思うように資金調達ができない方へ -2477ページ目

成功した経営者の実例 1

2月26日



資金調達コンサルティングの仕事を10年ほどやってきて、振り返ってみると、財務や事業の資料を拝見しただけの数も含めると、正確に数えたわけではありませんが総計で6000~7000件位の案件と出会ったことになると思います。
資金調達のお手伝いができた案件の数は800件弱。これは正確な数字が分かるのですが、せっかくご連絡を頂いても10%ちょっと程度しかお手伝いできていないことになります。
さらにお手伝いさせていただいた後倒産された会社もありますし、多くは現状維持から少し売上、利益とも拡大された状況の会社が多いようです。
もちろんお手伝いをした時に、既に売上が100億円から1千億円を超えているような会社も相当数ありますので、少しずつ伸びていらっしゃること自体がすごいことなのかも知れません。
明らかに成功されたと実感できるのは20社ぐらいですが、この中でも本当に劇的に成功されて印象に残っている二つの会社のことを今日から書いていきたいと思います。

この2社とも社長に共通するところがあり、前回までの失敗例と対比してみると、全てではありませんが、成功のための必要条件のようなものが見えてくると思いますので、お読みいただければ幸いです。


1社目は年商5千万円から年商150億円の経営者になったスロット専門店の社長の話です。
少し一般的ではない事業かもしれませんし、パチンコスロット業界の中では現時点の状況でも決して成功したということではないかもしれません。
この業界では、売上規模や店舗数から見れば、生き残れるギリギリの状況ではあり、まだまだ奮闘中というのが現実ですが、非常に会社の経営資源に合った事業計画と方針を持っていらっしゃるので、金融機関からも大きな信頼をよせられている社長です。

この社長と初めてお会いしたのが8年前の1997年で、その時はパチンコホールの経理部長を辞めて、パチンコホール専門の経理代行会社を興されて間もない時期でした。

今も親しくしている友人からの紹介で、関東近郊の国道沿いで廃業したパチンコホールを借りてパチンコとスロットの併用店を開業したい人がいるので、相談になって欲しいという依頼で始まった案件でした。

お目にかかってお話を聞いたのですが、店舗は立地も規模も最適と思われますが、パチンコとスロットの経営ノウハウとスタッフになり得る人材は持っているものの、ともかく資金に関しては、開業に必要な資金4億円の目処が全く立っていない状態でした。
経営されている経理代行会社も開業されたばっかりで、金融機関に対する与信(信用力)は無く、担保ももちろんなしと言う状況でした。

少しその頃の金融状況を説明しますと、銀行や信用金庫はバブルの不良処理が遅れ、、特にパチンコホールの運営会社に対しての不良債権も膨大で、既存取引先にも追加融資が出にくいような時期でした。その頃パチンコホールへの融資を一気に増やしたのがオリックスで、この頃パチンコホールへの資金調達といえばオリックスと言う時期でもありました。

この経営者X氏も私と会う前に既にオリックスには打診をされていましたが、もちろん融資やリースが通る筈も無く、どのようにお手伝いをして良いのか本当に困惑したことを覚えています。

この頃の私は前職の不動産開発業の事業の失敗(2月9日のブログをご参照下さい)した後、資金調達のコンサルを始めて2年目くらいで、自分の会社では数百億円の資金調達をした経験はあるものの、コンサルタントとしてのスキルも低いし、経験も少ない時期でしたので、お手伝いの方向性さえ出せないものの、正直なところ、この当時はお客様も少なく、自分の生活のためにも簡単にお断りできない状況でした。

ですから私も、今が一所懸命ではないと言うわけではありませんが、闇雲に自分の持つ人脈(前職の失敗で有力な人脈は無くしていましたが)の限り、今から思えば絶対に打診してはいけないところ(この部分はご想像にお任せいます)も含めて、3ヶ月ぐらい死に物狂いで奔走したものでした。

何回も書いていますように、無理な資金調達はどこに行っても100%駄目と言うことを、私も理解していなかったのはお恥ずかしい限りなのですが、やはりどこもここも×で、途方にくれていました。

