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bargoopapaのブログ

すすきの好きで須賀、カミさんには頭の上がらない親父の日常の出来事をメインに、時々詩を載せる気まぐれなブログです。
もともとはお店をやっていましたが、体調などもあり辞めて、いまは元の不動産の仕事をしています。。

「織田さん。明日は何か予定あるんですか?」
「いや…。特に予定は無いけどね…。」
「じゃ、このあとちょっと付き合ってくれません?」
「あぁ…、良いですよ…。」

玲子の強引な誘いに少し戸惑った圭介だったが、どちらにしても自宅まで送らなくてはならないと、少し付き合うことにした。

「それでどこに行くのかな?」
「まだ秘密…!」

食事を終えて二人は車に乗り込んだ。

「まずはどちらに向かいますか?」

軽い乗りで聞いた圭介だったが、玲子は無表情のまま…

「東区に向かってください…。」

そう言ったまま、黙ってしまった。

圭介は言われるがまま、北一条通りを東に向かい、東八丁目で北に曲がった。
その間、玲子は黙ったままだった。

圭介は玲子が何を考えているのかわからなかったが、何となく言い知れぬ不安が心を渦巻いていた。

不意に玲子が…
「ここを右折して…。」

と北二条通りの交差点直前に言った。
圭介は慌ててブレーキを踏み曲がったが、十分に減速出来なかった為、キィキィとタイヤが音を鳴らしていた。

しばらく走らせた時、突然…

「ここで停めて!!」

と玲子が口を開いた。

「ここがエリちゃんが住んでるところ…。」

圭介はどうゆう事なのか理解が出来なかった。

「ちゃんと会って話してきたら…。」

玲子の言葉に圭介はますます混乱していた。
「織田さんもエリさんと風俗で知り合ったんですか?」
「イヤ…。違うよ。まぁいわゆるナンパだよ。」
「本当ですか…? 織田さんがナンパね~。あ~お腹空いた! ね、食べましょう!」

玲子はそれ以上聞いて来なかった。

圭介は少しホッとしたが、玲子と絵里の関係が気になっていた。

ただそれを聞くのは抵抗感があった。


その頃絵里は母親と話しをしていた。

「絵里…。本当に東京に行くのかい?」
「うん…。ごめんね。」
「だけど、東京に行って仕事とか住むところとかあてはあるの?」
「住むところは友達のところにしばらく泊めてもらうことになってる。仕事は向こうに行ってから探すつもり。」
「心配だよ。」
「ごめんね…。ちゃんと時々帰って来るし、連絡もするから、心配しなくて大丈夫だよ。」

絵里はこの街での総てを捨てて、人生をやり直したかった。

風俗の仕事をしてい時、続けることに悩んでいた。そんな時にベテランの女性に言われた事があった。

´今の仕事を後ろめたいと考えるなら、すぐ辞めた方が良いよ…。だけど、事実は一生ついて回るから、覚悟しなきゃダメ。´

しかし、自分にはそれを受け止める自信がなかった。間もなく、絵里は仕事を辞めた。

三日後に迫った東京行きは、そんな自分から逃げたい一心の行動だった。
「私昨日見ちゃったんだ。織田さんとエリさんが一緒に居るの…。」
「え…!」
「織田さん。エリさんと居酒屋にいたでしょ。」
「あ…。偶然会ってね…。」
「ダメですよ~。泣かしちゃ…。」
「あ~。見られてたのか…。俺が泣かした訳じゃ無いんだ。実は離婚したって…。子供もダメだったって…。」
「え~。そうなんですか…。可哀想…。」
「うん…。それで何か東京に行くらしいよ。」
「ふ~ん。織田さん引き留めなかったんですか?」
「何か何も言えなかったよ。もう忘れたつもりでいたし…。」
「そうよね…。子供のこと聞きました?」
「イヤ…。色々あったらしくて、あまり詳しくは聞けなかった…。泣いちゃったからね…。」

