初心者同志 -73ページ目

ホラーハンター。

漆黒の闇が、辺りを完全に支配している。


ジメッとした空気が、肌でも感じられない、

わずかな風をうけて、首筋にまとわりついては、通り過ぎていく。


音は聞こえない。

すべての音は、この闇の中に塗り潰されて、

かき消されてしまったみたいだった。


空では、今にも落ちてきそうな高さで、

真っ黒に染まった雲が、蛇のように蠢いていた。


それを見つけたのは、前を行く友人の背中を

もう一度、確認しようとした時だった。


かすかに近くの草が揺れているのに気づいて、

ふと、そちらに目を向けた、そのとき・・・・・・っ!



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「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」



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「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



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「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




恐怖のモンスターたちが生息する世界。

オンラインゲーム「MHF」


目の前にある死の目撃。

子供のころ、私はネコの死を看取ったことがある。


親戚の家で飼われていたネコが

体調を崩していると聞いて、

私は夏休みを利用して見に行った。


それは、かなり年寄りのネコで、もう最近では

自分で動こうとすることも、なくなっていた。


あと何年生きるだろう、と、親たちは以前から話していた。


私はそのネコと仲がよくて、親戚の家へ遊びにいくと

いつもずっと一緒だった。

そのことを知っていたので、親戚の姉が、

私にわざわざ知らせてくれたのだ。


私はそのとき、生涯で初めての夜更かしをした。

夏の暑い日で、近くでは扇風機が回っていた。


ネコは翌日の朝まで生きていた。


その間、私もずっと起きていた。


と、言えればいいのだけど、

そんな訳もなくて、一緒に付き添ってくれた

親戚のおばさんは、私が眠ってしまうと、

その度に起こすようなことはしないで、

ネコの様子が少し変わったようだ、と思うと私の体を

揺らして、起こしてくれていた。


そんなことが、四回ほど繰り返された。


古くなったバスタオルが敷かれた、ダンボールの中で

体を丸くして、目を半分閉じたような状態で、

静かに上下していたお腹は、

部屋に太陽の明かりが射しはじめたころに、

やがて、動かなくなった。


それは、私が初めて知った、死だった。


そして、今のところ、自分の人生の中で、

もっと自分の近くで起きた、死でもある。


今の私たちは、


みんな、死を遠ざけた世界で暮らしいる。


と、よく言われる。


昔は家族が亡くなれば、その遺体は必ず一晩くらいは

亡くなった家の間に置かれていて、

家族はみんなそれに接するのが常識だった、と

聞いたことがある。


今はそもそも、自宅で亡くなることが、ほとんどなくなって

人のほとんどは、病院で亡くなる。


そして、葬儀屋がやっきて、手続きはあっというまに終わり、

気が付くと火葬されている。


誰か近い人が亡くなっても、私たちが死というものに直接、

触れる機会はほとんどなくて、しかもそれは、

まるで、触れるべきではないもの、というように扱われ始めている。


そのことを、恐ろしいと思う私は、おかしいのだろうか。


生きていれば、いずれは私たちにもやってくる

その存在を、ときには神聖化したり、ときには遠ざけたり

することは、ただ現実から目を背けているようなものだと、

私は、どうしても思ってしまう。


ネコがもう、動くことがないのだ、とわかったとき、

私は悲しかったが、泣かなかった。


当時、まだ世の中のことなど何も知らなかった

小学生だった幼い私は、

しかしその時、本当の揺らぎない現実を知ったのだ。


ネコは死ぬ。

でも、そのネコのためにしてあげられたことは、

私の中でずっと残る。


だから私は、生きているものに、ためらいなく、

優しくしてあげることができる。


事故の衝撃。

ずっと以前、私は自分が車に轢かれたときの話

書いたけれど、実は、一歩行者として、

人が車にひかれる瞬間というのを、目撃したことがある。


それは恐ろしいというより、気味が悪い、という

思いだけが残った体験だった。


それを目撃したのは、私が小学生のときだったのだけど、

いまだに、おぼろげに夢に出てきて、

目が覚めたあとには、その日一日、

当時の映像が、頭をよぎりつづけて離れなくなるのだ。


うう、もういい加減、忘れたいよお、と思うのだけど、

やっぱり、無理だろうなあ。


本当に今でも、昨日見たことのように、

思い出せてしまうのだ。


覚えておかないといけない、もっと肝心なことは

簡単に忘れるくせにさ・・・・・。

役にたたない頭だなあ。


実は今回、そのときのことを書こうと思ったのだけど、

あまりに生々しい文章になったので、

もう少し時間を置いてみることにした。


そこで、自分が事故にあったときのことを、

ここに改めて書いてみた。


「事故の瞬間。」


この事故の話には、少しだけ後日談がある。


車に轢かれた私は、自分の体のどこにも

痛みがないのを確認して、家に帰った。


ほとんど傷一つ負ってないことがわかって、

奇跡だな、と思っていたのだけど、

部屋に戻って、明かりをつけてみて驚いた。