こんなことをしている間に、開業を予定していた物件も他の会社と契約が決まって、社長X氏もパチンコスロットの事業自体を諦められたようでした。

それから6ヶ月ほど経ってから、突然X氏からスロット専門店の開店のお知らせをもらい、正直なところ驚きました。
資金はどのようにして調達をしたのか聞いたところ、X氏の人脈で集めた資金と建物設備などは割賦支払いで凌いだとの事でした。

その後X氏と会う機会があって詳細を聞いたところ、一時は事業自体を諦めたが、たまたま過去の人脈から、閉鎖する店舗を良い条件で貸してもらえる話がきたので、チャンスと考えて、無謀とは思ったが、二度とないチャンスと捉えて当座必要な資金を知合いの方々から集めたり、可能な限り割賦支払いにしてもらったということでした。

その調達コストを聞くと平均年利に直して15%弱で、しかも返済まで平均2年。割賦支払いについては18回払いというかなりきつい条件で、返済が本当に可能なのかと言うのが実感でした。しかし、その後も驚くことに半年毎に同じ手法で更に2店舗増やし、合計3店舗となりました。

もちろんこの頃までは、資金繰りが大変であったことは申すまでもありませんが、社長の本気度も並大抵のものではなかった上、私が本当に評価するのは、この大変な資金繰りでも、なんとかやっていけるように、店舗の規模や立地から営業戦略まで、実に手持ちの経営資源に合った経営をされたことなのです。

詳細は結構特異な経営方針なので、秘密保持の観点から書けないのが残念なのですが、主な概略は次の通りでした。

①投資額を削減できるように、店舗の規模を小さくし、小さくしても他店との競合に負けないスロット専門店にし、さらに大手が出せないようなニッチなマーケットにポイントを絞って出店をした。
②顧客が負けても、この店に来て良かったと思わせる演出を徹底した。
③誰でも勝ち負けは重要だが、勝ち負けに対する執着が、比較的軽い、ゆとりのある高齢者に顧客のターゲットを絞った。

最近はこのような戦略を持つ中小の経営者は多くなっていますが、この当時では珍しく、しかも3店舗まではこの戦略を例外なく貫き通したすごいところであったと思います。
もちろんその後の店舗は会社の体力に応じて、大型化したり、市場によってはパチンコスロット併用店も開店しています。

3店舗が軌道に乗ったところからは、弊社のお手伝いで都市銀行2行と大手ファイナンス会社、X氏ご自身で地元の地銀や信金から融資やリースも受けられ、もちろん財務内容が良くなった上、苦しい3年間の間、一度も遅延無くお知り合いの方への利払いや返済、また業者への割賦販売もトラブル無くやった信用もあって、最近はお知り合いの方からだけではなく、お知り合いの人脈や取引先からも資金提供の話が舞い込むようになっています。

ただこの業界は弱者と強者の二極分化が非常に進んでいて、地元の金融機関は別にして、都市銀行や全国レベルの大手ファイナンス会社は、弱者に対する新規の融資やリースを避け、残高の減額方針を打ち出していまして、たとえば有力な都市銀行は次のような選別基準を持っています。

売上高は最低100億円以上で店舗数も5店舗以上。また財務内容が自己資本率15%以上であれば審査をする。融資をするのではなくこの条件に合って初めて審査の舞台にのるといった具合に、5店舗以下の小規模な会社にとってはこれから非常に厳しい金融環境になっていくことは確実です。

このような状況ですからX氏の会社も決して安泰ではありませんので、日夜頑張っていらっしゃいます。

X氏とは開業前からのお付き合いですし、非常にバランス感覚に優れた経営をされているので、今後とも本当にがんばって言って欲しいと願うとともに、お手伝いするところがあれば最優先でお手伝いしたいと思っているところです。

誇大妄想 社長

2月25日


今日は失敗した経営者の話の続きです。

資金調達コンサルティングの仕事をしていると、普段めったに会えない方々と会うことがあります。失礼とは思いますが誇大妄想としか思えない方々の話です。

・オゾン層の破壊による被害から人類を守る人工石の開発事業
・環境にやさしい自動車の代替燃料の製造販売事業
・環境破壊を守る自動車マフラーの開発製造販売事業
・末期癌も治る治療薬の開発製造販売事業
・ダイオキシンの革命的処理システム開発製造販売事業
・深層海洋水を使った海水魚養殖システム
・某国の鉱石資源の独占開発事業