圭介は恵理との話しはほとんど話さなかった。それは玲子に話すことは絵里の過去についても話すことになるからだった。しかし…

「織田さん…。私知ってるんだよ。」
「知ってるって何を…。」
「エリさんって風俗に勤めていたんでしょ。」
「え…!」

圭介は頭の中が真っ白になった。

「どうしてそれを…!!」
「うん…。実はゆふぁでエリさんが辞めた後色々お客さんが来たっていってたでしょ。その中の一人がみんなの前で話してたの。実はママは知ってたんだって。」
「そっか…。」

圭介は絵里が誰も知らないところに行きたいと言っていたことが、改めて理解出来た。
圭介と玲子はほどなく小林が商談をしている円山の寿司屋に着いた。
二人は書類を届けた後、夜景が見たいと言う玲子の希望で旭ヶ丘公園に向かった。

「織田さんあれから別のお店で飲んだんですか?」
「ええ…。久しぶりの朝帰りでした。」

圭介は絵里と会ったことは隠すことにした。

「朝帰りですか!元気ですね~。私はお店終わった後お店の女の子と食事して帰りました。」
「食事と言えばお腹空いたな~。考えたら、昨日一緒に食事してから何も食べてないや。」
「そうなんですか!私もお腹空いてきた。」
「じゃどこかで一緒に食事しますか?」
「良いですね~。イタリアンが良いな~。予定変更!!夜景止めてすぐ食事行きましょうよ。」
「そうですね。」

圭介は円山公園の近くのイタリアンレストランに車を走らせた。

ほどなく店に入り食事を注文した。

「織田さんてまだ絵里さんのこと好きなんですか?」

玲子の突然の言葉に圭介は驚いた。
圭介はベッドに寝転がりながら携帯のメールを開いた。

それは玲子からだった。

゛こんにちわ。先のメール見てくれたかな? 返事が無いから困ってます。連絡お待ちしてます。゛

゛ん…。先のメール?゛

圭介は慌てて先のメールを開いた。

゛織田さん。昨夜はご馳走様でした。またデートして下さいね。ところでうちの小林から電話が来て、会社のパソコンで印刷出来ないと連絡があり、会社に来てますが私も判らなくて困っています。至急連絡頂ければと思います。お休みのところすみません。゛

圭介はメールの時間を見ると3時になっていた。時計を確認するともう7時になろうとしている。
圭介は慌てて玲子の携帯に電話をした

「もしもし、古館さんですか?織田です。」
「あ!織田さん。良かった。お休みにごめんなさい。」
「こちらこそ連絡が遅くなってすみません。それでどんな状態ですか?」
「ええ、印刷をかけてもエラーになってしまい、プリンターの電源を入れ直したりしましたが、全くダメなんです。」
「そうですか…。印刷物は急がれるんですよね。社長はおられるのですか?」
「小林は今お客さんのところで商談中なんですが、印刷出来次第持って来るように言われているんです。」
「そうですか…。私が今から向かいますが、間に合いますか?」
「大丈夫だと思います。7時から商談に入ってますので…。」
「ではすぐ向かいますので、ちょっとお待ちください。」
「助かります。お待ちしてます。」

圭介は電話を切ると慌てて身仕度をして、車で玲子の待つ会社に向かった。

会社に着くと、玲子はコーヒーを入れて待っていた。

「すみません。お待たせしました。」
「いいえ。こちらこそお休みのすみません。でも…。」
「え…。何ですか?」
「背広姿以外初めてみるから…。」
「あ~、すみません。夕方まで寝てたもので髪もボサボサで…。こんなカッコですみません。」
「何か野性的な感じで…、良くってよ。」
「すみません…。それより印刷ですね。ちょっと失礼します。」

そう言って圭介はパソコンを操作しはじめた。

「あ~、これが多分原因ですね。」
「判りましたか?」
「多分社長が先に印刷かけたのがエラーになっていて、それで全て止まったんですね。」
「ヤッパリそうなんですか!あ~助かりました。社長には印刷の仕方をいちから教えなきゃ。」
「多分印刷をかける時に印刷の設定を変えたんでしょうね。これでちょっと印刷してみて良いですか?」
「はい。お願いします。」

