たまふの書物語まりふ -28ページ目

559 魔法使いルーフィ

列車はひたすら走り、終着駅を目指しているけれども

普段、走る時間ではないので


他の列車の合間を縫って、ゆっくりゆっくり。


そういう、ゆったり感が
かえって、旅を楽しむ乗客だけになってしまったこの1列車、ノーススターを
包んでいる。



お酒を酌み交わしている、料理長と

さっきのおじいさんも


食堂車のキッチンから持ってきた
チーズやら、生ハムやらで

めいめいに、楽しめて。




時々、赤信号で止まっても


別に、気にしない(笑)。





料理長も、とっくに仕事を終えて

本当なら、夜に備えて寝ている時間帯。




折り返しの2列車、帰りは午後9時の発車だから



夕方までに、bluemorrisの駅に着けばいい、
着かないなら、途中で乗り換えればいい(笑)


そんな豪気な、料理長だが


男は、そのくらいでなければダメだ(笑)。




男の仕事は、そういうものである。





もちろん、夜の食事の支度も必要だけど



どの道、この列車が折り返すのである(笑)。




慌てても仕方ない。





慌てる、と言うのも



人間の想像が、時間の概念を越えてしまうせいで



理論的に、3次元の時系列に

乗せて、シミュレーションすれば



別に、慌てる事もない。


間に合わないなら、慌てても仕方ないので
別の策を講じるだけだ。




列車料理長は、帰りの支度、食材の仕込みを



地上でするように、列車無線で
bruemorrisに頼んでおいた。


お見事、料理長。(笑)。

558 魔法使いルーフィ

列車料理長も、なかなか
お酒好きなので

お酒を好む人の気持ちがわかる。

単純に、快い事を得られる行動が

習慣になっていると言う、それだけの事で


たまたま、アルコール代謝する時に

できる化学物質が
脳へ刺激を与えるので


それで、刺激を逃れる為に

生理的に、人体が内分泌して

体が酔う、それだけの事だから


野性動物でも、自然酵母でアルコール発酵した
果実を好む動物、例えばアフリカの麒麟とか



そういう例もある。




栄養にならなくても、文化として
食べる物を楽しむ、そんな習慣は

野性動物にもあったりするから

人間のおじいさんが、お酒を好むのも別に

罪な事ではない。



都市として、簡単に酒が手に入るから


習慣になってしまうのだけれども。




人間の文化とは、そんな風に
融通のきくものである。






「わたしが、行こう」料理長は



カラフルなお酒のボトルを抱えて


その、おじいさんの居るロビーに行った。




「さあ、一杯いかがかな?」

料理長は、ウィスキーのキャップを開けて



小さなガラスコップに、注いだ。

琥珀色の液体は、単なるアルコールではなく


いろいろな風味を含んだ、芳しい存在。



奨められたおじいさんも、楽しげに、愛しげに


その液体を嗜む。




お酒があると、不思議に
仲良くなれるのも

酒好きの人たちの面白い風習である。

557 魔法使いルーフィ