内容が分かればお断りするのですが、それでも、上記のような事業の資金調達の依頼が、顧客からの紹介など、毎月1件程度はあります。

共通しているのは、だいたい次のようなことです。
・事業化するまでに時間と多額の資金調達が必要であるが、事業化すると革新的であるので、必ず大成功して1年に数千億円以上の利益が出る上、何よりも人類に多大な貢献ができる。
・資金調達の目処が全くない上、当面必要な資金の期日が近づいている。
・著名な学者や政治家も強力にバックアップの約束をしてくれている。
・技術や商品は世界唯一のものであるが、その権利はまだない。

このようなことが、不思議なぐらい、上記のほぼ全ての案件で共通しています。

もちろん実現できるだけの、人、物、金などの経営資源が用意できるのであれば、確かにビジネスチャンスだと理解もできます。
大手の上場企業のように3つの要素が豊富にある場合であれば可能かもしれませんが、全ての要素が全くないのにもかかわらず当事者が真剣になっているので驚いてしまうわけです。

もちろんご相談いただく会社が資金調達の出来る条件を持っているのかといえば、100%どころか120%無理な状況であることがほとんどです。極端な例ではご相談を受けた翌週に不渡り手形を出した会社もありました。

たとえ話をします。
あなたは、友人がすごい発明をしました(他に同様な発明があるかどうかは未確認)。ただ友人が資金も手立ても分からないので、事業化できず困っていたとします。
話を聞くと、まず開発準備に2年と5億円、更に実験に1年と5億円。それから商品化するのに工場を建築したり、営業拠点を造ったりで1年と10億円必要で、この段階から一挙に巨額の売上と利益が出ると予測したとします。
整理すると、事業化までに4年の期間と20億円の資金が必要であるが、5年目から数十億いや数百億円儲かるといった状況です。

現状あなたの会社は、競争の激化で売上も利益も低下傾向で、当面用意できる資金は500万円とします。

あなたはこの事業に参入しようと思われますか?
通常はあまりにも現実的でないので、面白そうに思っても、多分おやりにならないと思いますし、私もやりません。

でもこのような空想に近い事業の成功を求めて真剣に活動している方が、けっこういらっしゃるのも事実で、今月も1件このような案件のご相談がありました。
地方からわざわざ飛行機で来られて、関係各所と弊社をご訪問された訳ですが、よくよく聞いてみると、3年間も資金調達でいろいろな30ヶ所以上のところに打診したり相談していらっしゃるようでした。
この間ご本業は休業状態で売上はほぼゼロらしく、私はまたか・・・・・と思う以外の感想を持ち得ませんでした。

何度か書いてきたように、資金調達の条件をクリアしない資金調達は100%できないので、このことをご理解していただくように話をしましたが、(今回もそうでしたが、これも共通して言われるのが)「ビジネスチャンスが理解できないのか」と逆にお叱りを頂いたり、「この事業を分からない金融機関が馬鹿だ。」「日本はおかしい。」的な回答でした。

このような状態ですから、ご本人に言っても怒るだけなので、遠まわしにお話をしますが、「なぜあなたでなければこの事業は駄目なのか?誰がやっても成功の可能性は本当にないのか?この事業をやるだけの経営資源を本当に用意できるのか?」と言った視点を検討して、合理的な回答がでない事業への参画はリスクが大きすぎるからお止めになるか、もっと現実的なビジネスモデルができないかを検討していただきたいとお話をしたいのですが、思い込みが強く、聞く耳を持たないので本当に困りました。

一方成功する方の特徴はこの対極にあり、その時々の人・物・金+情報の経営資源に見合った、創業時ですと、ニッチでマーケットは小さいが、他者との競合がないため利益率の高いような事業に、実に良いタイミングで参入していることが言えると思います。

