「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド -10ページ目

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

朝から、一ヶ月後の店のオープン準備の打合せ。

 

初めて会う人達だ「顔を見るだけで一癖二癖もありそうな人間達」

 

天ぷら担当の責任者と寿司担当の責任者「どう言う訳か石焼ビーフの担当の洋食の人もいる」

どう考えても調和が取れているとは思えない「当分は様子を見ながら考えよう」

 

「天ぷらの責任者が、どうも態度が一番大きそう」「寿司の責任者は、我冠せずのようだ」

「洋食の人は腕がなさそうで、天ぷらの責任者に媚を売っている感じ」

 

初めに起きた問題は、日本での契約内容と違う件だ。

寿司の責任者の給料の内容が、日本で聞いたのとは違うと言い日本に帰ると言う。

 

次に起きた問題が、誰が親方という問題。

天ぷらの責任者が、日本を出る時に社長から親方と言われたと言う。

店の女将は、日本での水商売の経験がないので判断がつかないようだ。

日本の社長に現状を電話して来てもらう事にした「こんな調子で出来るのか」

 

夜になると、それぞれの部屋での作戦会議。

 

俺は家族がいるので、生活が出来る様に準備を始めた。

経理担当の女性が子供が好きなようで、よく部屋に来るようになった。

女房とも気があったのか仲良くなり、おかげで色々と助けてもらった。

ある時、彼女が言った言葉が「どうして、日本から来た人達は仲が悪いのでしょうね」

「仲が悪い訳ではなく、自分の立場をはっきりさせないと、仕事をしないのが職人と言う人種」

と教えたが彼女は理解できないと言う。

 

数日後、日本から社長がやって来た「建設中の店の中でのミーティイング」

 

社長は、責任者の件の話を皆の前で始めた。

「和食の責任者を中心にする。皆も協力するように」

 

その時は皆も解ったような顔をしたが「これからが大変そう」

 

最悪な人間関係は無協力体制の始まり。

週2回の市場へ仕入れ、パリ郊外のランディス市場に行く。

 

夜中の2時に出て、朝の6時位には戻る。

 

夏は暖かくていいが、冬は寒くて本当に「きびしい」

 

市場は広く、ヨーロッパ中の食料品が揃う。

マッシュルームの種類の多さは驚き、そして、外の皮が真黒で中が白い大根。

食材が多くて「楽しく、大変、面白い」

 

仕入れが終わり「市場のバールで飲むカフェオレと、タルティンヌは最高」

 

パリの5月の朝6時前、朝日がシャンゼリゼ通り照らし道が輝いている。

 

黒人の労働者達が、通りの一面に水を流し掃除をしている。

 

この時期のこの時間のパリ「ステキ以外の言葉がない」

 

あのシャンゼリゼ通りの朝「今でも忘れられない、青春の朝とでも言うのかな」

コーヒーの香り、モカが好きだ。

 

この町の通りの外れ、10人も入れば一杯の店。

 

とても綺麗とは言えない、でも、モカの香りが良い。

 

フランクフルトを離れる時、最後にモカを飲んだ。

 

夜10時に町を出て、ミューヘンに向う。

 

コーヒーの香りは、町の思い出と一緒に心に残った。