新年明けましておめでとうございます


今年最初に紹介する作品は
1960年(昭和35年)新東宝
「女獣」
曲谷守平監督


あらすじ
警視庁の婦人警官・瀬川路子(松浦浪路)は、ズベ公の鈴子になって犯罪組織の暁興行に潜入捜査する。

婦人警官の潜入捜査物は前年に日活「波止場の無法者」で浅丘ルリ子さんが演じましたが、潜入捜査官とは名ばかりだったので、この作品が最初の本格的な婦人警官の潜入捜査物と思われます。

そして、今回は当ブログ初登場の俳優さんが多いですよ。



警視庁婦人警官・瀬川路子(松浦浪路)
ズベ公の鈴子になって犯罪組織に潜入捜査する婦人警官役を好演します。

以前にも書きましたが、浪路さんは時代劇のお姫様役がメインでしたが、新東宝はこの年から急激に時代劇製作が少なくなってしまい、そのあおりで現代劇にも出演する様になりました。

一応「女獣」の主役は小畑絹子さんになっていますが、作品のストーリーから当ブログでは松浦浪路さんを主役に認定します(笑)
おそらく唯一の主役でしょう。



木村朝子(小畑絹子)
自殺したとされる父が殺されたと確信し、暁興行社長の情婦になってまで真相を探ろうとします。

当ブログ初登場の小畑さんは新東宝後期を代表する女優さん。
主役も多数あるので、今回は波路さんに譲ってもらいます。



麻薬Gメン杉山正一(菅原文太)
軟派な出で立ちで波路さんと連絡を取り合います。
波路さんのサポート役に徹して、あまり目立ちませんでした。


※昨年末の文太さんの死去は本当に驚きました。
文太さんの追悼ブログはアメブロ内にも多数ありましたが、以前から「女獣」を年初に紹介する事を決めていましたので、それまではあえて沈黙を通しました。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。



捜査の連絡の為に踊る文太さんと浪路さん

新東宝では文太さんが踊るシーンの映画が何本もあり、ダンスが上手かった事が伺えます 。



ズベ公のリーダー竜子(左京路子)
左京さんも当ブログ初登場
新東宝のセクシー女優は三原葉子さんや万里昌代さんが有名ですが、彼女も代表的な方です。



暁興行社長・鍵本(江見俊太郎)
小畑さんが父親の仇を討つ為に近づいたまでは気づきませんでしたが、しっかりシャブ漬けにした手腕は流石悪党です。



防犯協会会長で今回の黒幕・河原田(岬洋二)
岬さんも当ブログ初登場

新東宝お馴染みのベテラン俳優です。



鉄道シーンは営団地下鉄400形 西新宿駅です




そして


ズベ公の圭子(星輝美)
当ブログ初登場ラブラブ
今まで隠していましたが、この人が一番好きな女優さんです。



今はなき「タカラビール」のビアホールでビールを飲む輝美さんと浪路さん。

輝美さんはクスリの運び屋でしたが、波路さんらに邪魔された挙句暁興行の連中に殺されてしまう!
あまり良い役ではありませんでした。



事件が解決して婚約発表する文太さんと浪路さん

しかし、当時リアルで文太さんと付き合っていたのは輝美さんでした。

今回はプロローグと言うことで輝美さんの話はこれまでビックリマーク

輝美さん出演映画は当ブログ最終回の10月下旬迄紹介していきたいと思います。




あとがき
三保敬太郎の映画音楽が秀逸!
新東宝の音楽担当は他に有名な渡辺宙明さんもいますが、個人的には三保敬太郎さんのモダンジャズの方が好みです。

三保さんは後に「11PM」のテーマ曲を作曲されていますね。



「女獣」予告編の動画です。

流れている音楽は「女獣」のではなく「女と命をかけてブッ飛ばせ」で使用されているBGMですが、作曲は三保敬太郎さんです。




今回紹介する作品は
1966年(昭和41年)日活
「逢いたくて逢いたくて」
江崎実生監督



あらすじ
大学のカンツォーネサークルに入会した新入生の白川道子(園まり)はサークルの活動費のためにテレビのそっくりショーに出演して優勝する。
その後、本物の園まりが声が出なくなった為にマネージャーから代役を頼まれる。

