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明日への轍

齢五十を過ぎて、ある日大腸がんが見つかる。
手術から回復したと思った一年後、肝臓と肺へがんが転移。
更に続くがんとの付き合いを記録します。

以前の抗がん剤の場合と同様に、二週間でワンクール(one+cours)が終了する。

しかしながら、前半の一週間で検査等はほとんど終わり、後半の一週間は休薬期間のようなものである。

 

今日(木曜日)で前半の一週間が終わり、後の一週間は検査も何もない。それでも原則は病院にいる必要がある。

どんな副作用があるか分からないからと言うことらしいが、流石にこれは長いし、暇を持て余してしまう。

土日は診察等もないわけであり、今週末は外泊をしたいと思っている。 家に帰るのだ。

 

過ぎてしまえば早いもので、既に11日も経っている。三分の一は終了したことになる。

幸にも副作用はないことから、外泊も特に問題ないだろう。外出で気分転換もしてきたが、やっぱり自分の家が恋しい。

そんなものだ。

 

今日の採血の結果は良好だった。

勿論、腫瘍マーカーのCEA CA19-9はそれなりの数値だったが、肝臓の機能を図る数値は非常に落ち着いている。

CT等の画像を見なければハッキリしたことは分からないにしても、現段階で客観的な判断や予想ができる材料としては血液検査である。

血液検査の結果のペーパーももらった。確かに落ち着いているように思える。

他に判断できるとすれば、自分だけがわかる体調変化や痛みであろう。それは今のところ特に感じることはない。

医者は副作用が出ていないことを良いことですと盛んに言うが、実感がない。 

やはり自分の目で効果が確認できれば、至福の喜びであろう。 そんな時が来ることを期待したい。

 

 

 

今日、月曜日も予定のない一日だった。 久しぶりに浅草へ行ってみようと思った。

 

浅草は大学時代まで帰省する時にいつも使っていた駅であった。

東武鉄道を利用して帰省していたことから、浅草駅は東京へ行くときの玄関となる駅だった。

ここから地下鉄銀座線に乗り換えてその時々の我が家へ乗り継ぐのである。

 

実家へ帰省するときは、駅で駅弁を買って快速電車で帰ることが多かった。

浅草の地下街で立ち食いそばをよく食べた。暗くておよそ綺麗とは言えないような狭い地下街は未だに残っている。

時々は浅草駅で降りて、荷物をコインロッカーへ預けて浅草寺周辺を散策した。

浅草寺はいつも賑わっていた。今のように東南アジア系の人は少なく、欧米の人の方が多かった気がする。

今から三十数年前に事である。

 

まだ、東京スカイツリーは疎か、朝日ビールの「うんこビル」もまだない時代であった。

そういえば、浅草駅には荷物を運んでくれる「赤帽さん」がまだ居た。東武は二階が改札、銀座線は地下ですから、需要はあったんだろう。

でも、10年前位には最後の方が居なくなられたとか。

 

直ぐ近くの墨田川には墨田川ライン(水上交通)の駅があり、浜離宮やお台場までいけるようだ。

これも以前にはなかった。松本零士張りの宇宙船のような船まであって客が写真を撮っていた。

懐かしさで一杯の浅草散策だった。 

昔から変わらないものも多かった。 三十数年経ったけれども、浅草は懐かしさで一杯の街だった。

 

 

 

 

今日は、前日の土曜日程は天気は良くなかった。

雨の予報はないし、出来れば出かけたかったが、採血だけは予定があった。

午後にはまた外出しようと思ったが、結局は採血が午後になり、出かけることは無かった。

暇な日曜日であった。

 

今のところ、気になる副作用はほとんどない。

痛み止めのロキソプロフェンを日に三度飲んでいることもあり痛みをあまり感じていない。

痛み止めを何度も飲むことに抵抗があった。

飲みすぎると、そのうち効果を感じられなくなっ7て、更に強い痛み止めを要求するようになるような気がした。

しかし、そんな思いに対して医師は「無用な心配であり、痛いのに服用を控えても何も良いことは 

く、無駄な事」と説明された。

薬に対する耐性ができて効果が無くなるのではないかという不安を一蹴された。

医師の説明を信用して、日に三回の服用を開始した。

 

一方で、回診の時に聞いてみた。

私:「副作用等は現在のところまるで感じていないが、却って抗がん剤がまるで効いてないんじゃないかと不安に思っている。」

医師:「何らかの症状がないから、まるで効果がないのではと思う人は多いです。でも、免疫に作用する今回のような薬は従来とは別物と考えたほうがいいと思っています。それに急激な副作用の期間は過ぎたかもしれませんが、多少間隔があいて発生する副作用も十分考えられますので、従来と同様に注視しています。」 と説明された。

 

冷静に考えれば、治験であり確実に効果があるはずと保証されたものではない。

にもかかわらず、効果があると言う前提を勝手に作り、それが、それが実感できないと勝手に不安に思っている。

期待は膨らむ一方だ。

 

治験の前には、投与する抗がん剤のない不安な日々だった。

それから考えれば、治験とは言え、こうして可能性のある抗がん剤を投与して貰っているだけありがたいと思わなければならない。

人間は、欲張りなものだ。

土曜日の今日は特に検査も何もない。

通常でも土日は病院自体が休診であるため外来患者もいなし、検査自体も原則としてない。

 

と言うわけで今日は一日暇なのである。

外泊したいところだけれども、治験の治療が始まって、三日目でもあり流石にそれは医者の許可が出ない。

でも、数時間の外出なら可能という訳で、昼頃から夕方まで外出に。

 

行先は都内の紅葉でも見ようかと近場の浜離宮へ

入場料300円だが、静かで落ち着いた庭園で背後には東京フロントの高層ビルが林立するという都会のオアシスである。

東京も紅葉の良い時期を迎えており、イチョウや紅葉などが色濃くなってきていた。

でも、小一時間もいればもう十分であり、他の時間つぶしの場所をスマホで検索した。

久しぶりに寄席でも行ってみようかと思った。

上野の鈴本演芸場。 まだ行ったことがないが、出演者に「円丈」の名があった。新作落語で名前を聞いたことがあった。

 

天気の良い週末土曜日の寄席はほぼ満員だった。

ポツポツ空いている席を見つけて前から三番目を確保した。

他の出演者は知らない人ばかりだったが、結構楽しめた。 色物も中々だった。特に紙切りは見事だった。

こんな寄席を見ていると、病気で治験の為入院していることなど忘れてしまうぐらいだ。

それはそれで良いんだろう。これも自分の人生だし、生きている証なんだろう。

 

 

 

昨日に抗がん剤(オプジーボ)を投薬した。新しい輸液ポンプでホンの10分程だった。

 

担当の医師は、治験なのでどんな副作用があるのか分からないので慎重に行きましょうと言っていた。

でも、なにも副作用はなかった。

 

こうなると暇なものである。外の天気はいいし、病院に居るのは滅入る。 

かと言って、外出も外泊も最初の1週間は中々言えないものである。

 

実際、今回の薬が効果があるのかどうかが、一番の関心事であるものの、その結果は多分1カ月先のCTまで分からないのだろう。

既に12月末まで休暇は取っている。

治験の制約により入院は致し方ないとは思うが、せめて、良い方向に効果が出ていますなんて途中経過があれば良いのに。