初心者同志 -92ページ目

私は、こうした。

それは早朝のことだった。

私は歩いていると、突然、人に呼び止められたんだ。


振り向くと、パジャマ姿の60代くらいの男性が立っていた。


「あんた、携帯電話持ってないか?」


と、その男性は突然、私に訊ねてきた。

意味が分からなくて、どうしてですか、と私が聞き返すと、

男性は道を先を指差して、


「あそこに、人が倒れてるんだ」


という。


見ると、うん、確かに人が、道に倒れている。

私は、思わず笑ってしまいそうになった。


だって、その男性の背後にはぽっかりと玄関の扉が開いていて、

ああ、この人はきっと、新聞か牛乳でも取りに

自宅から外に出てきた所だったんだな、と分かったからだ。


その男性が私になにを言いたいのかも、すぐにわかった。

つまり、私に電話をしてもらいたいんだ。

そして、警察でも、救急車でもいいから呼んで欲しいのだ。


でも、だったら、なぜこの人は、すぐにでも自分の家に

駆け込んで、電話をしようとしないのだろう。


なぜ、それを見ず知らずの、偶然そこを通りかかった私に、

やらせようとしたのだろう。


理由はきっと簡単で、厄介事に巻き込まれるのを、

その男性は恐れているんだろうな、と私は思った。


だから、私は笑ってしまいそうになった。


ここまで露骨に、しかもまったくの赤の他人に、物事を押し付けようとする

その人が、少し可哀想にさえ思えた。


とはいえ、人が道に倒れているのも事実だ。


考えてみれば、その男性だって、

朝起きて、まだ覚めきらない頭で外に出てきてみたら、

いきなり、家のすぐ前の道端に人が倒れているんだから、

動揺するのも当然なのかも知れないなあ。


まあ、だからって、ちょうどそこを通りかかった私を

頼るのもどうかと思うけどさ。


そもそも、考えてみたら、最初からおかしいんだ。


その男性、あそこに人が倒れてる、て指をさして私に言うんだよ。

普通、人が倒れているのを見つけたなら、

せめて、駆け寄るくらいはするんじゃないだろうか。


でも、その男性は離れたところから、見ず知らずの私に、

ただ、人が倒れているのを教えるだけなんだもん。

私が思わず、のんびりと、しかも笑ってしまったのは、

そんな理由からだったのだけど、もちろん、もう一つ理由があった。


それは、そのときにはすでに、

私はもう、人が道端で倒れているのを見ることが、

珍しくなくなっていたのだ。


あの、深夜の日。



最初はただのゴミ袋だと思っていた、それが、

横になって倒れている人の影だとわかった私は、

すさまじい緊張と、激しく動悸する心臓の音を感じていた。


私はその人に近づいていった。

理由は、近づいていくしかなかったからだ。

私の家は、倒れているその人の道の先にあった。


その人はピクリとも動かなかった。

遠くからその影を発見し、それから私が近づいていあいだも、

それはずっと変わらなかった。


足を止める度胸は、私にはなかった。

止めるということは、どうするかを決断するということだ。


私はどうしたらいいか、わからなかった。

だから、歩き続け、その人に近づき続けた。


そして、本当にどうしようかと思ったとき、

その人に、もう手を伸ばせば届くだろう、という距離に来たとき、

私はそれに気づいた。


音だ。

なにかが震えるようにして鳴っている音。


なんだろう?