次回はそろそろ成功された経営者の問題にも触れてみたいと思います。

条件の満たない資金調達は絶対にあり得ない

2月24日

資金調達を銀行やファイナンス会社からの融資に限った場合、以前書いたように、3つの要素の各条件のいずれかをクリアしないと絶対に融資を受けることはできません。

その3つの要素とは次の通りです。
1.直前3期と直近の財務内容の信頼性。(格付け)
2.土地など担保の信頼性。
3.代表者及び連帯保証人の信頼性。

今日も関東の地方都市に拠点を置くパチンコホール経営者と面談をさせていただいたのですが、(今日のことでリアルすぎるため詳細は書けませんが)、要するに現時点では、上記3つの要素をすべてクリアできない状況でした。

ところが「今年の5月にオープンする新しい店舗開設のために、数千万円の融資をどうしても受けたい。どうしても調達できないと困る。」というご相談でした。

土地などの担保や社外の保証人は準備できないと言うことですから、財務内容を良くする以外に、金融機関からの借入はできないので、2年くらいかけて会社の組織と財務内容の改善をすすめ、5月の新店オープンのための借入は、社長の人脈の方や取引先からの調達か、あるいは割賦支払いなどでしのぐしかないとお伝えしました。

この社長、付き添いの顧問税理士の方、社長の相談相手の大手生保の中間管理職の方の3名は、社長のお知り合いからの調達と不動産を担保提供する方を探すと言うことでお帰りになりましたが、社長の表情は「これらのことは無理だ」と語っていました。

これからがよくあるケースで、違うコンサルタントや人脈の限り手を尽くして融資をしてくれる金融機関を探し回わる方が多いのです。

意地悪で言うのではありませんが、無理なものは無理で、短期間に現状の財務内容のまま、担保なし、保証人なしで貸す金融機関は100%ないというのが現状なのです。

ところが金融機関を探し回っていると、「十分可能です」というコンサルタントや先生(何の先生か?ですが・・・)が必ず現れてきます。

話を聞いた後「やはり無理です」と、無理なことを無理と言ってくれるコンサルタントなら良いのですが、次のようなうそ(場合によってはコンサルタント自身ができると信じている場合もあります)を言うのが意外と多いので要注意なのです。

2種類いまして、権威型コンサルタントと、無能じらしコンサルタントと、この融合型もいます。

◆権威型コンサルタント
・政治家、著名人、銀行のトップと親しい人から金融機関に言ってもらうと一発で融資が決まる。
・政治団体、組合、宗教団体が団体交渉力で無理な融資でも、融資を受けるようにしてくれる。

この権威型の多くは、先にお礼、運動費、入会金、加盟料の名目で数万円~数百万円の着手金的な支払いが必要であったり、融資ができた場合には、法律違反の高額な、場合によっては融資額の30%も、更に最悪な場合は、領収書発行なしの条件で手数料の支払いを求められたりすることがあります。
ほぼ融資が実行されることはなく、結局のところ着手金を商売としているとしか思えないことが多いので要注意です。

◆無能、じらしコンサルタント
権威型のようにお金を先に取ったりせず、まじめに銀行に打診したりはするのですが、持ち込む金融機関の数が少なかったりするため、全く金融機関のニーズと違う案件を持ち込んだり、もともと無理な財務内容なのに持ち込むため、融資は99%出ることはありません。
ただこの手の方は、駄目と言う結論が分かっていても、なぜかもったいぶると言うか、クロージングをしないで、「検討中」「検討中」と年中言ってる方が多いので不思議です。これも大変迷惑な話ですので要注意です。

いずれにしても社長はできるはずのない融資を待ち続けてしまい、事業の予定を大幅に狂わしてしまうのです。
ひどい場合(実話です)権威型のコンサルタントから融資実行が決定したと言われ、この融資をあてにして、土地購入の契約締結と手付金の支払いをしてしまい、融資がうそであったため、手付金1億円をなくした方がいます。この方の会社はこのことが引き金になって半年後に倒産してしまいました。

もちろん、できもしない融資を「できる」というコンサルタントは一番悪いのに決まっていますが、このようなコンサルタントにつけ込まれる社長の責任も大きいと思います。

資金調達は、無理なものはどこに持って行っても無理ということを肝に銘じていただき、冷静に次善の策をお考えになり、騙されて着手金を取られたり、経営判断を間違わないようになさって欲しいと思います。

資金調達で怪しいと思われた場合は、お気軽にコメント下さい。少しはご参考になるお話をさせていただけると思います。