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8月14日(土)15日(日)

「YO-EN唄会 黄昏に恋して 2デイズ」vol.12

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当ビブリオイチ推しのシンガー&ソングライター、YO-ENさんの最新動画『わたしはわるい人間だもの』がアップされた。大正〜昭和初期の早世のクリスチャン詩人・八木重吉(1898~1927)の詩にYO-ENさんが曲をつけ歌唱。それにベテラン漫画家のつげ忠男さんが迫力あるイラストを提供したというすごい動画だ。まずは何はともあれ、下の動画をクリックしてお聴きください。ご覧ください。ご覧いただかないとこの先の話は進められない。

 

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ご覧いただけたろうか。ご覧になってない方は、一回戻る。ぜひクリックしてお聴きください、ご覧ください。

 

 

かっこいいでしょ。

 

 

動画の制作もYO-ENさん。つげ忠男さんの原画にデジタルでエフェクトを加え、自ら撮った写真や動画と合成している。僕は「美術協力」ってことでその隅っこに加えてもらった。

 

 

ことの発端は昨年の春に遡る。

 

 

最初はYO-ENさんからの「八木重吉の詩に曲をつけた楽曲の新曲ができた」とのメールだった。そしてそれを動画にしてYOUTUBEにアップしたいと。すでに重吉の詩をもとにしたYO-ENさんの楽曲はあってライブでも歌い動画にもなっていてとてもそれは好きだったので賛同した。そうしたら要件には続きがあって、その新曲とコラボする画家、イラストレーターを推薦してほしいとのことだった。

 

 

世間の人はどう思っているか知らないが、僕の職業は「美術商」である。そしてこちらは「元」がつくが編集者でもある。そんな面白い発注はめったにない。

 

 

送ってもらった今回の曲である『わたしはわるい人間だもの』の音源データを聴いてみたらそれがすごくいい。絶望の中に希望と光を希求する八木重吉の詩にYO-ENさんが曲をつけてギター一本で弾き語っている。時に切なく、時にやさしく、時に激しく。そして宅録なので遠く、電車の音や町の雑踏が重なる。

 

 

それを聴いた僕は「これはつげ忠男の世界だ」と思った。少年時代から愛読してきた孤高の劇画家の絵が脳裏に浮かんできたのだ。

 

 

皆さんは八木重吉を、そしてつげ忠男をご存じだろうか。当ブログ読者諸兄姉の中には釈迦に説法の方もおられるだろうが為念解説。

 

 

八木重吉  明治31年(1898)、現在の東京都町田市の農家に生まれる。中学の英語教師をしつつ詩作に励むも肺結核に罹患し昭和2年(1927)、29歳の若さで7歳年下の妻と二児を遺して死去。敬虔なクリスチャンであった。存命中に出版した詩集は処女詩集『秋の瞳』のみ。第二詩集の『貧しき信徒』は死の4か月後に刊行された。未刊行の膨大な詩稿を遺しそれらは死後、多くの本に再編・刊行され今も広く愛されている。

 

つげ忠男  昭和16年(1941)東京生まれ。中学卒業後、血液を売買する「血液銀行」で働きながら兄のつげ義春の影響でマンガを描き始め、昭和34年(1959)に貸本漫画でデビュー。中断期を経て、昭和43年(1968)以降、「ガロ」「夜行」「アックス」等で精力的に作品を発表する。『無頼平野』は石井輝男監督で、『成り行き』『夜桜修羅』は瀬々敬久監督でそれぞれ映画化された。

 

 

戦後の青線街や闇市マーケットを逞しく生き抜いた少年時代を自伝的に描いた最新作『昭和まぼろし 忘れがたきヤツたち』(MeDu COMICS)は第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で審査委員会推薦作品に選出された。同作品はインターネット上で数話が無料で閲読できる。

 

↑↑素晴らしい作品なのでぜひクリックしてお読みください。

 

 

そして若干の資料とともにYO-ENさんにつげ忠男さんを推薦した。YO-ENさんもつげ忠男作品を読んで「まさしく」と感動。ぜひお願いしたいです、ということになった。

 

 

もちろん、その仲介をすることも織り込み済みで引き受けている。幸い、つげ忠男さんとは何度か仕事をさせていただいて面識はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはつげ忠男さんに電話でおおまかな趣旨を説明し、併せて企画書と八木重吉の資料とYO-ENさんの資料(プロフィール資料とこれまでのオリジナル曲CDと「わたしはよわい人間だもの」デモCD)をお送りした。

 

 

数日後、電話をかけ直すと、

 

 

「資料を読ませていただいてYO-ENさんのCDも聞かせていただきました。自分はこの人はなかなかできる人だと思いますよ。ミュージックビデオなんてやったことはないけど面白そうなのでやりましょう」と快諾してくださった。ただし「今、もしかしたらライフワークになるかもしれない大作に取り掛かっているのでそれとその他の締め切りのある仕事が終わったら」、とのことだった。それが前述『昭和まぼろし 忘れがたきヤツたち』であることは言うまでもない。

 

 

数か月後のある日、電話をいただいた。「この詩を読んで私は“夭折のクリスチャン詩人”というよりむしろ太宰に通じるような“無頼”を感じました。そんな気持ちで描いてみていいでしょうか」。はい、もちろんです。つげさんにお任せします。

 

 