どこかで、聞いた事もあるような気がする。

お腹に響いてくるような音。

お腹・・・・・・。


私は気づいた。

それは、いびきだった。


私の目の前にいる、倒れた男性から聞こえてきていた。


このときの、私の全身の内側で起きた

急激ないくつもの変化を、すべて説明するのはとても難しいと思う。


緊張は一瞬で消え失せ、恐怖は余裕に変わり、

迷いはいくつもの楽しげな選択肢へと変わっていったのだった。


結局、その人は酔って、気づいたら道の真ん中で

眠ってしまっていただけだった。

ピクリとも動かないほどの熟睡だ。

私は、昏睡、といったほうがいいかも知れない、と思った。


その男性は、まだ酔いは残っていたようだったけど、

一度眠ったからか、立ち上がると、

結構しっかりとした足取りで、そのまま帰っていった。


どうやら、暑い夜には、路面のヒンヤリとした冷たさは

特に酔った人間にとっては、とても魅力的であるらしい。


ひとけのない道の真ん中で、堂々と眠むるような人は、

さすがにその人くらいだったけれど、

道で眠っている人を見ることは、そのあとも度々あって、

私はすっかりとその光景に慣れてしまうことになった。


だから、早朝のその日。

知らないおじさんに、人が倒れている、と言われても、

私は笑ってしまったのだった。


倒れているんじゃない、あれは眠っているんだ。

私はその男性に近づいていった。

肩を叩いてやる。


一言、二言、話しかける。


男性は目を覚まし、ムクリと起き上がると、

私に声のほとんど出てない礼を言って、

フラフラと歩いて去っていった。


バシャマ姿のおじさんは呆然としていたようだ。

死人が生き返ったように思えたのかもしれない。


あるいは、厄介事に巻き込まれなくて済んだ、と

ホッとしていたのかも知れない。


私には、そのどちらの気持ちも理解できた。

まさに、私自身も同じ体験をして、同じ思いにかられたのだから。


ただ、私はその、自分の父よりも年上だろう、

おじさんのいるところに戻って、なんとなく、言ってあげたい気持ちに

なってしまったのも事実だった。


「あのね、どんなことも、経験なんですよ」



もちろん、可能なら、あの日の夜の私にも、

ぜひ、言ってやりたい、と思ったのだった。


あたは、それを見つけた。

あなたが、それの正体を見極めるために費やしたのは、

ほんの数十秒のことだった。


にも関わらず、それは、永遠に終わらないのではないか、と

思えるほどの長い時間だった。


あたなは今、薄暗い夜道を歩いている。


時間は、深夜も近い。


外灯の明かりは、道路の外から次々とあなたを照らしている。

でも、周りの住居や店舗は完全に閉まったり、

明かりをすべて消したりしていて、辺りはとても暗く、

足元もおぼつかない。


そこは車線の多い、かなり広い道路で、あなたはその歩道を歩いている。


車はほとんど通らない。

人の姿も、あなた以外には、そこにはない。


外灯の明かりに照らされて、街路樹が少し寂しげに

立っているのが見えるくらいだ。


夏は終わったというのに、昼の間はとても暑かった。

今は気温もかなり下がって、あなたの頬を撫でていく風も

心地いい。


あなたは家に帰る途中だが、それほど急いではいない。

その道はよく知っている道で、普段からよく使っている。


ふと、視線の先になにかが映る。


それは、歩道の真ん中に、うずたかく積まれている。


あなたは昨日もこの道を通った。

もちろん、そのときには、そんなものはなかった。


その歩道には、背の高いガードレールがつけられていて、

歩行者を守っている。

つまり、あなた自身をその歩道から逃げ出すことも、阻んでいる。


あなたはその道を、歩いていくしかない。


その、道の真ん中になにかが積まれている場所に、

あなたは少しずつ、近づいていく。


最初、あなたはそれは、道路工事などに使われる、

赤色のコーンではないか、と思う。

三角の形をした、工事現場などによく置かれているものだ。


この近辺では、今工事は行われていないが、