のんびり、ほとんどからになった
ワゴンを押して
食堂車のとなりの、ロビーカーに
差し掛かったNaomiは


丸顔で、人の良さそうな
おじさんに声を掛けられた。



「お酒の類は、あるかの?」



こんな非常時に、お酒なんて、と


Naomiは一瞬思ったけれど

でも、その人には

その人なりの理由があって
お酒を飲みたいのだろうと

優しく、そう思った。


長い人生、いろいろな事があって


お酒を飲む事が習慣になったのだろう。



その人にとって、お酒、アルコール代謝で得られる状態が
幸せな、気分を齎す化学物質を

彼の脳に満たす、それだけの事だ。





Naomiは、「ワゴンのお酒はもう、売り切れてしまって」と


そう言う。



彼は、淋しそうな顔をして「はい」と。





その横顔を見て、Naomiは、
ちょっとかわいそうに思った。



「探してみます」そう言って。



となりの食堂車まで、ワゴンを押した。






食堂車では、もう、食料がなくなったので
後片付けを終えた
めぐたちが、のんびりと

テーブルをしまっていて。



「どしたの?」と、れーみぃ。




Naomiは、訳を話す。


お酒がないかしら?と。







「そうだねぇ」と

キッチンを見回して見ると


料理用のワインくらいしかない。





列車料理長、それを見ていて

「どうしたの?」



めぐは「お酒の好きなおじいさんが
ちょっと淋しそうなので」と


そういうと、料理長は




「それじゃ、僕の私物を進呈しよう」そう言って


料理長は、自分のお部屋に行って。



小瓶のウィスキーとか、ワイン。



数本を抱えて持ってきた。

556 魔法使いルーフィ

もし、神様が全能だったら
外国のお金持ちの欲望も、抑えてしまっただろう。


でも、いろんな神様がいるから(笑)



アメリカには、アメリカの神様がいるだろうし

インドには、仏様がいるだろう。


それぞれに、いろんな神様を信じてる人々が
いて、それぞれに生きている。


それが普通だと、ここの神様は思ったりする。



統一して、ひとりの神様が
統べてしまうのは、ちょっと危ない(笑)。




でも、ここの神様は思う。

「外国の神様に話してみようかのぉ」



話しあって、賛成してもらえれば
それもいいだろうと。










地上では、めぐたちの乗った列車は
多くの乗客が、下りてしまって

静かな列車になった。


新しい、スーパーエクスプレスは
地震の影響がなかったので

急いでいるお客さんは、途中で

乗り換えてしまった。


だから、今、この列車に乗っているひとは
旅を楽しむ人達だけだ。


むしろ、長い間列車で過ごせて
喜んでいるようにも見える。



お昼を過ぎて、尚も走る列車。

途中の駅で、ワゴンのお菓子やお弁当を
積み込む事もできたから

Naomiは、今度こそ
ワゴンサービスのアルバイトが出来たりする。



それはそれで、楽しい事かもしれない。




女の子の憧れ、キャビンアテンダントみたいな

ちょっと違うかな?


