沈黙のメッセージ。
【 沈黙のメッセージ 】
著 ハーラン・コーベン 1995年発刊
海外ミステリー史上、もっとも完璧な相棒をもった主人公が見せる、ユーモアにあふれたミステリー。
1996年に公開された、
トム・クルーズ主演の映画、「ザ・エージェント」は、
スポーツ・エージェントを主役にした、珍しい映画だった。
日本では、しばしば、
野球選手が大リーグへと渡る際に、
高額な年俸契約を成功させる人として、注目される
スポーツ・エージェントだけど、
実際の彼らの仕事は、それほど分かりやすいものではない、
こということの一端を、映画を見ると、教えてくれる。
でも、やっぱり、映画だ。
トム・クルーズ演じる主人公、ジェリー・マグワイアは、
自分の理想を追求した為に、大手スポーツ・エージェント会社を解雇され、
独立を決意する、というのが、映画の物語だった。
でも、小説「沈黙のメッセージ」では、
最初から、ノウハウも、ツテも、資金も持っていない、
一人の男、マイロン・ボライターが、たった一人の従業員と共に、
スポーツエージェント会社を経営している。
彼らには目立った顧客はいないが、
ただ一人、今年からプロとして活躍することになっている、
アメリカンフットボールの選手、クリスチャン・スティールだけは、別だ。
彼は将来、本物のスーパースターになるだけの、
これまでの経歴と、素質をもっていた。
小説の冒頭は、アメフトチームのオーナーと、
何も持たずして、エージェント会社を始めた主人公マイロンとの、
契約交渉の場面から始まる。
それは、映画では決して描かれることのなかった、
エージェントとしては、一番の見せ場ともいえる場面で、
彼らはお互いに、口汚く罵り、相手の弱みをつき、ときに笑顔でかわしながら、
チーム側は、少しでも契約金の額を減らそうと、
エージェント側は、少しでも吊り上げようと、
闘っている。
ときにはチーム側は、
自分たちが契約する権利を勝ち取った、将来性ある最高の選手を、
まだ、どんな結果も出していないのだ、と非難し、
私生活を調べあげ、中傷してまで、交渉しようとしてくる。
主人公マイロン・ボライターは、そいういった意味では、
映画のトム・クルーズなどより、スポーツエージェンとして、
ずっと強くて、柔軟だ。
相手の発言を、ときには受け流し、ときにはジョークで返し、
ときには脅し返す。
そして、その強さは、顧客に降りかかったトラブルの解決にも活躍する。
マイロン・ボライターが経営する、
スポーツ・エージェント会社の金の卵、クリスチャン・スティールには、
大学生時代、一人の彼女がいた。
でも、その彼女は、ある日とつぜん、行方不明となったまま、
今も行方が分からなくなっていた。
しかし、その彼女から、とつぜん、一冊のポルノ雑誌が、
クリスチャンの元へと届き、
その雑誌には、彼女のヌード写真が掲載されていた。
さらに深夜、本人と思われる電話までがかかってくる。
彼女は、生きているのだろうか。
だとしたら、失踪してから一年以上もの間、
彼女は、どこで、なにをしていたのだろうか?
主人公マイロン・ボライターは、大切な顧客のため、
真相を追いはじめる。
そんなマイロンを助けるのは、大学生時代からの友人で、
若くして投資会社の社長であり、
経済誌の表紙を度々飾り、
七歳から始めたテコンドーは六段、
過去にはFBIの捜査官もしていた、
ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世。
そして、エージュント会社の、
有能な、ただ一人の従業員であり、
元は女子プロレスの人気レスラーでもあった、エスペランサ。
真相を追う途中、すでに知られている事実を、
必死に隠そうとしている男に、マイロンは、自分たちがしてきた捜査方法を明かし、
友人ウィンは、吐きだすように言う。
「アマチュア」
事務所にかかってきた、クリスチャン・スティールの電話を、
マイロンに繋ぐ際、エスペランサは言う。
「金ヅルよ」
そして主人公、マイロン・ボライターであっても、
学校のどこかにいる、目当ての人物を見つけるために、
火災報知器を押すことを思いつき、
ボタンを押すときに、つぶやく。
「ガキどもよ、家で真似するな」
まるで、全篇が、エージェントの交渉術のように
スピード感、ユーモア、皮肉に溢れた本作。
一見すると、主人公が事件のナゾを追いかける、
よくあるミステリーのように思えるが、
一つだけ、忘れてはいけない。
これは、あくまでも、スポーツ・エージェントの世界の物語なのだ。
NFL(アメリカンフットボールのプロリーグ)が認めた
スポーツ・エージェントは、1200人もいるというのに、
彼らが言い寄っていい大学生選手は、わずか400人。
狭き世界で、生き抜く資格を手に入れたマイロン・ボライターは、
果たして、最後にどんな真実を見るのだろうか。
沈黙のメッセージ/ハーラン コーベン
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