だれか、酔っ払いや、悪戯好きな若い人たちが、

どこからか持ってきて、そこに置いていったのかも知れない、と思う。


しかし、近づいていくうちに、それはすぐに違うとわかる。

なぜなら、それほど小さいものではないからだ。


もっと大きくて、横に潰れるようになって置いてある。


あなたは、ゴミ袋を思い出す。

禁止されてはいるけれど、当日に出さなければいけないゴミを、

夜のうちに出してしまう人は、今もまだいる。


それを、やはり酔っ払いなどが、どこからか持ってきて、

道の真ん中に、捨てていったのかも知れない。


その思いつきは、かなり正解に近い、とあなたは思う。


近づいていくと、より、そのものの大きさがはっきりとする。

ゴミ袋二つか、三つくらいある大きさだが、

影の形を見る限り、他には考えられないように思えてくる。


あなたは、なんだか少しホッと、する。

少し気味悪く感じていたからだ。


実は、歩道から車道に出て、それを避けて行こうかと、

少し考えていたくらいだった。


でも、ゴミ袋なら、その必要もないと思いなおす。


あなたはついに、その、高く積まれたすぐ近くにまで来る。


もうそれは、ほぼ、ゴミ袋だろうと、あなたは思っていた。

しかし、手を伸ばせばそれに届きそうな距離まで来て、

あなたは気がつく。


それは、ゴミ袋ではない。

人だ。


人が横になって倒れているのだ。


あなたはまだ、歩いている。

それに近づいていく。

逃げ道はない。


ずっと影でしかなかったものが、

わずかに外灯の明かりに照らされて、少しずつ、姿を現してくる。


スーツを着た、中年に近い年齢の人のようだ。

ピクリともしない。


あなたは、それにさらに近づいていく。


あなたは、困惑するだろう。

こんな経験は、今までに一度もなかった。

人が道で倒れているのを、目撃することになろうとは、

あなたは考えもしなかった。

助けを求めるにも、そこには自分ひとりだ。

こんな場合どうしたらいいのか、その対応方法を、

今まで生きてきた中で、一度でも教わったことなんて

なかった。

でも、考えなければいけない。

なぜなら、実際にあなたのすぐ目の前には、人が倒れているからだ。

しかも、その人はまったく動いていない。

あなたはその人に近づいていく。

足が前へと進んでいく速さは、さすがに緩んでいる。

でも、止まりはしない。

やがて、あなたはその人の前まで来た。

歩道は狭いが、倒れているその人の両脇には、

まだ、わずかに路面が残っている。

あなたは決断を迫られる。

そして、あなたはそれを実行した。


・・・・・・これは、私が以前、現実に体験した出来事。

さて、あなたは、どうしただろうか。


現実のそのあとは、明日、また詳しく。


慣れてきたハンター。

最初は、ただ肉を要求するばかりで、飼い主の言うことなんて、

なにひとつ、聞いてもくれなかった、

あの、ペットのフルヨが・・・・・・っ!


闘技場に連れて行っても、本能のまま暴れるだけで、

作戦なんて、あってないようなものだった、

あの、ペットのフルヨが・・・・・・っ!


撫でてあげようとすると、とつぜん全身で放電して

飼い主を感電死させようとした、

あの、ペットのフルヨが・・・・・・っ!


先日、いつものように闘技会での戦いを終えて、

診断を受けてみると・・・・・・


MHFss111


おおっ!

少しは、心が通じ合った!?


しかも、強くなっているらしいぞっ!


うーん、モンスターだって、ちゃんと見てあげさえすれば、

成長するんだなあ。


少しまえに枯れてしまった、窓際に置いていた鉢植えにも、

少しは見習って欲しいものだな、うーむ。


とにかく、強くなった、と言われれば、その実力を見てみたくなるのが、

飼い主の親心というもの。


というわけで、終わったばかりだというのに、

早速、再び受け付けに向かうと、闘技会の申し込みを済ませる私。


どんな相手でもかかってこいっ!

私と、心強きパートナー、フルヨが相手をするぞっ!



MHFss110


・・・・・・え?