ほどなくプリンターから用紙ご出て来た。

「良かった~。」
「これを届けるんですよね。車で来ましたから送りましょうか?」
「良いんですか? ありがとうございます。助かります。」
「場所はどちらですか?」
「円山です。」
「では急ぎましょう。」

二人は会社出て圭介の車で円山に向かった。

「こんなに早く織田さんとドライブ出来るなんて思わなかったわ。」
「まぁこれも一応ドライブになりますかね。」
「ねえ…。織田さん。書類届けた後、ちょっとドライブしません?」
「ええ…。良いんですよ。」

圭介は玲子の積極的な態度に少し圧倒されていた。




絵里は前日友人達との飲み会に参加していた。友人の一人が夫の仕事で転勤するための送別会だった。
一部の友人が自分の離婚を知っていたが、友人達は気を利かせて話題にはならなかった。
ただ絵里は自らも札幌を出ることを決めていたが、その友人達には言わなかった。
友人の一人のご主人が自分のヘルス時代の常連だったことが判って以来、友人達とも会いづらくなっていた。

そんなこともあり、街を出るのは全てをリセットしたいと考えてのことだった。

絵里はベッドに横になりながら、圭介のことを思い出していた。

その頬を一筋の涙が流れていた。
絵里は東区にある実家に帰っていた。

圭介と過ごした後、眠ったのを確認してホテルを出た。
もともと絵里はアパートに最後の荷物を取りに寄るところだった。

実家に入ると母親が起きてきた。

「今帰ったのかい…。心配したよ。」
「ごめんね。ちょっと盛り上がっちゃって…。」
「沖田さんから昨日何度も電話があったよ。戻って来て欲しいって…。」

沖田雅彦は絵里の夫だった。過去の仕事のことがわかって別れたものの、最近何度もやり直したいと連絡をして来ていた。

「私はやり直すつもりは無いから…。今度電話きたらそう伝えて。」
「だけどあんた…。どうして沖田さんも別れた理由を言わないし…。何があったのか知らないけど、もう一度きちんと会って話したら…。」
「私が悪いんだから…。母さんも忘れて。」

そう言って絵里は自分の部屋に入った。母親は絵里がヘルスで働いていたことは知らなかった。別れた理由がそのためだったので、説明しょうがなかった。

゛今更やり直すって言われても、何かあるたびに言われるんだし…。やっぱりイヤだな…。゛

絵里は今更ながらヘルスで働いていたことを後悔していた。

8年前の23歳の時、地下街でスカウトに声を掛けられた。その頃はアルバイトで生計をたてていたが、母親が病弱だったこともあり、生活は厳しかった。普通にオシャレをしたりしたいと考えていた。もちろん仕事には抵抗感があった。セックスは何人かと付き合って経験はあったが、風俗の仕事自体には嫌悪感すらあった。

パティシエになりたくて入った専門学校だったが、働いてみると給料は安く、割の良い仕事を探しても景気も悪くアルバイトでやりくりしていた。

そんな時にスカウトに会い、何となく店について行ってしまった。

店の面接ではすぐ採用され、翌日から働くことになった。

その後は次第に開き直ったようにそれが本職になってしまい、気付いた時には店ナンバーワンの指名を取るまでになっていた。

何度か辞めようとしたが、その収入の生活に慣れるに従い、辞めては復帰を何度か繰り返した。

何人も交際を申し込まれ、最初は何人か付き合ったこともあったが、必ず仕事の事でトラブルになった。

それ以来お客とは付き合うのはやめた。
しかし、絵里にとって圭介は特別な存在だった。
相性があったと言えばそれまでだが、デートしてもそれまでの男達と違ってホテルに誘う訳でもなく、自分を普通の女性と同じように扱ってくれた。辞めた以後も連絡を取ったのは圭介だけだった。

ただ、好きになっていくに従い、自分の過去から逃れられない現実が絵里を苦しめていった。

そして友人の紹介で知り合った沖田と僅か3ヶ月程で結婚に至った。
それは絵里にとって圭介から逃れたいだけのものだった。
ドアは開かなかった。もう居るはずがない。居るならあんな書き置きを置いていかない…と圭介は諦めた。