園まりの「逢いたくて逢いたくて」が大ヒットした記念に、日活と渡辺プロダクションがコラボして製作した園まり初主演映画です。



主人公・白川道子(園まり)
実際の園まりと二役出演ですが、区別する為にメガネっ娘になっています。



同級生で従兄弟のエリ子(太田雅子)
本名の太田雅子名義で、ある程度活躍した頃ですが、この作品以後、梶芽衣子に改名するまでの間は不遇な時代に入ってしまいました。



カンツォーネサークルの面々
これに古参学生の小沢昭一 が加わります。

和田浩治さんは軽いノリの学生役でしたが、本人にとっては不本意な役柄でしょうか。



エースコックそっくりショー
日テレの人気番組と提携していた様です



審査員のなかに園まりさんがいます。
本物です(笑)



白川道子は課題曲の「何も言わないで」を歌い、当然の如く全員一致で優勝ビックリマーク



雑誌カメラマン梶貫太郎(渡哲也)
彼は園まりが偽物ではないかと疑い、徹底的に監視するが次第に恋心に…



雑誌記者・田辺恵子(松原智恵子)
渡さんが好きなんだけれども口に出して言えず何時もツンツンしています。
最後は渡さんと婚約しますが。

キドリンとしてはちょっと可哀想な役ですね。



園まりのマネージャー(高橋昌也)の命令でザ・ドリフターズが白川道子を拉致する。

ドリフの映画出演はこれまでクレージーキャッツの映画等に出演していますが、この五人が揃って出たのは初めてだと思われます。



三人娘の中尾ミエと伊東ゆかりも出演し歌を歌います。

いつもは中央に中尾ミエさんが立つ事が多いのでしょうが、今回は当然園まりさんです。



「逢いたくて逢いたくて」を歌う園まり。 ではなく、すっかり板についた白川道子音譜
園まりとして歌ったシーンはありませんでした。



踊る園まりさんと渡さん。
この二人は非常にムードが良かったです。



鉄道シーンは京王5000系



あとがき
劇中で新曲を披露したり、取ってつけたような内容の映画ですが、園まりさんのムードが非常に良いです。

私の中では三人娘の中で印象が薄かった園さんでしたが、今回じっくり観て園まりさんは台詞回しはともかく、女優としても魅せる方でした。

渡哲也さんとの相性が良いので、二人のムード歌謡映画を作れば良かったと思いましたが…


その後チャンネルNECOで園さん主演の歌謡映画「夢は夜ひらく」を観まして、渡哲也さんも出演していますが相手役ではなく、ストーリーもちょっと残念でした。



主題歌の「逢いたくて逢いたくて」


エースコックそっくりショーで歌った「何も言わないで」


劇中で歌った「何でもないわ」


宣伝の為、チャッカリ新曲を披露「やさしい雨」

今年最後のブログなので大盤振る舞いして貼り付けました(笑)





今回紹介する作品は
1963年(昭和38年)大映
「夜の配当」
田中重雄監督



あらすじ
夢の繊維「ポリレン」を開発した世界レーヨンだが、発売する直前に「商標登録」を盾にポリレンの名前を使用するなと言う男が現れた。

大映は前年に「産業スパイ」を題材した「黒シリーズ」を上映開始しましたが、それと並行して撮られた産業スパイ物です。



主人公・伊夫伎亮吉(田宮二郎)
二か月前に世界レーヨンを退社して、僅かな資金で「伊夫伎トラブルコンサルタント」を設立します。

この頃の田宮さんですが、「悪名」「黒シリーズ」とスターの地位を固めつつありました。



世界レーヨン石神常務(山茶花究)
剛腕で非情、しかも会社の金を横領して料亭の愛人に注ぎ込む。

流石!山茶花さん、この悪役を見事に演じます。



世界レーヨン桧垣文書課長(早川雄三)
常務の腰巾着ですが、早川さんがこんな役をするとは珍しい。どちらかというと常務役が合っていると思うのですが。
でもこれが上手いんですよ。