履いていたジーンズは足元から

太もものところまで、一気に擦り切れていて、

脱いでみると、足にはネコに引っかかれたような

細かい擦り傷がいっぱいできていたのだ。


さらに翌日。

私は全身が痛くて、ベッドから立ち上がることが

できなかった。


そのときになって、昨日の事故が

本当に幸運だったのだということを知って、

私は初めて本当に恐ろしくなった。


うーん、やっぱり事故なんて、体験するものじゃないんだなあ・・・・・・。

と、心から思ったのだった。



交通事故。

よく、事故に遭った人が、


{衝突の瞬間、自分の周りがスローモーションになったように感じた}


という人がいるけど、あれってホントなんだよ。


私も、同じ経験をしたことがあるのだ。


私の場合は、深夜に近い時間、

自転車に乗って走っていたときだった。

そのときに乗っていたのは、競輪選手が乗るような自転車で、

ロードバイクと呼ばれている自転車。


プロ仕様ではないけれど、それでも普通にちょっと

頑張って漕ぐだけで、舗装された道の上であれば

簡単に40キロくらいのスピードが出るヤツだ。


そのときも、それくらいは出していたかもしれない。


よく知っている道だったので、きっと油断していたんだと思う。

交差点が見えてきたのに気づいて、

私はいつものように信号を確認した。


そして、そのまま行けると判断して、一気に直進したんだ。

もちろん、それが誤りだった。

信号は、私が思っていたより早く変わり始めた。

停止していた車は、待ちきれないというように

動きだす。

あ、ダメだ、と思ったときは、もう遅かった。

こっちは加速しはじめたときで、交差点に

すでに進入していたのだ。

自転車とはいえ、スピードはほとんどバイクなみ

というか、それ以上。

でも、ブレーキは普通の自転車についているのと

同じブレーキだから、急には止まれないんだよぉ。


たとえるなら、F1のマシンを足で止めようと

しているようなものだもんなあ。

うーん、ほとんど役立たず。


私は急いで交差点を通過しようとしてスピードをあげ、

車は赤信号の長い待ち時間から解放されて、

勢いよく発進してきた直後。

二つの距離は一気に縮まって、

私は目の前が一瞬にして車のボンネットだけでいっぱいに

なるのがわかって、ブレーキをかけることを、あっさり断念。


そのときだった。

時間が水の中へと沈んでいくみたいに、

突然、ゆっくりと動いていくのが感じられたのだ。


向かってくる車の運転席で、口を大きく開ける

ドライバーの顔がはっきりと見えた気がした。

すぐこの後に来るだろう衝撃を予測して、

私は姿勢を低くして、自転車にただ、しがみついた。

そして、頭の中では

ダメだ、もう終わりだ、全部終わりだ、

と考えていた。


実は、もっともっと、時間があった。

あった気がする。

でも、何をしていいのか、何をしたらよかったのか、

考える余裕なんてなかったのだ。

ただ、終わりだ、終わりだ、と考えてた。


で、衝突。


あれほど強烈にしがみついていたのに、

そのとたんに、私の体は一瞬にしてすっ飛んで、

ぶつかった車のボンネットに叩きつけられた。

そのままフロントガラスに当たり、跳ね返されて、道路にドサリ。


今でも忘れられない、あのときの瞬間。

ああいうときって、ホントどうしたらいいんだろう。


地面に落ちて、ようやく止まった私の体。

だったんだけど・・・・・・。


それで、すぐに気づいてしまったんだ。

さっきまで、人や車が慌しく動いていたその交差点が、

今や、まるで水をうったように、恐ろしいほどの沈黙!


うっ、ぜったい注目を浴びてる。


というのも、そのとき私の体は、どうやら奇跡的にほぼ無傷。

痛かったのは道路に落下した時の衝撃くらいで、

あとは、ほとんど痛みもない。


でも、明らかに一身に注目を浴びているのを感じて

立ち上がりたくても、立ち上がれなかったんだよお・・・・・・。


衝突した車の運転手が、慌てて降りてきて

私を立たせてくれたとき、

どうやらあの少年、無事だったらしいぞ、とわかって、

その交差点内で一斉に起きた、盛大な拍手のことを、

私はこの先もゼッタイに忘れないだろう。


ああ、ホント!夜でよかったっ!


だってさ、周りが暗くなかったら、顔どころか耳まで真っ赤に

なっていたのが、あの場にいた人、全員に

知れ渡っていたと思うなあ・・・・・・。

色々な意味で、もう二度とこんなことが起きないよう、

気をつけよう、と考えさせられた出来事だった。


登頂ハンター。

オンラインゲーム「MHF」 の世界にもやってくる冬の季節。


ハンターたちの会話 その③。



MHFss180

「ああっ、やっと、頂上が見えてきましたよっ」


「本当ですか!?幻想じゃないでしょうね?」


「いや、間違いない、頂上です、頂上ですよっ」


「おおっ、これで、私たちの念願も、ようやく叶うんですねっ!?」


「ええ、この山の頂に、ギルドフラッグを立てるという、私たちの念願がっ!」


「・・・・・・・」


「大丈夫ですか?」


「ええ・・・・・・だ、大丈夫・・・・・・」


「ね、眠っちゃ駄目だっ!意識をはっきり持ってっ!」


「え?あ、あははは、違いますよ。誤解です」


「誤解?」


「ええ、あまりに嬉しくて、ちょっと頭がフラッグしたんですっ」


「・・・・・・・・・」




ぎるど-ふらっぐ 【ギルドフラッグ】  ギルドのフラッグ。MHFの世界において、ギルドを示すマークが

                       書かれた旗。それを手にしたものは、大きすぎる重圧ゆえか、

あるいは、ただ重いせいか、体力が徐々に吸い取られていく。

立てられる場所は、山頂など。「――を誰か、持っていく?」