そして年が明けて春先にまた電話をいただいた。「ほぼ描きあがりまして今、仕上げにかかるところです。自分としても会心の作です。改めてYO-ENさんの音楽を聴き直して感心しました。すごい人なんじゃないかと思った私の直感は正しかったと思います」

 

 

 

そして次はいただいた絵を手にしたYO-ENさんが「凄い」と感動する番だった。その力強い描線、豊かな表情、迫力の画面構成。キャリア60年超のつげさんご本人が「会心の作」と語る力作である。

 

 

そこからのYO-ENさんの動きはダイナミックだった。

 

 

このすごい絵に宅録の弾き語りでは申し訳ない、とスタジオでレコーディングをする決意をした。もちろん初めての経験。ディレクター不在で右も左もわからず色々と苦労があったようだが、ともあれスタジオミュージシャンと縁を繋げてもらいギターとベースをバックに入れてレコーディングを完成させた。

 

 

その一方でつげ忠男さんにいただいたイラストをそのままトリミングしたり拡大縮小するのでなく、ネガ反転したり輪郭線処理したり、さらには今まで撮りためていた動画や写真と合成したりして7分40秒のムービーを作った。もちろんイラストの加工についてはつげさんの許可をいただいた。つげさんは「自分はYO-ENさんのセンスを全面的に信頼してますんで、もうすべてお任せしますよ」と快諾くださった。また動画や写真の使用についても権利関係の許可取りが必要なところも粘り強く交渉し許可を取った。

 

 

そして最後にYOUTUBEの、CDやレコードでいう「ライナーノーツ」の部分に八木重吉への思いをつづった。

 

 

「静かに移りゆく自然に見惚れて詩を紡ぐ、感情豊かなクリスチャン詩人八木重吉(1898~1927)の詩集を数年前たまたま手にし、八木重吉の詩がとても好きになりました。愛情深い洞察力と選び抜いた短いセンテンスに凝縮された美しい詩に、私の心は熱く膨らんでゆくのを感じました。 (後略。続きは動画で)

 

 

そしてつげ忠男さんに依頼した経緯を締まりのない文章で書いた僕のコメント(でも一生懸命書きました。ぜひ動画を開いてご一読ください)に続いては、長年にわたって八木重吉最後の赴任地である千葉県柏市で八木重吉の詩の研究と普及活動をしてこられた「八木重吉の詩を愛好する会」の渉外担当の方のコメント、現在のつげ忠男さんの主たる発表の場である青林工藝舎「アックス」の手塚編集長のコメントまで揃えた。

 

 

「〈哀しみ〉の彼方に輝く光が暗示される八木重吉の詩は、人々の心に共感と癒しを与えて来ましたが、それをじっくり歌いあげるYO-ENさんは、かつてない新鮮な感覚で重吉の詩の心を表現しています。    八木重吉の詩を愛好する会 小林正継」 

 

 

「八木重吉とつげ忠男とYO-EN、三つの魂のせめぎ合いが得体の知れない力となって心に突き刺さって行く快感、酔いしれるほかありません。     青林工藝舎「アックス」編集長 手塚能理子」
 

 

 

そうして完成した最新動画が先日、YOUTUBEにアップされた。

 

 

「(美術)協力」としてギャラリービブリオの名もエンドロールに入れていただいた。

 

 

 

エンドロールに名前が出るなんて、ピンク映画のエキストラ以来。

 

 

それはともかく、僕も画廊主として、YO-ENファンとして、つげ忠男ファンとして実に幸福な仕事をさせてもらったと思いご縁に感謝している。

 

 

そうしてできたのがこの動画。細かいところまで丁寧に作りこまれた文字通り渾身の作品。ぜひクリックしてご覧ください、お聞きください。そして「チャンネル登録」をお願いします。このあとも新曲が順次アップされる計画。

 

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【付録】

「わたしはわるい人間だもの」歌詞
 わたしはわるい人間だもの わたしは弱いおとこだもの
 そして まあ ごらんなさい
 今宵はしずかなはつ秋のかおりがただようではありませんか
 小さい妻よ  おしろいをあげよう
 さあできるだけうつくしくよそおいなさい
 かぜはあるかないかのあでやかさ
 本をよむことのおろかしさ  名にあくがるるあさましいこと
 かんがえてもかんがえてもわからないんだし
 かんがえることもよしてしまおう
 なにゆえの生か  なにゆえの死か
 ああ わたしはつかれたよわいおとこだもの
 ただ そうろうとこころの野をあゆもうより
 こよいは  あるたけのさいふをはたいて
 小さいつまのかおをよそおうて
 ともしびのあるくらいせかいへでかけてゆこう

八木重吉無題詩(筑摩書房刊『八木重吉全集』所収)

 

 

 

【追記6/28】

YO-ENさんの最新動画『わたしはわるい人間だもの』について、つげ忠男さんの主たる発表媒体である「ガロ」の後継誌「アックス」にご紹介いただきました。

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・・・・・・・・・・・・・・開催中・・・・・・・・・・・・・・

 

6月17日(木)〜29日(火)

「国立うちわ市2021」

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・・・・・・・・・・・・・・もうすぐ開催・・・・・・・・・・・・・・

 

7月31日(土)

「シュワッチ! 帰ってきた 説経祭文」

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8月8日(日)

「YO-EN&NOBU ~浅川マキを弾き語る~」

満席御礼

8月14日(土)15日(日)

「YO-EN唄会 黄昏に恋して 2デイズ」vol.12

 

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