続き。
今までの常識が覆された身体の使い方の2つ目。
例えば最近、私の教室にドンキのキトリのヴァリエーションの練習をしている方がいるのですが
「スタートのところの音の取り方がわからない」
「どこで立って、どこで踏んでるのかを明確にしたい」と言われました。
「1音1音に対して動きを決めてほしい」と。
これはちょっと違います。
よく「音を聴いて、音を聴いて」という指導がありますが、「じっくり1音1音聴いて」という意味ではありません。
モグラ叩きゲームのように、1音単位で狙って、振りを合わせているのではないのです。
全部分解して「この音で◯◯をやり、この音で△△をやる」では覚えることが多過ぎて大変です。
これだと頭を使い続けなければいけないから、踊ってる本人も楽しくないでしょう。
流れで乗れません。
全体で1つなので、部分を集めても全体にはなりません。
流れで出来上がったものがすべてです。
まずそもそもの前提として、その人の体に緩急がないと駄目なんです。
自分の体の中に音の波があるから、曲の波にも乗れるのです。
自分の波が曲の波に合わさっていくのです。
例えば、長縄跳びに入るタイミングも、完全に止まった状態から入るほうが難しいですよね。
ということで、まず一旦音を忘れて、体に緩急を作りました。
緩急とは筋肉による強弱ではありません。
∞のマークのような8の字運動です。
球の動きで「落ちたら上がって、上がったら落ちる」の繰り返しです。
自分に体の中にブランコを作るのです。
ブランコがあると、次の動きにスムーズに繋がります。
これが生徒の方は出来ませんでした。
何故なら、みぞおちにフタがあったから。
そのフタを私が取ってエネルギーが上に抜けたら、落ちることが出来るようになりました。
そうしたら「上に行ったら下に、下に行ったら上に」という、∞の動きが出来るようになりました。
「上に抜ける、上に抜け切る」という体を作るのはバレエダンサーでも、すごく難しいです。
いいところまではみんな行くんです。
でも、抜け切らないからどうするか?っていうと、体を張るわけです。
抜け切らないから、噴水にならないから張るんです。
それで、上に抜け切ったバレエダンサーの動きをなぞって作る。
そうやって張ることで体を繋げようとする人もいます。
ここまではバレエの話をしてきましたが、このようなブランコがある体はピアニストの方にも必要です。
今日の記事で書いた「体の緩急」「体の中のブランコ」とは、下の記事で紹介したフルトヴェングラーの言う「緊張と弛緩の上下」です。
続く。