【昨日日記】
渡部八太夫+姜信子の説経祭文の夕べ「おひさしぶりの 旅するカタリ」開催。
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当ギャラリービブリオの看板企画の一つ、渡部八太夫さんと姜信子さんの「説経祭文」公演が約2年ぶりに開催された。
2年ぶりのいかがわしい夜。
超多忙のお二人。八太夫さんは関西から姜さんは東北からそれぞれ新幹線に乗ってビブリオで集合。
16時ごろ大きなトランクを転がして八太夫さん到着。まずは三味線のメンテナンスから。
続いて大きなトランクを転がして姜さん到着。打ち合わせとリハーサル開始。
今回は姜さんとウクレレと歌が初披露の予定。アンプとマイクを使用。八太夫さんは内蔵アンプ、いや、内臓アンプと内臓マイクを備えているので不要。
後幕は「百年芸能祭」の旗と幟。
その間に僕は物販コーナーのセット
左は姜さんの著書。 右は石。八太夫さんが真言や経文を手書きして念を込めた石。
開場とともに続々と来られるお客様一人のキャンセルもなく10分前に全員そろった。
第一部は「前代未聞 説経 熊野之御本地」
日本山岳宗教の大本、熊野大権現の前世を明かす物語。天竺のマガダ国の善財王とその千人目の后・五衰殿(ごすいでん)の懐妊から始まった後宮に大陰謀。どうなる五衰殿、そして王子の運命…。時折り解説を交えながら重厚に軽妙に語る。
リハーサル写真との間違い探し。背景上手に牛頭天王の印半纏。
本番中にスタッフシャンパー着ようと壁にかけて置いた。役作りとしては「帝釈天の源公」。そしたらリハーサルを終えた八太夫さんがかけてある印半纏に「どうぞお護りください」と祈りだしたのでもう着にくい。後ろにかけることとした。
渡部八太夫さんはかつては三多摩地域で隆盛を極めた「説経節」の家元まで務めた人。しかし「民衆のものであるはずの芸能をガラスケースに入れて保存」することを潔しとせず一門を離脱。より「いかがわしく」、より「あぶらぎった」芸能を標榜して精力的に活動している。この演目などはその真骨頂。
休憩をはさんで第2部「神出鬼没!百年芸能祭 国立に現る」
今年は関東大震災から百年。命がまるでモノのように数字に変えられていった百年だったと語る姜さんと八太夫さん。芸能とはそもそも命を謡うもの。大いに歌い語ってこれまで百年の鎮魂と来たる百年の予祝をするというのが趣旨。
趣旨説明をする姜さん。
現代詩を説経祭文にして語った。
金時鐘が「うた またひとつ」(『猪飼野詩集』所収)。「打ってやる」のリフレインの迫力。大阪・猪飼野(生野)や神戸・長田の韓国・朝鮮人居住地区のヘップサンダル工場で、サンダルのヒール底を打ち続ける韓国・朝鮮人の声。
打ってやる
打ってやる
打ってやる
忙しいだけが
おまんまの あてさ
(中略)
打って 運んで
積みあげて
家じゅうかかって 生きていく。
日本じゅうの ヒール底
叩いて 打って
めしにするのだ。
そして竹内浩三の「骨のうたう」
戦死やあわれ
兵隊の死ぬるやあわれ
とおい他国で ひょんと死ぬるや
だまって だれもいないところで
ひょんと死ぬるや
ふるさとの風や
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や
どちらも詩人の魂の叫びを八太夫さんがそ太棹のリズムに乗せて昇華させ、その「内臓アンプ」で増幅させて聴くものの腹にズシンと響く作品としている。
そして中川五郎さんの「腰まで泥まみれ」の説経祭文版。これの初演は数年前のギャラリービブリオ。びっくりした。すごくよくなっている。何年か各地で演じて磨き、練るうちに説経祭文としてゆるぎないものとなっていたと思う。
最後はボブ・マーリーの「No Woman, No Cry」の説経祭文で「No Human, No Cry」。まさしく「百年芸能祭」のテーマに合致した歌。
姜さんも歌い、ウクレレを弾いた。これがまたいいんだ。ぜひレパートリーを増やしてください。
これにて大団円。またの再会を約して散会した。良い会でした。ぜひまたやりましょう。
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