モスマンハンター(その2)
自分の肩にかかる責任の重さを、
感じることのできない者に、ヒーローを語る資格はない。
誰かが、すぐ他人にばかり頼るのを見て、
それを弱い考え方だと言ってしまう者に、
ヒーローになる資格はない!
ほんのわずか前までは、
私たちモス一族は、この密林で、自然と共に暮らし、
キノコを食し、他の種族に危害を加えることもなく、
ただ、平和な暮らしをつづけてきた。
それが今、凶暴な鳥竜族たちの出現によって暗雲がたちこめ、
さらに、それを狙って、人間のハンターたちまでもが、
この密林に分け入ってこようとしているのだっ!
私たちの平穏な生活を取り戻すため、
今こそ、私たちは、立ち上がらなければならない!
モス一族よ、恐れるな!
この密林の平和のために!
私と共に戦うのだっ!
さて、私は、今日もいつもの日課としてる、
幼い弟たちとの、密林の巡回に出かけるとしよう。
大きな目標も、まずは、小さな一歩からなのだ!
うむ、異常なしっ!
これは、一人のヒーローの物語。
ネコの家出。
先日、ペルシャネコと思われる野良猫を見かけた。
野良猫を見かけることは珍しくない私も、
さすがにペルシャを見たのは初めてだったので、少し驚いてしまった。
きっと以前は、わた飴のようにフワフワで、
真っ白だったに違いない毛は、
今は薄黒く汚れ、まるで台風の真っ只中を走ってきたみたいに潰れて
肌に張り付いてしまっていた。
自分から家出してきたのか、捨てられたのか。
どちらにしても、慣れない外の生活に、
かなり疲れているようだった。
そのペルシャネコは人に慣れているせいか、
私に見つけられても、しばらくは逃げることなくジッとこっちを見ていたけれど、
やがて飽きたのか、どこかに歩いて、去っていった。
ずっと昔から人に飼われてきた犬と違って、
ネコは周りの環境に対して、とても敏感で、
人間からの影響をとても受けやすい動物なんだと、なにかで読んだことがある。
たとえば、飼い主がなにか悩みを抱えていたりすると、
ネコはそれを敏感に感じ取って、
自分のストレスにしてしまったりするのだそうだ。
「最近様子がおかしいんです」
と、動物病院に持ち込まれた猫を、
どれだけ検査しても、異常なところは見つけられず、
飼い主と話してみると、ネコではなく、
飼い主の家庭に問題があった、なんてことは、
最近では本当に、よくあることらしい。
それで、ネコは体調が悪くしてしまったり、
ネコが家出を理由になることも、あるのだそうだ。
ネコを飼っているひとで、
最近、ネコの様子がおかしい、とか、
うちのネコがずっと体調を崩しているみたいだ、なんて
感じる人がいたら、
ちょっと、自分の家庭のことを振り返ってみると、
いいのかも知れない。
それにしても、
人間の世界がとても住みづらくなっていることに、
もしかしたら、人間だけが、気づいていなのいかも知れないなぁ、
なんて思うと、
少しだけ複雑な気持ちになってしまうのは、私だけだろうか。
うーむ・・・・・・。
モスマンハンター(その1)
私に向けられた瞳が、その瞬間、
太陽の光に反射してギラリと金色に輝いた。
来るっ!
手に持っていたハンマーごと、体を宙に投げ出すのと、
相手が、巨大な黒い体躯をそのまま突進させてくるのとが、
ほとんど同時だった。
私は固い地面の上を転がりながらも、素早く立ち上がり、
その脇を、すれすれに駆け抜けていった相手が
振り返ろうとしている間に、一気に近づいた。
そして、その背後から、渾身の力で、
自分の体ほどあるハンマーを振り上げると、
重力の力に押されるように、一気に振り下ろした。
ガツンッと手のひらに強い衝撃が伝わって、それが
そのまま、背中からつま先へと突き抜けていった。
攻撃をまともにうけた相手の体は、一瞬、震えたかと思うと、
永遠とも思える時間、その姿勢のまま留まり、
やがて、ゆっくりと、頭から地面に崩れ落ちていった。
ふうっ。
ようやく、口から深い息が漏れる。
頭上のずっと高いところで、太陽さえも覆い隠すほどの巨大な木々が、
風に揺られて、まるですすり泣いているような声をだしていた。
私は、ハンマーを握る手からようやく、初めて力を抜くと、
動かなくなったモンスターの体を見つめ、
その肉を採る為に、静かに解体をはじめた。
おっと、冒頭から失礼した。
私の名前はモスマン。
みんなも、気づいていることだろう。
今、この世界には邪悪な気配が立ち込めはじめていることにっ!