そこは、常に人の予想を超えたことが、

繰り返し、何度も起きる世界。

オンラインゲーム「MHF」



音のない家。

たとえば、同窓会などでもいいけれど、

ずっと小さいころから知っている友達と出会う機会があると、

私たちが話す話題も大抵、そのころの時間に戻っていく。


あのときには、あんなことがあった。

あのとき、あいつがあんなことをして、みんなを困らせた。

あれは、本当に楽しかった。

あれは、本当に大変だった。


そして、そのほとんどは、一緒に通っていた

学校の中で起きた出来事や、行事の話題で占められていることが多い。


私の場合も、ほとんどはそうなのだけど、

一つだけ例外あって、それこそが、このときに出会った少年の話なんだ。


今でも、マンガのような、ドラマのような出来事だったと思う。


実際、当時その体験をしたあと、私たちはその帰り道に、

自分たちが住んでいる町へ戻りながら、


「こんなこと、あるんだなあ」


と話しあったのを覚えている。


自分たちが住んでいたところから少し、

離れたところにあった公園に私たちが行ったのは、

遊び場所を探していて、偶然、空いていたその場所を見つけたからだった。


私たちはそこで、巨大なモデルガンを持った、

自分たちと同じくらいの歳の地元の少年と会った。


「ぼくの家で遊ぼうよ」


そう言われて、そのあとについていってみると、

到着したのは、ずっと、山の上のほうまで続いている何段もの階段。


私たちはすぐに気がついた。


その少年が、ここが僕の家だよ、と言って、手で示した場所、

それは、お寺だった。


かなり大きなお寺だった。


階段を上がってみると、目の前には

学校のグラウンドくらいはありそうな広い敷地があって、

その奥にはお寺の境内だと思われる建物が建っていた。


少年は、そんな中をトコトコと歩いていくと、

建物にいくつかあった入り口の中の一つに消えて、

私たちにも着いてくるように言った。


私たちは目に映るものすべてが珍しくて、きょろきょろと周りを見て歩いた。

普通であれば、子供だけで来る事なんて、決してない場所だ。


少年が入っていった玄関の前には、

やはり、とんでもなく大きな池があって、

中には、まるまると太った鯉が何匹も泳いでいた。


恐ろしいくらい広いのに、人の声も、車の音もなくて、

恐ろしいくらいに静かだ。


私たちは最初、お寺の中に入るのかと思って

少し、ビクビクしていたのだけど、

入ってみると、そこはどうやら少年の自宅のようだった。


玄関をあがってすぐ横のところに少年の部屋があって、

私たちはその部屋に招かれた。


中には、ものすごい数のモデルガンとおもちゃがあって、

かなり大きなベッドが部屋の中心に置かれていた。


お寺の息子がモデルガンを持っていていいのか、と

当時の私たちでも思ったけれど、そのときは誰も、そのことを

口にしなかったと思う。


少しは、気が利く子供だった、ということなのかも知れない。


ベッドで寝ている、というのもあまりイメージに合わない気がした。

でも、それだって私たちの勝手なイメージの押し付けでしかないもんなあ。


そもそも、当時小学生だった私たちにとって、

お寺に普通の人が住んでいる、というのが、あまり理解できなかった。


お寺に住んでいるのは、お坊さんじゃないの?という

疑問があった。


訊いてみると、彼の父親がお坊さんなんだと教えてくれて、

それで私たちはようやく納得したのだった。


それにしても、とにかく広い家だった。


外から見たときも、それは思ったのだけれど、

そのあとに色々と案内されたのは、あくまでも彼の自宅として

使われている部分だけで、

お寺の境内になっているところは行かなかったのだ。


にもかかわらず、木の廊下はどこまでも、延々と続いているし、

部屋は何部屋もあって、扉はあちこちについているし、

少しでも油断したら、一瞬にして迷子になりそうな家だった。


それから私たちは、その広い家を使って鬼ごっこをしたり、

少年の部屋で普通に話をしたりして過ごした。


すでにここへ来たとき夕暮れだったので、

あまり遊べる時間はなくて、すぐに帰らないといけない時間になった。


わたしたちは挨拶をして、また遊ぼうな、と約束をして別れたのだけど、

その帰り道、私たちは、全員があることに

気づいていたことを知った。


気づいていたけれど、言わなかったのだ。


それは、音だった。


お寺の前の広場、そしてお寺の中、少年の部屋、長い廊下、

どこにいても、音が聞こえてこないのだ。


人の声、何かの物の音、機械の作動音。

そういったものが、何も聞こえてくることがなかったのだ。


もう一つ。

あれだけ広い場所なのに、いたのは少年一人だった。

私たちは両親を紹介されなかったし、兄弟もいないようだった。

お寺にいた間、私たちは他の誰にも出会うことがなかった。


あんなに広い場所に、たった一人で静かな中いるというのは

一体、どんな気持ちだろう、と私はふと、思った。


とても、耐えられそうにない。


モデルガンを持って、私たちに声をかけてきたときの

少年の笑顔を、私はそのとき思い出していた。



あのとき一緒だった何人かの友人と、私は今でも友達だ。

顔を合わせることがあると、

ふと、あのときの話になることがある。


実は、あのとき、もう一度、遊ぶ約束をした私たちだったけど、

実際にもう一度遊ぶようなことはなく、

そのときの少年と会うことも、その後二度となかった。



だから私たちは、思ってしまう。


あのときのあいつは今、何しているのだろう


お寺は、まだ、昔のままにある。

訪ねていけば、会えるかも知れない。


実際にそんな日が来ることは、きっとないとは思うのだけど、

私たちはふと、あのときの少年と再会するときのことを想像して、

そのときには、あのとき訊けなかった色々な質問を、

今度こそはしてみたい、と

空想するのだった。



亜種ハンター。

オンラインゲーム「MHF」 の世界には、

様々な固体種のモンスターたちが生息しているのだけど、

そこでは、ごく稀に、亜種と呼ばれる、

突然変異をしたモンスターたちが、発見されることがある。


通常、生物学の世界で”亜種”といえば、

種としては下位に属するのだけど、

モンスターの世界で亜種と呼ばれ者たちは、通常の種よりも

強靭だったり、凶暴だったりするのだという。


それだけに、屈強なハンターたちにとっては、格好のターゲットにも

なっているらしいのだけど、

それを聞いてしまうと、私などは思わず、腰がひけてしまう。


ただでも凶暴なモンスターばかりだっていうのに、

それ以上の性格を持った生物なんて、まったくて手に負えないじゃないかっ!


と思うのだけど、そうはいっても、

そんなモンスターたちからは、希少な素材が剥ぎ取れることもあって、

そんな素材を使わなければ、作ることができないものも

沢山あるのだと言われては、

恐ろしいとからといって、すべて避けて通るわけにもいかないのだ。


うーん、珍しいものに目がない、というのは、

人間が持っている宿命みたいなものなのかもなあ。


で、ある日のこと。


亜種、といっても、具体的にどれだけの種類がいて、

どんな姿をしているのか、など、何も知らなかった私は・・・・・・・。



MHFss108

なんだ!?

なにか飛んできたぞっ!



MHFss109


というわけで、捕まえてみました。


モンスター、フルフルの亜種なのだそうです。


うう、気色が悪いよお・・・・・・。