自宅に戻った圭介は少しボーっとしていたが、そのうち深い眠りについていた。

夕方5時過ぎになって起き上がった圭介は携帯の着信を知らせるランプ点滅を見つけメールをチェックした。

幾つかのメールの中には絵里のものは無かったが、玲子から2件入っていた。

絵里との最初で最後だろうSEXの余韻。身体中に残る絵里の匂いが圭介の気持ちを落ち込ませていた。

玲子からのメールを見る気持ちにもならず、そのままにして煙草に火をつけてテレビのスイッチを入れた。

ちょうど夕方のニュースが流れていた。

その時携帯にメールが入った。

二人は愛しあい、求めあった…

いつの間にか寝ていた圭介は、絵里の姿が無いことに気付いた。

そしてテーブルの上にある備え付けのメモには絵里からのメッセージが書かれていた。

´織田さん。今日はありがとう。もう会うことは無いと思うけど、本当に今までありがとう。織田さんの優しさに甘えたかったけど、やっぱり自分の過去を知らない街に行きます。さようなら。´

圭介は読み終えてしばらくボーっとしていた。

「やっぱりか…。」

圭介は以前絵里と飲んだ時に、悩み事を聞いていた。

絵里はヘルスで働いていた時、顔は表に出していなかったものの人気があり、そのため街を歩いていてもお客と会うこともあって、友人と居る時でも声をかけて来る人もいて困る。更に辞めた後でもそんなことがあり、違う街で暮らしたいと言っていた。

確かに圭介も札幌駅と大通公園で二度程会ったことがあったが、お互い連れが居たので目でお互い挨拶をした程度だった。

時間は7時を回っていたが、ホテルを出た圭介は絵里のアパートに向かった。

アパートのドアの前に立ち、ガスのメーターに閉栓を示す札を見た時、圭介は本当にこれが最後だな…と感じた。

ふと圭介は何故絵里はガスの止まっているアパートに来たのか不思議に思った。
絵里はずーっと借りていたと言っていた。

´もしかしたら…´

圭介はドアノブに手をかけた。

「私本当は織田さんと…。」
「でも絵里ちゃん。俺はずーっと付き合って欲しいって言ってたじゃない。」
「嬉しかったよ。その気持ち…。でもダメなんだ。私の事知り過ぎているから…。」
「あの仕事の事を理解した上で、言っているんだよ。」
「私だってあの仕事の事は忘れたいけど、いつか周りにわかってしまったら、織田さんに嫌な思いをさせるから…。」
「いまさらだけどそんなこと気にすること無いよ。全てを受け入れるつもりだったんだから…。」

絵里は下を向いたまま黙ってしまった。

「俺は絵里ちゃんに、子供は俺の子だと言われても気にしてないし、結婚したって聞いてちょっとショックだったけど、幸せだったらと思ってた。忘れなきゃってずーっと思ってた。」
「やっぱり会わない方が良かった?」
「そんなこと無い。だけど…。俺はいまどうすれば良いかわからない。」
「ごめんね…。だけど私はまた会えて良かった。ずーっと心の中あったものが少しすっきりした。ずーっと織田さんに謝りたかったから…。」
「謝ってもらうことなんか何もないよ。せっかくまた会えたんだし、良かったらまた前みたいに会ってくれないかな。」
「もう会えないかな…。」
「エッ!!どうして…?」
「引っ越しするから…。」
「引っ越し…。どこに行くの?」
「遠く…。だから最後に謝って、この前は言えなかったお別れが、今回は言える。」
「また俺の前から居なくなるんだね…。」
「勝手なことばかりでごめんなさい。私織田さんに最後に会えて良かった。」

圭介はそれ以上絵里を問い詰めることはしなかった。
圭介にはそれ以上話しても絵里を止めることは出来ないと思っていた。

少しの間思い出話しをした後、店を出た二人は、どちらが誘うともなく、すすきののはずれにあるホテルに入った。