誰かが、それと戦わなければいけないのだ。
私の名前はモスマン。
密林を平和を守るため、日夜戦う、自然界の使者。
大好物は、アオキノコだ!
おっと、肉、肉・・・・・・。
これは、一人のヒーローの物語。
沈黙のメッセージ。
【 沈黙のメッセージ 】
著 ハーラン・コーベン 1995年発刊
海外ミステリー史上、もっとも完璧な相棒をもった主人公が見せる、ユーモアにあふれたミステリー。
1996年に公開された、
トム・クルーズ主演の映画、「ザ・エージェント」は、
スポーツ・エージェントを主役にした、珍しい映画だった。
日本では、しばしば、
野球選手が大リーグへと渡る際に、
高額な年俸契約を成功させる人として、注目される
スポーツ・エージェントだけど、
実際の彼らの仕事は、それほど分かりやすいものではない、
こということの一端を、映画を見ると、教えてくれる。
でも、やっぱり、映画だ。
トム・クルーズ演じる主人公、ジェリー・マグワイアは、
自分の理想を追求した為に、大手スポーツ・エージェント会社を解雇され、
独立を決意する、というのが、映画の物語だった。
でも、小説「沈黙のメッセージ」では、
最初から、ノウハウも、ツテも、資金も持っていない、
一人の男、マイロン・ボライターが、たった一人の従業員と共に、
スポーツエージェント会社を経営している。
彼らには目立った顧客はいないが、
ただ一人、今年からプロとして活躍することになっている、
アメリカンフットボールの選手、クリスチャン・スティールだけは、別だ。
彼は将来、本物のスーパースターになるだけの、
これまでの経歴と、素質をもっていた。
小説の冒頭は、アメフトチームのオーナーと、
何も持たずして、エージェント会社を始めた主人公マイロンとの、
契約交渉の場面から始まる。
それは、映画では決して描かれることのなかった、
エージェントとしては、一番の見せ場ともいえる場面で、
彼らはお互いに、口汚く罵り、相手の弱みをつき、ときに笑顔でかわしながら、
チーム側は、少しでも契約金の額を減らそうと、
エージェント側は、少しでも吊り上げようと、
闘っている。
ときにはチーム側は、
自分たちが契約する権利を勝ち取った、将来性ある最高の選手を、
まだ、どんな結果も出していないのだ、と非難し、
私生活を調べあげ、中傷してまで、交渉しようとしてくる。
主人公マイロン・ボライターは、そいういった意味では、
映画のトム・クルーズなどより、スポーツエージェンとして、
ずっと強くて、柔軟だ。
相手の発言を、ときには受け流し、ときにはジョークで返し、
ときには脅し返す。
そして、その強さは、顧客に降りかかったトラブルの解決にも活躍する。
マイロン・ボライターが経営する、
スポーツ・エージェント会社の金の卵、クリスチャン・スティールには、
大学生時代、一人の彼女がいた。
でも、その彼女は、ある日とつぜん、行方不明となったまま、
今も行方が分からなくなっていた。
しかし、その彼女から、とつぜん、一冊のポルノ雑誌が、
クリスチャンの元へと届き、
その雑誌には、彼女のヌード写真が掲載されていた。
さらに深夜、本人と思われる電話までがかかってくる。
彼女は、生きているのだろうか。
だとしたら、失踪してから一年以上もの間、
彼女は、どこで、なにをしていたのだろうか?
