「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド -8ページ目

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

再びパリ、一年ぶりでシャンゼリゼを歩いた「なんか ただいまだかな」

 

前にバイトしていた店に顔出した「あら 久しぶりね」店の女将が声をかけてくれた。

 

「又 バイトしたいですが」「真面目にやってね 直ぐに辞めない事 守るならいいわよ」

 

「はい 守ります」着いて直ぐにパリ生活に目処がついた。

 

前にいた人達とは結構変わっていた「俺の仕事は変わらずの、揚げ物係」

 

それと、週二回の朝早くの市場への買出し「これは前にはなかったがしょうがない」

 

ある日、新しい表のサービスメンバーに、日本から女性が来た「見た目が地方の子みたい」

 

「よろしくお願いします」一人一人に挨拶して来た「お願いします」俺も挨拶を返した。

 

特に気にする事なく1ヶ月が過ぎた。今度はアメリカ人の女性がサービスメンバーに加入して来た。

 

この女性はモデル並み美人で長身、日本語も出来る「ねえ お茶でも一緒しない」「いいよ」

 

店の表で彼女を待っていたが出てこない。そこに先月に来た女の子が「彼女なら帰りましたよ」

 

「え〜 お茶の約束してたのに」「残念でした ふふふ」笑われた「可笑しいですか」

 

「いいえ ごめんなさい」「ねえ よかったらお茶でもする」「身代わりですか」

「まあ そう言わないで」

 

行きつけの店でカフェを飲んだ。信州の出身だそうだ「話は弾まない」

 

そんなきっかけで何度かお茶したり、たまに酒を飲んだり「なんか近くなった感じ」

 

相変わらずの友達以上に意識はなかった。そんな時「ねえ 今日軽く飲まないですか」「いいよ」

 

「どうせ俺は暇だから」サンジェルマンの雰囲気いい店でワインを飲んだ。

 

「どう最近は店にもパリにも慣れた」「まだまだですよ」「まあ 来年になればもうベテランだよ」

 

「もう何年パリにいるの」「うんーん パリだけじゃないけど約二年はいるね」

 

「パリ以外は何処に」「あちらこちらヨーロッパを回って、バイトしたのはブリュッセルと

フランクフルト、ジュネーブとパリだけど」「え〜 凄いね」

 

「ヨーロッパの前はブラジルのリオとサンパウロで働いていたよ」「本当に凄いいんだね」

「大した事はないけど、歩いたな」

 

そんな話をしたけど、夜も遅くなったので「この続きは又にしよう」

 

この日から始まったような気がする「花のパリのラララが」

小学校の授業に、家庭科というのがある。

 

ある時、皆でスキヤキを作る授業になった。

それぞれが家から持ってくる分担があり、俺はスキヤキ鍋になった。

「今まで、スキヤキなんて食べた事が無い」

「大体、スキヤキって何だ」

 

家ではお母さんが肉は嫌いで、殆どが魚か野菜だ。

友達にも何も聞けず、どうしていいのか困った。

「家には、スキヤキ鍋なんか無いし」

 

お母さんに「家庭科の授業でスキヤキを作るんだ」

「俺は、スキヤキ鍋を持って行く係りになった」

「スキヤキ、スキヤキ鍋!」母親は二度言った。

「困ったね、家にはそんな鍋はないし、久ちゃんの所で借りようか」

「だめだよ、久ちゃんも一緒なんだから」

「しょうがいないから、この鍋でもいいか」

 

それはアルマイトで鍋底の真黒く、良く煮魚をする鍋だ。

「いやだよ、汚し、それに魚の匂いする」

「しょうがないじゃないか、家にはそんな鍋はないんだから」

「じゃ、俺は明日は学校を休む」

「馬鹿、そんな事を言うと父さんに言うよ」

母親はすぐに父親に言う。

 

父親はすぐ怒り頭を叩く、時にはホウキの柄でも叩く。

そんな父親が怖かった。

 

俺は黙って家を出て、近所の古道具に行った。そこで要らないようなスキヤキ鍋を捜した。

 

「おじさん、スキヤキ鍋ある」「あるよ」

それは、丸い鉄のお盆似たいだ。

「これがスキヤキ鍋」赤く錆びていた。

「そうだよ。長いこと事置いてあるから汚れているけどな」

「これは使えるの」「ああ、磨けば使えるさ」

「いくら」「そうだな、鉄くずみたいな物だから300円でいいよ」

「これが300円もするの」

「300円もあれば、ピカピカの鍋が虎の門の金比羅様で売ってるよ」

「スキヤキ鍋だぞ。まあ250円でもいいけど、それ以上はだめだ」

「わかった。家に帰ってお母さんに相談する。これは置いといてね」

 

家に戻り母親に言うと「そう、でも父さんに相談する」

いやな予感がした。でも、意外にも父親はいいと言ってくれた。

父親は今日は機嫌が良かったらしい。

 

母親と一緒に、古道具にスキヤキ鍋を買いに行った。

母親は店のおじさんに、「このスキヤキ鍋を買うけどもっと綺麗にして、もう少しまけて」

「230円になった」10分もするとスキヤキ鍋も綺麗になり、油が塗ってあった。

「これで、今日でもスキヤキできるよ」

店のおじさんは言う。嬉しくて母親に「ありがとう」と言った。

 

次の日、俺は自慢気にスキヤキ鍋を皆に見せた。

すると質屋の難田が、スキヤキ鍋を入れて持ってきた紙袋を指して「これ、俺んちの袋だ」

俺はとっさに「この袋は、家のお客さんの物だよ」母親を恨んだ。

「もうちょっと、気を使ってくれないかな」

この鍋で、家では一度もスキヤキは食べて事はない。

いつもの朝、俺はブラジル人のカマラーダと一緒に畑に向かった。

 

初夏を迎えるこの季節、朝もやで赤いバラは神秘に見える。

 

香りは「何て言うのか、芳潤で清々しい」

 

その時、カマラーダの一人の若い奴が何か叫んでいる。

 

彼の方に行くと「クイダード、クイダード」

俺は彼に「ケ コイザ」

彼は指を指して、又 「クイダード」と叫んだ。

 

俺は指の先を見た「何かいるのかな」「変な音がする」

シャリシャリシャリ 俺にそう聞こえる。

「クイダード アキ」又 彼が叫んだ。

 

俺の足元の所に、小さな黒い蛇がとぐろ巻いていた。

俺はその蛇が余り大きくないので、捕まえ様と手を伸ばした。

「ノー ノー クイダード!!」彼が大声で叫んだ。

 

その時、その蛇が飛んで俺の方に来た「あー」

「一瞬の事」何とか避ける事が出来た「プッシャビーダ」

この蛇は鈴蛇と言い毒蛇だ「助かった」

 

でも、怖い事より「あの朝もやの赤いバラの方が思い出」

 

「不思議だな、色と香りが今でも消えない」