列車のワゴンサービス。



颯爽として、カッコイイ(笑)なーんて。

555 魔法使いルーフィ

大変な旅だったけど、過ぎてしまうと
楽しかった思い出。


そんなふうに、めぐは思った。


そういうあたりも、癖のようなもので


生まれついて、楽しい事、嬉しい事が


多かったりすると、楽しい記憶を

よく覚えていたり。



つまりそれは、周りから

可愛がられていたり、と言う事なのだけど。




ふつう、赤ちゃんは可愛いと

周りに思われる。



そういうふうに、生き物は出来ているので



もし、可愛がられない赤ちゃんがいたりしたら


それは、周りの大人たちが


不自然な暮らしをしていて、心が疲れていた
と言う事なのだろう。



自然な、生き物としての暮らしから


人間の生きている環境が、変わってきている。



そういう事で



簡単に言うと、お金儲けして贅沢したいおかねもちが



庶民の暮らしを切迫している、と言う事なのだけど。




それで、リサや
おじさんのいる国鉄を


お金儲けの対象にしようと企み



リサの就職も怪しくなって。


リサは悩んだ。



どっこい、国鉄はまだまだ生きている。




そう簡単には、外国の金儲けに
荷担してなるものかと



国鉄職員は、皆思っている。



みんなのための国鉄なのだ。

554 魔法使いルーフィ

列車は、ゆっくりでも
着実に、駅について

その度に、人々の幸せを乗せて。


その幸せと一緒に、次の駅へ向かう。


朴訥な、車掌は

そうは見えないけれども

機関車乗りでその名を馳せた

リサのおじいちゃんの、息子である。


列車無線で、のんびりと


「1列車、車掌です」。



お国言葉で、  いつれっさ、 さそーです


どこか、和むその言葉である。



食堂車クルーの、めぐたちも

おさら洗いを終えて、そろそろ
営業終了。



「ちょっと寂しいね」と
れーみぃが言う。


めぐは、無言で頷く。


言い知れぬ感激で、胸がいっぱいだ。

9月30日に投稿したなう



ー松兼助産院ー よね子おばあちゃんは明るいラテン助産婦さん(笑) テーマソングを歌って~ ♪俺、俺、 松兼産婆 俺!
9/30 19:52

552 魔法使いルーフィ

だけど、神様がなにもしなくたって
僕らは、人を傷つけたりしないし。

人のものを奪ったりもしない。

そう、ミシェルたちは言うだろう。


若者は、純真だから

そんな事はできない。



もし、あるとすれば
恋の争いくらい、かな?




戦争が終わった頃は
この国のみんな、大人だって


お金儲けのために争ったりはしなかった。



国を復興させようとしていたから
とりあえず、みんなの目的が一緒だったから。



ひとの営みもそんなもので


国=ひとの体とたとえてみれば


細胞の営みと、よく似ている。


そして、国と言うのは

星に乗っているから


銀河の一部。


つまり、構造を見ると

3次元の銀河の一部で


多次元宇宙の一部である。



その、隣接宇宙に


やっぱりひとがいて、と


そう考えると、その中に別の宇宙があったりするのとよく似ている。



ひとの細胞の中にも、分子があって
元素があって。


原子があるように。



その原子を壊すと、大きなエネルギー源になる。


E=MC2である。

551 魔法使いルーフィ

別に、神様は
変わった魔法を、この国のひとに掛けた訳じゃなくて。


細胞レベルで、増殖を続けるように出来ている
その指令、よく言われるDNAの複写行動が
少し、遅くなるようにと
環境を整えただけ。



古来の細胞は、際限なく増殖し続けるように
プログラムされている。



そのせいで、例えば人間は
不要なまでにエネルギーを蓄えてしまう。


食べ過ぎたり、肥満したり。



それは、神経回路の速度が遅いせいでもある。
食べ物が消化されて、エネルギーになってから
そのエネルギーレベルを観測して、満足、するのだけれども


食事の速度は、それよりも早い。



それは、野生生物だった頃は
あまり食べ物が入ってこなかったので


その速度で間に合っていた。でも

今は、社会が
食べ物を蓄えてくれ、簡単にエネルギーを
補給できるから


それで、エネルギーをとりすぎてしまう。



そういう構造を、少し変えれば

いい。でも、それは進化生物学の夢想である。



神様は、そういう夢想を現実にできたりするので


細胞レベルで、不要なほどエネルギーを蓄えないように、
つまり、ほかの生物と競争しなくても

生きて行けるように細胞に言い聞かせた。

550 魔法使いルーフィ

神様は、めぐたちの活躍を

雲の上から、見守っていて

「魔法も、そういう使い方するといいのぉ」と

魔法使いでもないのに、そんな事を言って

のどかに笑っていた。



欲望、それが

生物的な、細胞レベルからの欲求であるうちは

特に、困る事もない。



それは、リアル、3次元の欲求だから
譲り合う事で、助け合う事で。


お互いに、幸せになれる。



食べるのに困らないのに


贅沢したかったりすると、もともと限られた

資源を多く使ったりして、困った事になるのだ。




地震があって、閉ざされた列車の中で

みんなが助け合って。



とても、優しい気持ちになれた。



「困った時は、お互い様」なんて


あまり困る事のない、近代の社会では
たまーに困った方がいいのかな、なんて


神様も思ったりした(笑)。






ミシェル少年の恋、のように
空想であっても、根源が生物的なものに
根差しているものは、争いにはならないけれど。





神様は思う。


「あの、ミシェルと言う少年を
好いている少女がおったなぁ」



と、セシルの事を想った。



争いにならないといいけどのぉ、と


神様らしく、のどかに心配をした。