主人公マイロン・ボライターは、大切な顧客のため、
真相を追いはじめる。
そんなマイロンを助けるのは、大学生時代からの友人で、
若くして投資会社の社長であり、
経済誌の表紙を度々飾り、
七歳から始めたテコンドーは六段、
過去にはFBIの捜査官もしていた、
ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世。
そして、エージュント会社の、
有能な、ただ一人の従業員であり、
元は女子プロレスの人気レスラーでもあった、エスペランサ。
真相を追う途中、すでに知られている事実を、
必死に隠そうとしている男に、マイロンは、自分たちがしてきた捜査方法を明かし、
友人ウィンは、吐きだすように言う。
「アマチュア」
事務所にかかってきた、クリスチャン・スティールの電話を、
マイロンに繋ぐ際、エスペランサは言う。
「金ヅルよ」
そして主人公、マイロン・ボライターであっても、
学校のどこかにいる、目当ての人物を見つけるために、
火災報知器を押すことを思いつき、
ボタンを押すときに、つぶやく。
「ガキどもよ、家で真似するな」
まるで、全篇が、エージェントの交渉術のように
スピード感、ユーモア、皮肉に溢れた本作。
一見すると、主人公が事件のナゾを追いかける、
よくあるミステリーのように思えるが、
一つだけ、忘れてはいけない。
これは、あくまでも、スポーツ・エージェントの世界の物語なのだ。
NFL(アメリカンフットボールのプロリーグ)が認めた
スポーツ・エージェントは、1200人もいるというのに、
彼らが言い寄っていい大学生選手は、わずか400人。
狭き世界で、生き抜く資格を手に入れたマイロン・ボライターは、
果たして、最後にどんな真実を見るのだろうか。
沈黙のメッセージ/ハーラン コーベン
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これは、作品を批評するものでも、お勧めするものでもありません。
あくまでもご紹介をすることに、努めています。
もし、興味をもたれた方は、周りの友人を頼る、試読できるショップや図書館を利用する等で、
まず、ご自分での評価をして頂けることを、強くお勧め致します。
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レコードジャケット。
私が小さい頃、家の居間には、かなり豪華なオーディオのセットと、
いつもきれいに磨かれた、レコードプレイヤーがあった。
知らない人もいるかも知れないので、
一応説明しておくと、ここでいうレコードとは、
凹凸のある円盤状のディスクに、ハリを落として、溝の部分を走らせ、
音楽を流すメディアのこと。
すでにそのとき、音楽のメディアとしては、
CDがすっかり主流になっていた時のことだから、
レコードプレイヤーは、とてもアンティークなものだった。
にも関わらず、我が家にはCDプレイヤーというものがなく、
しかも、カセットテープをさえ、なかった。
私にとって聴く音楽といえば、それからもしばらくは、
ずっとレコードだったのだ。
今思うと、これって、とても贅沢な子供時代だったのかも知れない。
私の父は工業用ロボットを製作する技師なのだけど、
そのせいか、新しい電化製品に目がない人だった。
ただ、音楽だけは別だったようで、
CDではなく、レコードで音楽を聴くことに、とてもこだわっていた。
そのとき家に置かれていたレコードプレイヤーは、なんでも、
父が、初めて貰った給料で買ったという、
記念すべきプレイヤーだったらしい。
その後も、壊れて文字通り、本当に動かなくなるまで、
父はそのレコードプレイヤーのことを、とても愛して使っていた。
つい先日、そのことを思い出し、
父と話しているうちに、初めて買ったレコードの話題になった。
父はその最初の給料で、高価なレコードプレイヤーと一緒に、
映画「ベンハー」のサントラを買ったのだそうだ。
それが、父の初めて買ったレコードだった。
それで、ふと、思い当たった。
私の映画の趣味趣向だ。
友人と、居間まで見た映画の中で、一番好きな映画はなに?
なんて話になったりすると、
私が上げるタイトルは、大抵、みんなから、
「なにそれ。知らない」
とか、
「古い」
なんて言われる。
あれ、おかしいなぁ、普通だと思うんだけどな。
いい映画なんだよ。
なんて思うんだけど、友人からは、いつも奇異な目で見られてしまう。
そして、いつも言われるんだ。
「お前、中身は本当は80代だろっ!」
ばかやろーっ!
こんな背筋のいい、肌のピチピチした80代がどこにいるんだっ!
でも、映画の話題になると、同年代の人とは、
話が合わなくなるのは確かで、ひどいと、
「それ、本当にある映画?」
とか、
「適当なこと言って!いま、自分で作ったんだろっ」
なんて言われてしまう。
うっ、うっ、う。
だから、名作なんだってばーっ。
ただ、私が古い映画ばかり見ているのは事実だし、
その理由が、これまでは自分自身でも、よくわからなかったんだ
誰かの影響なのかなあ。
それとも、友人たちの言うとおり、私は中身が古い人間なんだろうか。
と、思っていたんだけど、それがようやく、
その父の一言で解けたのだった。
それは、音楽。
私は小学生の頃、父のレコードプレイヤーで、
古い映画のサントラをよく聴いていたんだ。
もちろん、子供だから、よくわからずに聴いていたんだと思う。
ただ、レコードにはジャケットというものがある。
映画のサントラは、当然、映画のイラストや写真がジャケット部分に
使われていた。
子供心に、その絵柄が、印象的な音楽と共に、
記憶に残っていたんじゃないだろうか。
ふと、私は自分の部屋にある、CDラックを見た。
うっ、あるのは、昔のミュージカル映画のサントラばかりだ・・・・・・。
自分のきづかないところで、
私は間違いなく親の遺伝子を受け継いでいるらしい、
証を見つけた気がして、
少し恐ろしくなってしまったのだった・・・・・。
ほ、本当にいい映画なんだよ。
エーハブ船長を演じているのは、「ローマの休日」で
あの、新聞記者を演じたグレゴリー・ペックで!
とても、同一人物とは思えなくて・・・・・・!
うん・・・・・・。





