今回紹介する作品は
1963年(昭和38年)大映
「夜の配当」
田中重雄監督



あらすじ
夢の繊維「ポリレン」を開発した世界レーヨンだが、発売する直前に「商標登録」を盾にポリレンの名前を使用するなと言う男が現れた。

大映は前年に「産業スパイ」を題材した「黒シリーズ」を上映開始しましたが、それと並行して撮られた産業スパイ物です。



主人公・伊夫伎亮吉(田宮二郎)
二か月前に世界レーヨンを退社して、僅かな資金で「伊夫伎トラブルコンサルタント」を設立します。

この頃の田宮さんですが、「悪名」「黒シリーズ」とスターの地位を固めつつありました。



世界レーヨン石神常務(山茶花究)
剛腕で非情、しかも会社の金を横領して料亭の愛人に注ぎ込む。

流石!山茶花さん、この悪役を見事に演じます。



世界レーヨン桧垣文書課長(早川雄三)
常務の腰巾着ですが、早川さんがこんな役をするとは珍しい。どちらかというと常務役が合っていると思うのですが。
でもこれが上手いんですよ。



常務の愛人で料亭の女将(角梨枝子)
田宮さんは商標登録問題で常務から3000万円取った上に女将と一緒にお風呂に入る要求をします。
しかも料亭なのに特殊浴場の様な設備があるんです。
タイトルの「夜の配当」はここから来たのですかね(笑)

何とも色っぽい目の角さん



田宮さんは常務に一筆書かせ、世界レーヨンから感謝されたとテレビ宣伝した上に



世界レーヨンが富士山麓に工場の土地を買付けると聞くや、地主から僅かの土地を買い嫌がらせをする。
常務達が視察すると、わざわざヘリコプターで乗り付ける田宮さん。
カッコよすぎるというかちょっと大仰過ぎますな。



田宮さんの手伝いをしたのが世界レーヨン社員の小泉かおる(藤由紀子)
病気の弟の為に産業スパイをします。

藤由紀子さんは松竹とトラブった為に62年に大映に移籍
後には田宮さんと結婚しますが、これが初共演です。



藤さんは次第に田宮さんが怖くなって世界レーヨンを辞めBARで働きます。

病気の弟の為に産業スパイをするキャラの為なのかもしれませんが
今回の藤さんは演技が固くあまり魅力的ではありませんでした。



田宮さんが藤さんの代わりに産業スパイにしたのが、デザイン課の一井鮎子(浜田ゆう子)



田宮さんが誘うと浜田さんの方が積極的になってOKします。
今回は藤さんよりも浜田さんの方が魅力的でしたね。



田宮さんの顧問弁護士・清川(高松英郎)
高松さんは「黒シリーズ」では主役以上の活躍をしますが、今作ではあまり目立ちません。


山茶花常務もやられっ放しではなく、藤さんを騙して田宮さんをはめ、田宮さんは逮捕されますが、結局常務は失脚し田宮さんは勝利します。



その後何故かやっつけ仕事の様な展開になりますが、最後は田宮さんと藤さんのキスシーンでおしまい。

このキスシーンが二人の結婚に至るきっかけになったのかもビックリマーク


あとがき
悪党とはいえ田宮さんは常務のせいで会社を辞めたわけでは無いのに、あそこまで常務を憎む理由が希薄でしたね。
それに最後のやっつけ仕事が???ですが。

しかし、大映得意の産業スパイ物の良さは出ています。


それから、田宮さんがNHK受信料の不払いの仕方について説明するシーンがありますので
NHKがこの映画を放送することは絶対に無いでしょう(笑)