常務の愛人で料亭の女将(角梨枝子)
田宮さんは商標登録問題で常務から3000万円取った上に女将と一緒にお風呂に入る要求をします。
しかも料亭なのに特殊浴場の様な設備があるんです。
タイトルの「夜の配当」はここから来たのですかね(笑)

何とも色っぽい目の角さん



田宮さんは常務に一筆書かせ、世界レーヨンから感謝されたとテレビ宣伝した上に



世界レーヨンが富士山麓に工場の土地を買付けると聞くや、地主から僅かの土地を買い嫌がらせをする。
常務達が視察すると、わざわざヘリコプターで乗り付ける田宮さん。
カッコよすぎるというかちょっと大仰過ぎますな。



田宮さんの手伝いをしたのが世界レーヨン社員の小泉かおる(藤由紀子)
病気の弟の為に産業スパイをします。

藤由紀子さんは松竹とトラブった為に62年に大映に移籍
後には田宮さんと結婚しますが、これが初共演です。



藤さんは次第に田宮さんが怖くなって世界レーヨンを辞めBARで働きます。

病気の弟の為に産業スパイをするキャラの為なのかもしれませんが
今回の藤さんは演技が固くあまり魅力的ではありませんでした。



田宮さんが藤さんの代わりに産業スパイにしたのが、デザイン課の一井鮎子(浜田ゆう子)



田宮さんが誘うと浜田さんの方が積極的になってOKします。
今回は藤さんよりも浜田さんの方が魅力的でしたね。



田宮さんの顧問弁護士・清川(高松英郎)
高松さんは「黒シリーズ」では主役以上の活躍をしますが、今作ではあまり目立ちません。


山茶花常務もやられっ放しではなく、藤さんを騙して田宮さんをはめ、田宮さんは逮捕されますが、結局常務は失脚し田宮さんは勝利します。



その後何故かやっつけ仕事の様な展開になりますが、最後は田宮さんと藤さんのキスシーンでおしまい。

このキスシーンが二人の結婚に至るきっかけになったのかもビックリマーク


あとがき
悪党とはいえ田宮さんは常務のせいで会社を辞めたわけでは無いのに、あそこまで常務を憎む理由が希薄でしたね。
それに最後のやっつけ仕事が???ですが。

しかし、大映得意の産業スパイ物の良さは出ています。


それから、田宮さんがNHK受信料の不払いの仕方について説明するシーンがありますので
NHKがこの映画を放送することは絶対に無いでしょう(笑)



今回紹介する作品は
1969年(昭和44年)創造社・ATG
「少年」
大島渚監督


あらすじ
家族4人が「当たり屋」をしながら日本全国を巡る。
1966年にあった当たり屋事件の映画化です。



これが当たり屋で生計を立てていた家族

※キャストですが、映画冒頭のクレジットやネット上には「少年」「父」「母」「チビ」としか書かれていませんが、ラストシーンで名前を読み上げる場面がありましたのでカタカナ表記します。



主人公のオオムラトシオ(阿部哲夫)
当初は継母がやっていた当たり屋を10歳のこの子がやるようになります。

阿部哲夫君は児童劇団の子ではなく素人。
大島監督は彼を見て即決採用したそうですが、目に特徴のある少年で、彼がいなければこの映画の成功は無かったと言えるほど存在感がありますね。



オオムラタケオ(渡辺 文雄)
当たり屋の計画や示談担当 高知県出身前科4犯
従軍時に貫通弾を浴び、その後遺症を理由に当たり屋をするようになる。
綿密な計画で犯罪者としての才能はありますが、金遣いが荒く、その為に何度も当たり屋をする事になり、それが命取りになります。



