算し、最低賃金額と比較すると、

(14万円×12カ月)÷(250日×8時間)=840円>820円

となり、最低賃金額以上で適正となります。

 

最低賃金か否かは地域によって異なります。

最低賃金を下回っている場合は違法となります。

■なぜこのようなことが起きるのか

戦後以降、日本では多くの会社が年功序列制度を採用していました。勤続年数に応じて基本給がアップする仕組みで退職金も「退職時の基本給×勤続年数×退職事由係数」という計算式をベースに算出する制度が大半でした。重厚長大型の歴史のある会社は基本給連動型の退職金制度となっているケースが多かったといえるでしょう。

 

基本給は働くうえでベースとなるお金であることは冒頭説明しました。その多くは会社ごとの裁量で決定されていると思います。基本給は法律で守られているため、一度設定すると簡単には下げられません。一方で各種手当は法律で守られているわけではありませんので、会社の裁量でカットが可能です。

 

会社が「総人件費を抑えたい」「給与をカットしたい」と考えた場合、カットできるのは手当です。基本給が低い場合、何らかの理由によって手当がカットされた場合、手取りが大幅に減ることになりますからリスクと考えられるでしょう。しかし、基本給の低さに明確な規定があるわけではありません。

 

労働者にとって基本給が低いことによるメリットは存在しません。とはいえ、簡単に基本給がアップするような時代でもありません。サカイ引越センターが労働組合の要求に対してどんな答えを出すか。日本の労働者の給与事情に一石を投じる事案となるかもしれません。

 

※本稿は、9月1日東洋経済オンライン「「基本給5万円」の給与体系がまかり通るカラクリ」をブログ用にアレンジしたものです。原文もあわせてお読みください。

 


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