「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド -9ページ目

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

一緒にやっていた寿司職人の夜逃げ。

 

何時ものようにアパートの前で待っていると「若い奴が血相を変えてやって来た」

「こんな物が置いてあって、居ません」「置手紙だ」

「迷惑かけてすいません、探さないで下さい」と書いてある。

 

直ぐに店の女将さんに連絡をし、俺達は時間がないので仕事に行った。

飛行場から帰ってから女将さんと相談「判断がつかないので、少し時間がほしい」

「日本から社長を呼んで相談する」と言う。

 

数日後、社長が来た。事情を説明してこれからの体制の相談をした。

すると、「昼の店の方も経営が上手くいっていない 逆に機内食ビジネスの方が利益が出ている」

「それならば、ちゃんと人を入れて下さい」

「今の様な夜中の時間帯ではなく、昼間に出来る場所でお願いしたい」「解った」社長は約束した。

 

後日、若い人が日本からやって来た「とりあえず人の確保出来て、又いつもの時間が流れた」

 

ある日、店の女将さんが部屋に尋ねて来た。

「昼間の経営が上手くいかない、天ぷら屋の責任者がちゃんとしていない」と言う。

「大変ですね」散々いい様にされた自分には興味が無い。

すると「又、昼間に戻ってくれない」と言う。「俺は即答を避けた」

 

「何ていい加減な奴らばかりなんだ」「この店は多分失敗する」

 

アメリカに見ていた夢が、現実のグレーに染まって行くようだ。

小学校の授業に、家庭科というのがある。

 

ある時、皆でスキヤキを作る授業になった。

それぞれが家から持ってくる分担があり、俺はスキヤキ鍋になった。

「今まで、スキヤキなんて食べた事が無い」

「大体、スキヤキって何だ」

 

家ではお母さんが肉は嫌いで、殆どが魚か野菜だ。

友達にも何も聞けず、どうしていいのか困った。

「家には、スキヤキ鍋なんか無いし」

 

お母さんに「家庭科の授業でスキヤキを作るんだ」

「俺は、スキヤキ鍋を持って行く係りになった」

「スキヤキ、スキヤキ鍋!」母親は二度言った。

「困ったね、家にはそんな鍋はないし、久ちゃんの所で借りようか」

「だめだよ、久ちゃんも一緒なんだから」

「しょうがいないから、この鍋でもいいか」

 

それはアルマイトで鍋底の真黒く、良く煮魚をする鍋だ。

「いやだよ、汚し、それに魚の匂いする」

「しょうがないじゃないか、家にはそんな鍋はないんだから」

「じゃ、俺は明日は学校を休む」

「馬鹿、そんな事を言うと父さんに言うよ」

母親はすぐに父親に言う。

 

父親はすぐ怒り頭を叩く、時にはホウキの柄でも叩く。

そんな父親が怖かった。

 

俺は黙って家を出て、近所の古道具に行った。そこで要らないようなスキヤキ鍋を捜した。

 

「おじさん、スキヤキ鍋ある」「あるよ」

それは、丸い鉄のお盆似たいだ。

「これがスキヤキ鍋」赤く錆びていた。

「そうだよ。長いこと事置いてあるから汚れているけどな」

「これは使えるの」「ああ、磨けば使えるさ」

「いくら」「そうだな、鉄くずみたいな物だから300円でいいよ」

「これが300円もするの」

「300円もあれば、ピカピカの鍋が虎の門の金比羅様で売ってるよ」

「スキヤキ鍋だぞ。まあ250円でもいいけど、それ以上はだめだ」

「わかった。家に帰ってお母さんに相談する。これは置いといてね」

 

家に戻り母親に言うと「そう、でも父さんに相談する」

いやな予感がした。でも、意外にも父親はいいと言ってくれた。

父親は今日は機嫌が良かったらしい。

 

母親と一緒に、古道具にスキヤキ鍋を買いに行った。

母親は店のおじさんに、「このスキヤキ鍋を買うけどもっと綺麗にして、もう少しまけて」

「230円になった」10分もするとスキヤキ鍋も綺麗になり、油が塗ってあった。

「これで、今日でもスキヤキできるよ」

店のおじさんは言う。嬉しくて母親に「ありがとう」と言った。

 

次の日、俺は自慢気にスキヤキ鍋を皆に見せた。

すると質屋の難田が、スキヤキ鍋を入れて持ってきた紙袋を指して「これ、俺んちの袋だ」

俺はとっさに「この袋は、家のお客さんの物だよ」母親を恨んだ。

「もうちょっと、気を使ってくれないかな」

この鍋で、家では一度もスキヤキは食べて事はない。

「前の夜はぼちぼちの雪だった」朝になると一面の銀世界。

 

「今日も飛行場まで 食事を作って運ばなければならない」

「ワシントンDCの冬は結構寒い」

「日本の飛行機会社への機内食のデリバリーだ」

仕事は夜中から始めて、朝の9時まで届けなければいけない。

「料理は時間通り出来た」車にチェーンを着けて飛行場に向かった。

 

時間はかかったが「どうにか間に合った」「少しホットとした」

車の量は少なく、雪で道路は車線が見えなく怖い感じ。

 

一緒の仲間は2人「気をつけてゆっくり帰ろう」「帰ったら、雪見で一杯やろう」

 

その時、車がスーッと滑って道路の横に落ちて行った。

「びっくりした」「大丈夫?」10メーター程滑って止まった。

 

車は何ともなく「何にもなくて良かったな」「でも、ここからどうやって道に戻す」

そんな時、ポリスがどこかで見ていたかの様にやって来た。

 

「トラブルか どうするのか?」ポリスは罰金かの様に言って来た。

「困っています どうすればいいですか?」「よし 俺が助けてやる」ポリスは言った。

親指と人指し指を動かし「80ドル出しなさい そうすれば事故にもしない」

「そして ここから道路に戻してやる」「どうする?」

もちろんお金を払う事にした「解りました お願いします」

すると、道路の方からレッカー車が降りて来て「車は、あっとゆう間道路に戻った」

俺たちはポリスの礼を言い、お金を払いその場を後にした。

 

「あのポリスは あれで小使い稼ぎしているな」「レッカーの奴とはグルだな」

 

「流石アメリカ 何でもお金で形がつく」映画の1シーンを感じた。

 

「日本ではこんな事ないだろう」でもこれが世界で普通にある。

 

「ワシントンDCの大雪ニュース」そこに俺がいたのは現実。