タニグチタケコ(小山明子)
タケオの内縁の妻で当たり屋担当、大阪市出身
3歳の子はタケオとの実子だが、トシオはタケオの前妻の子供で継母になる。

原色の服を好む派手好き。
映画製作の予算が少ないので衣装は現地の格安バーゲン品を調達。
小山さんはそれを着るのが大変不満で、ロケ中不貞腐れていたそうです。



国鉄城崎駅のコンコース

劇中では国鉄職員の愛想の悪さが映し出されます。




東北本線を走る客車列車の車内



独立プロの製作ですので列車のセット等は当然使えず本物を使ってのロケですが、
やはり本物を使うと臨場感が違いますね。



秋田駅に到着した急行列車
愛称は見えませんでしたが、終着秋田のアナウンスと青森行の寝台特急「日本海」への乗り継ぎの案内から、急行「鳥海1号」と思われます。



秋田駅舎をバックにする当たり屋家族
その後飛行機で北海道に渡り、遂に日本最北端・宗谷岬までさすらいました。



南海難波駅と大阪球場

結局事件が発覚し、大阪市内に潜伏している所を発見されます。



最後に、捜査員に発見された時の小山さんの表情ビックリマーク
頬が痙攣した良い演技でした。



あとがき
この作品は1000万円映画と呼ばれる低予算ですが、全国縦断ロケを敢行したロードムービーの為に色々切りつめても予算を大幅にオーバーしたそうです。

プログラムピクチャーの娯楽作品が好きな私にとって、大島渚監督作品はあまり馴染めないのですが、「少年」は良い作品だと思いました。



今回紹介する作品は
1959年(昭和34年)日活
「絞首台の下」
西河克己監督


あらすじ
北海道の農場の娘・佐伯千草(稲垣美穂子)は手紙を貰った幼馴染みの柳本憲(赤木圭一郎)の居る千葉に会いに行ったが、手紙の住所は刑務所だった。

日活のサスペンス映画ですが、ちょっと異色というか、変というか…



主人公・乾保日出(長門裕之)
新聞社を辞めて自分の通信社を創った野心家
頭も切れるが、何故か二枚目でモテます。
長門さんがこんなにモテる男を演じるとは!



小山久美子(渡辺美佐子)
法医学の先生ですが、長門さんに惚れて自分の仕事そっちのけで長門さんの手伝いをします。

美佐子さんは水泳が得意だった様で、潜水シーンも担当します。
他には水着姿で逃走するシーンもあり、演技派女優の美佐子さんが意外にもお色気も担当しています。



佐伯千草(稲垣美穂子)
作品の前半は彼女が主役の様でしたが、中盤以降は出なくなってしまいます。



長門さんの助手・山野圭子(清水まゆみ)
本名の清水マリ子から改名したばかりで、クレジットには新人表記
ツンデレな役は珍しいと思いますが、もう少し彼女のアップシーンが欲しかった。

※予告ですが、彼女の親友が来年の当ブログの中心になります。




柳本憲(赤木圭一郎)
日活第三の男・赤木さんにとって初めての本格的な配役
しかし、カッコいい役ではなく、無残に殺されてしまいました。



鉄道シーンは73系旧型国電(山手線)と70系電車



青森行の急行「つがる」
乗車する稲垣さんと見送る美佐子さん



急行「つがる」の二等車 上野駅14番線
尚「つがる」の文字が入った掲示板が映りましたが、写真に撮ると「つがる」が見えなかったので掲載しません。




「つがる」二等車に座る稲垣さんと国際諜報団の女(楠郁子)
実はこの二等車はセットです。



ラストシーンにも二等車のセットが登場
スクープ記事を書く長門さんと美佐子さん

特ロと呼ばれるリクライニングシートの座席車が登場するまで、向い合せのボックスが二等車(グリーン車)でした。
583系の座席よりは乗り心地良さそうですが、4人座れば窮屈でしょうね。


あとがき
国際諜報団が逮捕され、長門さんは大スクープを得ましたが、警察と外務省から国際問題になると掲載を止められ終わります。
この時代の政府はその様な事が出来たのですかね。

それに、あっさりと要請を飲んだ一匹狼の長門さんもヘタレすぎます。

タイトルの「絞首台の下」も赤木圭一郎さんが居た刑務所に絞首台があっただけで深い意味は無く、何だか変な映画でした。